ボクのヒーローアカデミア くらっしゅ!!   作:ぺぺぺぺぺぺぺ

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初投稿です。


『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えて行く者』

 人は生まれながらに平等じゃない。これが齢四歳にして知った世界の真実。

 そしてボクの、最初で最大の学びだ。

 

「お父さん! お母さん! 行ってきまーすっ!」

 

 意気揚々と歩き出した銀髪の少女は非常に可愛らしい容姿で、自分が家族に、そして世界に愛されていると一切疑っていない、天真爛漫な笑顔だ。本日は彼女の夢である「世界最高のヒーロー」になるための第一歩、雄英高校の一般入試実技試験の日。自宅から雄英高校へは最近開通した『超電導リニア線』を使って1時間ほど。彼女自身の〝個性〟を使って移動するほうが早く到着するのだが、公共の場での〝個性〟の使用は原則禁止。大人しくルールを守り、規律正しく会場へ向かう。乗り込んだ『超特急』の中には恐らく彼女と同じ目的だろう緊張した学生たちがたくさん居て、彼女は「もしかしたら同級生になる人が居るかも」と見渡した。試験会場である雄英高校からほど近い駅へ到着後、コンコースから駅前の広場へと足を踏み入れた瞬間、彼女は宣言する。

 

「世界一のヒーローになるっ! ボクの夢が! 今ここから始まるッ! 刮目せよッ! ボクの言葉と行動がこれからの世界のスタンダードだっ! 必ずそうなる! ボクがそうするっ!!」

 

 唐突かつハイテンションな独り言に、周囲はぎょっとした。あまり良い印象を与えなかったようだ。しかし一人だけ、彼女に話しかけてくる人物が居た。耳からコードのようなものが垂れ下がった、パンキッシュな服装の女の子だ。

 

「いきなりロックな宣言するじゃん。あんたも雄英の受験生だよね。良かったら試験会場まで一緒に行こーよ」

 

 その言葉を聞いた銀髪の少女は少しの間きょとんとしたあと、パァっと花の咲いたような笑顔を浮かべた。

 

「うんっ! 一緒に行こうッ! ボクの名前は『新斗(あらと) 黎乃(りの)』! リノちゃんって呼んでいいよッ! キミの名前も教えてっ! てかどこ住みなの? LINEやってる?」

 

 いきなりエグい距離の詰め方をしてきた彼女は、どうも対人能力に難があるらしい。しかしパンキッシュな少女はむしろ楽しそうな表情になった。

 

「ウチの名前は『耳郎(じろう) 響香(きょうか)』。響香でいいよ、リノ。よろしく」

 

 色々スルーした上でしれっと「ちゃん」を省いて呼び、握手をしようと手を差し出す。黎乃は響香の反応に大変気を良くしたらしく、手を握り返しながら、元気な声で返事をした。

 

「よろしく──ッ! ボクは100%合格するから、響香ちゃんも受かったら、同級生になれるねッ!」

 

 その言葉には一切の迷いも、疑いも、遠慮もなかった。自信たっぷりなその言葉に、響香は目を丸くしたが、すぐにくすくすと愉快そうに笑った。彼女はその確固たる自信を素直に受け止め、好印象を抱いたようだ。二人は並んで試験会場までの道を歩いた。周囲の受験者たちも戸惑いの表情を浮かべていたが、二人の穏やかな交流と友情の始まりに、少し緊張がほぐれたようだった。

 

「広場での宣言もすごかったけど、リノは肝が座ってるね。ウチは流石にそこまでの自信はないなぁ」

 

 響香のその言葉に、黎乃は胸を張り得意げに答えた。その胸は平坦であった。いいや、平らに見える地平線は実は滑らかなカーブがある。水平線もそう。いわんや胸平線をや。その球形が巨大であればあるほど、その曲線は緩やかになる。そういうことだ。いいね? 

