××月○○日
葵ちゃんやベータと出会ってからあっという間に年が明けた。今日は俺、葵ちゃん、ベータの三人で初詣に行く事になっており、俺は木枯らし荘の自室で二人が来るのを待っていた。部屋でテレビを見て暇をつぶしていると秋姉さんが二人が来たと知らせてくれたので外に出て晴れ着姿の二人と合流する。それにしても二人一緒に来るなんて珍しいな。
「偶々ベータと鉢合わせちゃったから一緒に来ただけだよ」
「鉢合わせちゃったなんて随分な言い草ですねぇ。そんなに天馬君と二人きりになりたかったんですか~?」
「そ、そういうのじゃないってば!」
また始まったよ…何でかはわかんないけど二人は滅茶苦茶仲が悪い。とはいえミニサッカーをやっている時の連携は凄く良いんだよな。そういう面では結構認め合ってるのかもしれない。
それと俺と葵ちゃんは彼女を『ベータ』と呼んでいるが、彼女の本名を俺達は知らない。確か『ベータ』という名はエルドラドから与えられたコードネームなんだったっけ…
ベータ自身は「好きに呼んじゃってください」と言っていたので俺は『ベータ』と呼ぶことにし、葵ちゃんもそう呼ぶことにした様だ。
そんなこんなで神社にやって来た俺達は参拝した後にくじを引き、葵ちゃんとベータは二人揃って大吉を引いた。今年は二人に良い事がありそうだ。俺?大凶だったよこんちくしょう!
それから木枯らし荘へと戻った俺達は秋姉さんが作ってくれた雑煮とおせち料理を食べたのであった。
○○月××日
春休みに入り、特訓をしていた俺と葵ちゃんの元にベータが訪ねてきた。何でも遠いところにある故郷に帰るらしく、会えるのも今日が最後らしい。うん、故郷とは間違いなく200年後の未来の事だろう。とある事情で俺達の時代に来ることが出来なくなったか、エルドラドのエージェントになるから簡単にタイムジャンプが出来なくなったかの2択だろう。ベータはいつも通りに振舞っているがどこか寂しそうにしている感じに俺には思えた。
「ベータ。初めて会った時の約束を覚えてるか?」
「え…あ、はい。あなたが強くなったら改めてサッカーで決着をつけよう…ですよね?」
「ああ。明日から会えなくなるんなら、その決着を今日つけようぜ」
そんなやり取りをして、俺とベータは再び1on1のサッカー対決をする事になった。前と違い二点先取ではなく先に一点を取った方の勝ちだ。実質前にやった対決の続きと言ってもいいだろう。
葵ちゃんが見守る中、まずは俺から仕掛けていく。ゴールネットが近づいてきたところでベータに追いつかれてボールを取られてしまうが、俺はすぐさま一点を取ろうとしたベータからボールを取り返す。今日まであまり実感がなかったが、間違いなく俺は強くなっていた。以前よりベータの動きが見えるようになっているし、ベータの攻撃にも対応出来るようになっている。
「…強くなりましたね、天馬君」
勝負の最中、ベータがそう口にした。
「私とここまで張り合えるようになるなんて、正直思いもしませんでしたよ。そんなあなたに敬意を表して…俺の本気を見せてやるぜ!!」
するとベータからオーラの様な物が出てきて、それは形になっていった。
間違えようがない。あれは化身、『虚空の女神アテナ』だった。
いやいや、強くなった事を褒めてくれたのは嬉しかったけど、いくらなんでもオーバーキルすぎないか!?俺まだ化身出せないんだぞ!
いっその事降参しようかと考えた…しかしそれはサッカーにも、本気を出してくれたベータにも失礼だ。それだけはやっちゃいけない事だ。
ベータ。俺はお前に勝つ!それが全力のお前に送る俺からのせめてもの感謝の気持ちだ!
