ボクのヒーローアカデミア くらっしゅ!!   作:ぺぺぺぺぺぺぺ

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これであらすじ詐欺じゃなくなるはず


『過ちて改めざる、これ過ちという』

『ヒーロー殺し ステイン』と死柄木弔の交渉は決裂したかのように見えた。

 

「だから死ぬ(こうなる)

 

「いってぇええ何しやがる」

 

 ステインはだから死ぬ(こうなる)とかイキってるが殺す気はない。というか殺せない。ここに来たのは裏社会でまことしやかに存在を囁かれていた黒幕(フィクサー)らしき存在に目をつけられたからであり、雄英襲撃犯に興味が無いわけではなかったがそれは後付の理由である。『先生』に目をつけられた時点でぶっちゃけステインは詰んでいた。ここでこの男(死柄木)を本気で殺そうとすれば「それは困るな」とか言いながら謎の黒幕が攻撃してくるのは目に見えていたし、半強制的にワープさせられ何処だか分からん場所に来た時点で生殺与奪を完全に握られている。あまり舐められても困るので攻撃はしたが、ステインの想定ではそろそろ『そいつ』が口を挟んでくるはずなのだが……取り敢えずいつもの演説をしながらナイフをじわじわ動かして様子を見る。

 

「ちょっと待て……この掌は駄目だ。殺すぞ。口数が多いなァ……信念だ? そんなもんただの言い訳だろうが。重要なのは行動だ。内心がどうとかどうでもいいんだよ」

 

 ボロボロとナイフが崩壊していく。両親の遺産で買った良いやつなのに……。どうやら掴んだものを破壊する個性のようだ。接近戦は分が悪い。黒幕がやらせたかったのはこれか? 血液も取れたし一旦離れることにしたステインはナイフを収めて話しかけた。

 

「それがおまえか……おまえと俺は対極の人間のようだな……だが『現在(いま)を壊す』という一点で俺達は共通している……」

 

 ステインはそれっぽいことを言っているが……ぶっちゃけ仲間になれよという死柄木弔の話には「はい」と答えるしか無い。何せ今ここが何処だか分からないし、敵の構成員も総数も不明。黒幕が介入してこない以上、必死こいて屁理屈をひねり出して穏便に終わらせないといけないのはステインの方なのだ。ワンチャン黒幕が目の前に来てくれたら血を舐めて全員ぶっ殺せたかもしれないが目の前に居ないからなー! かーっ! 

 

「ざけんな。帰れ。死ね。お前なんて仲間に入れてやんねえ。俺はもっとこう……クールでニヒルな大人の男を仲間にしたいんだよ。お前みたいに沸点の低い幼稚な社会不適合者は駄目だ。小学生からやり直せ」

 

 ちなみに死柄木は小学校すら行ってない。最終学歴なしという学歴社会最底辺である。本物(オールマイト)を殺せば世の中が変わるというのが死柄木。贋物(オールマイトになれないやつ)を殺せば世の中が変わるというのがステイン。同じなのは『現在(いま)を壊す』という言葉と低学歴だけで、やってることは真逆である。というより真逆の行動を一緒くたにするために無理くりひねり出したのが『現在(いま)を壊す』というワードだ。死柄木式で現在(いま)が壊れると本物(オールマイト)は死ぬ。

 

「……真意を試した。死線を前にして人は本質を表す。異質だがいびつな信念の芽がお前には宿っている……お前がどう芽吹くか見てからでも始末するのは遅くはないかもな……」

 

 本人の主張を真に受けるなら、死に際に「高校なんて行かなくてもオールマイト見てればヒーローのことは分かったもん!」とか思ってる人間が何を一番気にしてたかなど推して知るべしだ。それはもちろんオールマイトのこと……ではなく、高校中退のことである。死に際にこんな事を考える誰かさんにとってオールマイトなど高校中退を正当化して他人を殴りつけるための棍棒でしかない。というか信念があるなら何でも良い、などとステインは思っていない。それなら「俺は絶対に金を稼ぐぜ」とか「名声のためなら死んでもいいわ!」みたいな信念も長い目で見るべきだからだ。そして何が芽吹きであるかもステインの胸三寸。この場で殺さないことが先に決まっていて理屈はあとから付けているのだから主張が支離滅裂になるのは当然の帰結である。

 