 

「ボクはこの世界に新たなる秩序と可愛さをもたらす最高の存在だからねっ! 先陣を切って皆を安心させてあげたのさッ! 旧人類よあとに続けッ!」

 

「へぇ~。ちゃんと考えたうえでの行動だったんだ。確かにちょっとリラックス出来たかも。ありがとね」

 

 何処までが本気かわからないその言葉を柔らかく受け止め感謝を返す響香は、かなり人間が出来ている。聞き捨てならないカテゴリ分けをされたが聞き流すところも大人の余裕って感じだ。早くも付き合い方がこなれてきている。その後も話は弾み、お互いの〝個性〟についての話題になった。

 

「ボクの〝個性〟は「ダークマター」! 暗黒物質を自由自在に操る個性だよっ! いろんな性質を付与できるから、戦闘じゃ無敵さッ! ちなみにこのカワイー服も「ダークマター」で作ってるよっ」

 

「ウチの〝個性〟は『イヤホンジャック』。このプラグを刺して心音を爆音にしてぶつけたりとか……あと耳もいいよ。てか、操るって服まで作れるの? すごいね。全然普通の服に見える……ってうわ」

 

 黎乃が「どやぁ……」という感じの顔をしながらふりふりと手を振る。フリル付きの袖の内側に、星が煌めく宇宙のような空間が広がっている。肩出しの大胆なゴスロリファッションを「普通」と表現する響香もなかなかにパンクだが、デザイン以前の問題でたしかに普通の服ではないようだ。公共の場で個性を使わないとは何だったのか。とはいえこのルールは形骸化して久しい。外見そのものに影響がある〝個性〟の場合、「引っ込めろよ」などと言われても困るし、びっくりして咄嗟に発動、といった行為をいちいち取り締まるのは現実的ではないからだ。流石に警察官やヒーローに直接見られたら、身を守るためにやむを得ずといったケースでない場合、口頭で注意位はされるが。すなわち彼女の服が見咎められたら、ヒーローがJCの服を脱がせようとする事案発生である。社会の闇……! 正さねば……! 

 

「すご。綺麗な〝個性〟だね。それで戦闘も強いとかやばいじゃん」

 

「! ありがとうっ! 響香ちゃんの〝個性〟も素敵だねっ! ボクは索敵はあまり得意じゃないから、耳が良いのは羨ましいよっ! 将来は~索敵が得意な~サイドキックの人と一緒に働きたいなぁ~っ! ちらっ」

 

「ふふっ、なにそれ。もしかしてウチのこと勧誘してるの?」

 

 またしても距離感のバグった接し方をされたにも関わらず、響香は笑顔だ。そのような話をしていると、眼の前に巨大な建物が現れた。試験会場である、雄英高等学校だ。会場の近くにはすでに多くの受験生が集まっており、熱気と緊張感の混ざった独特の空気が漂っている。

 

「受験番号結構離れてるね。それじゃ、お互い試験頑張ろう。またね」

 

 クールに去っていく響香を見送り、黎乃は試験へと意識を向けた。受験番号に従い会場で席について待っていると、プロヒーローの『プレゼント・マイク』が現れ、ハイテンションに叫んだ。

 

「今日は俺のライヴにようこそー! エヴィバディセイヘイ!!!」

 

「ヘーイ!!!」

 

 答えた受験生は唯一人だった。っていうか、黎乃だった。〝個性〟かよ、って思うくらいの大声だったので、周囲の受験生はうるせえ、と顔をしかめた。彼女は反応したのが自分一人であることは全く気にしていないようで、プレゼント・マイクにドヤ顔を向けている。受験生の中には当然だがマイクのファンも居る。ではなぜその者たちは反応しなかったのか? それは彼らが良く訓練されたファンだからだ。マイクのコールに反応するなど、ファンの風上にも置けない。そういうことである。マイクは反応がたった一人からしか返ってこなかったにも関わらず更にテンションを高めて説明を始めた。

 

「サンキューリスナー!! 実技試験の概要をサクっとプレゼンするぜ!! アーユーレディ!?」

 

「YEAHH!!!」「イエー……」

 

 二度目のコールではレスポンスが二人になった。先程芽生えた仄かな友情が彼女にそうさせたのだ。彼女はとても思いやりのある素敵な女の子だ。ファンたちは嬉しそうなマイクを見て自分も嬉しくなったが、鉄の意志でレスポンスはしなかった。その後多少の質疑応答が入りつつもマイクは恙無く試験の説明を終えた。内容をまとめると要は「ロボを行動不能にしてポイントを稼げ」である。

 

「俺からは以上だ! 最後に我が校の校訓をリスナーへプレゼント! かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った! 『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えて行く者』と! "Plus(プルス) Ultra(ウルトラ)"! それでは皆良い受難を!!」

