○○月××日
今日はいよいよホーリーロード地区予選一回戦だ。対戦相手の天河原中には結構嫌な奴がいて絡まれはしたが相手のキャプテンさんがそちらの無礼を謝罪してきた。天河原にもまともな人がいて何よりだ。とはいえ俺は負ける気など毛頭ないが反フィフス派は俺、キャプテン、信助の三人だけでそれ以外の八人はフィフスの指示に従うそうだ。ちなみにチラッと観客席を見てみたのだがその中に三国さんのお母さんの姿があった。
天河原のキックオフで試合開始となった。するとキャプテンが前に出て相手からボールを奪った。これには天河原チームはもちろん、先輩達も驚いていた。きっとキャプテンが本気でフィフスの指示に逆らうとは思っていなかったのだろう。そこからキャプテンが自身のタクティクスである【神のタクト】を使った。キャプテンが指示する指先はどれもオーケストラの指揮者様に的確で、俺が蹴るべき場所も見えていた。これがキャプテンが神のタクトと呼ばれている所以なんだな。それから俺はキャプテンにパスを出し、それを受け取ったキャプテンは必殺技の【フォルテシモ】でゴールを決めた。
こちらが先制点を取った事で相手チームのシード、隼総が化身『鳥人ファルコ』を出して化身技の【ファルコ・ウィング】を雷門側のゴールに向かって打ってきた。咄嗟にボールをキャッチしようとした三国さんだったが技を使わずに化身シュートを止められる筈もなく三国さんは弾き飛ばされてしまう。しかし間一髪で『魔神ペガサス』を出した俺がボールを蹴り返し、天河原に点が入る事はなかった。俺が蹴ったボールはDFの信助に渡り、そこからキャプテンから俺にボールが渡り、化身を出したままシュートをし追加点をもぎ取った。魔神ペガサスはドリブル技を有している化身なのでシュート技は使えない。『魔神ペガサスアーク』に進化すれば化身シュート技の【ジャスティスウィング】を使えるんだけどな…そもそも俺の魔神ペガサスは進化できるのか…?とにかく考えても仕方がないので試合を再開した。それからあっという間に前半戦が終わってハーフタイムに入った。
「三国さん。諸に化身シュートを受けてましたけど大丈夫ですか?」
「ああ、なんとかな…」
「…三国さん。フィフスの指示に従うって言ってたのにさっきはどうしてシュートを止めようとしたんですか?」
「…俺にもわからないんだ。咄嗟に体が反応して…」
「それは、三国の中にあるキーパーとしての本能がそうさせたんだ」
俺が三国さんと話していると円堂監督がそう言ってきた。
「どんなシュートでも止めてみせる!どんな相手もドリブルで抜いてみせる!誰よりも強いシュートを打ってみせる!そして勝ってみせる!それがサッカープレイヤーみんなが持つ気持ちだ!」
そうして円堂監督が続けて言う。勝敗の行方を決めて良いのは勝利の女神ただ一人だと、勝利の女神は最後まで諦めない奴に微笑むと。やはり教祖様の言う事はひと味違うな。それを聞いていた三国さんはお母さんがいる観客席を見ているようだった。
それから始まった後半戦。すぐさま俺は相手からボールを奪ってディフェンス陣を抜いていき、シュートをゴールに向かってねじ込んだ。それにより3対0でこちらの優勢になり、焦りを見せ始めた隼総が再び化身を出して雷門側のゴールに向かっていった。
「お前らには負けてもらわないと困るんだよ!」と叫びながら【ファルコ・ウィング】を打ってきた。すぐさまゴール前に戻ろうとしたが、その前にキャプテンがゴール前に来ており、不完全の状態の『奏者マエストロ』を出してシュートを止めようとしたがそれは出来なかった。
「三国さん!今のでシュートの威力は落ちた筈です!止めてください!」
「松風…ああ!任せろ!」
そう言って三国さんは【バーニングキャッチ】で化身シュートを止めてみせた。「神童、信助…天馬!お陰で目が覚めたよ!ゴールの事はもう心配するな!」と言ってこちらに向かってボールを投げてきた。すると相手チームのディフェンス陣全員が俺の方へ向かって来た。抜けられない事はないがちょっと疲れるな…そう思った俺はフリーになっているキャプテンへパスを出した。するとキャプテンの前に化身を出してままの隼総が走ってきた。しかし先程化身を出したことで感覚を掴んだのか、それとも先程の三国さんの姿を見て闘志に火が付いたのか、キャプテンは再びマエストロを出した。それも不完全ではなく、完全に実体化した姿で。
