これから投稿するものほぼ全部そうですが、必ずしも原作、背景ストーリーの展開に準拠しません。
捏造多めです。ご容赦下さい。
「お主には、生まれついての責務というものがある」
その言葉を最初に聞いたのは、いつの頃なんだろう。
ずっとずっと昔、もしかしたら生まれたばかりの時かも……まぁ、何でもいいか。
大事なのは、誰が、誰に対して言ったのか、ってところだけ。
この場合の前者は、我らが《
そして、後者は。
「ヘンザよ。お主はいずれ《
待て。お主、きちんと聞いておるのか?」
「んー?……聞いてるよ、聞いてる聞いてる」
「そ、れ、は……聞いておらん奴の返答じゃあ!」
「わーっ!?」
そう、怒鳴られてるオレが、その後者。
未来の《百族の長》、ヘンザだ。
ーーーーーー
「──って事があってさ。おじいちゃんもひどいよなー、ちょっと話が耳を通り抜けてたってだけなのに」
「それはそうだが、友よ……」
少し苦笑しながら、オレの《魂友》──最大の友であるワチャゴナが、愚痴に言葉を返す。
「それだけならまだしも、その後説教がイヤになって逃げ出したんだろう? 大長老だって、尚更カンカンになるに決まってるさ」
「それは、そうなんだけど」
「別に大長老さまは、やりたくてお前を叱ってるわけじゃない。それはお前が一番分かってる、違うか?」
「……ああ。分かってる」
分かってる。分かってるんだ。
ウェイヨウおじいちゃんは、義務感から言っているだけだって。
大人たちがオレに求めている数々の事は、オレが将来の族長に──《百族の長》になる為には、必要なものなんだって。
「はぁ……」
──お主には、生まれついての責務というものがある。
最近いつも、この言葉が頭に浮かぶ。
責務。責務かぁ。
「な、ヘンザ」
「ん、どうしたんだ?」
そこで初めて、オレはワチャゴナの顔を正面から見た。オレの無二の親友が、いつもと違って心配そうな顔をしている。
「あまり、背負い込み過ぎるなよ」
「エ、背負い込んでる? オレが?
いや、ないって。本当にオレが族長になるぞー! って気を張ってる奴なら、もっと真面目に──」
「重い物を背負って歩き続けて、しんどくなったら、ちょっとは休んでも良い」
ワチャゴナは、もう苦笑などしていなかった。オレを見つめる二つの眼は、真剣そのものだ。
「……」
「休むのさえ出来なくなって、ヤケを起こしたら……結局は何にもならないって事、忘れるなよ」
「……うん、そうだな」
「分かればいいさ。では、またな!」
──ありがとう。オレの魂からの友よ。
そんな素直な感謝さえ言えずに、オレはワチャゴナと別れた。
こんなの、普段のオレらしくない、よな。
ーーーーーー
オレは、本当は怖いのかもしれない。
もしかすると、族長になる事そのものが。
「──お主、その姿形でドラゴンとは。奇妙な事もあるものだな」
みんな、オレの前では言わない。
将来の族長たる事を期待されたオレが、まるでヒューマノイドみたいにちんちくりんで……それでも、この小さな胸の内に、ドラゴンの力を宿しているという事実。
生まれた時からずっとこうで、年月を経ても変わらなかった。そしてきっと、これからも変わらない。
みんな分かっているはずなのに。
みんな思っているはずなのに。
──恐れながらしかし、大長老よ。あのように小さな存在に、将来の長が務まるのでしょうか?
──そのような言葉を軽々しく口に出すな! これ以上、ヘンザを侮辱する事を言えば……
大長老は強面だけど優しい。よくオレの事を不真面目だって叱るし、それと同じくらい、庇ってくれてもいるんだよな。
たとえ、その本人がいない時でも。
でも、オレはそれを盗み聞いてしまったから。
それから、だんだん割り切れなくなってきたんだ。
(ああ──多分、そういう事なんだろうな)
みんな、きっとオレを望んでいない。
こんなオレは、望まれたように産まれてきたんじゃない。
なら。
ならば、望まれぬ族長など。
族長など──!
ーーーーーー
「その抱えた物、私にも分けてみてはどうだ?」
──え?
「い、いや、急にどうしたんだよ、火の国の王様」
「ドギラゴン、で構わないぞ」
「ええと、じゃあ、ドギラゴン……?」
いや、いやいやいや。
問題はそこじゃないよな。
今ここは、革命軍と合流するオレ達との会談の場であって、オレと王様──じゃなくて! ドギラゴンは、初対面のはずだ。
はずだ、よな?
「なんで急に、そんな事を」
分からない。火文明のドラゴンって、距離が近いのがフツーなのか?