 

 会場に移動した黎乃は周囲を見渡したが、残念ながら響香は居なかった。周囲は銀髪ツインテゴスロリの彼女に奇異の目を向けたり、可愛らしさに見とれたりしているが、黎乃は全く気にしなかった。

 

「ハイスタートー!」

 

 唐突に会場にプレゼント・マイクの声が響き渡る。受験生たちは戸惑ったが、黎乃は背中から黒い翼を出すと、一瞬で上空に飛び上がった。周囲の受験生の動揺をよそに、上空からロボの分布をある程度把握すると、星が散りばめられた黒い何かを展開し、空まで3体のロボを持ち上げた。1P・2P・3Pの3種のロボの手足を切断したり、首らしき部分をもぎ取ってみたり、パイプを引きちぎってみたりして、『どの程度壊せば行動不能になるか』を把握した。最も損傷が少なくて済むのは後頭部らしき部分に設置されている電源ボタンを押すことのようだ。『破壊』や『撃破』ではなく『行動不能』がポイントの条件なのはこういったやり方も認められているからだろう。というか攻撃能力に乏しい〝個性〟の受験生用に増設しているのではないだろうか? 確認の為再度スイッチを押せば再起動するのかも調べてみたが、一度押せば完全停止するようだった。間違いなく『試験用に調整されている』事を確信すると、会場を飛び回り次々にロボを『行動不能』にしていく。その圧倒的な機動力とボタンを押すだけという簡単な行動の組み合わせは、3分ほどで300を超えるポイントの獲得を可能とした。十分にポイントを稼いだと判断し、まだうろついているロボは他の受験生たちのために残して、彼女はとある場所で待機することにした。その場所とは、『ステージギミック』と説明された超巨大仮想ヴィランロボの眼前だ。現在完全に停止しているそれは、時間経過で動きだすのだろう。あるいは黎乃以外の誰かが『停止ボタン』を押したのかもしれないが、彼女はその可能性は低いと判断していた。そして予想通り、残り5分になった瞬間に『0Pロボ』が動き出した。ロボは黎乃をすでに認識しているようで、ゆっくりと踏み潰そうとしてくる。派手だが鈍重、かつ「早く逃げてくださいね」と言わんばかりの効率の悪いモーションに黎乃はくすりと笑うと、〝個性〟をロボの全身に纏わりつかせ、ガチガチに『硬化』させ行動不能にした。恐らくこれも何処かにスイッチがあるはずだが、探すのが面倒だったので大雑把に対処したのだ。

 

「最高峰の雄英って言ってもこんなもんかぁーっ! まぁしょうがないね! ボクがこんなにかわいくて強いなんて、世界はまだまだ知らないからねっ!」

 

 その言葉に反応したのかどうなのか、巨大ロボを拘束し続ける彼女のもとに、ロボが10体ほど集まってきた。先程まで会場で暴れていたロボは同士討ちこそしなかったものの、てんでバラバラに動いていたのに、この場に来た10体は明らかに隊列を組み連携している。黎乃はそれを見てにっこりと笑顔を浮かべた。

 

「音声もしっかりと拾ってるんですねっ! ボクが学生レベルじゃないことを評価してくださってありがとうございまーすっ!」

 

 巨大ロボを拘束したままに、彼女はさらにキラキラと星が瞬く黒い何かを帯のようにして大量に展開し、10体全てを縛り上げるとのんびりぽちぽちとスイッチを押していった。

 

「これでポイントは354! 合格ラインは何処らへんなんですかー? 足りないなら追加でロボ送ってくださーい! それとも他の受験生が戦ってるやつを獲りに行くべきですかー?」

 

 するとすでに停止しているロボの1体から「ポイントは十分合格ラインだ。試験終了までそのまま待機しろ」と音声が聞こえた。「分かりましたー!」と元気よく返事をすると、〝個性〟を椅子の形に構成して腰掛けた。その後、受験生の何人かが近くまでやってきて拘束されている0Pロボを見て驚いたり、感謝の言葉をかけたり、あまりのレベルの違いに戦意喪失したり、抑えるために無理をしてこの場に留まっていると思った受験生が心配してくれたりと色々あったが、あっという間に10分が経過し、実技試験は終了した。その後の筆記試験も無事こなし、試験終了後。黎乃は素早く駅へ向かう道に陣取り、帰宅する受験生たちを見回して目当ての人物を見つけると、そわそわとしながら彼女を見つめ話しかけられるのを待った。

