某掲示板に怪談を投稿した(全9話)   作:多聞町

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 大学時代、山岳サークルに所属していたんだが、そこで怪異に年2,3回遭遇したことがある。大体、仲が良かった2年先輩の女子と二人の時に遭遇したんだが、その時のことを書こうと思う。個人の特定を避けるために、色々とフェイクを入れるし、脚色も加えるので、そのつもりで読んでください。俺が大学2年秋の話です。

 

 

 

 昼間なのに、山道は妙に暗かった。

 時刻は午後3時を少し過ぎた頃だったはずだが、頭上を覆う枝葉が、太陽の光をほとんど通さなかった。

 木々が密集し、光は細い筋になって足元に落ちている。

 俺と先輩は、無言で下山を続けていた。

 

「疲れた?」

 

 先輩が笑う。

 

「いや、大丈夫です」

 

 そう答えた瞬間だった。

 前方の空気が、突然歪んだ。

 細長い何かが、地面すれすれに横たわるように回転している。

 つむじ風──だが、普通じゃない。

 回転の中心軸が垂直ではなく、完全に水平なのだ。

 まるで、透明な巨大な棒が、道を塞ぐようにゆっくりと転がっているように見えた。

 その奇妙なつむじ風は、横倒しになって、道を塞ぐように渦を巻いていた。

 枯葉が吸い込まれ、音もなく消えていく。

 葉が舞い上がる音も、渦が地面を擦る音も一切しない。

 ただ、視覚的に回転しているだけだった。

 

「……何、あれ」

 

 先輩の声が震えていた。

 俺は言葉が出なかった。

 風はゆっくりと移動し、道の脇へ、森の奥へと消えていった。

 残されたのは、異様な静けさ。

 鳥の声も、風の音も消えていた。

 まるで、耳栓をしたかのような、密閉された静寂。

 標高の低い山のはずなのに、高山にいるような息苦しさを覚えた。

 

「行こう」

 

 先輩が歩き出す。

 俺も続いたが、胸の奥に重いものが残った。

 何かが変だ。

 足音が、妙に響く。

 まるで、森全体がこちらを見ているような感覚。

 分岐点に差し掛かったとき、先輩が立ち止まった。

 

「……この道、こんなに暗かったっけ?」

 

 確かに、来るときはもっと明るかった。

 携帯で位置を確認しようとしたが、圏外。

 画面に一瞬、奇妙な通知が浮かんだ。

 

《現在地:風の尾根》

 

 そんな名前、地図にはない。

 しかし、通知は消えず、画面の隅に張り付いていた。

 

「急ごう」

 

 先輩の声が硬い。

 俺たちは早足で進んだ。

 だが、道が妙に長い。

 何度歩いても、同じ倒木が現れる。

 

「……さっきもこれ、見たよね。この三又に折れた枝を持つ倒木」

 

 先輩が呟く。

 俺は答えられなかった。

 そのとき、背後で音がした。

 ザッ、ザッ……。

 誰かが歩いている。

 足音はゆっくりと、しかし着実に近づいてくる。

 振り返ると、道の奥に、細長い影が立っていた。

 人ではない。

 風の渦が形を変えて、こちらを見ていた。

 

「走れ!」

 

 俺たちは駆け出した。

 枝が顔に当たり、息が切れる。

 肺が悲鳴を上げ、喉が焼けるように熱い。

 必死で走り続けると、視界が開けた。

 駐車場だ。

 車が見える。

 俺たちはドアを開け、飛び込んだ。

 エンジンをかけると、携帯に電波が戻っていた。

 通知も消えている。

 

「……何だったんだろう」

 

 先輩が呟く。

 先輩の顔は青ざめていたが、俺の顔も同じだったろう。

 俺は答えなかった。

 バックミラーに映る自分の顔が、妙にぼやけて見えた気がしたが、もう振り返らなかった。

 先輩は車を急発進させ、一目散に山を下りた。

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