ここだけ少しかっこいいマコト様   作:らんかん

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マコト様の単独戦闘

 この日のマコトはトリニティから帰る途中だった。

 

 案外上層部との会談は上手くいっていて、最近は関税を互いに下げる形で締結。流石にアリウスを責任持って面倒見ると言い切ったティーパーティーには敬意を表する上、自分たちの失敗を押し付けるため経済面ではしばらくの間援助すると言う異例の流れになった。

 

 ニュースがどうなるかはわからないが、良い事だと判断される事を祈ろう。

 

 さて、帰って何を食うか。そうやって悩んでいる彼女を囲むように、人混みから数人やってきた。

 

「……」

「羽沼マコト……!」

「そろそろ来ると思っていたが、相手する武器がないな」

 

 ガスマスクを被ったテロ集団。

 

 アリウスの残党だ。

 

「私達の言いたいことは分かるな」

「パテルのバカとは違い、生まれの段階で酷い目にあったのには同情する。ゲヘナに来るか?」

「命乞いか!?」

「お前達は戦場でしか生きられない哀れな人間なのは分かっている。トリニティに居るやつはそもそもそう言う争いが性分にない奴らだ。誰しもがそうじゃない」

 

 銃口が彼女の頭に突きつけられた。

 

「それだけじゃ無いだろう!貴様がろくに協力しないから、シャーレという異分子の介入を許した!あれがなければグローバリズムと言う名前で行われるDDR活動とほざく征服行為まで辿り着くことはなかったんだぞ!」

「私としては貴様らが構わずミサイルをかましてくれたせいでろくに動けなかったからな。まあ、誰かに征服されるのが趣味の貴様らには契約破棄という概念もないか」

 

 キキ、と嗤うマコト。

 

 数にして六名、トリニティとゲヘナの境界、そして人通りがそうそう無い場所。

 

 彼女の危機であることには変わらないのに、余裕の笑みを浮かべる。

 

「大体、銃を持ったからと言って私に勝てるのか?シャーレの軍隊さえ倒せないお前らが?」

「ならば問いを返そう。救世主のいないお前が我々に勝てるのか?」

「負ける要素はない」

 

 言葉は必要なし。

 

 すでに互いに手を出す瞬間。

 

 周囲は引き金を引き、一番近づいているやつさえすでに撃とうとしていたが_____

 

「遅いな」

 

 振り向きがてらその勢いのまま回転方向の外側の拳を遠心力で相手の顔に叩き込む。

 

「ぶぐっ!?」

 

 素早い反時計回りからの右ストレート。

 

 顔面に叩き込まれたせいでそのままガスマスクは割れて、その破片で顔のあちこちを切っているようだ。

 

「ばか、な」

「何しろ私はゲヘナのマコトだからな。徒手空拳で強さに達するまでは無いが、少々の荒事は心得ているぞ」

「気にするな!あいつの武器を手にしてもこっちが有利だ!」

「今すぐにその考えを正してやる」

 

 射撃を受け続けることは宜しくないが、少々受けるなら問題はない。

 

 こう言うときに大事なのはいかに戦える人数を素早く減らすかと言うこと。

 

 残り五人のうち、三人が後ろで援護射撃、二人が挟み込んで拘束すると言った動き。

 

 だがマコトは屈しない。

 

「挟み込むぞ!」

 

 タックルによる急制動から拘束する手段を取ろうとする一人。

 

 だが、十分な威力なタックルというのは腰を落としホールドすることができる状態が一番だ。これがレスリングというのであれば同じ態勢をとってぶつかり合うか、ともかく不動の態勢を取る必要がある。

 

 しかし、これは喧嘩であり競技ではない。普通だったら取れない手段も取ってよし。

 

 一言も声を発さず、そのタックルの下からタイミングよく蹴り上げる。

 

「うっ」

「しめた」

 

 蹴り上げた相手が上に跳ねている間に急いで襟を掴んで下腹の辺りを2発殴り、頭に頭突きをかまして脳震盪を起こした。

 

 これで二人目が終わり。

 

 三人目が襲いかかってくるが盾を得た彼女に死角なし。

 

 持っている奴を使ってそのままストレートな突進、襲いかかってくる奴を引っ掛けてそのまま二人目と建物で挟み込んだ。

 

「あぐあ」

 

 そんな悲鳴もお構いなしに、二人目の頭を殴りつけ、ガウス的な加速をさせるように三人目の頭にダメージが入っていく。

 

 そんな事を続ける間にも射撃は入っているのが、ここはキヴォトス人。当たってもへっちゃら。そもそも訓練された奴でさえ射撃の命中率はフルオートだと70%が標準。操作も急いでいるため、中々ダメージが入らない。

 

 二人目をどかして三人目の鳩尾に五発膝蹴りを喰らわせてダウン。残り半分となった。

 

 しかし残り三人は遠い。若干逃げの姿勢だが、ここで逃したらさして意味もない。

 

 全滅……いや、壊滅!

