ボクのヒーローアカデミア くらっしゅ!! 作:ぺぺぺぺぺぺぺ
「TIME UP!! それじゃ早速上位4チームを発表するぜぇ! 1位! 耳郎チーム! 1億Pを保持し続けた上に追加ハチマキ獲得5本! ぶっちぎりのトップだァっ!」
ふぅ、と響香は息を吐いた。黎乃と組んだのだから安泰だ、などとは一切考えていなかった。むしろその逆、ペアになった以上敗北すれば……いや、1位を取れなければ自分の責任だと思っていたからだ。そして絶対に勝利に貢献してやる、とも考えていた。その目標はまぁ小成功と言ったところか。初っ端に4本ハチマキを奪い天空に駆け上がったときはあまりの目標の困難さにめまいがしたが、なんとかハチマキを増やすことができた。
「体育祭、モモちゃんとも組みたかったなぁ~」
「まぁそりゃウチもそうだけど。切り替えていこーよ。こっからは例年通りなら個人戦だからライバルだしね」
響香が決意の込もった声で告げる。メスガキは目を丸くしたが、すぐににんまりとして、体を傾けて響香の顔を下から見上げた。
「手加減しないからねっ! 響香ちゃんと当たっても、完膚なきまでに、勝つ!!」
「とっておきの新技を披露してあげるから、楽しみにしてなよ」
一通り宣言が終わると、響香はキリっとした表情を崩し、それを合図に仲良く二人で八百万の方へ歩いていった。
「2位! 轟チーム! 飯田の回避が輝いてたな! ハチマキは3本所持だァ!」
八百万は露骨にホッとした顔をしている。ようやく少しは誇れる成果を出せたと考えているのだ。公式の場で勝利と呼べる結果を出せたこと、そしてそれに貢献できたことに少しだけ失いかけていた自信が戻って来る。
「すまなかった、みんな。特に八百万は、俺のせいで余計な消費をさせちまった」
飯田くんもすっごい消費してますよ霜柱。轟坊っちゃんはちょっと男尊女卑の家庭で育ったので、逆説的に「男は働いてなんぼ」という思考がある。そのため迷惑をかけたとは思っているが個別の謝罪までは考えていない。今後の行動で示そうとか思ってる。親父の影響ですね。本人はクソ親父から戦闘以外何も学んでないと思っているが全くそんなことはない。
「そうですわね。今度何か食事でもご馳走していただきましょうか」
ふふ、と笑いながら言う八百万。上鳴はその手があったか! という顔をした。八百万の『創造』をいっぱい使わせたら一緒にメシに行ける! 上鳴は女子と食事をともにするのが大好きなのだ。下心もあるが『一緒にメシを食べると仲良くなれる』という成功体験が沢山あるということのほうが大きい。アホなのでその過程でかける迷惑については思考が及んでいない。八百万は男性を食事に誘った、という自覚はない。友人たちと見た映画でカッコイイと思ったセリフをシチュエーションが似てたので言ってみただけだ。当然轟は真に受けた。
「このあと昼飯だろ。そこでいいか?」
雑な誘い文句なのにイケメンがやると様になるな。テキトーじゃなくて自信に見える。上鳴は自分もまぁまぁ顔がいい事を棚に上げてそう思った。彼は自分の顔が良い自覚はない。中学生の時もキャラ的にイケメン扱いされてきていないので三枚目だと思っている。ヒーロー科は顔面どうので態度が変わったりしないので彼が自分の顔のよさにはっきりと気付くのはプロヒーローになってからだ。これは女遊び激しくなる典型的なやつ……。果たして彼は未来で面倒見の良い同級生女子の隣に事務所を出せるのだろうか?
