記憶にある世界とは違うんですけど?   作:クウト

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結構好き勝手キャラを動かしてしまっているなって。
いいのかなぁ?なんて思いつつも止まらん。
もし感想等で不評が多かったらすぐに辞めるってことだけ言っておきます。
まだホロライブに興味持ってから日が浅いし。


前世の話

私の一番古い記憶は、何かから逃げていたものです。一人で、寒くて、もうダメかもしれないと何度も思った時、遠吠えのような声を聞きました。

でも不思議なことに怖いとは微塵も感じず、その声に導かれるように進んだ先に暖かな光を見たんです。

 

『もう安心』

 

意識が朦朧としているのに、そんな気持ちが湧き上がってきてふと見た目の前には、見たことがないほどに髪も肌も真っ白な人がいて、神様か何かかと思いました。

それに、あの家にたどり着くまでの道のりも、獣が歩きやすい道でしたからそれも相まっていたと言いますか……安心感からかそこで私の意識は途切れてしまいましたが、次に目覚めると暖かな温もりに包まれていました。

今まで寝床でも感じたことのないほどの柔らかな布団に、初めて感じる人のぬくもり……野生の獣にとって人は天敵の一つです。普通なら即座に逃げるところですが、この人になら委ねてもいいと思ってしまい二度寝をしてしまいました。

 

『ここなら大丈夫』

 

この場所での生活は、一言で言うならそれです。

なんだかんだで構ってくれる白神と呼ばれる人に私が心を開くのはそう時間がかかりませんでした。

私は何をするにもついて回りましたから。

暖かな食事も。

柔らかな寝床も。

伝わる優しさも。

吹雪の寒さなんて忘れるぐらいでした。

 

『もうやめておきなさい』

 

あぁ、そうでした。

あんまり近くにいすぎたり、ウザ絡みしすぎた時は咎めるように声が聞こえてきましたね……。

初めて畑に連れて行ってもらった時、過去にこの場所には狼がいて一緒に住んでいたと聞き、たびたび聞こえる気がする声はその方のものかと納得したものです。

場所を奪ったように感じた時もありましたが、それでも最後には許してくれているような声も聞こえたので大丈夫でしょう。

 

『まぁ……仕方ないかな』

 

気がつけば春になりました。

この場所にはたまに人が来ます。

決まって何か困り事がある方ばかりで、たまにお礼を言いにくる人もいました。

どうやってここまで来たのだろう?と思ってしまうほどご高齢の方、どこか恐れている方、私を見て嫌な視線を向ける方。様々な方がいましたが、白神様と呼ばれるこの人を敬って帰ったり、敵に回したくないのか大人しく帰っていくのを何度も見送りました。

そんなある日のことでした。

 

『この子をお願い』

 

夜眠る前にそんな声が聞こえました。

私も、白神様も布団から起き上がり外を眺めました。どこか遠くから遠吠えが聞こえ、しばらくした頃。

 

「やっと行ったか……心配性でいかんな」

 

「こん?」

 

「アイツは狼だけどな。それでも育ててくれていたし……まぁ、母親ってのは、強いってこったな。……爺様はとっくに旅立ってるだろうに、ミオのやつ……そっち行ってからどれだけ経ってると思ってんだか……まぁ、安心できたのはフブキのおかげかもな」

 

「……」

 

「もう大丈夫だからよ。爺様の事、よろしく頼むぞ」

 

そういった白神様の声はどこか寂しそうで、ずっと外を眺める姿を横から見ていました。

ここは不思議な場所です。

季節関係なく野菜が採れる場所とか、適温を保つ家とか……あげればキリがない場所です。

それでも翌朝、白かったはずの尻尾の先が黒くなり、五芒星の模様まで付いていたのは焦りました。慌てている私を見て白神様は一言だけ。

 

「そういうこともある」

 

「……こん……」

 

そうかもしれないと思ってしまった……。

問題があるわけでもなかったし、もうどうする事もできないから受け入れましたが……それでもやっぱりおかしくありません?

