記憶にある世界とは違うんですけど?   作:クウト

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この世界での日常が続きます。


この世界での危険とは?

起床。

休日ということもあり、朝から準備に追われることもないという一人暮らしにとって優雅な朝。穏やかな気持ちでテレビをつけると、様々なニュースが飛び交っていたりする。

誰かしらの配信のアーカイブを見るのもいいのだが、たまには世間に目を向けないといけないのだ。短期バイトの面接でニュースとか見る?最近気になる事とかある?って言われ答えられなかった時、君は世間に興味はないの?とか言われちゃうからさ。

 

「って、これ近くね?」

 

ニュースではわりと近くで事件があったことが報道されている。どうやら人間ではない別の種族の人が暴れてるらしい。

大丈夫か?まぁ警察とかにも力強い種族はいるし、それなりにうまくこの世界も回っているのだ。なんだかんだで拘束されるのは早いだろうなぁ。

……この世界では、人間以外にも人間並、もしくはそれ以上に知性を持っている種族が多い。

人間だけでなく、獣人、天使、悪魔。

他に鬼やエルフといった者もいる。

そんな種族が共存しているこの世界では、事件の規模もそれなりに大きい事がたまにある。

 

「俺とっては〜……だけど、前世では動物が一番危険だったのになぁ」

 

他がどうなのかは知らないが、俺が住んでいた山ではそうだった。生半可な攻撃をしたらすぐに返り討ちにされる程度には強いやつは多かった気がする。

……やっぱおかしいよあの山。

どうでもいいことを考えていると、腹も減ったし菓子パンでも取りに行くかと思いソファから立ち上がる。

ふと、魔がさした。

 

「……ついでだし見てみるか」

 

それなりに高い位置にある部屋だから見えるかもしれない。そう思い野次馬根性丸出しでベランダへと続く窓を開ける。

 

「どれどれ」

 

「のわぁあああああ!!!!」

 

「え?おぶぅ!!!!」

 

バリィン!

ガシャガシャガシャン!!

効果音にしたらこんな感じだろうか?

なんか吹き飛んできた声と共に、途轍もない大きな音、大きな衝撃に巻き込まれて部屋の中に転がっていく。

 

「いってぇ……」

 

「いっつつ……あっ!」

 

腕の中からの声。

咄嗟に受け止めたけど、どうやら大丈夫そうだ。

俺の方も衝撃やら何やらで驚きはあれど、特に大きな怪我はなさそう。この辺りの状況把握については前世のおかげでできてしまう。

はぁ……窓を開けておいたおかげで、背中から窓ガラスに突撃することにはならず、背中がガラスでズタボロになることもないのは安心。

だが、問題はある。

ほかに飛んできたもののせいで壊れた窓やら家具たち……この後の処理が面倒という事と、グータラ優雅な休日は無くなったことだけか?

 

「だ、大丈夫か!?人間様!」

 

「俺は大丈夫だけど……あーあ」

 

「ご、ごめん余。この近くで暴れてる人がいて巻き込まれちゃって……」

 

「それなりに階数あるのに……そっちは大丈夫?怪我は?」

 

「い、いや無いけど……人間様、本当に人間?余、結構な勢いだったと思うんだけど、本当に怪我ないの?……一応ここまで飛んできたんだし」

 

「人間だよ……あー、いってぇ」

 

立ち上がり、改めて部屋を見回すが……すっごいことになってる。

割れた窓ガラスは撒き散らしてるし、フレームも歪んでそう……家具もそれなりにダメージ入ってるし、これは保険コースだなぁ。

 

「本当にごめん余……せ、せめて片付けは手伝うから……」

 

「……ふぅ」

 

深呼吸。

いきなりこんなことになれば腹も立つ。

けれど暴徒に巻き込まれてここまで飛ばされた不運すぎるこの人が悪いわけじゃないし、家の損害もこういう時のための保険がある。証人もいるし、ニュースになっている事件だから話もスムーズに進むだろう。大丈夫大丈夫……はぁ。

 

「全部業者に任せましょう」

 

「え?そりゃこの状態だとそれが一番だろうけど……家の人とかにもちゃんと説明したほうが」

 

「親には連絡入れますし、今日はどこか別に泊まるので大丈夫です。割と近くに親戚の姉も住んでますし」

 

そういってから玄関に向かい靴を履く。部屋の中を歩き回る際に怪我をしないようにするためだ。

部屋の中にある貴重品だけは取っておいたほうがいいし、壊れたテレビでは外の様子の確認ができない。捕まってるかどうかだけでも確認したいし。

 

「あー、捕まってるな」

 

「本当だ。それに鬼とかの警察官も来てくれたみたいだ余。余もあっちに向かったほうがいいかと迷ったけど大丈夫そうだね」

 

これ以上の被害がなくなって何より。そう思いながら振り返ると悲惨すぎる被害を被った俺の家。

普通思わんやん?優雅な休日に鬼の美少女飛んでくるなんて……あ、そういや。

 

「名前は?俺は水宮白人」

 

「そうだった。自己紹介まだだった余。余は百鬼あやめ。よろしく人間様」

 

「人間様て……白人とか名前で呼んでくれ」

 

「ならハクトって呼ぶことにする余。……その、今回は本当にごめんなさい」

 

「百鬼が謝ることじゃねぇよ。こういう事もある」

 

「あ、ありがと?でいいのか?」

 

「いんじゃない?」

 

「そ、そっか」

 

「……ふぅ。まぁこれはどうしようもねぇわな」

 

急すぎる出会いではあるがこれも何かの縁。

この状況への驚きが無くなり、諦めとなり、様々な面倒に頭が痛くなる。それと同時に腹が減っている事も思い出したのだ。

 