「3位! 爆豪チーム! 所持ハチマキは2本! 一度全部なくなったのに奪い返したぜ!」
ギリギリギリギリ! 爆豪はクッソ歯ぎしりしている。第二種目を突破したにも関わらず、彼にとってこれは敗北なのだ。雄英高校に入学して以来負けて負けて負けまくってる、というのが彼の自己認識。常人なら耐えられなくなってもおかしくない挫折の連続。報われない屈辱の継続。にも関わらず爆豪はなお意気盛んだ。彼の負けず嫌いはもはや魂まで染み付いているのだろう。
「いや、爆豪マジすげーわ。俺だって悔しさはあるけど達成感のほうがでけえし」
「ね! あのドラゴンしのぎながらハチマキ取り返したのやったー! って思ったもん」
「ああ、本当にすげえよ!」
チームメイトたちも感心している。もちろん1位ではない事を悔しいと思う気持ちはみなもっているが、どこかで仕方がない、と思ってもいる。というかそれが普通というか、どちらかと言うと爆豪がいまだ現実を見られていない、という方が正しいのだが。向上心があり、最高峰たる雄英に相応しい生徒たちは、異常者の悪あがきですら自身の反省に繋げることが出来るのだ。では爆豪が間違っているのか? というとそういうわけでもないが。諦めが悪い、というのは美点でもあり欠点でもある。
「4位! 緑谷チーム! 堅実でクレバーな立ち回りで初期ハチマキを保持し続けた! まずは自分の身を守ること! レスキューの基本原則だなっ!」
マイクの声にも熱がこもっている。緑谷チームは無理して攻めず、しかしチャンスとあらば積極的に動き、一定の存在感を示し続けた。初見でドラゴンの突進を避けた成果か、最初の一度以降は襲われなかったのもこの結果に繋がった。
「事前の作戦が上手くハマったな。新斗が暴れるがゆえに初期Pを保持しておけば上位4チームには入れる。緑谷の予想通りだ」
「私としてはもうちょっと積極的に攻めても良かったと思いますけど! まぁドッ可愛いベイビーのアピールはそこそこ出来ましたし、勝てたので良しとしましょう!」
「皆のおかげだよ! 常闇くんの『
「やー、デクくんもおつかれさまだよ! びしばしいろんな攻撃からハチマキ守るのすごかった!」
予想できないメスガキの動きはとにかく距離を取る、という方針が功を奏し、最初から最後まで冷静に行動することが出来た。事前の計画の重要性、しかしそれが突発的に崩れることへの心構えと準備、『諦める』のではなく『覚悟』すること、全てレスキューの基本だ。メスガキという『災害』に備えた唯一のチーム、と言い換えても良い。その結果4人はかなりの余力を残している。このあとの休憩を経て、万全の体勢で挑めるだろう。
「さぁこのメンバーで最終種目だ! と言いたいところだがァ! 主審ミッドナイト! どーするよッ!?」
「うーん! あと二人、選びましょう! 5位のチームから、じゃんけんで!」
じゃんけん。まぁどう選んでも完全な納得など得られるはずがないのだから妥当と言えなくもないかもしれない。ミッドナイトが悩んだのは耳郎チームにシード権を与えるかどうかである。ペアで勝ち抜いた二人、ということで名分は立つ上に、進行もスムーズだ。しかし雄英体育祭はアピールの場であり、シード権が一概に有利というわけでもない。メスガキには大した影響はないだろうが、響香には大きな影響があるだろう。ここはやはり多少手間取っても正規の方式で行くことに決めた。
「オーケー! さぁ5位の心操チーム、チャンスだぞっ! 最終種目は16名でのトーナメント! ペアで勝った奴らがいるから、お前らの中から定員になるまで補充だッ!」
「すみません! 俺、辞退します!」
そう言ったのは『尻尾』の〝個性〟を持つ『
「いや、出てよ! このままじゃBクラスから最終種目に進んだ人が居なくなっちゃうだろ!?」
ギリギリ笑顔を維持しながらも必死な顔で叫ぶのは『コピー』の〝個性〟を持つ『
「むぅ……話は分かった。少し考えさせて欲しい……」
当人だけの問題ではない、となれば庄田も悩んでしまう。
「さっさと決めろよ。つーかじゃんけん先にしようぜ。お前が負けたなら悩む必要ないんだし、勝ったあと辞退したっていいんだからさ」
口を挟んだのはこの場にいる唯一の普通科、『
「じゃあ最初はグーからで?」
「一回練習しようか☆」
もう一人のじゃんけんメンバーである『ネビルレーザー』の〝個性〟を持つ『
「まてよ。練習で勝ったらなんか損した気持ちになる。反対だ」
「一度流れを確認しておくのは適切と考える」
「それはそうだが俺達が実際にやる必要はないだろ。人生かかってんだよこっちは。適当に済まそうとするな」
「そういうつもりはなかったが。とはいえ悩みながらこの場に立つ以上僕が受けるべき非難か。謝罪する」