 

「あ、居た。試験どうだった? ウチはまぁまぁやれたとは思うけど、3Pロボはけっこう大変だったかな」

 

「響香ちゃんッ! 上手くいったんだね! 良かったぁ。ボクは354Pだったよっ。春から一緒に通えるといいねっ!」

 

「……は? 354? ……少なくとも120体近く倒したってこと? マジで? ……どうしよ、不安になってきた。ウチ36P……10倍近く差があるの……?」

 

「!!! あ、あの! ボクは途中で「やりすぎだからもういい」的なこと言われたから、ぶっちぎりで1位だと思うっ! それにほら! 雄英が見てたのって多分ポイントだけじゃないよ! 試験会場の音声とかもきっちり拾ってたんだ! 多分追加査定が入るんじゃないかな……! 例えばボクは「なるべく壊さないように停止」させたんだけど、そういうので高評価もらえるんじゃないかと……! 響香ちゃんは思いやりがあって大人っぽいから……きっと会場でも人助けしたよね! そういうのもゼッタイ評価されるよっ!!」

 

「ん……そうかな? ありがと。そうだね、諦めちゃダメだよね。筆記もあるし。ウチはそっちもまぁまぁできたと思うけど、リノは? 筆記の自信はどうなの?」

 

「自信あるよ! 満点以外取ったことないし、今回もそうだと思う! ボク絶対響香ちゃんと一緒に通いたい……! ポイントって分けたり出来ないのかなぁ? ちょっと頼んでくる!」

 

「ちょ、何言ってんの! いいって、そんなの。そんな事できないと思うし、出来たとして、ポイント分けたせいでリノが落ちたらどうするの。ウチそんなの嬉しくないよ」

 

「うぅ……ご、ごめん……」

 

「気持ちだけ受け取っとく。周りから聞こえる感じからすると、大体25Pくらいが平均っぽい。冷静になってみると悲観するほどじゃないと思うから大丈夫」

 

「おー! すごいっ! このざわざわの中から欲しい音を取捨選択して情報収集できるなんて! あの……そう! サイドキックの話、本気だからっ! もし学校違っても……連絡してもいいかなっ」

 

「あはは。もちろん良いよ。連絡先交換しよ。あんた大物になりそうだしね。っていうか既に大物か」

 

 その後の帰路も二人は楽しくおしゃべりを続けたが、乗る電車が別々なのですぐに別れのときは来た。在来線に乗った響香が見えなくなるまでホームから手を振り続け、しばらく名残惜しそうにぼんやりしたあと、超電導リニアの超特急に乗って帰路についた。地元は駅から少し離れるとすぐに長閑で穏やかな田舎の風景となる。夕暮れの田舎道をしゅたたたっと早歩きするとすぐに自宅が見えてきた。ぎぃっと軋む金属の門をおしやり、古めかしくもそれなりに大きな邸宅の玄関のカギを開け、家に入るなり黎乃はハイテンションに叫んだ。

 

「ただいま──ッ! お父さん! お母さん! あなた達の自慢の娘が、今! 帰ってきましたよーッ! 今日はなんと……! 新しいお友達が出来ましたッ!」

 

 彼女にとって世界で一番安心できる自宅で、両親に良い報告ができることは、何よりの喜びだった。

 

 

 

 

 

 

「実技総合成績でました」

 

 モニターには今年の受験生の獲得ポイントが成績順に表示されている。試験の映像や音声をチェックし、審査も終わって一段落、といったところだ。薄暗いモニター室に、驚愕を含んだ溜息が漏れる。

 

「今年はやっぱりこの子だな。『新斗 黎乃』。敵P(ヴィランポイント)354、救助P(レスキューポイント)28、総合382P(ポイント)。例年のトップクラスの5倍以上のポイントを稼いだ怪物ルーキーだ。推薦じゃなくて一般なのは何の冗談だ?」

 

 画面の左上最上段、二位以下に圧倒的な差をつけて君臨するその名前は、この形式になってから初の150P超えという輝かしい記録を叩き出した。150どころではないが。

 