『弱いヒーローは死ね。金を稼ぐヒーローは死ね。名声が目当てのヒーローは死ね。本物(オールマイト)以外は俺を殺しちゃダメ。信念のある(ヴィラン)は俺が駄目って言うまで生きてていいよ♡』

 

 まとめるとヒーローにだけ異様に厳しいのが分かる。つまりただのルサンチマンと自己保身だ。死柄木にNG判定を出すとまず自分が死ぬべきになるので保留という名の無罪放免にするしかない。こいつは今自分がやっていることが【贋物(しがらき)本物(ステイン)を『ヒーロー(いまをこわす)』で一括りにしている腐った社会(げんじょう)】とやらと全く同じ事だという自覚はないのだろうか。まぁおそらく無いだろう。経歴からするとかなりの意志薄弱男であるし、その時その時で自分に都合の良い言い訳を思いつきで喋っているだけだと思われる。

 

「交渉は成立ですね。死柄木弔。彼が加われば大きな戦力になります」

 

 黒霧は最初からこの交渉が成立すると知っている。ステインがここから生きて帰るにはそれしか無いからだ。そう先生に聞いていた。ついでにもう一つ聞いている。『これ』が一番活きがよかったが、似たような主張をしているやつはいくらでもいるので、決裂したら『次のヒーロー殺し』を新しく作る準備もしている、と。だから黒霧は決定事項を伝えただけだ。「いま殺すのは勘弁してやるとステインが言ったからこれからは仲間ですね」などという論理の飛躍には黒霧の「結論出てんだからさっさと終わらせろよ」という投げやりさが滲んでいる。

 

「要件は済んだだろう。さぁ保須へ戻せ! あそこではまだ成すべきことが残っている」

 

 仲間になるから命だけはお助けくださぁい! をかっこよく表現するステイン。住所不定の無職がなすべきことは就職であって人殺しや犯罪ではないし、犯罪者がなすべきことは自首と償いだ。この男の自己正当化は既に破綻しており、もう止まれない所まで来ている。なんなら社会のために自分が『犠牲になってやっている』とすら思っている。そんな自分がまるでヒーローみたいだと……オールマイトにも出来ないことをしてやっている特別な存在だなどと自己陶酔しているのだ。

 

 

 

 

 

 

「焦凍ォーッ! 良く来た! 俺がお前を強くしてやる!」

 

「うるせぇ……」

 

 職場体験初日。轟は父親であるエンデヴァーの事務所を体験先に選んだ。今までここに来たことは数えるほどしか無い。ほとんど強制的に連れてこられた事が何度かあるだけだ。

 

「良く見ていろ焦凍! この俺が事件を解決するところを!」

 

「ハァ……よろしくお願いします……」

 

「……!? ど、どうした焦凍ォ! ……ハッ! 『ヒーロー ショート』! このエンデヴァーがお前を強くする! ついてこい!!」

 

 クソ親父。どうもこいつは父親扱いしてほしいらしい。正直まだちょっとそれは出来ない。赦せない。赦したくない。そう思っている。だが、それが間違っていることも、もう分かっている。いや、間違っているというか、害だ。正当な感情なのかもしれない。べき論で言えば赦すべきではないのかもしれない。だが、俺にとって『それ』は有害なのだ。体育祭でその事がはっきりと突きつけられた。俺が本当にやりたいことは何か。このクソ親父への復讐もどきではない。そんな余計な寄り道をしている場合ではない。

 

(親父と喧嘩していたので守るべき人が死にました。そんな事を言うわけにはいかない)

 

 体育祭で轟がやっていたことはつまりそういうことである。最初の種目で背中に背負った赤子は命の危機だった。いや、実際の赤子だったら死んでいた。成人男性の耐久力だったからぎりぎり生きていただけで、死亡……失格寸前だったと先生が教えてくれた。そして低評価にも下限があり、なければ轟は第二種目には進めなかったのだ。

 

(除籍も検討されたと相澤先生から聞いた)

 

『死亡ペナルティ』はメスガキ用で、実際には作動しないはずの想定だったのにぎりぎりになった生徒がいたのは翌日緊急会議が開かれるほどごたごたが内部であった。そのさらに翌日、つまり昨日に相澤が家庭訪問をし、『雄英はこのことを非常に問題視しておりこのままでは将来にも重大な障りとなる』と遺憾の意を二人に表明するという割ときつい宣告まで放たれた。推薦の生徒にこのような話が出るのは前代未聞である。

 

