ボクのヒーローアカデミア くらっしゅ!!   作:ぺぺぺぺぺぺぺ

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みんなはどんなメスガキが好き?
みたいなクソアンケしたい


『人格を認めてもらいたければモラルを持ちなさい』

「オハヨー諸君ッ! ボクに負けたことはちゃんと飲み込めたかなっ!? がっかりするなよ! オールマイトに負けてるからって皆気にしないでしょ? 同じことだよッ!」

 

「朝からうるせぇ! 黙れ!」

 

「おやおやぁ~? 譲れない一番……誰よりも早くボクに返事をしたい! そういうことかなぁ~?」

 

「てめぇの自己肯定感どうなっとんだクソボケ!!」

 

「二人とも! そろそろ時間だぞ! 席につこう!」

 

「はーい! ……飯田くん、どうしたの? 何があったの? ボクに話してみてッ」

 

 いつもならすぐに席につくメスガキが今日は珍しく従わない。飯田だけでなくクラス中が戸惑う。メスガキは意外と規律にうるさく、飯田の着席の指示に逆らったことは一度もなかったからだ。

 

「……何も無いさ! 大丈夫だ! さぁ、チャイムが鳴っている。席についてくれ!」

 

「飯田くん! 無駄だよ! 優先順位が違うんだッ!」

 

 その時、スッと不審者が教室に入ってきた。担任の相澤だ。いつもピシッと席についているはずの飯田とメスガキがチャイムが鳴っているにもかかわらず立っているのに気づくと、何かを察したような顔で声をかけた。

 

「おはよう……何の騒ぎだ?」

 

「先生ッ! 飯田くんが変なんです! いつもとぜんぜん違うんです! 表情も、声も、雰囲気もッ!」

 

 メスガキは相澤の登場にも全く怯んでいない。それどころか「頼りになる人が来た!」みたいな顔で相澤に話を振った。

 

「その事か。……飯田、どうする。俺から説明してもいいが。今日の一限はHRと合わせたヒーロー基礎学の予定だし、融通は利く」

 

「……家庭の事情で皆に心労を掛けるのは本意ではありません」

 

 声を潜めて、飯田は言う。関わらせたくない、関わってほしくない、という黒い気持ちもある。

 

「お前のみならずここに居る全員、ヒーローとして生きるなら避けては通れないことだ。もっと冷たい言い方もできるぞ。聞くか? 言いたくない理由がそれなら、俺は話すべきだと思う。様子見しようかと思っていたが……そういうわけには行かなくなった。クラスメイトに「変だ」と言われるレベルみたいだしな」

 

「……先生の仰るとおりです……お任せします……」

 

「それじゃあ全員席につけ。予定を少し変更して特殊授業を挟むぞ。知ってる者も居るだろうが、先日『ターボヒーロー インゲニウム』が『ヒーロー殺し』に襲われ、意識不明の重体となった」

 

 ざわめく教室。インゲニウムは飯田の兄だ。いつも彼が嬉しそうに話していたので、それを知らないものはいない。ニュースなどで既に事件を知っていたものは、沈痛な表情となる。メスガキは知らなかったようで、物凄くショックを受けた表情をした。

 

「意識不明の重体!? 大丈夫なんですか!?」

 

「一命は取り留めた、としか俺は聞いていないな。……とはいえ予想はついている。飯田、どうだ。強制はしないが、詳しく話せるか?」

 

「はい……皆、聞いてくれ。僕の兄であるインゲニウムは、ヒーロー殺しに襲われた。兄は……言っていた。足の感覚が全く無い、と。脊髄損傷で下半身麻痺。もうヒーロー活動は叶わないそうだ」

 

 教室が静まり返る。ニュースではまだそこまで詳しくは報道されていない。重体だが命に別状なし。そういう内容だった。だから知っている生徒も、そのうち復帰するだろう、と無意識に思っていた。相澤が硬い声で生徒一同に告げる。

 

「ヒーロー活動は危険と隣り合わせ。インゲニウムほどのヒーローでも安泰ではないということだ。お前たちにとっても全く他人事じゃない。今すぐ受け止めろとは言わないが、心に留めておけ。『それ』がいつ訪れるかは誰にも分からん」

