名も無き傭兵達の戦場 作:狐狐
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【MISSION BRIEF】
ミッション名:研究データ搬送
依頼主 :クーゲル第二研究部
前払報酬 :30,000 C
成功報酬 :36,000 C
第二研究部の研究データを、クライス社の第一研究部まで搬送してほしい。
このデータはクライス社との共同開発を行っている新型ACパーツに関わる重要機密であり、改竄や外部組織からのデータ抽出を防ぐため複数の暗号化を施している。
輸送ポッドは厳重に守られており、戦闘に巻き込まれない限り破損することはないだろう。
他企業から妨害される可能性は極めて低い。
様々な輸送依頼をこなしてくれた君だからこそこの依頼を送った。
前払い報酬に関してはこちらからの感謝の気持ちと取ってくれて構わない。良い返事を期待している。
【END OF BRIEF】
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輸送任務は気楽でいい。ほかの依頼に比べて安いものばかりだが、それでも数が多い。
装甲も火力も、なにもかもが型落ちもいい所の自身の機体でもこれぐらいは可能だった。
危険になれば、荷物を置いて逃げればいい。金は貰えないが死ぬよかよっぽどましだ。
荷物を持つ都合上、背中に武装は積めないがこんな機体で戦ったら負けるのなんか目に見えてる。
だからいっそ武装は積まずに荷物を積めるように、そして速度を出せるように改造していった。
そうやって何度も依頼をこなしていた時に来た、初めての指名依頼。
しかも前金まであって成功報酬もいいときた。
ついに、今までの努力が報われたと、そう思った。これから企業のお抱えになるのだと。
即座に依頼に返信して、依頼の日時を教えてもらう。
当然その日は、普段からはありえない豪遊をして仲間に自慢しまくった。
俺は企業のお抱えになる、お前ら見てぇなボンクラとは出来が違ぇんだよ
そんなことを、酒に酔いながら言った記憶がある。
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依頼当日、研究施設に向かい輸送ポッドをACに積む。
その際にこれから仲間だからよろしく、と調子に乗って担当者に伝える。
担当者は何も答えず、ただ淡々と作業を行う。
冷てぇヤツだな、なんて思いながら俺は荷物が積まれたのを確認したら施設を出発しようとしたが、担当者から声をかけられる。
なんでも、指定のルートを通って欲しいとのことで、そのデータを渡してきた。
どうやらクーゲル社の秘蔵のルートらしい。データを入れてみると小さくクーゲル社のロゴが映る。そんなルートを教えてもらえるなんて、やはり俺はこの企業に認められたのだ。
少しの疑念も無くなって、改めて施設を後にした。
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表示されるナビに従い、ひたすらに進む。
警告音は1度もならない。本当に1度たりとも妨害はない。
黙々と、この先の栄光を描きながら進む。
───ふと、キィィン、という甲高い音が聞こえた。
辺りを見回しても何もない。機体も警告を何も出していない。
気の所為だと思い、進もうとして。
警告音が鳴り響く。当たりを見渡せば、多数のMT。
不味い、逃げなければ。どうして気が付かなかったなどと思ったその瞬間。
ピッという音と共に、背中が爆ぜた。
何が起こった、どうなってる?
周りのMTも破壊されている。爆発したのはなんだ?積んである荷物は、などと思って違和感を覚える。
なぜ自身がダメージを負っている?爆発を食らったからだ。
なぜ周りのMTが壊れている?爆発をもらったからだ。
ならその爆心地は?
背筋が、凍った。
依頼なんて、最初から嘘っぱちだったのだ。早く、急いで逃げなければと機体を翻そうとした瞬間
後方からの警告音と同時に再び爆ぜた。
俺が最期に見た景色は、ボロボロになったMT達と
──────甲高い音を鳴らしながら飛び去っていく、鳥のような巨大兵器だった。
…ここは名も無き、傭兵達の戦場。
皆が騙し、騙されて。
理不尽の元に、灰となる
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