「しかもこっちの都合で途中で試験中断させてるわよね。続けさせたらまだまだ稼いだと思うと末恐ろしいわ。容姿もいいし人気出そうね」

 

 艶っぽく微笑みながら発言したのは『18禁ヒーロー ミッドナイト』。モニターに映る少女に期待を込めた視線を送る。容姿のみならず〝個性〟の見た目も非常に美しい彼女の、プロとしての活躍に早くも思いを馳せている。

 

「ロボの数にも限りがあるからしょうがないよ。あのペースでやられたら予備が枯渇する。規格外と同じ会場だったと言うだけで不合格になっちゃ他の受験者が不憫だしね。とはいえ影響が出ていないはずもないけど」

 

 機能停止している仮想ヴィランに勘違いして攻撃を加えた受験生もそれなりに居た。当然ポイントにはならない無駄行為だ。

 

「強力な受験者がいる会場の合格者が少なくなること自体はたまにありますけど……追加投入が必要になったのは初めてですね。そのせいで調整が不十分なやつも混ざっちゃいました」

 

 宇宙服の中から困惑を多分に含んだ声が漏れ聞こえる。

 

「丁度いいから遠隔操作でこいつに向かわせたやつな。本人は喜んでたけど普通に失態、恥ずべき痴態ってやつだな!」

 

 プレゼント・マイクの陽気な、しかし厳しい指摘が室内に響き渡る。

 

「バウワウバゥワウッ! グルルオオーッ!!」

 

 なんて? という反応を一同がする中、一人だけウンウンと頷いているのがシュールだ。

 

「もっと救助Pは高くなるのかと思ったんだがな。敵Pを稼ぎすぎてるから調整したのか? 不合理だ。他の受験生の脅威となる前に対処したのだから理想的なはずなんだが」

 

「事が起こる前に対処したから救助として高評価されない、というのはたしかにおかしいといえばおかしいが。とはいえ、彼女がどのような気持ちであれを為したか、不確かなのだから仕方ないだろう?」

 

 そう言ったのは『ブラッドヒーロー ブラドキング』。先程ただ一人けものフレンズをのけものにしなかった人物だ。いや、何を言っているか理解しているのなら彼が通訳をするべきだったのだから、のけものにしたのは彼かもしれない。

 

「だから合理的じゃないといっているんだ。実績ではなく気分で評価をつけているだろう? 8位の緑谷は全身の怪我と引き換えにロボを壊して60P。一方で新斗は怪我一つ無く、ロボも一切破損させず動きを止め続けて28P。結果から見れば明らかに優劣はついているのに、ポイントは逆転している。おかしな話だ」

 

「言いたいことは分かるが、お前も彼女には3点しかつけてないじゃないか。緑谷には5点つけてたと思ったが? 全員がお前と同じように評価したとしても、緑谷のほうが高評価になるだろう」

 

 救助Pはヒーロー科の全学年各クラス担任の教師6名に校長を追加した7名が各10点を持ち寄り評価する仕組みだ。例えば緑谷の場合は10・8・10・7・10・5・10で60P。そしてこの5Pが現在不満を表明している教師……『相澤(あいざわ) 消太(しょうた)』の評価だ。一方黎乃の救助ポイントは一人を除き他全員が3P……これは「0Pロボに挑んだ」生徒に最低限として与えられる評価だ。結果に関わらず挑んだだけでも評価される強大な敵。そういう評価基準だ。そしてただ一人3点でなく10点をつけたのは校長である。

 

「『新斗にとってはあのロボは脅威じゃない』のだから、最低限の評価となるのは分かる。俺も同じ判断だ。しかし緑谷が高評価になるのはシステムの欠陥だろう。減点の仕組みがあれば俺はマイナスにしたぞ」

 