……それから時間はさらに流れ、辛かったことなんて思い出さないといけないぐらいの年月を過ごしました。

またやってくる冬の寒さと、それでも温かいと思える日々。雪が溶けて春の訪れを感じる日々。夏の暑さを川まで行って涼む日々。ふと感じる金木犀の香りで秋の訪れを感じる日々。

 

「もう、フブキが来て随分たったな」

 

「こん」

 

「なんだかんだでいい人生だったと思うよ。気がつきゃ……爺様よりも長く生きてるだろうな」

 

「……こん」

 

「……なぁ、フブキ。俺は、お前がいてくれてよかったよ。……まさかこの場所で、誰かと逝けるなんて思いもしてなかったからなぁ……」

 

「……」

 

「おめぇの毛並みは、いつ見ても綺麗だな。……おい、聞いてるか?」

 

「……こん」

 

「……山駆け回ってた頃みてぇに、俺より先を歩くなよ?お互い歳くってんだから、ゆっくりいけばいいさ」

 

「こん」

 

だんだん会話はなくなってきたけど、それでも撫でてくれている手は暖かくて、一番古い記憶なんて吹き飛ぶほどに最後まで温もりに満ちた時間でした。

 

 

 

「それが、私の前世の記憶って言えば……信じてもらえますか?」

 

「……」

 

言葉が出なかった。

配信者として活動していて、昨日初めて会ったばかりだ。それでもおかしな事はあった。

普通なら初対面の人間に食べかけなんてやらない。

そんな物をやろうとすら思いもしない。

おでん分け合うなんてこともしない。

 

「あなたは……白神様ですか?」

 

「……」

 

「隣にずっといた私があのお粥の味を間違えるわけないんです。この時代で、あの味を出そうとする人なんていないとは言いませんが少ないと思います。それにさっきも……味の染みた大根を食べる時はギュッと目を瞑るんです。あの頃もそうです。そのままお酒を飲もうとするから見えてなくて何度もこぼしかけましたよね?今はペットボトルだからこぼす心配もありませんが」

 

「さっきから……めっちゃ話すじゃん」

 

「もう二度と会えないと思っていた人が目の前にいるんですよ?……そ、それとも……白神様は、会いたくなかったですか?」

 

そんなわけない。

前世の記憶として覚えているほどに、あの日々は俺にとって大切なのだから。

 

「フブキ……お前だったのか」

 

「それ死ぬやつなんでやり直してください」

 

「あ、はい」

 

変なテンションになった。

深呼吸をしてから気持ちを落ち着かせる。

白上フブキという存在を知ってから日が浅く、自分がすこん部と言っていいかわからないほどの時間しか経ってない。昨日……いや、今の段階まで推しに会えたかもしれないということだけだった俺にどうしろと?いや、頭にはよぎったよ?でもそれは俺にとって都合が良すぎる考えだったからすぐに消したのだ。

 

「……ふぅ。まさかこんなことがあるなんてなぁ」

 

「!!な、なら!」

 

「お前を拾った日のことも、その急に現れた尻尾の五芒星も……全部覚えてるよ」

 

「し、白神様」

 

「雪に顔突っ込んで抜け出せなくなったことも覚えてるよ」

 

「白神様!!」

 

威嚇するな。

 

「あの時からしばらく外に出なくなったのは笑ったよ。畑にすら来なくなったからな」

 

「やめてくださいね!?」

 

顔が真っ赤である。

……でもそうか。

こんな事もあるのか……。

空を見上げてみるともうすっかり暗くなっている。

おでんを食べた温もりも消えてしまい、買った温かいお茶もすっかりと冷めた。

 

「にしても寒いな」

 

「あの家の中って快適でしたね。今なんて暖房必須ですし」

 

「……鍋でも食うかな」

 

「いいですねぇ」

 

「……まぁ、なんだ。今世ではほぼ初対面だし、女の子を誘うのもアレなんだが……飯でもどうだ?」

 

「ならキムチ鍋が食べたいです」

 