 

 相澤の授業で無駄口を叩くものなど居ない。しかし今日の沈黙はそのようなものとは違っていた。USJでズタボロになった相澤の言葉だからこそ、生徒たちの心には強く残り、言葉を発することが出来なかった。

 

「生きていて、喋れたんだねッ! よかったぁ……。飯田くん! 大丈夫! 生きているなら、ヒーロー活動は出来るよッ! 戦闘ができないからって、ヒーローじゃなくなるなんてことはない! もしそんな世の中なら、ボクがこれから変えるから!」

 

 場違いに明るく底抜けに脳天気な声。誰も口を開けない。何を言っているのか、分からなかったからだ。良かった? 良かったと言ったのか、彼女は。しかし飯田には、その言葉の真意が伝わったようだった。

 

「…………新斗くん! ありがとう! その通りだ! 兄が生きていて、良かった! 治療があと2分遅ければ、死んでいたと聞いた。もう二度と話せない。そんな未来よりも、良かったのは確かなことだ!」

 

 飯田くんは人間が出来ている。メスガキの無神経な言葉から言いたいことを汲み取り、感謝の言葉を返した。飯田とメスガキは何気に仲が良い。席が前後でよく話すし、末っ子の飯田は兄というポジション自体にも憧れがあり、メスガキの世話を焼くことでちょっとその欲求を満たしているところがあった。しっかりとした信頼関係があってこそ、誤解無く受け取ることが出来た。ハラハラした顔で見ていた響香はホッとした顔をしたあと、飯田に声を掛ける。

 

「飯田は立派だね……ウチはインゲニウムのことそんなに知らないけど、そんな飯田が尊敬しているインゲニウムは、すごいヒーローだったんだって分かるよ」

 

「ああ……とても立派なヒーローだった……兄は……僕にインゲニウムの名を継いでほしい、と言った。……僕はそれを受け入れることは出来なかった。僕にとってインゲニウムとは兄のことだったからだ」

 

 俯いて震える声で喋る飯田。一人称も素のものになっている。ややあって、飯田は顔をあげて声を発した。

 

「先程までは、だ! ……ヒーロー、インゲニウムは死なない! 僕が……俺が死なせない! そう決めた!」

 

 兄の願い。自分に継いでほしいと言った意味。そう、『兄』は弟に……妹にカッコつけたいものなのだ。憧れの存在でありたいと、強く思う。

 

「良く言ったわ! 飯田くん!」

 

 ガラッ! と教室のクソデカドアを開けてミッドナイトが入ってくる。もう完全にタイミングを見計らっていたのだろう。相澤が勝手に予定変更して深刻な話をしていたので、ミッドナイトは一旦帰ろうかどうしようか迷っていたところだった。飯田が力強く宣言したことと、辛気臭い相澤ではなく華やかなミッドナイトが来たことで教室の雰囲気が若干上向いた。

 

「イレイザーヘッド! 総括をお願いするわ!」

 

「いいかお前たち。死ぬな。ヒーロー活動と犠牲は切り離せない。だからこそ、死を恐れろ。勇気とは恐れを知らないことではない。恐怖に立ち向かうことだ。以上。それじゃあミッドナイトさん、お願いします」

 

 生徒たちはその言葉を胸に刻みつけた。メスガキが振り向き後ろの席の飯田の表情を確認する。すると、彼は硬いながらも笑顔を見せた。メスガキは安心したようで、いつものドヤ顔でミッドナイトの方に向き直った。

 

「さっき飯田くんが宣言した通り、ヒーロー名はまさにそのヒーローの生命とでも言うべきもの! 今日のヒーロー基礎学では、みんなの『ヒーローネーム』を決めるわよー!」

 

 曰く、プロからのドラフト指名、すなわちいわゆる職場見学の際に、実際の活動を行うため、ヒーロー名が必要である、とのこと。

 

「指名の集計結果! 発表するわ!」

 

 ミッドナイトがそう言ってリモコンを操作すると電子黒板に生徒の名前が指名数順に表示される。

 