そして、俺から何かが現れ、力が湧き上がってくる感じがした。
色が天馬君のと違い黒色だが間違いない、俺にも出せたんだ。化身を…『魔神ペガサス』を。
俺とベータは互いに向かっていき、化身同士をぶつけ合った。
そして今日、あの日の決着をつけることが出来た。結果は…俺の負けだった。正直悔しい気持ちもあるが、それ以上に心は晴れやかだった。地面に倒れる俺をベータが立ち上がらせ、「今回は私の勝ちですね♪」と言ってくる。葵ちゃんもこちらにやってきて「二人とも、凄かったよ!」賞賛の言葉を送って来る。
そうしてベータとの別れの時がやって来た。俺は去っていくベータに向かって叫ぶ。「また一緒に、サッカーやろうぜ!」と
それを聞いたベータはこちらを向き、手を振ってくれたのだった。
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ベータside
私が200年前にタイムジャンプした理由は特にありません。要するになんとなくでした。
ぶらぶらと何も考えずに歩いていた私の目に一人の男の子が入りました。彼は特徴的な髪形に少し鋭い目をしている男の子でした。彼は大きなタイヤを背中に背負って、サッカーボールを壁に向かって蹴っては跳ね返ってきたボールをトラップしていました。
きっとサッカーの特訓でもしているのでしょうが、私から見たらあまりにレベルの低い特訓だったものでつい笑ってしまい、彼にレベルの低い特訓と言いました。私の顔を見た彼は何故か驚いてしまっていましたが、しばらくすると何を思ったのか1on1のサッカー対決を申し込まれてしまいました。正直彼のレベルは低そうなので気乗りはしませんでしたが暇つぶしに付き合ってあげることにしました。
案の定彼のレベルは低く、私が先に一点を取りました。ですが彼は目は諦めていないらしく、すぐに一点を取り返そうと動き始めました。これ以上やると弱い者いじめだと思いボールを奪ってこの退屈なゲームを終わらせようとしましたが、一瞬彼から『何か』が現れかけてそれは叶いませんでした。
見間違いでなければあれは化身ですね…
互いに一点を取ったところで私はゲームを切り上げようと提案しました。彼はゴネていましたが私が直々にあなたをしごき、強くなったら再戦をしようと提案すれば納得してくれました。
「俺は松風天馬。ベ…君は何て名前?」
すると彼…天馬君は私に名前を聞いてきました。
…私、自分の名前が好きじゃないんですよねぇ…
「フフッ、あなたの好きなように呼んで構いませんよ?」
「そう?…じゃあベータって呼ぶな」
こうして彼からベータと呼ばれるようになりました。正直何故ベータなのかと気になりましたが自分の名前で呼ばれないだけマシですね。
次の日から天馬君をしごく日々が始まりました。自分で言うのも何ですが私の特訓はとても厳しいのですが天馬君は弱音を吐かずに喰らいついてきました。時々息抜きで遊びに行ったりもしましたね…
天馬君と過ごす時間は、私にとって凄く心地良い時間でした。
「ベータってさ、可愛いとか言われたりしない?」
「藪から棒にどうしました?悪い物でも食べたんですか?」
「そうじゃねぇって。ベータって容姿が整ってるからどうなのかなって思ってさ」
「う~ん…私も自分のスタイルに結構自信はありますけど~、私って時々豹変するみたいですから、友達が出来ても怖がられて離れていってしまうんですよね~」
「…変な話だな。そういう所もベータの魅力なのにさ」
「魅力…?」
「だってサッカーやってる時のベータって可愛い上に豹変したらカッコイイじゃん。そういうのギャップ萌えって言うんだっけ…とにかく俺は可愛いベータもカッコイイベータも好きだよ」
「…な」
「ん?」
「お前な!よくそんな事恥ずかし気も言えるよな!?」
「な、なに怒ってんの?」
「うるせぇ!よし決めた!明日からお前の特訓メニュー倍にしてやる!覚悟してろ!!」
「えぇっ!?」
この時の私は何故あそこまで慌ててしまったのかわかりませんでした。
天馬君と出会って半年が経った頃、私は意思決定機関のエルドラドに呼び出されてしまいました。
私がいる時代では無断でタイムジャンプする事を禁じられています。どうやら私が無断でタイムジャンプしていた事がバレてしまったようです。
「三日後、君にはエルドラドのエージェントとして働いてもらう。素直に応じてくれれば君の罪は帳消しにしようではないか」
こうして半ば強制的にエルドラドにエージェントとして入る事になりました。
そして、私はこれまで感じた事もない喪失感に苛まれてしまいました。
それと同時に、私が天馬君に惹かれている事に気づきました。
何で…何で今になって気づいたんだろうな…
次の日、俺はエルドラドの許可を貰って一度だけ天馬がいる時代へタイムジャンプして、天馬と葵にもう会えない事を伝えた。すると天馬は俺に1on1のサッカー対決を申し込んできた。そういや、元々そういう約束で天馬をしごいてたんだっけ…
それから俺は天馬と対決し、結果は俺の勝ちだった。だけど天馬は強くなってるし、化身も出せるようになった。それだけでもしごいてやった価値はあるな。
そうして俺は200年後の未来に帰ろうとその場を去ろうとした。
「ベータ!また一緒に、サッカーやろうぜ!」
そんな時だった。天馬の叫びが聞こえてきたのは。
また一緒に…か。悪いな天馬。俺はもう二度とお前に会えないんだよ。
俺とお前は、住む世界が違うんだからな。
「君のコードネームは『ベータ』だ。以後精進したまえ」
元の時代へ戻った俺はエルドラドのトウドウ議長から『ベータ』というコードネームを与えられた。
まさかコードネームまで『ベータ』だなんてな…だが、不思議と嫌じゃねぇ。
俺の…私の名前はベータ。この世界で一番愛している彼から貰った名前です♡
次回からいよいよ原作開始です!