「もっとあっさりでもいいだろ?配信見てるけど辛いの食い過ぎで心配になるわ」

 

「美味しいじゃないですか」

 

「まぁ、否定はせんが……前世があるからこそ、たまに食う濃い味は堪らんし」

 

「同意です」

 

ベンチから立ち上がり家へと向かう。

あの頃と同じ様にフブキは少しだけ前を歩こうとして……。

 

「おっと」

 

ふと気がついた様な声を出してから横に並んできた。それがどこかおかしくて笑ってしまう。

 

「な、なんで笑うんですか」

 

「いや、なんでもねぇよ。……油揚げでも入れるか?」

 

「ぜひ!」

 

なら途中でスーパーにでも寄らないとな。

足りないもの買い足して……なんか辛味追加できるものをカゴに入れようとしたら阻止することを忘れない様にしないとな。

 

 

 

「ニ、ニコたん。すごいもの見ちゃったかも」

 

少しの気分転換と、新しいネタ探しのための散歩をしていた時だった。

目の前の公園から綺麗な尻尾が生えた獣人の子が出てきたなぁなんて思っていたら、私含めメンバー全員がお世話になっている高校生男子、水宮白人くんが女の子の後ろから出てきたのだ。

大事なメンバーの従弟であるハクたんはとても目立つ。

枢ちゃんとは違い身長が高いせいもあるが、どこにいても目立つ一部が白い前髪、そして独特な雰囲気があるからだろうか?

そんな彼だから、そして私の身長もそれなりに高いからか、公園から出てくる姿をすぐに視認できた。

……あ、あの、あのハクたんが女の子といるぅ!?あれ、枢ちゃんじゃないよね。小さくないから違うかしっかりしろニコたん!!枢ちゃんは今レッスン中のはずだし!

 

「とりあえず写真を〜……!?」

 

カシャリとスマホで写真を撮った。

もちろん無断だし、二人には申し訳ないと思っている。後でしっかりと謝罪もするつもりではあるが……。

 

「き、気付かれた?」

 

スマホに残る画像にはこちらをみる女の人。

帽子をかぶっていたり、顔を隠しているからか誰かまではわからないけど……一瞬見えた尻尾はすごく見覚えがある。

 

「い、いやいやいや。まさかね?」

 

画像を拡大してみるがしっぽの先の方にある五芒星は見えない。ふわふわ尻尾ではあるし、見覚えしかないのが気にはなるのだが……。

それよりも獣人の鋭敏な気配察知のせいだろうか?離れているのに気付かれるとは思っていなかったから少しだけ驚いてしまった。

 

「とりあえずメンバーに送っとこ。ハクたんに女の影ありっと」

 

【え?これフブさんちゃう?】

 

【いやいやいや。……え?フブさん?】

 

【ハクくん!?私と一緒でコミュニケーション苦手なんじゃ】

 

【ないやろ】

 

【ないよ】

 

「ハクたん普通に友達いるけど。ってかリオナだけなんか違う」

 

やっぱり枢ちゃんはレッスン中だし返信はない。

 

【それよりニコ終わったなぁ】

 

【枢ちゃんに爆弾投入するあたり流石】

 

【あれ?フブさん?】

 

【一歩遅ない?】

 

【リオナは落ち着いて】

 

わちゃわちゃと枢ちゃんを抜いたメンバーで話が盛り上がってきた時だった。ある一つの発言を見て全員の手が止まるのがわかってしまう。たぶんみんなも同じこと思ってる。

 

【今レッスン終わったんだけど……ねぇ、ニコ今どこ???】

 

あ、やったわこれ。

 

 

 

「どした?急に後ろ振り向いて」

 

「なんでもないですよ。ちょっとイタズラ好きな虎さんがいたぐらいで」

 

「虎の獣人?」

 

「虎だと思っている成人女性さんですかね」

 

「何言ってんだオメェは」

 

「さぁ?なんでしょうね」

 

「それより言っとくけど必要以上に辛くするなよ?美味しい辛さで止めてくれよ?」

 

「……」

 

「無視するなよ??」

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