「……俺も言い方が強過ぎた。すまない」
「いや。今僕が中途半端な気持ちでここに立っているのは事実だ。決断をじゃんけんの勝敗に委ねようとしている。恥ずべきことだ」
「庄田ァ! ごめん……! ごめん……!」
物間は本当に申し訳ないのだろう、涙をにじませながら庄田に謝っている。ミッドナイトは眼の前で繰り広げられる青春劇に大興奮しているようだ。茶化すような気持ちは無いため、真面目な表情を作ろうと頑張ってはいる。いるが、全く上手く行っていない。美人が台無しである。いっそのこと「そういうの好き!」と表明したほうが良かっただろうが、いまちょっとお姉さんぶりたい気分だったので。
「いいんだ。それじゃあ最初はグー、じゃんけんぽん、という一般的な流れで行こう。どうだろうか」
「ウィ☆良いと思うよ☆」
「あぁ。それじゃあ頼む」
「よし。行くぞ! 最初は! グー! じゃんけん! ぽん!!」
勝負は一発でついた。勝ったのは『心操人使』と『庄田二連撃』だ。
「ア──ッ!」
負けた青山は奇妙な声を上げてゴロゴロと地面を転がった。いつだかのメスガキの恥ずべき痴態といい勝負だ。最高峰の姿か? これが……。
「はは……やった……! いや、これからだ、これから……」
「そうか。勝利したか。それでは僕も出場させてもらうよ!」
心操は己の手(グー)をじっと見つめて呟いた。庄田はじゃんけんで勝ったことで出場を決断したらしく、もう先程のような迷いは見られない。物間は無言で庄田の背に頭を押し付けている。
「私たちの代表! 頑張れよ!」
「庄田氏! ファイトですぞー!!」
「俺等の分まで頼むぜ!」
Bクラスの面々はそんな物間には触れず、口々に庄田へとエールを送った。
「くぅー! クラスの想いを背負って戦う! 漢だぜっ!!」
一部始終見ていた切島はBクラスのすごい一体感を見て感動していた。いつか俺達もこんなふうに! と心に決めたあと自分のクラスのことを思い浮かべ、アレ? なんかこういうふうになる未来が見えないな? とちょっと不安になった。しかし、切島は諦めない。爆豪を見ろ。
『無理だろ』『諦めろよ』『出来るわけがない』
そう言われてもおかしくない、いや、そう言わないほうがおかしいような目標(メスガキに勝つ)へ、脇目もふらずに突っ走っている。切島にとって爆豪はクラスメイトであるとともに尊敬する漢でもあった。しかし、切島くんは思いました。俺が今夢見た風景。クラスみんなが仲良くする未来。一番の障害、こいつじゃねえか!!
『死ね』『勝手にやってろ』「アホくさ」
言いそう! いや、いま言ったわ! なんでこいつはこうなんだよ!! そこまで思って切島は気付いた。そうじゃない。そうじゃないだろう! 俺が、まず友だちになる! 順番だ! 一つずつ積み重ねるんだ! 彼は他人を責めたことを恥じて、自身を変えることを志した。人間が出来ている。爆豪とはえらい違いだ。人間が出来ていないやつと友人になれるのはやはり人間が出来ている人物なのだろう。
「最終種目に進むメンバーは決まったみたいだな! 頑張れよォ! それじゃあ1時間ほど休憩を挟んだら午後の部だ! 昼飯済ましとけよ! シーユー!! おい、消ちゃん、メシ行こーぜ! 」
「よっ! 久しぶりだな! お茶しよ? エンデヴァー!」
「オールマイト……」
「前回は対談だったよね! 10年前の! 見かけたから挨拶を……」
「失せろ! 貴様のニヤケ面など見たくない!」
「ちょ、そんな事言わずにさ! 後継者の育成、苦労してるんじゃないか? 実は私も先生になって悩んでてさ! 今ならもっと実のある話を……」
「くどい! 失せ……いや、質問に答えろ……正直に言えば付き合ってやろう」
「えっ……! えーと、内容次第かな! な、何?」
オールマイトはドキドキである。もしかしてなんかバレた? エンデヴァーはオールマイトをライバル視しており、いつか越えると公言している男だ。個人的にはめちゃくちゃ頼もしい! と喜んでいたのだが、その強さの研究だ! とばかりに対談でドチャクソ絡まれて根掘り葉掘りされたので、ほんのり共演を避けるようになった経緯がある。オールマイトに避けられたせいでエンデヴァーはマスメディアに使いにくい男と認識され、事件解決数No1にも関わらず、この10年間イメージは悪いままである。
「あの学生……新斗と言ったか……お前ならアレに勝てるか?」
「あー! その話か! うーん、勝つってつまりぶん殴って黙らせるってことかな? そんな機会は訪れない! これが私の回答だ!」
オールマイト。まさに誤魔化しのプロ。質問に回答した、という空気だけでゴリ押す! 息子に似てちょっと天然なエンデヴァーはあっさり引っかかってしまった!
