デュエマ妄想短編集   作:H.M.S.Ulysses

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 デュエル描写は無いんだ……だから、すまない……
 
 


ねーちゃんザーディクリカって言うのか!

 

 

 

 

 

 このごろ学校にはやるもの。

 ようち、ゴートー、そしてデュエマ。

 

 ──これで、ダイレクトアタックだ!

 

 ──なんの、ボルシャックドギ……うぉおいメンデルスゾーン!?

 

 こんな感じで、オレの小学校では“デュエマ”ってのがはやってるらしい。

 シールド五枚、手ふだ五枚。

 シールドをぜんぶこわして、ダイレクトアタックしたら勝ち。実はシールドをわらなくても、なんやかんやで勝ち。

 

 とってもシンプル、ゆえに奥ぶかい──というのは、オレの友だちの言葉だ。

 

「だからよ、〇〇もさ……デュエマやんね?」

 

 その友だちは、そういってオレをさそってくる。友人にもシュミを分けあう、いいヤツだよな。

 でも……

 

「やだ」

 

「ええ〜!? なんでだよ、つれないヤツだなぁ」

 

「だって、オレは……」

 

「オレは……?」

 

(──やってみたい、ぶっちゃけ。

 でももう、みんなやってて……オレはそのわの中に、後から入るわけで……)

 

 ……うまくやれるかな。

 ……うまくやれるわけないよね。

 ……やっぱりやめよう。

 

「……デュエマに、キョーミないもんね」

 

「ウッソだろ!? こんなにおもしろいのに〜」

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

 学校おわり、オレはすぐ帰ることにした。

 友だちは、ほかのヤツとデュエマするから、残るんだってさ。

 

(はあ、またやっちゃった……)

 

 ほんとのことを言えば、それでいいのに。

 オレだって、デュエマやってみたいのに。

 トレンドにおくれたのをみとめちゃうのが、なんだか恥ずかしくて、ミエをはっちゃうんだ。

 

 分かってる。

 オレはずっとこんなだから、友だちがあいつくらいしかいないんだよね。

 

(それも、いつか……)

 

 アイソつかされて、ひとりぼっちになっちゃうかも。

 

(いや……明日あいつに会って、デッキをかりよう。あとからキョーミわいたことにして、さ)

 

 うん。

 明日、明日やろう。

 明日からでもおそくない、たぶん。

 

 きっとはたされない目標をたてて、オレはそれで満足することにして。

 さあ、はやく帰ろう。

 

 よし、家が見えてき……き……た……?

 

 

 

「……ッ……?…………!……?…………」

 

 

 

 ……エ。

 なんだ、アレ。

 金色のきものを着た、変なねーちゃんが、オレの家の前でうずくまって。

 なんか、こう……うごうごしてる!

 

 これ、もしかして……ヤバい?

 

「そ、そこのねーちゃん、ダイジョーブか!? どどど、どーしたんだよ!?」

 

「……おまエ、ハ……」

 

「オレ!? えっと、えっと……」

 

 オレの名前は〇〇……いやまてよ、もしかしてこのねーちゃん、ウチュウ人かもしれないよね。

 

「……にんげん、かな?」

 

「……ニンゲン?」

 

「と、とにかく、なんかヤバいんだろ!? そこはオレの家だから……」

 

 知らない人って家にあげていいんだっけ?

 いや、言ってるばあいじゃない。

 

「とりあえず、入って、入って!」

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

「はあ……はあ……」

 

 どうやら、金色の服のねーちゃん、立てなくなってたみたい。

 オレの助けなしで立とうとして、生まれたてのシカみたいにたおれこんじゃったから、引きずるみたいに家にはこぶことにしたんだ。

 ……大人をはこぶのって、タイヘンなんだね。

 

 オレがんばった。ほめてよ!

 ……なんて言っても、だれもいない。家の中には、オレと──

 

「……」

 

 さっきからだまってへたりこんでる、金色のねーちゃんだけなんだもん。

 

「……おーい、おーい」

 

「……」

 

「ねーねー、なーなー」

 

「……」

 

「ねーってば!」

 

「!……?」

 

 そこではじめて、ねーちゃんはオレの方に顔をむけた。

 

「やいやい、オレをだれだとこころえる。ねーちゃんのこと、助けてあげたんだぞ! あのままだったらねーちゃん、人んちでうずくまってるフシンシャだぞ、フシンシャ!」

 

「…………」

 

「なんとかいえよー!」

 

 その気持ちがつうじたのだろうか。ようやく、ねーちゃんは口をひらいた。

 

「……感謝する、ニンゲン」

 

「ふ、ふーん、ありがとうがいえてえらいぞ!」

 

 オレってばチョロいからてれちゃうなー。

 

 まあ、そんなことはいいとして。

 いろいろ聞きたいことがあります。

 

「ねーちゃん、さ。名前、なんて言うんだ?」

 

「……名前?」

 

「うん、名前。オレは〇〇って言うんだけど、ねーちゃんはだれ?」

 

 そういうと、ねーちゃん、また考えこみだした。

 そこ考えるひつようあるかな……?

