名も無き傭兵達の戦場 作:狐狐
夢を見ている。不思議な夢だ、見慣れないパーツで構成された、ACに乗っている夢。一つだけじゃない、ぐるぐる、ぐるぐると景色は移り変わっていく。だけど、始まりはいつもこの言葉だった
『メインシステム、戦闘モード起動』
だけど終わりは、どれも違う。似たようなものはあったけど、それでも全部が同じではなかった。場所が違う、声が違う。何よりも、何よりも
どれも機体が違ったのだから
『俺はついにこいつと一体になった。もう誰も俺を止めることはできない』
『すべては私が作り上げたもの。荒廃した世界を、人類を再生する。それが私の使命』
『生き抜くがよい、◾︎◾︎◾︎◾︎。我らとお前、どちらが果たして正しかったのか。お前にはそれを知る権利と義務がある』
ヒトの超越を果たした存在を打ち破り、一つの悪夢を乗り越えて、鋼の監獄を破壊する。その先にあったものは
『我々はいつも過ちを犯す。そうは思わないか』
『我々には管理するものが必要だ。我々は我々だけで生きるべきではないのだ』
『貴方であれば、新たなる次の時代を切り開くはず』
星屑降り注ぐ、暁の新天地。そこに絶対の存在は無く。だが人の過ちを知る者が再び、監獄を求めた。人は未来を求めても、失われた過去が必ず道を塞いだ
それでも人は歩みを止めない。より良き未来を掴むため。より良い日々を求めて
視界は巡る。まだまだ廻る。ぐるぐる、ぐるぐる。人類の罪と、人の栄光を知らせるように
次に見えるその世界には……空は、存在しなかった。それでも人は、歩み続ける。土を掘り進み、明るい陽を目指すように
『秩序を打ち壊すことで、何が得られるというのか……行くがいい、そして君が成したことで何を得られるのか、それを見届けるがいい』
『地上への……ゲートロックを……解除……本命令の実行をもって……プログラムの全工程を終了……』
遂には人は地上へ昇り、輝く空をその目にいれる。しかしその先にあったのは、栄光ばかりでは無く。新たな闘争と、侵してはならない領域が立ち塞がった。それでも人は、進み続ける。歩み続ける。まるで、止まることなんて知らないかのように
『……ココマデガ、ワタシの役割』
『あとは……あなたの役割』
『……聞こえ、ますか?レイ……』
そのまま視界は黒くなって。またひとつ、終わりを告げる。だが、その声はまるで。自分に語りかけているようだった
再び、視界が開く。今度の場所も、救いがない。企業が星を支配する。それでも人は、争いをやめない。果たして、誰か個人の意志が、何かを変えることはあるのだろうか
『排除、排除、排除』
『もう間に合わないのかもしれません。でも……』
『それでも、戦うことだけが我々の生きる道だと』
『我々は信じます』
小さな兵器が、空一面を覆う景色。豪雨のようにそれらが降り注いで……また、視界が移ろいでゆく。そこでは誰しもが必死に生きている。誰もがみんな、足掻いている。そんな中彼に下されるタイムリミット。残されたのは、24時間。それでも
『遅かったじゃないか……全ては私のシナリオ通り……』
『ドミナントである私が……私が為すべきことなのだ』
『私はただひたすらに強くあろうとした……そこに私が生きる理由があると信じていた……』
『やっと追い続けたものに、手が届いた気がする……』
誰もが、誰しもが
『◾︎◾︎◾︎◾︎……その称号は、お前にこそふさわしい』
生きる為に、戦っていた
……次に開けたのは、アラタナセカイ。今までの機体なんて比べ物にならない兵器。彼は何故、その機体に乗るのだろう。無茶してまで、無理してまで。乗る必要なんて無いはずなのに
『遅かったな……言葉は不要か』
『お前は……折れるなよ……』
『ねぇ、聞こえる?……ありがとう』
わからない、わからない。頭に疑問を浮かべたまま、視界は再び巡る……これは、なんだ。まるで異なる3つの思考。それでも求めるのは変わっていない、不思議な感覚
『貴方には、感謝している……嬉しかったよ』
『人類と……共に戦った、ORCAの戦士たちの為に』