(体育祭の成績が良かったから除籍が見送られただけ。今も宙に浮いたまま撤回はされていない)

 

 と、轟およびエンデヴァーには話してある。実際はちらっと話題に上がってすぐ立ち消えた話だが、心配ないよと言ってあげるほどには信用を取り戻せていないということである。単に轟一人の問題であればここまで雄英が態度を硬化させることはなかったであろう。だが、『被害者(仮)』が出てしまえば話は別だ。そして現実に被害者が出ることを座して見過ごすなどありえない。根津はエンデヴァーの事情もある程度察しているし、体育祭中に多少改善したため、強硬な手段には反対はしたが、家庭訪問自体は賛成、というスタンスであった。

 

「俺はもうあとがねぇ。分かってるだろ『エンデヴァー』」

 

 別に高校を除籍や中退したところでヒーローを目指せなくなるわけではない。雄英に落ちたあと滑り止めの私立に入って教育のレベルに納得できなかったとか言って親の苦労も考えず中退するような脛齧りのカスもいるが、轟はそうではない。しかし、目標から大きく後退するのは確かだ。

 

「……分かっている! 認めよう。俺の『教育』は失敗だった! だが今度こそ……今度こそお前を本当にNo1になれるように育てて見せる!」

 

「No1ね……」

 

(……クソ親父には具体的な計画でもあるのか? ライバルは多い。つーかその筆頭の新斗は正直勝てるビジョンが見えねぇ)

 

「どうやってなるんだ? 俺自身は今のところその見通しを立てられてねえ。炎と氷を使い始めたから大丈夫なんてどんぶり勘定じゃ困るぞ」

 

「そんなものは前提条件だ。安心しろ、100%とはさすがに言えないが十分に可能性のある青写真はある」

 

「……マジか?」

 

 すげぇ。という言葉を飲み込んだ。さすがNo2と思ってしまった。メスガキの存在を知りながらも自信を持って言い切る姿を頼りになると、カッコイイと思ってしまったのだ。

 

「……具体的に聞かせろ。納得できたら……その……俺も真剣にやる。今までも真剣じゃなかったわけじゃねえが……やっぱりどこかでやらされてると思ってたところがあった。もうそれはやめだ」

 

「しょ、焦凍……! ああ! 骨子は『好感度』と『信頼』だ! 俺が切り捨て、今更追えない可能性……それをお前はいくつも持っている!」

 

「……意外な言葉が出てきたな」

 

 確かに信頼はともかく好感度は『エンデヴァー』が今更稼ぐのは厳しいだろう。二兎を追う者は一兎をも得ず。実際やったところで「媚びないエンデヴァーが良いんやろがい!」という強火ファンを失うだけに終わるだろう。

 

「少々不快な話も入るだろうが、あくまで客観的に見た話をする。不満は後で聞くからまずは話を聞け。そもそもお前が一番気にしているのはあの新斗という女子生徒のことだろう」

 

「まぁ……そうだな。同世代を通り越して同い年にあいつが居るのは問題……正直問題視するのもどうかと思うが……あくまでNo1を目指すに当たっての話な」

 

「分かっている。同期に頼りになる存在が居るのは幸運でもある。彼女がいなければ雄英襲撃でお前は殺されていてもおかしくなかったのだから」

 

「……そうだな。相澤先生だけじゃなく、あいつにも感謝してるよ」

 

 轟は『超再生』があったことをまだ知らないので自分にもワンチャンあったとは思っているが、相手に先制攻撃を許せば死んでいただろうことも分かっているし、オールマイト並みと言われている速度に氷をうまく当てられるかはまさに賭けになるだろう。

 

「俺とてオールマイトをただ憎んでいるわけではない。助けられたことだって何度もあるのだから。……話がそれたな。とにかく彼女は強い。だが彼女には足りないものがある」

 

「……それが好感度だってのか? 俺のほうがないだろ?」

 

「現時点ではな。それに今言いたいことはそうではない。彼女はオールマイトたり得ない。『そうなる理由』が存在しないからだ」

 

「意味がわからねえ。どういうことだ?」

 

「オールマイトが圧倒的な支持を得るに至った背景。バックグラウンドだ。本人ではなく、社会のな」

 

「……?」

 

「焦凍。プロヒーローが雄英体育祭であの少女を見て思ったことはなんだか分かるか」

 