 

 ゲヘナ道は勝つべし。

 

 近くの建物には大したものがない、が。

 

「死ねえ!」

「危ない」

 

 急いで建物の隙間に隠れるマコト。

 

(ふう、まだやる気か。そっちの方がありがたいがはて残っているのは倒したやつの銃と_____)

 

 周辺を見る。

 

 この地域は比較的ライフラインが古めだ。どの学園の中央区は大体オール電化に移行しているが、こういう歴史ある場所になってくると産業革命に等しい状態でガスに移行している。ちょっと進んだスチームパンクだ。

 

 故に。

 

「……いいじゃないか」

 

 ガス缶があった。

 

「くそっ!中々出てこない!」

「今すぐに突撃して抑えろ!」

「まずいな」

 

 ガス缶を急いで引き抜く。ここの少女ならなんともない。

 

「ええい!」

 

 急いでそれを倒して、構える。

 

 足音が近づくと同時に、自分が入ってきたところから影が来た。

 

「見つけたぞ!」

「遅かったな!」

 

 マコトは思いっきり、ガス缶を蹴飛ばした。

 

 キヴォトスの少女の蹴りは強い、そのまま缶は綺麗な軌道を描いてやってきた三人を纏めて巻き込んで飛んでいく。

 

 一瞬の出来事で悲鳴は聞こえないが、幸いこの行動で三人が缶の下敷きになっている。

 

「よし!とどめだ!」

 

 腰を落として精密射撃。

 

 狙うのは勿論ガス缶。

 

 ガスが銃弾でそんなすぐには着火しない。だが、長く楕円形の缶の中で跳弾し、そこに何発もぶつかれば火花を散らし、そうして蓄えた熱は銃弾が開けた穴に抜けていく以上に膨張。

 

 結果。

 

 ものすごい轟音並びに爆風と共に、缶は少女達を巻き込んで爆ぜた。

 

 悲鳴などもう聞こえない、だが確実に動けないことは理解していた。

 

「ふぅ」

 

 幸いにも缶一個のために、すぐに爆風も轟音も収まり自由に移動できるようになる。

 

 急いで近づくと、すでに六人は息絶え絶え。怪我はしているがどちらかと言えば内臓をひっくり返した上に強い衝撃が何度も身体を駆け巡ったが故のダメージに身動きが取れなくなっているようだった。

 

「くそ、マコト一人に、やられるとは……!」

「私はさしてこう言った戦闘を得意としている訳ではないのだがな。映画じみた動きが丁寧に刺さったのは面白かったが……それを含めて貴様らは知らないことが多すぎる」

「なんだと_____」

 

 抵抗できない動けない相手の前に片膝をついて話すマコト。

 

「確かに私たちはお前を利用した。利用した結果お前達が望まないグローバリズムを強化することになった……それは恨みを買っても仕方ない。が、私達だって憎しみ合うだけで食い扶持を稼げないという問題に直面した」

 

 政治家が一番支持率を集める唯一のやり方は市民に迎合することが一番楽だ。それをシャーレがキヴォトスへの一体化に向けた問題解決で出来なくなってしまったのだ。

 

「だから私は自分達の為に戦い抜く術をこうして身につけたわけだ。これでお前達は好き勝手に出来なくなったが、まあ折角だ。ゲヘナに来て銃を使う以外の戦い方を学べ」

「好きに、しろ。私達の、負け、だ」

 

 最後に意識を保っていたやつも、これで倒れた。

 

「ふう、どうもめんどくさいことに巻き込まれたな」

 

 あくびをしながら、大通りを見る。

 

 マコトかどうかは知らないまでも、誰かを守り無事に返すことを信条とした赤い光がやってきていた。

 

 雪は降るが、積もりはしない。

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