 

「我……いや、私は……ザーディア、サイクリカ……私、私は……」

 

 ちょちょちょ、いっぱい名前でてきちゃったよ。まるで、ほんとの名前を思いだせないみたいに……もしかして、記憶ソーシツ!?

 

「私、は……ザーディクリカ。ザーディクリカと、呼んで」

 

 ぜんぜんそんなことなかった。ちゃんと名前おぼえてたじゃん。

 

「へー、ねーちゃんザーディクリカっていうのか! いい名前〜」

 

「良い……名前……?」

 

 あれ、ねーちゃん──いや、ザーディクリカがピキピキしだしちゃった。

 怒らせるようなこと言っちゃったのかな。

 

(ていうか、いま思ったんだけど……)

 

 ねーちゃん、変どころか、めちゃくちゃ変。

 

 まず、手がすごい赤い。さわったらやけどしそうなくらい。

 それに、服のもようもすごい。まるでもう一本、うでがあるみたいだ。

 そして、なによりなにより……

 

「ねーちゃん」

 

「……どうかしたの、ニンゲン」

 

「なんか、もざいく? が見えるんだけど、なにそ」

 

「聞かないで」

 

「え?」

 

「聞かないで、と言った」

 

 わわ、ふれちゃいけない話だったのか。

 

「ご、ごめん……」

 

「分かれば、良い」

 

 やさしいぞこのねーちゃん!

 

 

 

 ──でも、このときのオレってまだ、自分におきたことの大きさをナメてたんだ。

 

 

 

「──ところで、だけど。

 助けてくれた貴方に、一つのお願いがある」

 

 そう言ったしゅんかん。

 目の前のねーちゃんのけはいが、かわった気がした。

 

「おねがい……?」

 

 ちょっとこわくなって、オレはおそるおそる聞いてみる。

 

「私を、ここに住まわせて欲しいの」

 

「──え!? 無理だよそんなの! オレ、どーみてもひとりぐらしじゃないじゃん! 親だっているんだぞー!」

 

「親……?」

 

「うん!」

 

「……なら問題ない。親とやらに分からなければ良いのでしょう?」

 

「は……ど、どうやって……?」

 

 

 

 ──まさか、ザーディクリカが。

 

 

 

「私がカードになっていれば、問題はない」

 

「カー……ド……?」

 

「──私は、クリーチャーだから」

 

「……クリーチャーって、デュエマ……の……」

 

 

 

 ──チョージューだった、なんてね。

 

 

 

「………………ええええ!!?」

 

「……」

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

「〇〇ー、ただいまー」

 

「あっ……お、おかえり、お母さん!」

 

「あら、どうしたの? そんなに慌てて」

 

「いや、その……虫、虫だよ! 虫がでたんだ! それで……」

 

「あはは、〇〇は虫が苦手だものねえ」

 

「で、でも、窓からおいだしたから、ダイジョーブダイジョーブ!」

 

「そうなの? 度胸ついたのね」

 

「うん、そ……そゆこと」

 

 

 

「──誰が虫って?」

 

「や、これは、ただのつくり話なんだから──」

 

「〇〇? どうかしたのー?」

 

「な、なんでもない!」

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

 ……わが家に変なねーちゃんがころがりこんできてから、けっこうな時間がたつ。

 いっしょにすごす中で、いくつかのことが分かったよ。

 

 まず、ザーディクリカはふつうのクリーチャーじゃない。

 水晶の龍と、炎を司る精霊の、混成獣(オレのノートにザーディクリカが書いてくれたよ!)……どゆこと? オレはデュエマやってないから、さっぱり。

 なんのこっちゃ、って感じ。ザーディクリカはザーディクリカじゃ、いけないのだろうか。

 そう聞いてみたら、ろこつに顔をしかめられた。

 

 もう一つ。

 ザーディクリカは、まほう使いらしいのだ!

 なんでも、呪文をあやつる力がつよいんだって。

 

「じゃあ、呪文やってみてよ!」

 

「……構わないけど」

 

「やったー!