「くっ……! そうではない! アレが敵になった時! お前は止められるのか! そう聞いているんだ!」
質問の回答になってないだろ! そう言う事も出来たのに、エンデヴァーは回答だと認めてしまった。むさいおっさん二人のティータイム確定である。クソナードは大歓喜するだろうが。轟炎司。息子と同じ、闇のコミュ障……! レスバ弱者……!!
「彼女は敵になどならないさ! そうさせないのが私の役目だ!」
RED HERRING SMASH! すなわち、話題そらし! オールマイトの心のなかにある誠意ある回答は「そんなもんやってみなきゃ分かんねえよ」であるが、平和の象徴としてそんな事言えない! 特にエンデヴァーはオールマイトに結構幻想を持っているタイプ。夢を壊したくない。がっかりさせたくない。期待に答えたい! オールマイトはそう思ってしまうのだ。オールマイトは汚い言葉は使わないが、レスバは結構強い。なにせ実績がすごいからだ。私は出来たけど? HAHAHA! で相手は黙るしかない。案の定エンデヴァーは黙り込んでしまった。
「…………」
「あ、ちょっと何処に行くんだい!? 正直に言ったのに!」
どの口が言うのだろう。確かに虚偽ではない。嘘はついていない。だが、正直に言った、というのとはぜんぜん違う。オールマイトにとって『正直』とは友人の警察官である『塚内直正』くんの虚偽を見破る〝個性〟に引っかからないもののことを言うのだろう。クソ詭弁である。お分かり頂けただろうか? そう! オールマイトは光のコミュ障!! アメリカ時代は相棒の『デイヴ』が色々と取り持ってくれたのでそれなりに濃い付き合いもあったのだが、日本では全然だ。塚内くんもゴリゴリに仕事繋がりの縁である。
「便所だ! ついてくるな! ここに居ろ!」
無言で動くことであわよくばすっぽかそうと思っていたエンデヴァーだが、結局約束を守ることにしたようだ。悪いところばかりじゃないぜ、エンデヴァー。焦凍くんとホークスを見れば分かるよ。ヒーローNo1と2のむさ苦しいティータイムは一体どうなるのか? 答えはCMのあと!
「轟。ウチらもいいの?」
「ああ。先約があったんだからそっち優先だろ。新斗もありがとうな」
中庭の一角、メスガキが〝個性〟で作った椅子と机に、出店で買ってきたたっぷりの食品が並んでいる。食堂に行けばランチラッシュのハイクオリティな定食が食べられるが、お祭り気分を楽しむため、そして八百万に大量に食べさせるためこのような形式になった。轟くんは姉にお小遣いをいっぱい貰っているので八百万がお腹いっぱいになるだけの量でも余裕である。なおこれはエンデヴァーが娘を通して息子に渡しているお小遣いであることをボンボンは知らない。ただの教師では無理のある金額であることにいつか気付くだろう。
「午後のためにもたくさん食べなければ!」
パクパクですわ! という感じで食べ始める八百万。じゃあウチも……という感じでぼちぼちたこ焼きをつまむ響香。
「轟くんさぁ……ボクの言いたいこと分かるよね?」
メスガキはメシも食わずに頬杖をついてジトーっと轟を睨みつけている。なかなかのGANRIKIだ。
「いや。分かんねえ。教えてくれ」
「あのさぁ! 分かんねぇじゃないでしょ! モモちゃんに迷惑かけたこと以外するべき話ある??? ねぇよなぁ!!」
メスガキ、キレた!