 新斗  10358

 轟   1169

 爆豪  895

 飯田  301

 上鳴  272

 常闇  183

 緑谷  129

 八百万 108

 耳郎  88

 麗日  20

 瀬呂  14

 切島  12

 芦戸  2

 

「例年はもうちょっとバラけるんだけど……今年はこうなったわ! と言っても1年生に来る指名っていうのはほとんどが興味本位! 本格的に将来につながるのは2~3年からだから悲観することはないわよ!」

 

 メスガキがぶっちぎりなことは今更なので特に言及しない。授業のあとでいっぱいナデナデしてあげよう。教師としてではなく、香山睡として。

 

「まさにケタ違いだな……」

 

「爆豪順位の割に人気あるじゃん」

 

「私だけ一桁! なんでぇ!?」

 

「試合内容考えたら分かるだろ」

 

 ちなみに芦戸を指名してきている2件はどちらもセクシー系のヒーロー事務所である。

 

「それじゃあとりあえず15分間のシンキングタイムよ! 出来た人から発表してもらうから、挙手してね!」

 

「ハイッ! ミッドナイトせんせー! ボクもう考えてます!」

 

「さすがね! それじゃあこっちに来て発表して!」

 

 メスガキは自信たっぷりに教壇に立ち両手を広げて演説をする。

 

「諸君ッ! ヒーローにとって最も必要なものとはなんだろうかッ!」

 

 また始まった……という空気がクラスに広がる。体育祭で一席ぶったのが気持ちよかったのか身振り手振り付きだ。しかし、いつまでも暗い顔をしているわけにもいかない。とりあえずメスガキテンションに乗ってバイブスを上げていこう。そう思ったのか、今日は聞き流されずにそれなりの反応が返ってきた。いつもの自画自賛ではないのもあるだろう。

 

「なんだろ? 強さ?」

 

「優しさじゃない?」

 

「侠気じゃねえか!?」

 

「人気じゃね?」

 

「目立つこと☆」

 

「勝利に決まってんだろ」

 

「人助けかな?」

 

「答えは──っ! なにかなぁ? それは! 『安心』だっ!」

 

 メスガキはモニターを操作できないので〝個性〟で中央に『安♡心』と書いてあるハートを形作ってふわふわと浮かべた。

 

「タシカニ!」

 

「まぁ分かるけど、最もって言うほどか?」

 

「最重要の根幹だよ! 安心なきヒーロー! そんなものは存在しない! 〝個性〟を振りかざし他者に不安を与えるような存在、それは『(ヴィラン)』と呼ばれるからだッ!」

 

 強さ、優しさ、侠気、人気、知名度、勝利、人助け。それらは全て信用、信頼、安心を得るためのものだ。それら無くして〝個性〟を使うものは、社会に不安を与えるもの……ヒーローと表裏一体でありながら最も遠い存在となる。

 

「ボクが社会に齎すもの! そうありたいと願うもの! それをこの名に込めました! じゃーん!!」

 

 フリップには可愛らしい丸文字で『ドリームヒーロー☆ホーリーナイト』と書いてある。これは普通に書くんかい。

 

「待ち遠しい明日を! 安らかで祝福された眠りを! キラキラ輝く夢のような満天の星空をお届けしまぁすッ! 皆も応援よろしくねっ!」

 

 きゃるーん☆という感じでエフェクトを出しながらポーズまでとっている。メスガキにとってはクラスメイトもファン候補らしい。いや、結構醜態も見せてるから厳しいんじゃないか? 遠くにいると良くても近くにいるとうざいタイプだからよ……。

 

「素晴らしいわ! 〝個性〟と関連性があり、ヒーローとしてのテーマ性もばっちりで、商業的な展開すらも想像ができる、まさにお手本のようなネーミングよっ!!」

 

 ミッドナイトは感動しているようで、目尻にはうっすら涙が浮かんでいる。一瞬身体が前傾姿勢になったのは恐らく抱きしめに行きたかったのだろうが、なんとか堪えたようだった。名前の末尾が「~ナイト」なのも情緒がバグった一因だろう。ミッドナイトの脳内ではメスガキが自分の妹だったかのような気すらしていた。姉を名乗る不審者の貴重な誕生シーンである。メスガキはミッドナイトに会う以前からネーミングを決めていたため彼女の影響を受けた訳では無いが、彼女のことは大好きなのでミッドナイトがもし「私のヒーロー名を参考にしたの?」みたいな質問をしたら何らかの好意的、肯定的反応を返すと思われるのがややこしさを増している。