 …………えっとなにそれ、ユーレー?」

 

「《ゴースト・タッチ》。簡単に言うと、貴方の記憶が少し飛ぶ」

 

「──やっぱナシ! 今のナシ! まってまって、もしかして怒って──あふっ」

 

「力を簡単に貸すと、思わない方が良い」

 

「……ひゃい」

 

 やっぱりこわいよ、このねーちゃん。

 

 

 

 でも、ザーディクリカといっしょにいるの、わるいことばかりじゃない。

 

「あれ……オレのとけいが……どこやったっけ?」

 

「《クリスタル・メモリー》。ベッドの下にある」

 

「エ、見つけてくれたの!?」

 

「……別に。合理的なやり方をとっただけ」

 

 ザーディクリカは、けっこうやさしいし。

 

 

 

「……立てない」

 

「また? しかたないなー、手をかし」

 

「要らない」

 

「ういてるー!?」

 

「こうすれば、足が立たなくても──」

 

「まってまって、上見て上、頭ぶつかる!」

 

「──痛っ」

 

 たまにおもしろい「何笑ってるの」ごめんて。

 

 

 

「今日はさー……それでさ……こんなのがあったんだ! それから……」

 

「……そう」

 

 お父さんもお母さんもいそがしくて家にいないときが多いから、話しあいてになってくれるだけでうれしいんだ。

 

 

 

「《ロスト・Re:ソウル》……彼の話し相手になってあげなさい」

 

「お呼びに預かり……っと、君はザーディクリカの新しいマスターみたいだね。じゃあ私にとっては、マスターのマスターなのかな?」

 

 あと、たまにちがう話しあいてを呼びだしてくれるのがべんり……おほんおほん! 今のはザーディクリカにはナイショだよ。ころされちゃう。

 さすがに、小学生みたいな子がでてきたときはビビったけどね。クリーチャーってなんでもアリなんだ、きっと。

 

「……マスター? なーにそれ?」

 

「……私と彼は、そういう関係ではない」

 

「その割には、ずいぶん心を許してるようだけど?」

 

「……」

 

「私の前じゃ何も隠せない事、分かってるくせに……ふふ、ザーディクリカに懐かれてるんだね、坊やは」

 

「……??」

 

「だから、そうではないと……」

 

 ……でも、ザーディクリカと呼びだされた人は、よく分からない話をしてるときがある。なんだかカヤの外におかれた気がして、もやもやしちゃうぜ。

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

「今日から、なんと……オレは夏休み! いや、よくよくかんがえたらザーディクリカは知らな」

 

「この世界での長期休暇でしょう?」

 

「なんで知ってるのさ……と、とにかく! お父さんはシュッチョーで、お母さんの帰りはおそくなるし……

 夏休みだからだからいっぱい、ザーディクリカを遊びにつきあわせちゃうもんね!」

 

「そう。私は構わない、貴方が望むなら」

 

「……あれ、いつもならすぐことわりそうなのに」

 

「私の事を何だと思っているの?……一応、私は貴方に恩がある。それとも、断って欲しい?」

 

「いや、そーじゃないけど……」

 

 

 

 さいきん、なんだかおかしい。

 ザーディクリカのたいどが、なんか……

 

(やわらかくない?)

 

 前は──入ってきて一か月とかのときは──もっとシンラツだったはず。

 どれくらいかっていうと、ことあるごとに怒って、オレのきおくを飛ばそうとしてくるくらい(まあ八割はオレのせいなんだけど、てへ)。

 

 でも、さいきんは──オレのこと、やさしくあつかうようになってきたような。

 

(わるいことじゃないし、むしろありがたいんだけどさ……)

 

 ザーディクリカらしくない、気がする。

 

 ほんとは、「なにかあったの? 変なものでも食べた?」とか、ちゃんと聞くべきなのかもしれない。でも、なんだかエンリョしちゃって、なかなか言いだせないんだ。

 

 だから。

 

「……よ、よーし、今日はここに遊びにいこう、そうしよう!」

 

 バカのフリして、ザーディクリカの変化にきづかないフリをして。

 なにもおきないことを──今のくらしが、ずっとなにも変わらないことを、いのろう。

 きっとダイジョーブ。

 

 ……そうだ! せっかくだし──

 

「ザーディクリカも、カードの外にでてみない?」

 

「……家の外で?」

 

 もちろん、そのまんまのカッコじゃなくて。

 

「呪文で、それっぽい服を着たらいいんだよ!

 どう? かんぺき〜なプランでs」

 

「《ビックリ・イリュージョン》……これで良い?」

 

 さいごまで言わせてよ……というのはともかく。

 目の前には、いかにも夏っぽい服を着たザーディクリカがいた。やるじゃん。

 

 

 

「……これで私の勝利」

 

「じ、十れんぱい……このアーケードゲームで負けたことないのに……」

 

「全力でかかってこい、と言ったのは誰?」

 

「オレじゃん……とってもコーカイ……」

 

 

 

「これは?」

 

「アイスっていうやつ。オレのお気にいりなんだぞー?」

 

「……美味しい」

 

「マジ!? やったっ」

 

 

 

「つ、つかれた……」

 

「貴方の年齢で、ここまでの長時間遊び続けたのだから、妥当だと思うけど」

 

「うっ、セーロンがいたいぜ……」

 

「背負おうか?」

 

「──ううん、いいよ」

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

 きたく!

