記憶にある世界とは違うんですけど?   作:クウト

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ということでミオしゃです。


うちうち、うちだよ

ある日お爺さんが真っ白な子供を拾ってきた。

どうするつもりなの?面倒見れるの?

色々と思うことがあるけれど、それでもお爺さんにしてはよく面倒を見ていた。無愛想ながらも毎日一緒にご飯を食べさせ、人として必要なことを覚えさせているのを見て少し安心していた。

 

『……』

 

遠くから人の子供を見たことはあるが、それに比べると物静かすぎる子だった。

お爺さんに教わった日々やるべき事はする。けれどそれ以外ではボーッと庭を見ている日々で、それを見ていると私自身も気になっていき……。

 

『ワオン』

 

『はぁ……はぁ……』

 

気晴らしになればと思い山へと連れ出した。

ただ人はこんなにも体力がないのかと少し反省……それでも私はこの子供と一緒にゆっくりと、休みながらだけど山を歩く日々を続けた。

春も、夏も、秋も、冬になっても続ける散歩。

気が付けば息切れをする事も無くなっただけでなく、走り回ることすらできるようになっていた。

食べれる山菜やキノコ類、山での息の潜め方、狩りの仕方なんてものも教えた。

 

『ミオ、これ食える?』

 

『ワオン』

 

『あー……あ、おいミオ』

 

『ワオォン!!』

 

ある程度育ち、背も大きくなるにつれて好奇心が育ってきた。

そのせいでつまみ食いなんてものも多くなる。それはまだ良いし、食事は成長するために必要なことだから許そう。だけど食べたらいけないものまで食べようとするものだから目も離せない。

お爺さんの薬用の薬草とかなんてものは食べさせられない。言っとくけど、それそのまま食べたら苦いよ?

そんな、静かで楽しい日々を過ごしていた。

 

『ワオン』

 

『ん?ミオか……あんまり動き回るな。もうお前もしんどいだろう?』

 

いつも通り縁側にいる子に声をかける。

そんなことをこの子から言われるなんて……昔は小さくて尻尾で体を巻き取って運べていたのにね。それなのにいつの間にか私の方が小さくて頼りなくて……大きくなったねぇ。

 

『爺様も、そろそろか』

 

『ォン……』

 

私もだけど、お爺さんも寝てる時間の方が多くなったからね。

ゆっくりと撫でてくれる手が心地よい。全盛期で密かに自慢だった毛並みが傷んでいる気がして、それだけは少し恥ずかしいけどね。

 

『お前はいつも触り心地がいいな』

 

『ワオン』

 

私の考えている事、わかるの?

たびたびこうして私の考えていることを当てるのだ。お爺さんでも難しいのに……小さい頃から見てたおかげかな?自慢の子だなと、少し鼻が高い気もする。

……ちょっとだけ眠くなってきたよ。

 

『お、寝るのか?』

 

『ォン』

 

『おう。ゆっくりと寝ろ。そばに居るから……それとも爺様のところ行くか?』

 

『……』

 

ここに居るという雰囲気だけ出す。

それを察してくれたのか撫でる手を止めずに黙ってくれるのを感じ、撫でてくれる心地よい感触を味わいながらゆっくりと眠りにつく。

起きたら何をする?

また山の中を駆け回りたい。

二人で狩りをするのもいい。

でも起きたら私の体はあんまり動かないもんなぁ。なら、夢の中でならどう?夢の中でならまだまだ元気だから。

 

『おやすみミオ。……お前が母でよかったよ』

 

私こそ、君に会えてよかった。

 

 

 

壊れてしまった家の修理にかかる時間だが……少しでも早くなればとは思っていたが、結局は一週間ほどかかる事になった。傷だらけになってしまった家具は処分、フローリングや窓、その他諸々も修理されると考えれば早いのかもしれない。

……いや、早いんだけどね?工事を邪魔しないために一週間は家に帰れないことが決定してしまった。

 

「親父、俺どうするべき?」

 

『ホテルでいいんじゃないか?』

 

「なんか近くでライブ?……知らんけど、イベントがあるとかでさ。ほとんど満室」

 

『そりゃ残念だったな。こっち来るか?』

 

「今何処よ」

 

『オーストラリア』

 

「無理だわ」

 

『……そっか』

 

なぜいけると思ったのか。

海外は行ったことがないしよく分からないが、片道半日ぐらいかかるんじゃない?向こうに滞在するのが数日あるが……はは、面倒。そもそも……パスポートあるっけ俺。

 

『生活費は多めに振り込んでおくよ』

 

「ありがとう頼むよ」

 

結局解決はしていないが……。

まぁ何とでもなるか!