 

「ありがとうございますッ! 最強に可愛いボクはネーミングセンスも抜群ということですね! さぁ! ボクより素敵なヒーロー名を出そうって気概のあるやつは居ないかッ!」

 

 空気がひりついた。禁忌:黒龍融合(ブラックドラゴンエクリプス)がなんか言ってらぁ。まぁ勿論各生徒たちも「自分がヒーローになったらこういうヒーローネームにしよう」と考えたことのないものは居ない。なんならヒーローを目指して無くても一度は考えるものだ。そういう無邪気な妄想のなかで一番多いのは「~マイト」みたいな某No1をパロったものである。『ホーリーナイト』もちょっと掠ってるが無関係だ。中には「スーパーオールマイト」とかいう怖いもの知らずな名前を付けるやつも居る。もう本当に幼児。大体中学生くらいになってもまだヒーロー目指しているようなのは多少現実が見えてくるので、パクリマイトから卒業し自身の〝個性〟に合わせたネーミングを妄想しだす。ただ、すぐにそれを出せるかというと、心の準備が必要になるのだ。

 

「じゃあ次はウチが……昔考えてたやつだけど……」

 

 響香の出したフリップには『ロックヒーロー ハートビート』と書かれている。

 

「わぁっ! カッコイイ! けど前聞いたやつと違う!」

 

 メスガキは大変お気に召したようで歓声を上げたが、すぐに疑問顔になった。ヒーローになったらヒーロー名を云々……というトークは定番のもので、ある程度仲が良ければ「もし自分がヒーローだったらこんなヒーロー名」みたいな話はだいたいやる。〝個性〟トークと合わせて鉄板の話題だ。ただしこっちは言いたがらないものも多いので注意が必要である。当然メスガキは響香や八百万からどんなヒーロー名にしたいか聞き出しているし、自分のそれも教えている。

 

「ああ……前言ってたやつはさ。音楽やりたい自分との決別っていうか……ヒーローに打ち込むって覚悟のつもりだったんだけど。ウチもリノみたいに欲張ってみようかなって」

 

『ヒアヒーロー イヤホン=ジャック』。つい最近まで、名乗ろうと決めていたヒーロー名。音楽を発するのではなく、救けを求める声を聞く。そうした覚悟を込めたヒーロー名だった。人生において決断とは『断つ』という言葉通りまさに身を切るような痛みを伴うもの。響香は周りよりも早く将来に関わる一大決心を行ったため、周りよりもひと足早く大人になっていた。しかし、壮大な夢を抱く友人にあてられてしまい、僅かに残った幼い心が悲鳴をあげて反逆してきたのだ。メスガキは先程のミッドナイトのごとく情緒のバグった顔で目をキラキラさせながら響香を見つめている。

 

「なりたい自分になる覚悟ね! すごく良いわよー! リアルな話、音楽は需要がつきないのもグッド! さぁ、もう決めている子は時間を待たずに挙手していいわよ!」

 

「それでは私が発表いたしますわ!」

 

 友人が続けて発表したことでソワソワしていた八百万がいそいそと壇上に移動して出したフリップには『万物ヒーロー クリエティ』と書かれていた。

 

「創造的を意味する『クリエイティヴ』からアダムの肋骨から生まれたという『イヴ』を抜かしたのね!? まさに貴方の〝個性〟を表すピッタリの名前だわ! 教養と茶目っ気のバランスが素敵!」

 

 八百万はネーミングでは遅れを取らなかったようだ、とホッとした顔をした。響香とメスガキはそれをほんわかした表情で見つめた。ミッドナイトはその後もテンション高めに皆のヒーロー名を褒め続けた。

 

「爆心地!!」

 

「うーん! 悪くはないんだけど、ちょっと災害や事故を連想しちゃう名前だからもう少し考えてみて! なりたいヒーローを思い浮かべるのがポイントよ!」

 