 いやはや、つかれた。

 

 ……うん。

 

(やっぱりだ)

 

 ザーディクリカは、まちがいなく……たいどが変わってる。

 子どものドーサツ力をナメるな! なにか気をつかってるっぽいのくらい、お見とおしなのです。

 

 でも、なんで?

 ザーディクリカはどうして、そんなことを?

 今までのままでだって、オレはなにも気にしなかったのに。

 

(ふしぎ……みすてりあす……)

 

 なぞは、といてみたい。

 けど、といてはダメなようにも、感じる。

 ふみこんじゃえば、いろいろなことが変わって──こわれてしまいそうで。

 

(どうしよう……聞くべきかな、聞くべきでないかな……ザーディクリカは、なんていうかな……)

 

 そんなふうに考えこんでたから、オレはだいじなことを頭からぬかしちゃったんだ。

 

 ザーディクリカがさっき、もとにもどるとかなんとか言って、オレのへやに入っていったことに。

 

 そして、それをすっかりわすれて、オレはへやのドアを開けちゃって。

 

 

 

「よいしょ──」

 

 ────あ。

 

 

 

「────っ!?」

 

 ──ザーディクリカの、せなか。なにも、着ていない、せなか。

 それをつつむように、かくすように広がってる……服の上からは見えなかった、もざいく、もざいく、もざいく──。

 

 きっと、オレには見せたくなかっただろうもの。

 

 ……やっちゃった。

 人のハダカを見るのは、とてもダメなことなのに。

 ザーディクリカ、めちゃくちゃ怒るよね。

 

 

 

「──ごめんなさいっ!」

 

「──ロスト・ソウル!」

 

 ドアをしめるのもわすれて、あわててにげようとする。

 やばい、怒ったザーディクリカは、前みたいにきおく飛ばしてくるよ、ぜったい!

 

「……仰せのままに、マスター」

 

 わるいのはオレだけど! きおく飛ばすのはかんべんして!

 

「ふふ、逃げても無駄だよ、坊や?」

 

 あっというまに、おいつめられる。

 にげることはできない。

 オレはうずくまって、おびえながら目の前のシニガミさん(かってに名前つけてごめん)を見つめるしかないのだ。

 

(ど、どうか……ごようしゃを……)

 

 シニガミさんが、ほんとのシニガミに見えたような気がして──オレはふかいねむりに落ちていった。

 あれ、だれかに目をとじられたような……

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

「……ロスト・ソウル。記憶を奪うのが、貴方の役目のはずだけど」

 

 記憶を刈り取ろうともせず、彼の意識を閉じてやった彼女に対して、私は釘を刺した。

 だが、彼女は何も悪いと思っていないかのように言葉を返してくる。

 

「幼子の頭は、繊細で壊れやすい。記憶だけを刈るのは結構危険なの」

 

「マスターの命令を無視する気?」

 

「本当にやって欲しいのなら、聞くけどね」

 

 ……いつもそうだ。

 ロスト・ソウルは私の何もかもを見通していて、だから私が反撃出来ないところを突いてくる。

 

「見られたのが恥ずかしい、なんて……ふふっ、そもそも、クリーチャーが人の形をとって人の家にいるのが、ミステリーの領域なのに。今更彼が驚くかな?」

 

「……実際、驚いていた」

 

「貴女の裸を見そうになった事に対して、だよ」

 

「……私はツギハギ。醜い“本当”を、彼に見せるのは」

 

「嫌?」

 

 頷く。

 それこそ、貴女が彼を大切に想っている証左だね、と彼女は笑った。

 

「貴女は知らないだろうけど、前に、坊やが尋ねてきた事があるんだ」

 

 ──ザーディクリカはどうして、じぶんのことをマゼモノとか、ホンモノじゃないとか言うの?

 ザーディクリカは、ザーディクリカじゃん。

 そりゃたしかに、頭はひんやりしてて手はあったかいのは、おかしいかもしれないけど……世界じゅうをさがせば、そんな人だっているでしょ?

 

 ──私に聞くのかい?

 

 ──ザーディクリカにいったら、オレどうなっちゃうと思う?

 

 ──それもそうか。

 

「だってさ。結局、私だって貴女の事を完全に分かってるわけじゃないし、答えられなかったんだけどね。

 ……分かった? これが貴方の変な杞憂に対する、単純かつ完璧な回答だよ」

 

 私は、黙る。

 何も言えないのではない。

 何も言いたくない。

 

 本当は、分かっていた──分かり切っていたのだ。

 

 結局のところ、ザーディアもサイクリカも知らぬ彼にとっての私は“ザーディクリカ”であり、それ以上でも以下でもないという事を。

 私自身の醜さを隠そうと壁を作る行為など、最初から意味がないという事を。

 

「まあ、貴女の気持ちも分かるけど……とにかく、明日には仲直りしてね。坊やは笑ってるのが一番可愛いんだし、悲しそうな顔をしてるのは見たくない」

 