 

 

 

なーんて思っていた時もありました。

 

「えっと、ハクくん。こちら白上の親友の大神ミオです」

 

「あ、は……い?」

 

「ちょっ!!!ミオ!!」

 

初対面である大神さんに、ギュッと抱きしめられてしまい、同時に巻きつけられたふわふわの尻尾が……懐かしい……フブキが現れた事もあり、もしかしたら〜なんて思ってたが……。

 

「不思議だねぇ。こういうこともあるんだね」

 

「……そうだな」

 

前世では、本当に色々と世話になった。

爺様と一緒にいるよりも……ずっとそばにいてくれていたのはあの狼のミオで、俺にとって母親のような存在だった。

人として必要なことは爺様から教わったが、それ以外の山での歩き方や、狩りの仕方なんてのはミオに教わったものだ。

 

「お前まで、この世界にいるなんて思わなかったよ」

 

「そう?」

 

「そりゃそうだろ」

 

こうなった経緯を思い出す。

家がボロボロになり、心配してくれた枢姉ちゃんからの電話はとりあえず無視状態……あれから何度も電話がかかってきており、内容は俺を泊めるというものだと思う。

だがしかし俺はそれを分かった上で無視している。

というのもデビューしたばかりという大事な時期に、俺というイレギュラーが日常生活に入り込むのは避けたかったからである。

心配してくれている相手を無視ってのはどうかと思うが、押されたら折れてしまうからなぁ俺……。

そんな俺にフブキからの電話がやってきた。

 

『もしもし?』

 

『あ、もしもしハクくんですか?えっと、いきなりなんですが、このあと少し時間ありますか?紹介したい人と、家の件で話がありまして』

 

『すぐ?それならフブキと会った公園にいるけど』

 

『……野宿とか考えてませんよね?』

 

『……はは。何を言ってらっしゃるのやら』

 

『枢から話を聞いても?どうせ電話とかしてるでしょうし』

 

『……でもよ。快適だと思うぞ?あの頃は川の近くまで行かないと水は手に入らなかったしな。それに比べると水もすぐそこにあるし、何ならトイレもあるし、銭湯行けば体も洗える』

 

『すぐに行きます。動かないでください』

 

『食料だって財布があるから買えるぞ?』

 

『それで大丈夫ですねとか言えませんからね?すぐに山の頃の思考を捨ててください。あの頃よりマシとかそんな話はしてないですからね?』

 

怒られちゃった。

 

 

 

と、いった感じで話があり、フブキとミオが公園に現れたのだ。そこからの流れとしては軽い自己紹介をしようとしたらミオに抱きしめられ現在に至る。

 

「……ミオ?いくらミオがあのミオでも近くないですか?親友とはいえど、譲れない事ぐらいあるからね?」

 

「久々の再会なんだから少しぐらい大目に見てよ」

 

「気持ちはわかりますが、尻尾まで腕に絡めないでもいいと思うんですけど?」

 

「昔……前世でまだハクが小さかった頃のこと思い出すよ。この尻尾で体ごと巻いて運んでたりしてたなぁ。覚えてる?」

 

「持ち上げられた時は驚いた」

 

「え!?そんな事できたんですか!?」

 

「ふふん。母は強いって事かな?」

 

「「違うと思う」」

 

「じゃあそういう事もあるって事で、ね?」

 

「「……」」

 

自分でも思うが、魔法の言葉だなぁ。

でも実際、あの山にいたものは全てがおかしいから仕方ないか?なんか特別な領域だったりしたんだろうな。

 

「それで、部屋がすごいことになったんだって?」

 

「あー、まぁね。朝のニュースで知ってると思うけど巻き込まれて……人まで飛んできたのは驚いた」

 

大神ミオ。

一応今世では初対面だし普通なら敬語で話すべきとは思うのだが、それでも前世の面影がある雰囲気や、敬語を使おうとした瞬間の変な圧のせいもあり、普通に話してしまっている。

いいの?いいのか。

 

「え!?その人は大丈夫なんですか?」

 

「鬼だし大丈夫だったよ。ピンピンしてたし、一緒に朝飯にうどん食って別れた」

 