 爆豪はセンスの塊の才能マンだが、ネーミングに関してはあまり得意ではないようだ。なんだそれは? ギャップ要素のつもりか? 鼻につくんだよボケカス! かっちゃんは考えるのにかなり苦戦しているようでフリップに書いては消してを繰り返している。その後も色々なヒーロー名を生徒たちが発表していき、ときに却下されたりしつつも、例年よりもスムーズに決まっていった。

 

「大体決まったわね! あと決まってないのは再考の爆豪くんと……緑谷くんね!」

 

 緑谷出久の名乗るヒーロー名。かつてノートに書いていた「マイティ」「オールマン」「オールマイトJr」「スーパーマイト」「マイティボーイ」「マイティマン」「キャプテンオールマイト」「スーパーオールマイト」などという怖い物知らずのクソネームを発表するわけにはいかない。なりたいヒーロー。自分の形。

 

『エールヒーロー デク』と書かれたフリップを掲げる。

 

「僕のヒーロー名はこれです! 好きなあだ名じゃなかったけど、ある人が意味を変えてくれました。「頑張れって感じがする」と言ってくれたんです。『エール』も本来の意味は叫ぶ、とかですけど日本では応援の意味でよく使われていますので合わせました!」

 

「良いわね! ストーリー性、テーマ性を感じるわ! それじゃあ残るは爆豪くんだけね! 皆で考えてあげましょう!」

 

 最悪のやつが始まってしまった。「それじゃあ二人組になって~」を上回る破壊力の、教師が放つ必殺兵器である。かっちゃんは当然うろたえた。ろくでもない未来しか見えない。今まではこういう時に好き勝手に言う側だった。かっちゃんは攻撃は得意だが防御は得意ではないのだ。『攻撃は最大の防御』以外の手札はすかすか♡防御よわ~い♡ざぁこ♡

 

 負けないで……ダイナマイト……。

 

「爆発さん太郎!」

 

「ボムボムプリン!」

 

「クソ下水鍋!」

 

「ウニヘッド!」

 

「バ火薬庫!」

 

「ノンデリポップコーン!」

 

「大爆勝!」

 

「手汗マン!」

 

「パチパチくん!」

 

「ドン勝ちゃん!」

 

「爆乳揉む気!」

 

「があああああああッ!!!!」

 

 案の定好き勝手に言う周りに爆豪のストレスは限界だ。なんなんだこいつらは? 百歩譲って提案してくるまでは良いとしても、真面目に考えていないのはどういうことだ? てめぇら自分のヒーロー名もそうやって付けたのかよ? つーか殆どただの悪口じゃねえか! 

 

「爆豪くん! 怒るのは分かるわ! でもこれが貴方の現実よ! どれだけ格好のいいヒーロー名を付けても、その名前で呼ばれないことはままあるわ! 通称のほうがよく広まってしまって結局それに改名した、なんてありふれているの!」

 

 しょうもない吊し上げなど最高峰たる雄英の教師がするはずがない。当然しっかりとした意図があり行ったものである。学校の教室。社会の縮図だ。周囲からどう見られるか、それはすなわちヒーローとしてどう在れているかということなのだ。本人だけが分かってれば良い、などというのはただの甘え、独りよがりである。

 

「名は体を表す! すなわち、体から名がつくこともあるのよ! 呼ばれたい名前があるのなら、行動もその名に沿うものにしなければならないわ!」

 

 爆豪は黙り込む。自分がどんなヒーローになりたいか、そんなのは決まっている。オールマイトみたいな勝ちまくりのヒーローだ。そしてオールマイトみたいにドチャクソ稼いで高額納税者ランキングにも名を刻む。クソオヤジとクソババアにはハワイ旅行でも……って何考えとんだクソが。取らぬ狸の皮算用である。爆豪は童貞なので分かってないがそんな事したら年の離れた弟妹が出来ちゃうぞ。息子がクッソ手が掛かるから二人目を『我慢』しているだけなのだから。

 

「俺はオールマイトを超えるヒーローになるんだよ! そんなクソみてぇなネーミング使えるかボケカス! つーかセンスがゴミなのはともかくせめて最低限真面目に考えろや!」

 

「あ、そしたら良いヒーロー名があるよっ!」

 

