敷島のユメ   作:ゆーりゃん

5 / 5
お久しぶりの第5話です。
ちょっとずつシリアスにしたい。



第5話

「本題に入るが。わが陸軍において、深海棲艦に相対すにあたり、何が必要と思うかね?」

しばらく雑談を交わした後、中将は不意にそんな事を口にした。

「艦娘と同系統の――陸軍が先の大戦時保有していた艦艇群を基礎に、基礎研究を進めるべきかと。戦車や航空機の『艦娘』化を無理に目指す必要はないと考えます」

ほう、と中将は微かに笑った。

「その心は?」

「可能かどうかも解らない戦車や航空機の『艦娘』化に拘る時間など、我々陸軍にはありません。我々がまず作るべきは新兵器ではなく、既存の兵器を最大限活用する新しいドクトリンであり、新しい部隊であると考えます」

それは、この話を義兄から聞かされた時から考えていたことだった。

「結論から申し上げますが。艦娘による陸軍組織の編成と、艦娘が陸上で使用可能な兵装の選定ないし開発。艦娘陸戦隊を創設する事を、小官は提案いたします。また平行して、人間が使用可能な“艦娘の兵装”の開発を」

「艦娘……陸戦隊」

「不快ですか? 不知火」

「いえ。ただ、少し驚いただけです。不知火達は、艦ですから」

「それでも不知火、今、貴女たち艦娘は陸上で活動することが出来るでしょう? 残念ながら、陸軍の兵装では深海棲艦の足止めすら不可能なのが現状。ならば、緊急時に陸を、陸に住む人々を護るには、まずは艦娘の陸上運用が最も実現までのハードルが低い、と考えたまでです」

「ですが早瀬少佐……不知火たちは、艦、です。陸で動ける身体を持っているとはいえ、本来の力を発揮できるのは、あくまで海」

俯く不知火の横顔は、少し悔しそうだった。

「それでも、頼るしかないのですよ。不知火、知っていますか? もし、貴女がその気になったら、この場の誰も貴女を止められないということを」

苦い顔をして俯いていた不知火が、跳ね起きるようにこちらを睨む。

「そう、止められない。悔しいですが、先程貴女が言った通り、こんなもので貴女は傷つかないのだから」

「お言葉ですが! 不知火は……不知火は、そのような事っ!」

「駄目ですよ、不知火」

激高し立ち上がりかけた不知火を、亭主の女性が手を差し伸べて柔らかく制す。やはり、海軍の、それも高位の関係者なのだろう。

「どうぞ、早瀬少佐。続けてください」

「不知火、もちろん貴女にそんな気がないことはわかっています。ただ、あくまで能力の話として聞いてください。もし貴女が反逆したとして、艦娘が……常駐しているならば海軍省、下手をすれば横須賀鎮守府から到着するまで、貴女を止められる兵器はない。帝都を焼き尽くす覚悟で核でも落とすなら別かもしれませんが、そんな馬鹿な話はないでしょう? これは、深海棲艦の上陸を許した場合でも、同じ事です」

「奴らが……深海棲艦が、上陸できると?」

「不知火くん」

静かに聞いていた中将が、口を挟んだ。

「かつて、我が陸軍に、特殊船という船があった。敵地まで兵を運び、陸に揚げるための船だ。勿論米軍にも類似のものがある。それを模した深海棲艦が生まれないと、言い切れるかね」

「それは……」

「確かに貴女の言うように、艦娘も深海棲艦も、陸上では本来の力を十全に発揮するのは難しいのかもしれません。それでも、その一部の力でも、我々陸軍単独では対抗できない! それを何とかするために、陸軍軍人の私がこうして海軍に来ることになったのです。先に、貴女の誇りを傷つけるような事を口にしたのは謝罪します。どうか、我々に協力してもらえませんか」

「……不知火くん。虫の良い事を言うようだが、陸だ海だといがみ合って、同じ過ちを繰り返すことはしたくないのだ。君だけではない、ぜひ多くの艦娘に、協力してほしい。私からも、お願いさせてもらうよ」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。