今日の放送見つつ書いたから誤字脱字が不安です。
最近は暖かい日が増え、寒い日もほとんどなくなり季節はすっかり春になっている。
そうなってくるとフブキやミオとの再会からそれなりの時間も過ぎており、俺の気持ちというか、色々なことに理解が追いつきやっと落ち着いてきた……うん、落ち着いてきたと思いたい。
はぁ……全く、キャパオーバーで体調崩した時とか大変だったよなぁ。次の日ミオとか来てたし、それを見た枢姉ちゃんもまた……あー……思い出すのやめよ。
「さて、こんなもんか?」
火にかけていた鍋を見つつ一言。
火を止めてなんとなく味見……うん。いい感じだ。
「久しぶりの味だけど、覚えてるもんだな」
これ、俺はあんまり作らなかったからな。
色々な野菜を使い、普通より少しだけ多めに肉を入れた煮物である。
今回は普段作るものよりも、前世で爺さんが作ってくれた煮物をイメージして作ってみた。思っていたよりもずっと近い味になり達成感に包まれる。
あとは冷ましてグッと味を染み込ませたら完成だと思いつつ、少しだけ散らかったキッチンを片付けていき、明日の準備を進めていく。
「タッパーはこれでいいし、あと飲み物も玄関に置いてある。……こんなものか?」
ある程度キリのいいところまで進めれたし、あとは明日の朝にやってしまえば終わりだろう。
そんなことを考えながらキッチンから出てリビングへと向かい閉めていたカーテンを開ける。
「うん。明日も晴れそうだな」
明日の天気を見るついでに春の夜空でも見るか。
見上げた空は、山にいた前世よりもずっと多い光のせいで星はあまり見えない。まぁそれでも空の様子は多少はわかるし、見た感じ嫌な雲もなさそうだ。天気予報通り晴れるだろう。
視界を空から地上へと向ける。
外には春らしく桜が咲いており、どんな時代であろうと桜を見ると、どこか特別な感情が湧き上がる気がしてくるのは不思議だよなぁ。
「楽しみだな……明日のお花見」
明日はお花見で、色々と予定を調整してくれたフブキとミオが企画してくれたのだ。
あんまり人気者の二人と出かけるのは〜とも思っていたが、二人が言うにはどうやら大丈夫らしい。
変装でもするのか?
それとも配信で何かしら言って手を打ってあるのだろうか?
俺はリアルタイムで見ることは少ないし、基本的にアーカイブで追っているせいでその辺のことはわからない。
まぁ大丈夫ならいいだろう。
俺はまたキッチンへと移動して作った料理を見つつ少しだけ思ってしまう。
「ミオ、驚くかな?」
お弁当は用意すると張り切っていた姿を思い出す。
俺は力仕事担当で、みんなが飲む飲み物を運ぶことになり、フブキはレジャーシートや紙コップなど細々としたものを用意してくれるらしい。
あれ?俺の用意楽すぎない?なんて思ってしまい、サプライズで俺も一つ料理を持っていくことにしたのだ。
それが先ほど作っていた煮物。
前世で、爺さんがたまに作っていたご馳走でもある。薄味で、肉が多めなのはミオのためにと考えた結果だと教えてくれた。
幼かった俺がなんとなく聞いた爺さんの話、ミオはあの耳で聞こえていたのだろうか?
「喜んでくれるといいけど」
さて、そろそろ寝ないと明日起きれない。
カーテンを閉めて俺は自分のベッドへと向かうのだった。
「……ん……」
目を開ける。
なんか、前世の夢を見ていた気がする。
内容はあまり覚えてはいないが、爺さんとミオと出かけた時の思い出だったと思う。俺がミオに遊ばれてて、それを見ながら爺さんは酒を飲んでて……。
爺さんめ、いいよな……酒飲めて。
俺なんて今はまだ法律のせいで飲めんのに……ビールって、どんな味なんだろ?あの頃は、今で言う日本酒しか飲んだことねぇ。ハイボールとか飲んでみたい……。
「一回、ウチに置いてあるニコさんのビール……飲んでみるか?」
料理に使ったといえばなんとかなるか?