「あ?」

 

「ダイナマイト! どぉ?」

 

 ドヤ顔のメスガキから出てきたのはこってこてのマイト擦りである。ていうか皆分かってたけど言わなかったやつ。だって爆豪もたぶん名乗りたがってるもん。ニヤニヤ。他人に言われて仕方なく……とか散々悩んでしょうがなく……みたいにしたいんだろ? 分かるぜ。だから提案してやんねー! という高校生の良くないノリをメスガキは木っ端みじんこに砕いた。空気が読めないことに定評のあるメスガキがまたまたやらかしたのだ。

 

「……!!!」

 

 爆豪は筆舌に尽くしがたい表情をしている。そう! 彼の中ではもう「ダイナマイト」という名前は決まっていたのだ! だがいきなり「俺はダイナマイトだ!」とやるのは、とっても恥ずかしい!! だって小学生みたいなネーミングだから!! 色々考えたけど結局シンプルに原点に帰ってきたぜ。そういうストーリーを組み立てていたのだ。この授業で決める気自体無かった。保留してあとからさり気なく決めるつもりだったのにメスガキのせいで台無しである。ダイナシマイトだ。

 

(クソがぁあああああッ! この後俺が『ダイナマイト』に決めたらこいつから名付けられたみてぇじゃねえか!!)

 

 周りにどう見られるか。これほど早く先程の学びを実感出来るなんて、彼はラッキーボーイなのだろう。才能だけでなく運にも恵まれている。しょうもない演出をせずにさっさと決めておかないからこうなる。世の中うまくいかないことのほうが多い、という実感がまだまだこの男は薄いのだろう。今まで勝ちまくってきた弊害である。

 

「うーん? ピンとこない? サーマイトはどうかな? これも爆弾の一種だねっ!」

 

 メスガキは爆豪が黙ってしまったのを気に入らなかったと解釈したらしく新しいネーミングを提案してきた。それをきっかけにちょっと真面目に考えてあげようか……という空気になった。

 

「アダマイトなどは如何でしょう? 〝個性〟との関連性は薄いですが、爆豪さんの意志の硬さを鉱石で表現してみましたわ」

 

「アースマイトはどうだ。大地の力、という意味だが、地球の地下にはマントルやマグマなどの熱がある。お前の火力からの連想だ」

 

「オールマイトを超える、ってとこをフィーチャーしてオーバーマイト! 火力高そうじゃね?」

 

「マイトから離れてもいいんじゃないかしら。体育祭の実況からの連想だけど、ニトロケットなんてどう?」

 

「爆風を器用に使っていたな。ブラストはどうだ」

 

 爆豪は困惑した。というか本当に珍しく困った。こいつはコミュ幼児である。俺について来い! とか、俺が教えてやる! とか、俺が決めてやる! みたいなコミュニケーションもどきしかしたことがなく、それ以外は大体クソナードをいじめたりクソナードをからかったりクソナードに絡まれたりしていてこういう健全で対等な関係を一切持っていなかったからだ。悪態ならいくらでも出せる。しかしさすがの爆豪も要求通りに出てきた真面目な提案に悪態をつくほどクソを下水で煮込んではいない。しかし、ふと気づいた。これは好都合じゃないか? 

 

「まぁ……考えとくわ」

 

 ニタァ……。まともな提案が複数出てきたことで当初のプランにシフトすることにした。つまり保留して皆が忘れた頃に「そろそろ決めねーと不味いからダイナマイトにしたわ」としれっと出すプランだ。『ブラスト』もちょっといいな、と思ったがやはり『ダイナマイト』にしたい。この状況であれば後日メスガキの提案だと突っ込まれても「あ? そうだったか? 忘れてたわんなこと。何でお前は覚えとんだ。アイツのこと好きなのか?」的なクソガキ構文でカウンターできる。

 

「あー! 爆豪笑った! 初めて見た! レアだ!」

 

「なんかすごいニタァ……って感じの笑いだな。下手くそかよ」

 

「かっちゃんは自分の成功のことを考えてるときならもうちょっと爽やかに笑うよ」

 