「そんなもん人それぞれだろ? 頼もしい、とか大型新人が来た、とか仕事を奪われる、とかじゃねえか?」

 

「まぁ木っ端ヒーローはそんなものだろう。だが一定以上の力を持つプロならば間違いなく抱いたはずだ。『恐怖』をな」

 

「そりゃあ……分からんでもないが……」

 

「いいや。分かっていないぞ焦凍。『アレはオールマイトより強い』という事実。それがどれほど恐ろしいか」

 

「……え?」

 

「民衆は根拠もなく思っているだろう。彼女よりオールマイトのほうが強いと。お前と同じに、だ。だがそうではない」

 

 エンデヴァーも恐怖と焦燥を抱いた。少し目端が利くプロならメスガキが本気ではないことは看破できる。

 

「体育祭でお前が最後に見せた炎。アレは非常に危険で、まともに喰らえばオールマイトであっても負傷は免れなかっただろう。そして俺であれば死んでいた可能性が高い。お前がどうしてあの熱に耐えられたのか、俺には分からないレベルの炎だったんだ」

 

 ぽかぽかしょうと(仮)の力である。これが発動中の轟の肉体は温かな炎そのものであり、高温も低温も彼を害さない。なんかあっさり覚醒したが絶対的微熱とでも言うべき絶技なのだ。

 

「オールマイトは世界最強……だと思っていた。あの瞬間までは」

 

「……なんか防御力のタネがあるんだろ? 〝個性〟の仕組みが分かれば対策できるんじゃねえか?」

 

「ほう、そうか。オールマイトに対してもそう思っているのか?」

 

「…………」

 

「超人社会の歪みだな。表に出てきていないだけで、アレクラスの存在が他にも居るのかもしれん。オールマイトが頂点という幻想は崩れ去った。だが」

 

 ぐぐっ、とエンデヴァーはタメを作った。今から大事なことを言いますよ! 覚悟の準備をしておいてください! いいですね! と言わんばかりだ。

 

「そこでお前だ、焦凍!! お前は俺に似ずに顔がいい。いや、眼だけは俺に似たが、全体的な顔の作りは冷に似て美しい! あの少女もお前のことをきっと好きになる!!」

 

 ? 

 

「……はぁ?」

 

 轟くん、困惑! このマダオは急に何を言い出すのだろう。唐突な恋バナ。全く意味不明である。ただ、お母さんの顔を美しいと思っているのはちょっと見直した。そういう目でもちゃんと見てたんだな、クソ親父。轟くんの情緒はやはり幼い。父親のこういう話を聞くと普通の青少年は嫌がるし、身内の恋愛ごとの話など蛇蝎のごとく嫌うものだ。

 

「性格は……これから彼女好みに変わっていけばいいだろう! 分かるか、焦凍! お前と彼女は! No1カップルとなるのだ!! そしてアレを人の世に繋ぎ止めるのだ!!」

 

 真面目に聞いて損した。それが轟の素直な気持ちであった。マダオだとは思っていたがここまでマダオ(真面目に聞く価値のないダメなお話)だとは思わなかった。

 

「お前……カスなのは分かってたけど……そういう考え方やめろよ……マジで……」

 

 ちょっと見直したあとなのでもう本当にがっかりである。悲しい。

 

「まぁ聞け焦凍。お前は俺が冷といわゆる『個性婚』をした結果生まれ、それを疎んじているからこういった考えに嫌悪感を持つのは分かる。当然のことだ。だが敢えて言い訳させてもらう。トップクラスのヒーローの恋愛や結婚は好きだからだけで出来るものではない」

 

「……そこだけはまぁ、分かるが……」

 

 熱愛報道だとか破局だとか……ファンに刺されただとか……敵に殺されただとか、ちょっとニュースを見ただけで難しいのが分かる。ありふれた話だ。

 

「俺は冷を……いや、家族を幸せにできなかった。そのツケはおそらくこれから払うことになるのだろう。だがそれにお前まで引きずられるのはよせ。どの口が、と思うだろうがそれでもだ」

 

 ──血に囚われることなんかない。なりたい自分になっていいんだよ──

 

(……お母さん。まだ会いに行けてない。行こうと思っていたのに。怖いんだ。嫌われていたらどうしようって、どうしても思ってしまう。出来るだろうか……仲直り……親父は……諦めちまったのか? 今から幸せには……してくれないのかよ……?)

