TSした俺があまりにもかわいすぎるのでVtuberになりたい 作:グラスラ
かわいいの代償はわりと重い
前までの俺の願いのひとつに『かわいい女の子になりたい』というのがある。でも俺は過去の俺にひとつ言いたい。多分やめといたほうがいいぞ、それ。
現在時刻、午前10時。
日光に照らされてベットから這い出るように起きる。美少女でも朝は辛いというのが分かった。
大体10時間睡眠、まだ眠い。どうでもいいような考えがいくつも浮かぶ。
目を擦りながらもトーストを焼いて、ジャムを塗って食べる。焼くと塗るだけで食べられるのは手軽で良い。
転生しても味覚はそこまで変わらなかった。甘いものの方がおいしく感じるかもってことぐらいか。あと変化らしい変化といえば明らかに食べられる量は少なくなってしまったこともか。前世ぐらいもっと食べたい気がする。
───率直に言えば俺は転生した。それも性転換して女の子になった。でもなんか思ってたのと違う。
トースト1枚。さくっと朝食を食べ終えた俺はひとりマンションの自室で不満を口にする。
「確かに『世界一可愛い女の子になりたい』とか言ったことあるけどさぁ」
今日は、いや今日も外に出るつもりはないのに、着替えながら鏡の中の自分を見つめて呟く。俺は事実、可愛い。超かわいい。文句もつけようがない。
前世、今世問わずみたことのない艶と美しい色の金髪。伸びてきた前髪にちょっと隠れていてもなお人形のように美しく、それでいで少し幼さも残るかわいらしいお顔。大した手入れもしていないのに白い、見惚れるように美しい雪のような肌。同学年でも小さめだった背丈。人を蕩けさせるような甘い声まで、その全てが世界一と言って良い。そのぐらい可愛い。
俺の理想通り、あるいはそれ以上の可愛さだ。生まれて15年経った今でも鏡の前に立つとそのたびに自分でもかわいいなぁと思う。俺はかわいい。それだけは自信を持って言える。
だがかわいいにも限度がある。かわいすぎたのだ。
身の危険を感じるレベルで愛された。それはもうすんごい老若男女全てから愛された。…言葉を選ばずに言うなら襲われかけた。数えきれないほど。
まずは男だった。物心がついた頃には成人未成人問わず。最終的に小学校の警備をすり抜けるような連中も出てきて、途中で同性のみの学校に転校した。経験したことないような粘着質の視線が体に張り付いてくるようで、正直怖かった。
その後、どうやら女の子もダメらしかった。俺が大きくなるごとに、向けられる視線に性別関係なく邪なものが増えていくのを肌で感じた。同性だからと油断した隙をつかれかけたこともあった。いや警戒はしてたんだけどね、男としてどうしても可愛い子にはいろいろ甘くなっちゃってた。そして可愛くても怖いものは怖い。途中から小・中学校を休みがちになっても何とかなったのは優しい親と励ましてくれためっちゃ美人な姉のおかげだ。
…その家族も理性の限界がきてたみたいだけど。ちょっと前からなんとなく気が付いていたけれど、やっぱりダメだった。中学の卒業式の後に限界が来たようだ。気づいたらいつもの母じゃなくて、いつもの父じゃなくて。別人みたいで。なんか悲しかった。
最終的には姉が止めてくれた。その後、家族会議を経た上でお互いの合意でこのマンションに別居になった。今も仕送りや支援は続けてもらっている。それだけで充分だ。そもそもが俺の自業自得的な部分もあるし、そもそも普通の子だったらこんなことも起きずにすんだのにという思いもある。だから、ほんとに申し訳ない。
扉の先を見て、部屋の外のことを考える。今も変わらず、外に出るたびに独特の視線を四方から感じる。気のせいではないと思う。10年来の付き合いの幼馴染によると本当に出会った人ほぼ全てに惚れられかけているらしい。やばくね?