「そのことか。本当に申し訳なかった。くだらない意地だった。良かったら話、聞いてくれるか、八百万」
八百万はパクパクしながらコクコクと頷いた。実際気になっていたし、詳しく聞けば力になれるかもしれない、とも思っていた。とりあえず勝てたのでだいぶ心に余裕が生まれて、ゆっくり聞ける状態だ。
「お前たちも食いながらでいいから聞いてくれ。俺の家族の話だ。個性婚、って知ってるよな。倫理観の欠落した前時代的なそれで、俺は生まれた」
轟はゆっくりと話した。エンデヴァーの上昇志向。炎だけではオールマイトには勝てないという諦念。親族を丸め込み、母の〝個性〟を手に入れたこと。息子にその夢を押し付け、道具にしようとしたこと。記憶の中の母がいつも泣いていること。そのせいで追い詰められて精神を病んだこと。
「『お前の左側が醜い』と母は俺に煮え湯を浴びせた。
八百万はパクパク食べながらも涙ぐんでいた。響香は壮絶な過去に言葉を失い、たこ焼きを食べることしか出来ていない。轟はゼリー飲料を「ヂュッ」と飲み込み言った。
「これが俺が炎を使わなかった理由だ。使わずに1番になることで、あいつを否定したかった」
「はぁー? なんだよそれ? 意味分かんないんだけど?」
「マジか。何処が分かんなかった?」
轟は困惑した。出来る限りわかりやすく話したつもりだった。
「ツッコミどころ多すぎるでしょっ! 中途半端すぎる! お父さんに嫌がらせしたいならヒーロー目指すのやめれば? 一番効くよ!」
「!!」
驚愕に目を見開く轟。八百万は似たようなことを思っていたのだろう。驚きはなくパクパクしている。事情は悲しいものだが、それを受けた轟の言動は論理的におかしなことばかりなのでメスガキの話に特に異論はない。響香はかなり感情移入していたらしく、轟と同じくらい驚いている。
「え、えっと、なにかヒーローになりたいきっかけがあったんだよね? エンデヴァーに憧れたわけじゃないんでしょ?」
大多数のクラスメイトがそう思っていたことだろう。偉大な父とそれによるプレッシャー。轟のとっつきにくさはそういうストーリーが背景にあると、誰もが想像していた。
「……ああ。俺が憧れたヒーローはオールマイトだ。お母さんと見ていたテレビ番組で言っていたんだ。〝個性〟は親から子へ受け継がれる。けどそれより大事なのは自分の血肉、自分である、と認識することだって。『私が来た』っていうのはそういう意味もあると。その言葉に、勇気をもらった。俺も誰かに……」
「そんなことよりさぁ、なんで1番目指してるの? ボクが居る以上キミには無理だけど聞いておいてあげる。一番になったらお父さんの夢、叶っちゃうじゃん? ていうかさ、そういう事情なら炎だけで1番になったほうが復讐になるよね!」
『炎だけでは1番になるのは無理だから氷を求めた親父』を否定するために『氷だけを使って1番になる』。これだとエンデヴァーの言ってることを完全否定などできない。『炎だけじゃ無理』を否定したいのであれば、『炎だけで達成』せねばならない。氷で一番を達成すると『半分くらいは正しかったね』となる。というか氷などエンデヴァーにとっては炎を使うためのパーツでしかなく、もっと言えば炎も同じ。『No1になるための
「エンデヴァーを憎んでることまで嘘だとは思わないけど……でもそれ炎を使わない理由と関係ないよね? だって『No1ヒーローになる』のも『最高傑作』なのもエンデヴァーの野望だってキミは言うけど、全然気にしてないじゃん」
俺、ヒーローなんてやんないよ。そうならないのは本人がヒーローになりたいからだ。自分の願望とエンデヴァーの願望が一致していても、全く気にしていない。
「キミが炎を使いたくない理由はエンデヴァーじゃないでしょ? お母さんだよ。『お母さんが嫌がったから』使いたくないんだよ。それをエンデヴァーのせいにしてるだけ」
アツかった。イタかった。でもおかあさんのこと、キラいたくない。ウラみたくない。
じゃあこのキモチはどうしたらいい。そうだ。ぜんぶおまえがワルい。おまえのせいだ!
「自覚しろッ! キミはお父さんに甘えてるんだよっ!」
「俺が……クソ親父に……」
先程自覚したばかりの気持ちと重なる。『炎』に縋る心。認めたくない。認められない。そのはずなのに。心は思ってしまっている。その通りだ。だって、怖かった。怖かったんだよ、お母さん。僕のこと、嫌いになったの?