(今、抱えた物、って……)
分からない。なんでオレの心を見透かしたような事を、目の前の彼は言ったのか。
オレは、それ以上言葉を捻り出せずに黙り込む。
だがドギラゴンの方は、返答をたやすく投げ返してきた。
「なぜ、か。うむ……何というべきか……お主が何かを抱えていそうだ、から?」
何の裏もない。「困っている人を助けるのは当然だろ?」みたいな、そんなノリ。
だからこそオレは反射的に、図星である事を隠そうとして。
「いや、べ、別に、そんな──」
「遠慮しないでいい。組織の長が重責を背負うのは、当たり前の事だからな。私やミラクルスターはそれを分かっているし、力になれる事も多いだろう」
それに、と彼は続ける。
「お主は──いや、もはや同志か。プチョヘンザは、まだ若いだろう?……恥ずかしい話だが、昔の私を思い出すんだ。
だから、その……私だってお前より少し歳を食った程度だが……助けられる事があるなら、言って欲しい」
そう言って、少し照れ臭げに笑いながら手を差し出す王様を──ドギラゴンを見て、オレは。
オレは。
「──ああ。そうさせてもらうぜ、ドギラゴン!」
きっとその時、何かの感情が芽生えた。
それを無意識に押し潰しながら、大きくて傷だらけの手を取ったのだ。
ーーーーーー
「おっと、奇遇だな。そちらの調子はどうだ?」
初めてだった訳じゃ、決してない。
ワチャゴナや、大長老や、ダママたち。あいつらからの信頼や友愛があったからこそ、オレは族長でいようって思えたんだ。
だから彼だって、「同じ」なのだと──オレの親友の一人なのだと、最初こそ思っていた。
「革命軍としては、お前も初陣か──怖いか? 大丈夫だ。私の仲間と、お前自身の仲間を信じろ」
でも、あの日の彼の言葉が、オレのどこかに知らない感情を産みつけたのも、また事実で。
「その傷は──どうやらKのイニシャルズは手強かったようだな……何をぼさっとしているんだ、ミラクルスターに治してもらうぞ。
放っておいても治る? 嘘を言うな、行こう!」
そうやって、初めて会った日と変わらない優しさで、手を引かれる度に。
彼の顔が眩しく見えて、直視するのが恥ずかしくて。
「禁断を倒す為には、私たちが同時に力を発揮しなければならない、という事か。
──共に、やってくれるか?」
「──出来るに、決まってるだろ。オレは《百族の長》で、お前のサイコーの盟友なんだから!」
知らない。
こんなのは初めてなんだ。だから知らないんだ。
彼と隣にいると、全身が熱くなる事なんて。
なのに彼の近くに、もっとずっといたいと思う事なんて。
彼が他の誰かと話しているのを見ると、なんだかモヤモヤする事なんて。
(これが、信頼でも友愛でもないんだったら)
一体何だというのだろう。
教えてくれよ、なあ、ドギラゴン。
「オレにとってドギラゴンは、と……とても大切な存在だと、思う。
お前にとって、その……オレは何だ?」
「む? そんなのは決まっている。お前は私の──」
──無二の「友」だ!
「──っあ、う、ん。そう、だよな」
やっぱり、そうだ。
ドギラゴンならそう言うと思ったよ。
分かり切っていた。
でも、想定する事と経験する事は、全く別物だから。
「そ、それじゃあな、ドギラゴン!」
──嫌だ。ここで別れるなんて。
「また……明日」
──今日しかない。友という言葉を否定出来るのは。
──明日になれば、全てが元に戻ってしまうというのに。
「ああ、また会おう、友よ」
彼が「友」という言葉を使う、その度に、胸に何かがつきりと刺さったような気がして。その正体を分かりたくなくて。
オレは半ば逃げるように、その場を後にした。
(オレにとってのドギラゴンは、本当は──)
ーーーーーー
夜を越えれば朝が来る。誰にとっても平等に。
一夜を悶々として過ごしたオレの頭は、それでもなんとか、諦めというゴールへ辿り着こうとしていた。
(オレにとっての友達は彼。彼にとっての友達はオレ。それで良い、良いはずなんだ)
そうだ、これは友情。信頼であり、友愛。
何の事はない。オレとドギラゴンの関係を示すのには、ただ「友」という一字だけで十分だ。
だからこれは──オレの胸の内にある何かは、◾️ではないんだ、決して。
「よし、っと」
自分の奥底に蓋をする。見なかった事にする。
「──もしかしたら、昨日のオレの様子が変だったから、ドギラゴンは心配してるかもしれないなー」
取ってつけたようなヒトリゴト。
「オレは何ともないって、見せに行かないと」
嘘つき。本当はまだ未練を捨てきれていないだけなのに。
でも、また会って、別れるという過程を踏みさえすれば、この感情を断ち切る事が出来るはずだから。
「ダママ、ちょっとハムカツ団のところに行ってくるから、後よろしく!」
そう呼びかけると、オレの小さな仲間が返事をするのが聞こえた。
行こう。普段のオレらしくいればいい。みんなが知っている《百族の長》として、彼と接していれば、それで解決する。