 必ずや高額納税者ランキングに名を刻むのだ! などと叫んでいるときの彼はとてもいい笑顔である。ジャンプして机の上に立つなど、メスガキもびっくりのはしゃぎっぷりだ。メスガキは自分の〝個性〟で出した台に乗ることはあるだろうが机に乗ったりはしない。

 

「ちょっとまて。笑顔見たことあるのは良いとして、なんで内心まで分かるんだ」

 

「いや、かっちゃんは普通に声に出すんだよそういうの。あと僕に「お前は雄英受けるな」って言った時はいい笑顔だったかな」

 

「どういうシチュ??? お前らの関係性怖いよ」

 

 爆豪はその後友人だけになったらイライラを隠さずに振る舞っている。つまり頑張って作り笑顔をしていたのだ。きっしょ……。さらにはもう一人の幼馴染と中学から出来た友人に「流石に今日のはちょっと」と窘められたのを爆発で恫喝して黙らせる始末。健全な友情を築くチャンスを自ら爆破している。

 

「爆豪にドン引きするはずの発言なのに言われてるのが緑谷だと思うとちょっと分かる自分が嫌だ」

 

「これでおさらばだ的な? でも緑谷が居なかったら居なかったでなんかおかしなことになってそうじゃね?」

 

 たぶんそう。クソナードに鬼メールしてそう。今日は雄英でこんな事学んだぜぇ~! ざまぁみろ! みたいな近況報告をまめにしそう。

 

「ていうか絶対一緒に雄英に入れるって思ってないと出てこない言葉じゃない? 「受けるな」って。受かるなとか落ちろじゃないんでしょ?」

 

「受験番号が連番だったんだけど会場別だねって言ったら「てめぇを潰せねぇ」とは言われたかな……」

 

「……ん? やっぱりなんとなくナチュラルに受かるって前提で言ってるよね……?」

 

「…………」

 

「…………」

 

 ……………………。




独自設定とか

・メスガキの優先順位:ルール<友達
・冷たい言い方:経験値ゴチでーす(意訳)イレ先はここまでひどい言い方はしないけどまぁそんな感じの意味合いのことを言う。
・インゲニュース:どっかで詳細でてたらごめんなさい。
・飯田と仲良し:描写無いところで交流してました。席が前後なんすよ。ヒロアカの座席は出席番号順。
・いきなりインゲニウム:お兄ちゃんだよ~!
・いきなりミッドナイト:お姉ちゃんだよ~!
・指名数:割と適当。多少語呂合わせっぽいことはしたけどそんくらい。ヒーロー事務所の総数がどっかに出てたら教えて下さい。合わせて調整します。
・芦戸ちゃん:セクシー系事務所ってなんだよ。まぁあるんじゃないかなたぶん……。
・ヒーローネーム変更:本当にすみません。メスガキがパンツを見せてお詫びいたします。
・クリエティの由来:創造で万物ときたので多分あってると思う。
・爆心地:かっちゃんの初期設定にあるやつ。
・デクに勝手な〇〇ヒーローを付ける:原作は「頑張れって感じのデク」を終盤にやるために未設定だったというメタ的なアレだと思うのでもうつけとく。
・爆乳揉む気:ばくにゅうもむき。ばくごうかつき。崩壊させてやろうか。
・かっちゃんが一人っ子な理由:捏造だけど、ね?
・もう決めてた:この時点で決めてて言い出せなかったんじゃないかなって。大・爆・殺・神はセンスじゃなくて照れ隠しじゃないかな……。技名普通だし。
・ジャミングウェイは?:席順が変わってて消滅しました。
・まぁ考えとくわ:すまっしゅネタ。
・最後らへん:なんとなくずっとこのまま競い合って追っかけて行くってなんか思ってた

みんなはどのクソネームがお気に入りかな?(爆発さん太郎は原作のなので除外)

  • ボムボムプリン(芦戸)
  • クソ下水鍋(上鳴)
  • ウニヘッド(切島)
  • バ火薬庫(瀬呂)
  • ノンデリポップコーン(新斗)
  • 大爆勝(尾白)
  • 手汗マン(麗日)
  • パチパチくん(葉隠)
  • ドン勝ちゃん(芦戸2回目)
  • 爆乳揉む気(峰田)
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