「何でこの子は変な友好関係結んでるのかなぁ?まずは部屋の片付けとか、各所に連絡とか色々あったでしょうに」

 

「すんません。腹減ってたし」

 

「なら仕方ないかな」

 

「……ミオ?ハクくんに甘くありません?」

 

「そう?気のせいじゃない?」

 

「絶対甘い」

 

「あー、ほら、お腹空いてるならお腹いっぱい食べるのは仕方ないでしょ?フブキだってそんな時あるよね」

 

「雑に無理矢理納得させようとしない」

 

「無理かぁ」

 

そういってやっと腕に巻いていた尻尾を解いてくれる。ふわふわの尻尾は冬服越しでも分かってしまうほどに心地よかったが、狼ではなくなり人になったミオにされるのは少し緊張していたからな。

やっと安心できる。

 

「それで、家なんだけどね」

 

話を聞いてみると、ミオには家の当てがあるらしい。俺の家に両親がいないことや、俺の事だし配信とかを気にして枢姉ちゃんの家や、フブキの家には行かないことを察してくれていたようだ。

そんなミオが提案してくれたのは……。

 

「知り合いに山に家を持ってる人がいて、最近行けてないらしいし、数日でも管理してくれるなら貸してくれるらしいんだよ。どう?」

 

「行く」

 

ミオへの好感度が上がった。

善は急げって訳ではないが、持つべきものは財布と着替えしかない俺にとって準備はすぐに終わってしまう。最低限の荷物だけ取りに戻り、フブキとミオに合流する。

 

「そ、それだけですか?」

 

「うん」

 

「あー、やっぱりこうなるかぁ」

 

「白上も、薄々そんな気してました……」

 

「一応電気も通ってるし、サバイバルする必要ないんだけど」

 

「流石に狩りをする気はないよ。でもほら、不便を楽しもうかと……ダメか?」

 

「いいよ」

 

「ミオぉ!?」

 

フブキが言う通り甘い。

何を言われようと山に籠る気満々の俺。

言いたいことあるけど楽しいならよし!なミオ。

この便利な世の中でわざわざすることじゃないよね?でもこいつなら仕方ない……いや、でも……なフブキ。

もうね。あれなのよ。

最近色々あるせいで山にこもってリフレッシュできるならしたいのよ。ね?分かってくれよ。

 

「……うぐぐ……!せ、せめてこれを持ってください」

 

「スマートウォッチ?」

 

「そうです。もし事故があればすぐに連絡がきますから」

 

「ミオの事に色々言ってるけど、フブキも相当過保護だからな?」

 

「わかってます。ほら、つける」

 

「あ、はい」

 

強制的につけられた。

でもこれで許してもらえるならありがたい。

二人はサバイバルとは言うが、俺にとってちょっとしたキャンプだからな?と言うか家もあって、電気もガスもあってとなるとキャンプですらなくない?

 

「心配性だなぁ」

 

と、つい声に出てしまう。

それを聞いた二人の雰囲気が変わってしまうのを察知してさすがに不味いか?と瞬間的に思った。

 

「多分着いてすぐに山に入るよね。小学生が玄関にランドセル投げ込んで外に遊びに行くみたいに」

 

「うん。初日は近くを探索する程度でしょうけど、いい場所を見つけたら一晩過ごしますね」

 

「だいたい二日ぐらいかな?段々そこが充実してきて家に戻らなくなって」

 

「ごめん俺が悪かった」

 

「よろしい」

 

「これでちょっとした監視になりますからね。ちゃんと文明的な生活をしてください」

 

よくわかってらっしゃるようで……。

こうして、これから一週間だけではあるが、山籠り生活が始まるのだった。

 

「スマホでスマートウォッチの誤魔化し方とか調べない!」

 

「足掻くねぇ」

 

「ちっ。うるさい狐と狼め」

 

「ハクくん?」

 

「あっはっは……ハク?」

 

「分かった分かったから。俺の負けですちゃんと文明的な生活をしまーす」




ハクくん。
山籠り生活が楽しみ

フブキング
コイツほっとくと下山しないのでは?

ミオしゃ
楽しそうだからいいか。いざとなったら無理矢理下山させる。

ハク父
流石にオーストラリアには来てくれなかったよ……






作者クウト
有馬記念当てたぞぉ!!!
今週は勝ちだぞぉ!!!
金杯行って新年を気分良く始めるぞぉ!!!
って、あれ?
なんか知らない間にめっちゃ感想来てるし、お気に入り増えてね?
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