そのはず、だったんだけどな。
「おーいっ! 昨日ぶりだな、ドギラゴ……ン……?」
最初から上手く行くはずがなかったんだ。
いつものように、普段通りに、なんてさ。
彼と出会ってしまってから、自分は──自分の中をつくってるココロは、決定的に変化してしまったというのに。
「おう、プチョヘンザか! 最近は良く会いに来るじゃないか」
「ダママ団のプチョヘンザ様、ですね。お会いできて光栄です」
ドギラゴン。
そして隣にいる、精霊龍。
良く知った男と、知らない女。
「──ドギラゴン、その、その隣の女──」
「ん? ああ、お前はまだ会った事がなかったな。彼女は……」
「ドレミ団のラフルルです。ドギラゴン様には、色々と良くしていただいており……偶然お会いしましたので、お話をしていたのです♪」
「──は。そう、なんだ」
オレは知らない。聞いていない。
そんな奴と仲良しになっていたなんて。
懸命に閉じていたつもりだった蓋が、あっけなく外れた。
抑えていた感情が、鎌首をもたげる。
「……っ、おいおい、ドギラゴン! い、いつの間にこんな可愛い子をたらし込んでたなんてな!」
「な、プチョヘンザ!? たらし込むなどと、人聞きの悪い……!」
「図星か? お前って奴は〜!」
オレは上手く振る舞えているだろうか。いつもの、いつものプチョヘンザを。
声が震えてしまいそうだ。でも、隠さないと。
「け、喧嘩は良くありませんよ、お二人とも。むしろ感謝しなければならないのは、私の方なのですから」
「そ……そうなのか、ドギラゴン」
「まあ、ある意味ではそうかも知れないな」
何が──何が、「まあ」だ。
女っ気のないオレでも分かるんだよ。そのラフルルとかいう龍がドギラゴンに向ける眼差しが、熱を帯びている事くらいは。
それは愛の熱じゃなくて、憧れの熱なのかもしれないけどさ。そんなのはどうだっていいんだ。
(どうやって)
どうやって、たらし込んだんだよ。
……いや、聞かなくても分かる事だ。ずっと前から知っていて、今日まで知らないふりをしていただけ。
団員に接するのも、オレに接するのも、ラフルルに接するのも、全部同じようにしているんだろうな。
そうやって、何人も勘違いさせてるのか?
オレ、みたいに。
「
それが今や、《音卿の精霊龍》とは……立派な名をもらったじゃないか!」
「〜〜! ドギラゴン様、もう幼子ではないのですから、頭を撫でられるのは恥ずかしいです!」
もう抑えられない。
心の奥底、深く深く。巣食った感情が、オレの中で蠢いている。
ーーーーーー
「──なあ、ドギラゴン」
「む、どうかしたか?」
「話が盛り上がってるところ、悪いんだが……あー、その、ちょっと話があってさ──付き合ってくれないか?」
「そうなのか? もちろん構わないが……」
「私も構いませんよ、ドギラゴン様、プチョヘンザ様。またいつか、お会いしましょう♪」
そう言って、ラフルルは飛び去っていった。
これで、二人っきり。
──これじゃ、まるで、邪魔者を追い出したみたいじゃないか。
オレの中の冷静な部分が、そんな警告を発していたような気がする。けれど、すぐに忘れてしまった。
(もう、良い。これで良いんだ)
「……さて、どうかしたのか、プチョヘンザ? もしかして、あまり人に聞かれたくないような相談か? 何せ、昨日のお前は少し様子が変だったからな……」
人に聞かれたくない相談か。ある意味ではそうかも知れないな。
そうそう誰にも見つからない所まで、彼を連れて行く。姿が見えないのなら、ここで色々な事をしたとして、革命軍の喧騒によって向こうに届く事はないだろうから。
「いや、そこまでの大事じゃないんだけど、さ」
──引き返すなら今だ。
「ほんの少しの、お願いっていうか……」
ぐしゃり、と。
そんな最後の警告を潰して。
「……お願い? 良いぞ、お前のお願いだったら何でも聞いてやるさ」
「──本当か? 何でも、か?
……は、はは。さすがはハムカツ団の団長、懐が広いんだな、ドギラゴン!
じゃあ、さっそくお願いなんだが──」
──これからは、やめにしてくれないか。オレ以外の女と仲良くするのを、さ。
この後ナニが起きたんですかね(すっとぼけ)
・ドギラゴン
某掲示板で定期的によくない感情を向けられているイケドラ。最近《蒼龍の大地》金トレジャーで実質的に擬人化した。
これはデュエプレの彼のボイスに関わる余談なんですが、侵略の日、革命、革命F編での戦いで国民や仲間をたくさん失った事を経た上での「もう負けない、皆と一緒なら」(デュエプレ版ドギラゴールデンのセリフ集にある。アニメの勝太君のセリフでもある)だったとしたら滅茶苦茶……その、下品なんですが……下品なのでやめときますね……
・プチョヘンザ
金トレの見た目が作者にぶっ刺さった。こういうカラッとしてそうな子が湿度高いと良いよね……良くない?
・ラフルルラブ
デュエマ擬人化界の王者と言っても過言ではないのではないか?