「……そうね」

 

「私の言う事を素直に聞いた……!?」

 

「貴女然り、彼然り、私の事を何だと思ってるの?」

 

 そうだ。

 明日話せば良い。私の秘密、醜悪なところ全て。

 彼は、きっと……受け入れてくれるか、三日で忘れるか、どちらかなのだろうし。

 

 そうしたら──

 

 

 

(お願い、してみようか)

 

 彼を、私のマスターに、と。

 それによって、今までの恩を返す、と。

 

 そうすれば、私達の間にあった全てのしがらみを、取り払う事が出来るのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

「……ザーディクリカ?」

 

「…………」

 

 はんのうが、ない。

 やっぱり、怒ってるのかな。

 

 どういうわけか、オレのきおくはちゃんと残ってた。

 お昼にようやく目がさめて、それに気づいたオレはすぐにあやまりにいって、今にいたるってワケ。

 

 ……でも、わるいのはオレだ。

 前からザーディクリカは、自分のすがたをきらってるみたいだったし。

 よりにもよって、それを見ちゃったんだもんなあ。

 

「……ごめんね」

 

「んー? どーしたー?」

 

「うわびっくりした!!」

 

 いきなりカードからでてきたのは、《T・T・T》ちゃん。なぜかランドセルをしょった、オレよりちっちゃい子だ。

 

「もしかして、ザーディクリカになんかあるのー?」

 

「あると言えばあるし、ないと言えばない……」

 

「ザーディクリカは今、ちょっと心の準備してるから、待っててねー」

 

「なんのこと!?」

 

 話がかみあってない?

 

「ザーディクリカって、けっこー悩んでばっかだからさー。今日の夜くらいには、覚悟を決めるんじゃないかなー?」

 

「つまり、夜は、でてきてくれるってこと?」

 

「たぶんー」

 

「そ……そっか」

 

 よし、じゃあ……

 

「──オレ、いまからアイス買いにいくよ」

 

「ザーディクリカのためにー?」

 

「うん」

 

 おわびのしな、なんて、大人がいうヤツ。

 それで、ザーディクリカとなかなおりしよう。

 きのう食べた、あのアイス。

 ゲンテーのやつだから、またあそこにいかないといけない。ちょっと遠いけど──やらなくちゃ。

 

 だって、そうしたら……

 

(オレのこと、ゆるしてくれるかもしれない)

 

「じゃ、いってくる!」

 

「行ってらー。暗くなる前には帰ってくるんだぞー」

 

「もっちろん!」

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

「ふぅ……あ、あぶなかった〜……」

 

 ついたときにはもう一個しか残ってなかったから、ほんとにギリギリ。

 つまり、オレのぶんはない……ぶっちゃけ、食、食べたい……

 

(いや、だめ、だめ!)

 

 これはザーディクリカのためのものなんだもん。

 

(……はやく帰らなきゃ。オレのよくぼうが勝ってしまうー!)

 

 

 

 そう思って、ちょっとはやく歩きだした、そのしゅんかんに。

 

 

 

「よーし……はやく、はやく、はや」

 

「おい、ガキ」

 

 がばちょ、と。

 でっかい手で、オレのちっちゃい口が塞がれて。

 

(エ。なに、なに)

 

「騒ぐな、喚くな、動くな、暴れんな。こっちに来い」

 

 つごうよく近くにとめられていた、黒い車にほうりこまれて。

 

「おじさん、だれ」

 

「《スローリー・チェーン》」

 

「?……ん、んっ!」

 

「動くなっつったろ。おい、出せ」

 

 

 

 あっというまに、うごけなくなった。

 

 ……これは。

 オレ、ユーカイされた?

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

「…………!?」

 

「それで、いい加減決心はつい──」

 

「彼の、気配が」

 

「え、ザーディクリカ? どうしたの?」

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

「──ぷ、はっ!」

 

 つれてこられた先は、なんだかぼろっちいへやの中──いやこれは、ドラマとかで見る、“はいビル”ってやつなのか?

 

 オレをさらった、ハゲのおじさんが、口のクサリだけを外してくれたらしい。

 これは、かいほうしてくれるってこと──

 

「時間があんまりないんでな、色々答えてもらおうか」

 

 なわけないですよねー。

 

「な、にを……聞くの……? そもそも、おじさんは」

 

「誰? なんて言うなよ。教える気は無え。

 ──《龍風混成 ザーディクリカ》。この名前、聞き覚えあるよな?」

 

 ──は?

 なんで、ザーディクリカの名前を?

 

「その反応、知ってるな」

 

「りゅーふーこんせー? そんなの、知らな」

 

「知ってるだろ!?」

 

「──ぁぐっ!」

 

 いた、いたい。

 イタイ、イタイ。

 なにしやがった、このやろ──オレを、なぐったのか? オレの、おなかを!

 

 イタイ、いたい、コワイ、こわい!