 

「お前がNo1になりたいのならばこれは現実的なプランだ。彼女とお前は同級生であり、これからいくらでも仲を深めることが出来るのだから」

 

「いやだから……男女ってそういうもんじゃねえだろ……? もっとこう……」

 

「ほう! 焦凍は男女について詳しいのか! ではこのエンデヴァーに教えてくれ。その見識を元にプランを変更しようではないか」

 

 クソが。なんなんだこいつマジで。

 

「それは……分かんねぇが……つーかそれ、あいつのNo1に相乗りするってことだろ? それもどうなんだ」

 

「いいか焦凍。あの少女はこのままだといずれ社会に排斥される。さっきも言ったがオールマイトとはバックグラウンドが違うからだ」

 

「なんでそうなるか分かんねぇ。あいつは人気者だぞ。オールマイトを超える強さなんだろ? それでいてオールマイトよりもこう……大衆に媚びてる。自信家なところも問題ってほどには見えねえ。バックグラウンドってなんだよ?」

 

「オールマイトが台頭する前。社会は不安と混乱のさなかにあった。仮初の平穏を取り繕う中、誰もが待ち望んでいたのだ。閉塞した状況をなんとかしてくれるような、スーパーヒーローを。だが今は違う。もう要らないんだ、新しいオールマイトは」

 

「……また社会が混乱するかもしれねぇだろ? それか影に潜んでるすげぇヴィランが表に出てきたりとか……」

 

「ヒーローのジレンマだな。我々は不幸の上に立っている。大衆がお前のように冷静に考えてくれるなら俺の見込み違いで、世の中は俺が思うより良くなっていたということになるだろう」

 

「……(ヴィラン)が出てくるのを『期待』すんなって?」

 

「あの娘が救世主になるような事態が起きてほしくはないな。どれほど社会が崩壊すればそうなるのかという話だ。そしてそれを行える存在はすでにいる。彼女本人だ」

 

「!!」

 

「あのドラゴンはわかりやすく彼女の〝個性〟によるものだとデザインされていた。だが思い出せ焦凍。彼女は黒い服を作った。あの特徴的な星は消せるのだ」

 

「……正体不明の怪物をいくらでも作れるってわけか」

 

「そうだ。そして実際にそれを行っていなくても、疑いをかけることは出来るな? 尋常でない強さを持つオールマイトがあれほど信頼され、それが盤石だったのはやつが殴る蹴るしか出来ないからだ。あの何でも出来る〝個性〟。一体どれほどの悪用を民衆は想像するだろうな」

 

「……俺が思うほど新斗が盤石じゃないのは分かった……だからってカップルってお前……」

 

「お前も望んでそうだと思ったんだが……要はこのまま世の中が乱れず平和が続いたとしたら彼女は緩やかに支持を失い、それからほどなくして恐怖と猜疑心に囲まれるだろう。まぁ……最大限長く保って5年と言ったところか? そうなった時、あるいはそうなる前に彼女に対する信頼を担保するような存在が必要で、それにお前がなれということだ!」

 

「……なぁ……俺は以前あいつが「No1を5年くらいやったら一般人男性と結婚して引退する」と言ってたのを聞いたんだが……」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……とにかく信頼されるヒーローとなれ、ショート! そしてそれには実績が必要だ! 現在ニュースを騒がせている『ヒーロー殺し』を親子で捕らえる! それによりお前はデビュー前から注目を集める存在となるだろう!」

 

 エンデヴァーは取り敢えず問題を棚上げにすることにしたようだ。メスガキが何を考えているかは分からないが、どっちみちデビュー後5年経過したら居なくなるNo1だ、という予測の精度は高まったとも言えるわけだし。

 

「随分と都合のいい未来予想図だがそう上手くいくのか? ヒーロー殺しは神出鬼没なんだろ?」

 

「やつは典型的な劇場型犯罪者! 一つの街で必ず4人以上のヒーローを殺傷している! つまりまず間違いなくまた保須市に現れる!」

 

 劇場型犯罪。世間の注目を集めることが目的の、自己顕示欲に溢れる犯人が起こすものである。犯罪者が主役で警察……あるいはヒーローが敵役となる構造を作り出そうとするのが特徴だ。同じ街で必ず4人以上を殺傷する、というのは劇場型犯罪者がよくやる典型的な自分ルールであり、犯人が自分だと示すメッセージとなるものだ。そう、メッセージ。自分の主張を広めようとする行為。すなわち『ヒーロー殺しは名声を欲している』。