「えーと、リノ、そのくらいにしとこ? あのね、轟、リノはアンタに、お父さんと仲直りしてほしいんだよ。仲良し家族が最高だって、心からそう思っているから。アンタに幸せになってほしいんだ」
「…………」
「ご家庭それぞれの事情があるかとは思いますが……そう、リノちゃんがよく言ってますわね。成長に欠かせないもの……自己分析、そして客観視ですわ。轟さんがご自分のお気持ちをしっかりと見つめることはきっと前に進むきっかけになるかと。リノちゃんの言ってることが、どれくらい正しいのかは、私にも分かりません。ただ、あなたを傷つけるための言葉ではないことだけは、知っておいてほしく思います」
「エンデヴァーがそんなマダオ(間違いだらけのおっさん)だったなんてがっかりだなぁ。打倒オールマイト仲間だと思ってたのにぃ! あ、そうだ、ボクがマダオをぶちのめしてあげようか?」
メスガキは明日遊びに行こっか? と言うのと変わらないノリで恐ろしい提案をした。メスガキは身体能力だけでも最強ケタ違い。〝個性〟を使う必要すらなく、ぶちのめせるだろう。
「まぁ! 良い考えですわ。No1など所詮相対的なもの。明日オールマイトが引退すれば自動的にエンデヴァーに転がり込んできて、リノちゃんがデビューすればすぐ終わる砂上の楼閣。しがみつく価値のない空虚な玉座だと分かれば、ご家族のことをもっと真剣に考える切っ掛けになるかもしれませんわ!」
八百万はこれマジで言ってる。皮肉や当てこすりではない。真実轟一家に幸あれと願い、それに近づく名案だと思っているのだ。
「リノもヤオモモも悪乗りしないの。ほら、轟も食べなよ。何にせよ午後から頑張ろ! ……コンディション回復しないと、ウチと当たったら負けちゃうよ?」
「……ああ、そうだな。メシ……食わないと……」
ぼんやりとお好み焼きをつまむ轟。メスガキはてへぺろ、という感じの顔をしたあと「まぁ今のは冗談だけどその気になったら言ってね」とたいやきをぱくつきはじめた。八百万はいきなりはしごを外され「え?」という顔をしてパクパクを停止した。
「ムー! 冷めちゃってるじゃーん! 轟くん、ほら!」
「……?」
「炎だよ、炎っ! 炙って! はやく! やくめでしょ」
No2んとこのアホボンは戸惑いながらも言われるがままに小さな炎を出す。メスガキは自分の手が炎に当たるのも気にせず素手でたいやきの表面を炙っている。轟はぎょっとしたが八百万も響香もノーリアクション。既に知っていたらしい。
「んー! 表面カリッとしておいしい! 和スイーツもいいよねぇ~!」
一つ解決したと思ったらまた一つ。青少年の悩みは尽きず、しかし腹は減る。自分のお好み焼きもちょっとだけ炙ると、表面がカリッとしておいしくなった。あったかい。おいしい。しょうもない計略を携えた峰田と上鳴がやってきて「ウワーッ! イケメン巫山戯るなぁァアアア!」「ウ……ウソだろ こ……こんなことが こ…… こんなことが許されていいのか!」と大騒ぎするまで轟のハーレムごはんは続いた。アホとスケベは勘違いしているが、そういう下心がないから女子がこういう状況を許すのであって、顔面は全く関係ない。顔が良くても上鳴はNGだし、例えば峰田が轟と身体を入れ替えて混ざろうとしても蹴り出されんだよ。分かれよな。
独自設定
・轟家男尊女卑:家の女は皆ダメダメなんだ!
・上鳴くん:モテたいなら峰田とつるむの辞めたほうがいいよ。
・じゃんけんで!:いんじゃんぴょん?静岡だと何なんだろう。
・シャベッタアアア:3話でも喋ってた。忘れてた。
・庄田くん:ジャージの背中がぐっしょり。
・心操くん:こっからだ!俺は……!こっから……!いいか!?俺はここで
・青山くん:ごめん……!ごめん……!
・お姉さんぶりたいミッナイ:そういうときもある。
・マスメディア受け:事件解決数No1すごい。
・アホボンのお小遣い:体育祭あるから多めにもらった。
・中庭で屋台で買ったごはん:生徒が買いに行けるか不明だけどまぁ出来るってことで。
・そんなことよりさぁ:おうどん食べたい。
・轟くんの夢:エンデヴァーのこと言うほど気にしてねえなって。
・マダオDVD再び:園児さん。
・過激な八百万:ちょっとメスガキに毒されてきてる。
・たいやき:尻尾まであんこぎっしり。ただメスガキは生地も好き。