見事隼総の化身に打ち勝った神童さんは化身シュート技の【ハーモニクス】で天河原のゴールを打ち抜いた。そこから怒涛の快進撃が続き、気が付けば13対0で試合終了時間になった。つまり地区予選一回戦を無事勝ち抜く事が出来たという事だ。
よーし!キャプテンと三国さんも誘って今日は木枯らし荘で祝勝会だ!一応他の先輩達も誘おうとしたがとてもそういう雰囲気じゃなかったのでやめておいた。偽天馬はこれでも空気は読める方だから。
××月○○日
今日も今日とてサッカー部で揉め事があり、現状フィフスに従っている先輩達は俺達と一緒に練習をするつもりはないらしく、グラウンドを出てどこかへ行ってしまった。せっかくなので今日はキャプテンと三国さんにもタイヤ特訓をさせてみる事にした。もちろん円堂監督からの許可は貰ったぞ。
元々雷門で一軍の練習をこなしていた事もあり二人はすぐに特訓に慣れていった。とはいえこの特訓をしてもすぐに強くなることは出来ないよな…そうだ。ベータが俺をしごいていた時の様に俺もキャプテンと三国さん、それと信助を鍛えるのもありかもしれないな。
そういう訳でキャプテン、三国さん、信助に勝負の提案をした。勝負の内容は三人がチームとなり、時間内に俺からボールを奪うというものだ。さっそくキャプテンが俺からボールを奪おうとしたがそれを軽く躱し、そこから三国さんと信助が二人でボールを奪いに来たがそれもジャンプで躱した。それからあっという間にタイムアップとなり、俺の周りで三人が息を切らして倒れ込んでいた。
「天馬…お前疲れてないのか…?」
「それもその筈です…天馬はほとんど動いていないから体力を消耗していないんです…!」
キャプテンと三国さんは苦しそうにそう話しているが実際俺の体力は消耗していない。この勝負は定期的にやるので覚悟しておいてくださいね、先輩。
○○月××日
地区予選二回戦の相手は万能坂中に決まったがもちろんフィフスからの勝敗指示は来ている。1対0で雷門の負けだ。もちろん円堂監督は次の試合も勝つつもりで、偽天馬率いる反フィフス派もそれに乗った…あ、率いてるのは神童キャプテンか。そんな中南沢さんが付き合いきれないと言って監督に退部願を出してきた。南沢さんも内申書の為にサッカーをやっていた人間なのでサッカーに対してもどこか冷めてたんだよな。俺としてはもうやる気がないのならやらなくても良いと思っているので止めはしない。とはいえ今まで仲間として一緒にやってきたキャプテン達はショックの様だった。
「松風!こうなったのは全部お前のせいだ!」
そんな中倉間さんが俺にこう言ってきた。
「お前が入部しなけりゃ、こんな事にはならなかったんだ!サッカー部を潰そうとしてんのはフィフスセクターでも剣城でもねぇ!お前だろ!?」
倉間さんの他責と言ってもいい言葉の感想は正直に言うと「だから何だ?」だ。正直精神が大人な俺からしたら尊敬してる先輩が抜けたから後輩に八つ当たりしているガキとしか思えない。
そんな中、葵ちゃんが倉間さんに思いっきり強いビンタをした。痛そ~…
「お前!何すんだよ!?」
「倉間先輩。さっきから聞いていれば何ですか?八つ当たりも大概にしてください!天馬がサッカー部を潰そうとしてる?そんなの、ただの言い掛かりじゃないですか!」
「お、お前に何がわかんだよ!」
「わかりませんよ。最近マネージャーとして入ったばかりなんですから。まさか名門雷門のサッカー部が入ったばかりの後輩に八つ当たりする部だったなんて、ガッカリです!」
「葵ちゃんステイ!もういいから。ほら、仮にも先輩なんだからその辺で…」
「でも!天馬が悪く言われるなんて私には耐えられないよ!天馬はただサッカーがやりたいだけなのに…!」
「葵ちゃんの気持ちは伝わったから…俺の為に怒ってくれてありがとな」
「天馬…」
「チッ…!」
こうして事なきを得た訳だが、すぐ後に剣城が来て監督に「次の試合、俺を出せ」と言ってきた。当然反対するキャプテンだったが円堂監督は剣城を試合に出すそうだ。監督曰く勝つ為に試合に出すそうだ。まぁ南沢さんが抜けてる以上剣城は試合に出した方が良いだろう。とはいえ次の試合も荒れそうだな…