 本題はこういうことであった。相澤は動けない受験生を助けるために戻ったことで+2点しただけで、黎乃と同一、つまり「緑谷も対処可能だから挑んだだけ」と評価している。実際緑谷は怪我こそしたものの一撃で破壊しているし、雄英に貴重な治癒能力の持ち主である『リカバリーガール』が居ることは有名な話なのだから、それを当て込んだ可能性もある。そして落下のことを考えていなかったらしい部分は相澤にとってはマイナス評価だ。仕組みにマイナスがないから勝手に他の部分の加点を取り消す等の自己判断での減点をしていないだけで、相澤の救助P評価は緑谷<新斗だ。「新斗の評価が不当に低いわけではないというのならば、緑谷の評価はどうなのだ?」という皮肉である。それに応えたのはネズミのような外見をした小柄なスーツの人物……いや、人ではない。世界で唯一確認されている動物に〝個性〟が発現した存在……『ハイスペック』の〝個性〟により非常に高い知能を手に入れた、『根津(ねづ)校長』だ。

 

「私としてはマイナス部分を矯正、昇華させることが大切だと考える。とはいえ君の不満はしっかり覚えておくさ! このロボ試験自体クレーム対策でこうなってるみたいなものだから色々不具合もあるだろうからね。そして緑谷くんについては、君のクラスに配属する事としよう。本当に見込みがないと思ったら、君の好きにするといいさ! どうだろうか?」

 

「……分かりました。ありがとうございます、校長」

 

 完全に納得したわけではないようだが、不満を表明したことで相澤の中ではすでに過去の事となったようで、合理的に次の指導のことを考え出したようだ。

 

「2位ノ爆豪モ例年カラスルトカナリ異例ダナ。新斗ガ居ナケレバ救助P0デ1位トイウ珍事ニナッテイタダロウ」

 

「すごいタフネスですよね。しかも尻上がりというか、火力が後半になるにつれて……」

 

 その後も教師たちが様々な生徒たちの話で盛り上がる中、相澤が校長に話しかけた。

 

「校長は緑谷も新斗も高評価していますね」

 

「そうだね! 緑谷くんは将来がとても楽しみだ。課題が明確で、指導しがいのある生徒と言えるだろう。そして新斗くんだが……彼女の〝個性〟は金属をもぎ取ったり切断したりする攻撃力があった。つまりやろうと思えば0Pロボも簡単に破壊することが出来たはずだ。しかし彼女は拘束したまま次の標的に向かおうとしていた。あきらかに手間のかかる方法を選んでいたということさ。彼女がなぜそんな事をしたのか? 答えは一つ。雄英の『経済』へのダメージを考慮したからさ! 彼女の視点はすでに他の生徒より一歩先を行っているよ」

 

 根津校長はあれを「力の誇示」ではなく「経済的配慮」だとみなしたようだ。最初に3種のロボットをバラバラにした時、すべての作業は空中で行われたが、その際には破片の一欠片も地面には落ちなかったし、それ以降は全てのロボにかすり傷一つ付けなかった。余裕の表れでもあるだろうが、本質は気遣いである、というのが校長の結論であった。

 




独自設定

・超電導リニア線:ヒロアカワールドのスーパー科学で生まれた。現実の特急くらいの扱い。寮になる前は全国各地から自宅通学してそうな印象なので捏造した。雄英の最寄り駅(駅名どっかで出てたら教えて下さい)は全国から乗り継ぎ無しで通える設定。
・ふーん、ロックじゃん:きょうからともだち。
・新斗黎乃:新を「ニュー」と読んでにゅーとりの。ウラビティリスペクト。にいとではない。
・マイクファン:「マイキッズ」はラジオリスナー限定なのかなぁ?ファンネームそのものでいい気もするけどまぁ一応。
・ロボのあれこれ:捏造。こういうのないと葉隠ちゃん受かれない気がして。救助Pだけで受かったのかもしれないけど。
・合格ライン:まぁ例年60~70くらいで受かってるんじゃないかなぁ。
・耳郎ちゃん36P:これくらいかなと。レスキューPもちょっと貰って12~20位くらいと想定。
・初の150P超え:140Pくらい稼いだやつがかつて居る想定。敵P70+救助P70的な。
・バウワウバゥワウッ!:気の緩みがあるんだろう!
・グルルオオーッ!:引き締めが必要だ!
・救助Pの審査:原作だと緑谷60Pに10・8・10・7・10の5つの札が上がっている。あと15点何処やねん、ってのと審査員誰やねんって考えたらこうなった。8人とか9人にする根拠がないので相澤先生が5点つけたことになった。校長(10点)は画面下で見えない、相澤は高く掲げず手元で挙げて画面に映ってない、と想定。
・みどりくん相澤クラス配属理由:捏造。
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