視線とかはきもちわるいけどどうしようもないけど、それだけなら良い。その果てに実害があるのはやばい。親が警備をつけてくれたし、最近は全部通販で済ませているからひとまず今は多分大丈夫だと思うけど。
「………外に出たいけど、出たくないな」
ひとり暮らしを始めてひとりごとが明らかに増えた気がする。
───ここ最近外に全く出ていない。襲われ続けたせいなのか、外がいつのまにか怖く感じるようになってしまった。それが怖い。もう二度と部屋の外に出られないような気がして。考えて、口からため息がこぼれる。その息すらどこか露めかしいような気がして。もうどうしようもない、元は俺が願ったことだった。
…怖いことは考えないに尽きる。
今、俺の可愛さはどうにもできない。整形とかは考えたけどそれはもったいない気がする。でも顔を隠して、姿を隠しながら永遠に生きることはできない。仮面とか服とかで完全に顔を隠してもいつバレるか分からない恐怖に包まれて生きるのは俺には無理だ。
それでも人との繋がりがないのは辛い。前世もぼっち気味だったけどオタクの友達はいたので孤独への耐性はあんまり無い。そんなこの寂しさを解消してくれるものの一つがネット、SNSや動画だ。
今も自室の無駄に良い椅子に体育座りで座ってスマホをいじっている。椅子が大人用だからか座るとスペースに余裕がある。…今世の俺やっぱ結構ちっちゃい。もうちょいいろいろとおっきい方が便利だった気もする。
「んー、このイラスト可愛いなぁ」
ネットは暇つぶしにはちょうど良い。そして俺の可愛さがバレない。襲ってくる複数の変態もいない。いくら俺が美少女でも文字から可愛さが溢れるわけじゃない。前世と同じその他大勢の内のひとりになれる。今の美少女姿もいろいろあっても、まだ大好きだけど。冴えない姿の前世が恋しく感じることはあるのだ。あれだ、あれ。屋台のやっすいおでんの大根が一番美味しいってやつ。違ったかも。
「…まだ昼かぁ」
そんなかんじのどうでもいいような思考を垂れ流す、午前11時過ぎ。ついさっき食べたからあんまりお腹は減ってない。そんなかんじの現在16歳。外に出る必要の無い通信制の高校に通っている。前世通りの学力はなくとも経験は前世から引き継いでいるからあまり心配はしていない。ちょくちょく暇な時に触って基礎は固まってきた。
「この先どうしよ」
どうでも良い思考が続けられず、考えないようにしていたネガティヴな思考が流れ出す。親は大学も希望したらきっと行かせてくれるだろうし、親からの仕送りやお金は今後も続けてくれるだろう。家族は多分、俺に罪悪感を抱えている。まるで追い出したように感じているのかもしれない。良い人たちすぎる。そもそも悪いのは俺なのにね。その後のマンションもめっちゃ良いとことってくれたし、家具とか諸々もなんか良いやつだし、その後の仕送りもちゃんとしてるから不満とかはまるでない。…やっぱり、むしろ申し訳ないぐらいだ。
だから今の生活にあんまり不安はない。でもその後は?この姿でどうやって生きて行けばいいのか。まず普通の会社員とかは多分無理だろうし、前世で経験のある接客や営業も無理、工場はめんどい、研究はわかんない。というか、そりゃそうだけど、大体の職業は人と関わらなきゃいけない。つまり俺の可愛さは隠せない。また、襲われるかもしれない。
その事実に怖さを覚える。考えないようにしてもいつでも漠然とした不安感を覚える。今この瞬間からこの得体のしれない不安から抜け出したい。そんな思いに包まれる。
「…ネットで生きていけないかな」
そういう気持ちを押し殺して、忘れるようにして、スマホをいじりながら現実で呟く。怖いことは考えないほうがいい。また、そう考えて、ベットに横たわる。現実逃避ではあるが割と本気だ。対面以外で仕事をするならネットが一番良い。多分。ギャンブルとか株とかよくわかんないし怖いし。でも文才や絵心はあんまりない気がする。インターネット、SNS、動画投稿サイト。人と会わずに人と接せられる、配信とかは怖いけどそれでお金が稼げればそれが一番だと思う。あと、今はわりと暇だから何かしたい。
そんな時、ふと流れてきた動画が目に入る。何かの配信の切り抜きのようで、なんかバズってるようだ。
「───Vtuber?」
今からでもできる、対面じゃない、俺の可愛さを軽減できる、今の俺は声もかわいい。コレだ。思えばVtuberのメイン層はオタクらしいから元々男の俺ならなんか良い感じでできるかもしれない。ゲームも割と自信ある。割といけるか?そう軽く思って俺は前世からあまり詳しくないVtuberについて詳しく調べ出した。
「……わかんない」
しばらく調べて、サラサラすぎて怖い髪をクルクル弄りながら考える。どうやらVtuberはここ数年間ぐらいで栄え始めたっぽい。イラストや3Dを使って配信するもの。身バレやらのしにくさが影響したのか、なんなのか今は数が多い。配信者あるいはライバーの総数は現在では一万を超えるとかなんとか。界隈が盛り上がるとコラボや誰かが発掘したゲームで無限にコンテンツが面白くなるのが良い、推しを無限に追えるのが良い、オタク特攻みたいな今熱いコンテンツ、らしい。企業のオーディションとか面接は外に出るだろうから俺がやるなら個人勢かな。
まあそれはいいとして、問題はお金だ。かかる費用はネットによると10〜200万円。超幅広いな。うーん、わからん。結構良いPCはあるし、安めのならどうにかなりそうなのかな。今世は基本友達付き合いも少なめだったし外に出なかったのでお年玉やらお小遣いを余している。大体20万ぐらい。大金だけど多分一瞬で溶ける。将来への貯金をここで無くすのはどうなんだ。というか足りるのか。何も分からん。
「よし、相談しよう!」
相談できる相手は悲しいことに数人しかいない。その中でも襲われていない人と家族を除くと今、話せるのはこの子だけだ。それにこういうサブカル系に意外と詳しかったはず。そう思って俺は幼馴染にメッセージを送った。
続きはないよ
12/13 最後の方直し忘れたところをちょっと修正