「怪我ないんだろ?飯でもどう?俺食い損ねたんだよなって」

 

「余もまだだけど……いいのか?これ」

 

部屋の惨状を見ながら百鬼はそういった。

やめなさい。

俺も分かっているけど、今は直視したくない。

 

「とりあえず飯食ってから動いてもいいだろ。てかそれからじゃないとやる気が起きない」

 

「うーーん……ま、そうかも?」

 

「何食うかなぁ」

 

財布を手に取ってから、百鬼を連れて家を出て一応鍵を閉める。

どっかの定食屋とか、チェーン店の朝定とか食いたい。今から疲れることは確定しているのだから、少しでもガッツリと食べておきたい。

 

「近くに余のおすすめあるけど」

 

「そんじゃそこで……えっと、今気がついたけど一瞬で敬語とか消えたな。大丈夫?」

 

「え?そうだっけ?……ま、いんじゃなーい?」

 

「そうかぁ。で、そのおすすめって何処なの?」

 

「……」

 

「……ん?百鬼?百鬼さーん?」

 

「あ、ごめん。考え事してて何も聞いとらんかった」

 

「いきなりすぎん?話聞いて?」

 

「ごめんごめん。一応この後のスケジュールを思い出してて」

 

あ、なんかある?

それならご飯に誘ったのは悪かったかもしれない。状況的にも百鬼は断りにくかったか?配慮が足りなかった。

 

「なんかあった?やめとく?」

 

「何もなかった余」

 

「ないんかい」

 

なんだこいつ。

 

 

 

面白い鬼の子……いや、種族違うしもしかしたら歳上だろうけどね。

百鬼に会ってから数時間がたった。

その数時間の間だが、まず百鬼がオススメしたお店は閉まっており、近くのうどん屋に入ってうどんを食べた。優しい出汁の味がしみるにつれて現実を自覚していき沈んでいく俺を慰めてくれていた百鬼。ほんまごめん。

その後、うどんを食い終わり、俺はうどん屋の横の駐車場スペース辺りに座り込み、様々な場所へと連絡する。

その間、どんどん元気がなくなっていく事になるのだが……百鬼がそばに居てくれて正直ありがたかった。

 

「さて、俺もそろそろ準備しねぇとな」

 

休日でよかった。

平日だったらもっとバタバタしていたと思う。

 

「とりあえず着替えと……ホテルとか予約取れっかな?一時的とはいえ、高くつくから嫌なんだけどなぁ……」

 

枢姉ちゃんの所とかも考えた。

けどなぁ……アイドルしてるって知ってしまったせいで選択肢から外れる。

この世界、前世とは時代も何もかもが違うが、前世よりもずっと人の優しさは今の方が上だと感じる。それでも誤解されかけることは避けた方がいいのだ。

それと同じでフブキも選択肢から消える。

……あ、公園……。

 

「……」

 

おいバカやめろ俺。

前世でずっと山暮らしだったせいもあり、公園でなら割と快適か?とか思うな。

とりあえず帰って、業者の人来るまでの間に服やら何やら準備しておこう。親父にも電話して……はぁ、面倒。

憂鬱になりながらも家につき、改めて酷い状況に頭を抱えてしまう。

 

「救いは修理に一週間かからないことだよなぁ」

 

色々と危険もあるこの世界では、その辺のサポートも手厚い。おかげで俺の出費もそこまで大きなものではないし、ホテル代も一時的に払わないといけないぐらいで返ってはくる。

外食費が高くなるぐらいか?

なんて考えながら外泊の準備を進めているとスマホが鳴り始める。

 

「ん?電話だ」

 

『もしもしハク!?大丈夫?今朝の事件近かったけど』

 

「……ふむ」

 

枢姉ちゃんだ。

俺は何も答えずにテレビ電話に切り替えて外カメラを使い部屋を映す。

 

『わー、ぐっちゃぐちゃだ〜……はぁ!?!?』

 

「怪我はないよ。朝もうどん食ってきた」

 

『何でその状況でうどん食べれるの?』

 

「ほんとにね」

 

『ハクの事なんだけど??』

 

なったものは仕方ないだろうが。

 

『どうするの?ウチ来る?』

 

「いや、親父に電話してどっか泊まるよ。仕事の邪魔すんのも心苦しいし」

 

『変な気を使わないでいいよ?来な?』

 

「いーよ」

 

『……』

 

「……」

 

『……全くハクはそうやってすぐ大人のフリ』

 

ブチっとな。

電話を切っておいた。

面倒な気配を感じたらこうやって切っている。

おそらく電話の向こうでは電話が切れた音で驚いて沈黙した枢姉ちゃんがいるだろう。そしてすぐに大きな声で叫んでいると思う。ごめんな。

 

「って、また……ん?フブキ?」

 

『もしもしハクくん!?大丈夫ですか!?』

 

「声でかいっての。大丈夫」

 

先ほどと一緒では芸がないと思い、俺は内カメ状態のまま部屋が映るようにピースをしてみた。

 

『あ、無事そうです……ね?へ、部屋がぁ!!!』

 

「窓吹っ飛んだわ」

 

『吹っ飛んだわじゃないですよ!?』

 

「まぁ大丈夫。これからちょっと忙しいから切るぞ」

 

『え?い、いやちょっと!』

 

ブチっとな。

……すまん。

正直に言おう!!余裕ないです!!!

誰かぁ!!部屋片付けてくださぁい!!!




ハクくん。
時間が経つにつれて胃が痛くなってきた。

お嬢。
余、不意打ちで吹っ飛んじゃった余。

枢ちゃん。
あいつ電話切ったァ!!!

フブキング。
ハクくん?……ハクくーん!?!?
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