……はは。
飲みたいって思いながら起きる高校生なんて居ないよなぁ……。
今日は花見ということもあり、少しだけテンションが高いのを自覚する。さっさとベッドから抜け出し、なんとなくスマホでミオの配信のアーカイブを適当に流しておく。
……あぁ、こうやってるからいつまでも最新の配信に追いつかないんだよな。
「まぁ、いいか」
どうやら今回は歌枠らしい。
……いや、すげぇうまいんだよね……いや、そういう仕事してるわけだし、レッスンやら色々と頑張ってるからこそなんだろうが。
「そういえば遠吠えも綺麗だったな」
なんてことを思い出しながら煮物いれたタッパーをカバンに詰め込んでいく。ついでに味見として朝ごはんにつまむかと思い、食べる分だけレンジで温めておく。
「あ、白米……パンでいいか」
お弁当はミオが担当しているから米を炊くのを忘れていた。米よりあわないだろうが、トーストも用意して適当に食卓へと並べる。時間はまだまだ余裕があるが、楽しみという気持ちが強いからかいつもよりも少しだけ食べるスピードが速かった。
「うん。煮物もいい感じだ」
なんというか、驚く顔を想像して少しばかり楽しみ……ん?まさか、フブキのイタズラ好きってこの辺から……?
いやいやまさかね?うん。
変なことを考えてしまったが気にしないでおこう。
もしそうだとしても、そんなふうに俺を育てた爺さんとミオが原因なのだから。
「あ、ハクくーん!こっちです!」
「ごめんねー。飲み物重かったでしょ?」
約束していた場所へと辿り着くと、もうすでに場所をとっていた二人に迎えられた。
二人は運がいいことに、大きな桜の木の下のいい場所をとっていて驚いた。
「わるい。ちょっと待たせたか?」
「いえいえ、白上たちも来て一休みしてすぐですよ」
「タイミングよくいい場所取れたんだよねぇ。人が多くなりだしたのも、ほんの数分前からじゃないかな?」
「へー、そりゃ本当に運がいいな。さすがだわ」
そんな話を聞きながらレジャーシートの上にお邪魔し、持ってきた飲み物を取り出す。
緑茶、コーン茶、いくつかのジュース、あと俺がなんとなく飲みたかったコーヒー……。
「待って待って待って!やけにカバン大きいなって思ったけど!!!」
「いや、全部二リットルって……どんだけ水分取るつもりです?」
「ほんとに……ボケに体張りすぎじゃないかな?緑茶はともかく、コーン茶の二リットルなんてあったんだ…」
「結構探したんだぞ」
まぁ小粋な冗談である。
あまれば持って帰って飲むから、好きなものを好きなだけ飲んでほしい。
フブキから紙コップを受け取りそれぞれに飲みたいものを注いで渡していく。
結局全員お茶なのね……フブキはコーン茶だけど。
「ではでは乾杯の挨拶はこの白上が」
「えー、本日はお日柄もよく」
「いや、ハク。それ長いし固いよ」
「二人とも、白上の邪魔しないでくれません?はぁ、ではかんぱーい」
すまない。
少しだけテンションが上がっておりまして。
こうしてゆる〜く始まったお花見。
お昼までまだ少し時間があるということもあり、買ってきたお菓子や団子をつまみながら最近の出来事なんかを話していく事になった。
二人とも今日のために予定を詰めてくれたり、いろいろな提出物なども頑張って処理してくれたらしい。思えばちょいちょい会っている時は、夜ご飯を食べたりといった短い時間の時が多かった気もしてきた。
「っと、もうそろそろいい時間ですね」
「どっか肉焼いてるのか?匂いのせいで腹減ってきたな」
「ふふん。では、そのお肉に負けないようなお弁当を出してあげましょう」
ドヤ顔である。
でも実際、食べる人のことを考えてくれているご飯はいいものだ。落ち着いているというか、安心できるような気持ちになれるからな。
……まぁ、それでも……ちょっとだけでも、焼きたての肉が食べたいと思うのは高校生だからこそと言いますか、若い胃袋が求めると言いますか……。
だからさ、ミオ……。
「そんな笑顔で詰めて来ないでくれない?」
「いやいや〜、ハクが悪いでしょこれは」
「ミオに同意です」
「正直すまんかった。ふざけただけだから」
という事にしてもらいたいですはい。
そうしてカバンから出てきたのは三段になったお重箱。カバンでかいなぁとは思っていたが、気合い入ったものが出てきて驚きである。
「おぉ!」
「美味しそうです!」
「ふっふっふ。昨日は仕込み、今日は朝早くから一気に作って詰め込んでね。ウチ、昨日からずっと料理してた気がするよ」
一段目にはいなり寿司や、おにぎり。男子高校生にはたまらない魅力がある。
二段目には唐揚げや、ミニハンバーグ、レンコンで何かを挟んだ揚げ物に他にも……い、いかん。腹が……!