『革命など、結局は殺すしかないのさ……だろう?』
この戦いの先へと、答えを求めて。秩序へ、革命へ、そして……人類種の天敵へ
再び視界は、堕ちていく
開けた先は、朽ちた都市。硝煙の匂いに包まれた場所。今までとどこか、雰囲気が違う。それでも、名も無き傭兵たちは戦っている。そこで見たものは、ただひたすらの暴力
『……貴方は、恐ろしい人ね。何もかもを焼き尽くす。真っ黒に』
『自らを滅ぼすと知りながらそれでも、争うことを止められない。卑小で、愚かな存在』
恐れと、軽蔑。未来は絶望と破滅しかないかのように。だが
『俺はそうは思わん』
『戦いこそが、人間の可能性なのかもしれん』
『証明して見せよう。貴様になら、それが出来るはずだ』
敵対する存在が、希望はあるかのように語る。そして、全く異なる2機は相対し───
視界は落ちて、光が差す
一面の荒野。都市は砂に巻き込まれ、かつての面影は消え去って。空を巨大なヘリがひとつ飛び、その下にはACらしき物が吊り下がっている
『〜♪』
『少しは静かにして、ファットマン。仕事する気あるの?』
『マギー。俺はもういつ運び屋を引退するか、最近はそれしか考えてなくてさ』
『じゃあそれは明日にして。今日は仕事がある』
『明日は雨らしい。辞めるのは晴れた日って決めてる』
そんな気軽なやり取りをして、ACが切り離されて戦いが始まる。視界は映って、移って。戦いは巡って、巡って。仲間が敵対して、それでも戦って
『マギー、何がお前を駆り立てるんだ』
『昔話をしてあげる。世界が破滅に向かっていた頃の話よ』
そうして語られる昔話。それは恐らく、一つ前の景色の話。だけど、彼女が語るそれはどうしても……今までの全ての映像に、重なって見えた。どうしても切り離せない、思い浮かんでしまう。そうしているうちに、戦いは既に始まっていて
『まだよ!私はまだ戦える!!』
『ここが!この戦場が!』
『私の魂の場所よ!』
彼女は自分の居場所を、魂から叫ぶ。肉体は朽ちかけている筈なのに、その声は何故か
とても清々しく、聞こえた
そしてまた1つ、戦場は進んで……不思議と予感する。これが、最後なのだと
空から降り立つ黒い機体。振り撒く緑の粒子。何処か、以前の景色で見たことのある姿。以前の景色で聞いた声
『戦いの中にしか、私の存在する場は無い』
『好きに生き、理不尽に死ぬ』
『戦いはいい。私にはそれが必要なんだ』
彼女と同じ答え、異なる理由。それでも自分は……彼女の理由の方が、素晴らしいもののように思えた
『黒い鳥、人の中の可能性』
『そんなものは、ただの妄言にすぎない』
『人は、人によって滅びる。それが必然だ』
違う声が、有り得ないものと答えるそれに自分は、今まで見た全ての景色が、それを否定する
今映る、彼もそう。彼はただ、今を生きる為に戦っている。評決の日なんて関係ない。ただ生きて、生きる為に戦う。それが歓びなのだから
戦いが終わる。やはり彼が勝利して
『……だがもし、君が例外だと言うなら』
『ならば生き延びるがいい。君にはその権利と義務がある』
『あぁ、生き延びてみせるさ』
『俺たちが、戦い続ける限り』
その言葉を聞いて。視界に赤が広がって
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「……目が覚めたか、621。随分長く眠っていたようだな」
聞きなれた声。見慣れた場所。自分は今、夢を見ていた……?
「夢を見た?……そうか。それだけ肉体の機能が、良くなっているのだろう」
そうか。ウォルターが言うなら、そうなのだろう
赤が脳裏に広がり、友人の声が聞こえる
『レイヴン?』
『どのような夢を見ていたのですか?』
なんだったか。大事なものだった気はするけども、覚えていない
『……覚えていない?……そうですか。もし思い出したなら、教えてくださいね』
もし思い出したら、な
……あぁでも、一つだけ覚えている
戦い続ける、歓びを
これからも、より良き闘争を