 どうして、なんで、オレが。

 このやろう、ザーディクリカのことを、なんで知ってるんだ。

 

「お前は、ザーディクリカの名を知ってる。そして、居場所は家か? どこだ? 知ってるんじゃないのか、ええ!?」

 

「そんな、こと。オレに聞いて、どうするつもり……?」

 

「聞かれた事に答えろッ、このガキが!」

 

「ゔっ……ゔあ……」

 

 まただ。

 このオレを、一回ならず二回も。

 

「おい、あんまり傷物にすんなよ? もしかしたら使い道があるかもしれないって、リーダー言ってたじゃねえか」

 

「うっせ、だから腹にしてるんだろうが。

 ……でも、家って口にしたら露骨に反応したな、コイツ。やっぱり家に隠してんので間違いないぞ、リーダーに伝えてやれ」

 

「となると、プランはAのままか」

 

 ……まずい。このままじゃ、とてもよくないことに、なる。

 

「おい、ガキ」

 

「……ん、っ」

 

「お前に大事な大事な仕事がある。できなきゃ殺す。やらなきゃ殺す。分かったか? 単純だろ?」

 

「……なにを、しろって?」

 

 

 

「家に戻って、ザーディクリカのカードを持って、また外に出てこい──俺達に引き渡すんだ。

 適当な理由をつけてでも、奴を外に引きずり出せ。そうすれば、俺達はお前の家を燃やす苦労をしなくて済むし、お前もお前の親も死ななくて済むぞ?」

 

 ……な、んだと。

 

「ザーディクリカを、ひきわた、す……? 家を、もやす、って……?」

 

「ハッ、周りは気にも止めねえだろうさ。呪文ってのは便利だからなぁ」

 

 ……オレを、お母さんを、お父さんを、ころすだと。

 そんな、ハッタリみたいな。

 

「信じてねえみたいだな。どう思おうと勝手だが、お前がやらなければ、親は死んじまうぜ……お前のせいで、お前のせいで!」

 

 ……こいつら、ほんきだ。

 気づけば、オレは声をしぼりだしていた。

 

「や、めて……」

 

 でも、げんじつはそう、つごうよくない。

 

「じゃあ、やれ。

 出来るよなあ? 家族の命と、たかがクリーチャーの身柄。どっちが大事か、お前みたいなそこそこの肝っ玉なら分かるだろ」

 

 ……どっちも、だいじにきまってる。

 

 お母さんも。

 お父さんも。

 ……ザーディクリカも!

 

 だけど。

 

(どっちかが、きえちゃう。オレの、せんたくで)

 

 もうオレは、つかまってしまったから。三つめのせんたくなんてない。

 

 じゃあ。じゃあ、どうしたらいいんだよ。

 

 

 

「……お、い……」

 

「なんだ、決心ついたか?」

 

「ザーディクリカは、ザーディクリカは……つかまえる、だけなのか?」

 

 ころすんじゃ、ないんだよな?

 ザーディクリカをわたせば……お父さんと、お母さんは、ころされないんだよな?

 

「あ?……ああ、そうだとも」

 

「──じ、じ……」

 

(……やめろ。やめろ。いうな!)

 

「じゃあ、じゃあ……」

 

(やめろ!)

 

 

 

 ……ごめん、ザーディクリカ。

 

「ぜったい、ぜったい、ザーディクリカのいのちをとらないなら……」

 

 ……オレ、サイテーだ。

 

「そう、やくそくするなら……」

 

 ……でも、こわいんだよ。

 ころされたくない。お母さんとお父さんがしぬのも、見たくないんだ。

 

 ねえ。

 

 ザーディクリカ。

 

「オレは、ザーディクリカ、を」

 

 そして、オレは、その先を──

 

 

 

 

 

「──そこまで」

 

 

 

 

 

 ──言うことは、なかった。

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

「な──」

 

「おい──」

 

「────奇襲だ──ぞっ!?」

 

 遅い。

 彼を傷つける、この人間どもが。

 

「っ、あ、ザーディ、クリカ……?」

 

 遅い。

 もっと早く見つけられなかった、私自身が。

 

「……ごめんなさい。これは私の責任」

 

 《スローリー・チェーン》を引き剥がし、彼を抱え上げる。

 

 後悔先に立たずという言葉があるが。

 今の私を、最も的確に表現しているだろう。

 

 悩みなどしていなければ。

 もっと早く彼を安心させてやれば。

 彼を一人で行かせなければ。

 もっと早くに助けられていれば。

 

 自身を執拗に狙う輩がいる事を、私はとっくに予測していたというのに。

 

(ああ、私は──)

 

 たった一人の小さな恩人でさえ、守る事は出来ないのか。

 

「ザーディクリカ……」

 

「──弁解をするつもりはない。私は、私は──」

 

 

 

「たすけにきて、くれたんだね……?