三段目にはだし巻きや、アスパラのベーコン巻き、旬の野菜などをふんだんに使い、色とりどりで美味しそうってだけでなく視覚でも楽しめる。
「あはは。そわそわしちゃって……フブキ、早くお箸あげて」
「はいハクくん」
「ありがとうフブキ」
いきなり手を合わして食べ始めたいところだが、流石に少しだけ待つ。取り皿なんかの配膳をされるのを待ち、もう一度俺が飲み物を配り……も、もういい?
「では、いただきます」
「「いただきます」」
ミオの掛け声につづき、俺とフブキは食べ始める。
まずはいなり寿司から……。
「うっま」
「ちゃんと油揚げの仕込みからしたからね」
「さすがミオ」
フブキもいなり寿司に手をつけたらしい。
目を輝かせながら、んー!と唸っていた。
お!この蓮根のはさみ揚げ、中身はエビか!唐揚げもしっかり味付けされており冷めてもジューシーで美味い!
もちろん他の料理達も冷めても美味しいように味付けされており、とても楽しめて……あ。
「忘れてた」
「ん?」
お腹も落ち着いたからだろうか?
俺も煮物を持ってきていたことを思い出す。
俺の独り言に反応したミオをチラッとだけ見てタッパーを取り出し、フブキとミオの間というか、少しだけミオよりに置いてみる。
「煮物作ってきたんだよ」
「……え?」
「おや?ハクくんも持ってきたんですか?ハクくんの料理も美味しいんですよねぇ」
「いつも美味しそうに食ってくれるもんな。作り甲斐があるよ」
「え?これ」
こう見ると面白いもんだな。
自分の中でザッとした雑な考えなのだが、フブキにとって俺の料理は基本的には普通に美味しいもので、たまに前世で作った事があるのが出れば懐かしい味で昔を思い出すって感じだったりする。
「味しみしみですねぇ」
「一晩置いといたからな。冷めるとグッと味が染み込むんだよなぁ」
だけどミオは少し違う。
前世では爺さんが食事を用意していた。
老いて動くのが辛くなるまでは毎日毎日欠かさずだ。俺も料理ができるようになってからは担当することが多くなっていたが、それでも思い出の味は?と聞かれると爺さんの料理だろう。
前世も今世も人の俺。
前世は狼で今世では獣人となったミオ。
味覚の違いなんかもおそらくはあったかもしれない。あの頃の味を作りたいと思った事があるか分からないが、再現は難しいかもしれない。
だからこそ。
「ミオも食べてくれないか?」
無言で頷いてから箸で肉を取り、口に運ぶ。
何かを思い出すように目を瞑りながらゆっくりと食べている姿を見つつ、俺もフブキに煮物を取ってもらい手をつける。
……うん。冷めてはいるし、昔よりも材料が少しだけ違うが、ほぼあの頃の味のままだと思う。
肉の次は野菜も口に運び、また目を瞑りながら味わうミオの姿を見てフブキも微笑ましそうだ。
俺としてもこうして味わってくれると嬉しいものだ。
「……あぁ、懐かしいなぁ。なかなか、再現とかできなくてさぁ……畑で採れた野菜とか、全部覚えてるのに不思議だよねぇ」
「……ん?だねふしとか、言えばいいのか?」
「ちょっとハクくん?ミオは今懐かしんでるんだから、それはいいよ」
「あ、はい」
フブキから呆れた目を向けられるが無視。
その後も楽しい食事は進み、最近あった事、前世のことなんかを話す楽しい時間になった。
今日の花見は桜はもちろんのことだが、俺としてはミオのお弁当が何より思い出には残ったと思う。
でも、そうだな。
他には?と聞かれるのなら、俺が作った煮物は無くなるまでずっと、ミオのそばから離れる事がなかったって事かな。
というわけでミオしゃの思い出の味として出してみました。
いやぁ、実は通勤中に後ろから轢かれて病院に通う日々となり、書く暇がなかなか取れませんでした。
朝から仕事行って夕方病院行って帰ってきたら飯作って……疲れるって……週に三回以上は来てくださいとか割と無茶だって……体痛いのに定時で帰るため爆速で仕事片付けるのしんどかったぁ……。轢かれた当日なんて病院行ってから出社したから仕事終わったの日付変わる前って……はぁ、しんどい日々でした。
そしてこれからの時期は繁忙期です。なかなか時間は取れませんが気長に待っていただければ……あかんか?
合間合間にちょっとずつ書いていきます。