 ……ありがとう、ザーディクリカ」

 

 

 

 ……何?

 

「──ありがとう、と? 私に、そう言うの?」

 

「あた、りまえ、でしょ。たすけられたら、カンシャするのは、あたりまえ……」

 

 そうか。

 貴方はそういう人だった。

 

(貴方の瞳に映る私は、こんなにも醜いのに)

 

 私の瞳に映る貴方は、とても輝いていて、ただ、きれいで。

 

 そんなのを見せられたら、もう私は腹を決めるしかない。

 今からでも、彼が感謝を伝えてくれるなら。

 それに応えるのが、◼︎◼︎の役目だろう。

 

「……そう、ね。その通り、私は貴方を助けに来た。

 何故、なら──」

 

 

 

 ──貴方は、私の主人。マスターなのだから。

 

 

 

「──あれ、そうだっけ」

 

「そうなった」

 

 

 

「うぐ、ぐうぅ……お前ら何してる! 獲物は目の前だぞ、捕えろ!」

 

 リーダーらしき男が、周りに号令をかける。

 全く、人間というのは諦めの悪い。

 

「ややや、やばいよザーディクリカ!」

 

「大丈夫、問題ない」

 

「ぜんぜんダメなやつだよそれ!?」

 

 人間ども──マスターの敵が、体勢を整えつつ、にじり寄ってくる。

 

「──マスター、しっかり掴まっていて」

 

「……うん!」

 

 さあ、力を見せるとしようか。

 

 少し呼吸を整えて──

 一気に、解放する。

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

 そのしゅんかん、オレも、おじさんたちも、とんでもないものを見た。

 

 金のきものをまとったザーディクリカの、後ろに。

 でっかい、手があらわれたんだから。

 

「──ふぅ──」

 

 そして、目をぱちくりさせたころには。

 ザーディクリカの右手、オレをかかえていない方の手に、長い長いつえ──やり? がおさまっていた。

 

「なんだと──ほ、《ホーリー・スパーク》!」

 

「《S・S・S》」

 

 ひときわ、せの高いおじさんのとなえた呪文が、かんたんにかきけされる。

 

「リ、リーダーの呪文が……!」

 

「報いを──《ロスト・Re:ソウル》」

 

「──仰せのままに、マスター」

 

 あらわれたシニガミさんは、なんだか前よりずっと、こわくて。

 

 なによりなにより──シニガミさんじしんよりも大きなカマをもっていた。

 

「──ひっ……!」

 

「貴方達の魂、集めても光るものじゃなさそうだけど──坊やを傷つけた罪は重いよ?」

 

 ──じゃあ、さよなら。

 

 そういうと、シニガミさんはカマをひとふり。

 

「──」

 

 おじさんたちは、しずかにたおれこんでしまった。

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

 ……エ、たおれこんでしまった、なんてカッコつけて言ってるばあいじゃなくない?

 

「いや〜、久しぶりに力使った〜」

 

「これで終わりね。帰ろう、マスター」

 

 いやいやいや、ちょちょちょ、ちょまてよ!

 

「どうしたの? そんなに慌てた顔をして」

 

「どーしたもこーしたもないよ! あのおじさんたち、もしかしてころしちゃったの!?」

 

 そうさけぶと、ザーディクリカもシニガミさんも、ちょっとわらった。

 きちょうなザーディクリカのわらい──じゃない!

 オレはしんけんなんだぞー!

 

「そう言うと思ったから、ロスト・ソウルには言い含めておいてある」

 

「ちょっとの間、魂が抜けたみたいに動けなくなるだけだよ。二度と坊やの事は思い出せないし、認識も出来ないようにしたけどね」

 

「そ、そうなんだ……よかった……」

 

「……疑問なのだけど」

 

 そう聞くのは、ザーディクリカ。

 いつもしつもんにこたえる方だったのに、いがい。

 

「マスターは何故、自分に害を成した存在にまでも、優しさを向けるの?」

 

 あ、そこなの?

 うーん、まあ、トクベツなりゆうなんて、ないけど……

 

「オレは、うーん……だれにもしんでほしくないし、いなくなってほしくないだけ。オレだけの思いってわけじゃなくて、みんなもってる思いだよ」

 

「──そう」

 

 そういって、ザーディクリカはなっとくしたみたい。

 

「では、《ドラゴンズ・サイン》。

 まだ貴方の母は帰っていないようだから、急いだ方が良い」

 

「あ、そういえばそーじゃん、お母さん帰ってくるじゃん!」

 

 気づけば、ザーディクリカのせなかにういていた、まがまがしい手とかはなくなってるし、シニガミさんはきえてる。

 まるで、さっきまでのことが、ユメのように思えてくる。

 

 いや、それでも。ユメじゃないんだ。

 オレがザーディクリカにたすけられたのは、ユメじゃない。

 だから……

 

「ありがとね、ザーディクリカ」

 

「……それは、さっきも」

 

「へっへっへ、ありがとう、に一回も二回もないんだぜ!」

 

「──口調で格好をつけられるくらいには、いつもの調子に戻ってるみたいね」

 

「なんだとー! オレがいつもカッコつけだとでも言うのかー!」

 

「……本当に良かった」

 

「うぇ? なんか言った?」

 

「いいえ、何でも」

 

 

 

 そして、オレはザーディクリカにかかえられながら──これけっこう恥ずかしいな──ゲートをくぐった。

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

「ただいまー、元気にしてた? 置いといたご飯はちゃんと食べたわよね?」

 

「おかえり! もちろん、いい子にしてたよ!」

 

「──おやぁ? お母さんは“いい子にしてた?”なんて聞いてないけどなぁー?」

 

「ぎくっ」

 

「ふふ、冗談よ」

 

「び、びっくりさせないでよ!」

 

 

 

「……良い子には、していなかったと思う」

 

「してたし!」

 

「〇〇? どうかしたのー?」

 

「な、なんでもない!」

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

 あれから、けっこうな時間がたって、夏休みもおわって。

 

「おーい、〇〇ー! 夏休みは楽しんだかー?

 さて、ていあんなんだがな……」

 

「オレ、デュエマやることにしたよ」

 

「──マジ!?」

 

 オレはかくごをきめたよ。

 

「はは、やっと〇〇もデュエマデビューかぁ……じゃさっそく、デュエマしよーぜ!」

 

「うん、もちろん」

 

 オレは、この前までのオレじゃない。それを、まずはこの友だちにしめすのさ。

 

「デュエマスタート!……つっても、勝つのは俺だけどな!」

 

 それはどうかな?

 

「……おい〇〇。なんでそんなに、ヨユーそうなんだ」

 

「知りたい?」

 

「知りたい!」

 

 ふふっ、じゃあ見せてやろう。

 

「なら──オレのターン!」

 

 ザーディクリカだって、そう思うでしょ?

 

「……マスターが行くところには、どこへだって行く」

 

 オレも、ザーディクリカといっしょにいたいのは同じ!

 

 

 

「呪文、ドラゴンズ・サイン!

 か〜ら〜の〜!?」

 

 

 

 

 

 ──来い、オレのあいぼー。

 

 りゅーふーこんせー、ザーディクリカ!

 

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 

「そーいえばザーディクリカ、さいきんさ……近くない?」

 

「……マスターの隣を守るのも、従者の責務だから」

 

「──もしかして、まだ気にしてる?」

 

「そ、んな事は」

 

「もー、あの日のことはしかたない、わすれようってやくそくしたじゃん!

 ザーディクリカがわるかったわけじゃない。オレはぜんっぜん気にしてないから!」

 

「……本当なの?」

 

「もちろん。それにオレ、ザーディクリカのこと大好きだもんね!」

 

「だい、すき?」

 

「うん!」

 

「……マスター。あまりそういう事を、軽々しく口にすべきではない」

 

「えー? なんでー?」

 

 

 

 

 




 
 
 とてつもない長さになってしまってすまない……

・ザーディクリカ
 世にも奇妙な合体獣ディスペクターの一人。後遺症なのか、たまに立ち方が分からなくなる。ちょうどそのタイミングで拾われた訳ですね。その希少さ故、自分がアブない連中に狙われている事も当然分かっていたので、早いうちに少年のもとを去らねば……と思っていたらしいのだが、夏休みに入る頃にはだいぶその決心が削がれていた。ていうか夏休みに入る前の時点で滅茶苦茶馴染んでるし少年への好感度が高い。マスター呼びするのが遅すぎてないか?
 今回の事件以降はマスターの安全にとても気を使うようになったので、ずっとずっと隣にいる。エンジェルコマンドと水文明の龍のディスペクターだし、結構真面目な子なのである。
 最近、自分の呪文と楽しそうにしてるマスターや、自分にくっついたまま無防備に寝ているマスターを見ていると、何だか黒い感情が湧き出てくる。なぜなんですかね……?

・少年
 小学校中学年くらいの、ピチピチおのこ。「かわい〜!」と色んな人に言われまくっているのが気になり出し、最近はカッコをつけるようになったが、自分の素にはなかなか抗えない。
 ザーディクリカと出会ったのは本当に偶然。彼の極めて単純な善性が二人を結んだ、なんて言えばロマンチックかも。ザーディクリカの事は(頼れるバディ的な意味で)大好き。なお最近、ザーディクリカの上と下で体温が違う事を悪用し、暑い時は首らへんに引っ付き、寒い時は腕に引っ付く利用策を思いついた。大好きとは……?
 最近、ザーディクリカの呪文達がみんな綺麗な女の人である事にドキドキするようになっている。そもそも呪文が人になっていることへのツッコミは諦めたらしい。
 
 
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