 

「そんな特徴があったならもっと早くに捕まってそうなもんだが……」

 

「インゲニウムを襲ったのが運の尽きだ。彼はチームで密に連携を取り合っているから行方不明ではなく事件だと最初から分かったし、彼がすぐに意識を取り戻したことで下手人がヒーロー殺しだと発覚するのも早かった」

 

 ステインは今まで人気のない街の死角で殺傷することで事件の発覚を遅らせていた。そしてインゲニウムは手術が2分遅ければ死んでいた。つまりステインは殺したと思っていたが、殺しそこねたのだ。本人に突っ込めば「メッセンジャーとして生かした」とかその場しのぎの言い訳をするだろう。だがインゲニウムは彼自身の生命力により助かったのだ。決してヒーロー殺しに生かされたわけではない。エンデヴァーが『今』動いたのは偶然などではなく、インゲニウムが道を作ったのだ。

 

「早期発覚に怖気づいて逃げる可能性は低いだろうが、仮にそうなったらこのエンデヴァーに恐れをなしたのだと喧伝してやればいい。やつのような自己顕示欲の高い犯罪者は必ず乗ってくる。いや、乗らざるを得ない。せっかく稼いだ『名声』が地に落ちるからな」

 

「まぁちゃんとした根拠があるのは分かった。意外と理論派なんだなエンデヴァー」

 

「何をするにも知識は必要だといつも言っているだろうショート! 勉強もしっかりするんだぞ! 無駄なことなど雄英ではやらんのだからな! さぁ行くぞ、保須へ!!」

 

 クッッッッッッッッソうぜぇ! 別に成績が悪いわけでもないのに勉強しろとか言われたくないし、親父ヅラも本当にうざい!! 轟くんはかなりビキビキ来たが今は職場体験中なので我慢した。そしてごく自然に思った。お母さんに会いたい。コレが終わったら会いに行こう。どんな事になるかは分からないが、この暑苦しい髭面の馴れ馴れしい態度よりはよりはずっとマシなはずだ。できれば新斗がミッドナイトにしてもらってたみたいに、頭をナデナデしてほしい……。高校生が思うにはちょっと幼すぎる願望を胸に、心が幼児なショタろきくんはクソ親父の後をついていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか調べもん? 手伝っちゃろか? ホーリーナイト」

 

「いえ! 私事ですのでお構いなく!」

 

 職場体験二日目のお昼休み。昼食を食べたあと、ホークスの事務所のお高いふっかふかのソファに座り端末で何やら調べているメスガキに優しく声を掛けるサイドキックのお兄さん。彼はたった一日過ごしただけでもうすっかりメスガキを身内扱いしていて、休憩中に調べ物を一緒にするぐらいは手間でもなんでもないと思っている。

 

「ん~まぁ秘密ち言うんやったら良いんやけど、迷惑かけるとかは思わんとってな。仲間はずれみたいで寂しいけん」

 

「……あのぉ、そしたら一緒に調べて貰って良いですか? 『ヒーロー殺し』の事なんですけど……」

 

「あー、今話題の。興味本位には見えんけど……ああ、そう言えば弟さんが雄英に居ったな。インゲニウムの」

 

「そうだよっ! ボクの友達をっ! 友達のお兄さんをっ! 傷つけたやつなんだ! いずれ必ず見つけ出してこてんぱんにぶちのめしてやるッ!!」

 

「おぉ……? それが素の喋りなんやねぇ。そう言えば演説はそんな感じやった。打ち解けてくれたみたいで嬉しかよ。おいちゃんが調べちゃるけん任せりぃ。ホークス事務所ではいっちゃんそういうの得意やけん」

 

 どん、と胸を叩くサイドキックのお兄さん。まだおいちゃん(おじさん)というほどの歳ではないが、メスガキの前で大人ぶりたいのかもしれない。メスガキはただ調べると言って貰っただけなのにまるでもう解決したかのような輝かしい笑顔でお礼を言った。

 

「ありがとうございますっ!」

 

「HNを直接見せるわけには行かんけど、調べた情報渡すのは出来るけん。モノによってはNGもあるけど(ヴィラン)の情報なら……ん、こら随分特徴的やね」

 

 ニコニコしながらHNを調べてみると割とすぐに分かった。よくある劇場型犯罪者のシグネチャーだ。

 

「特徴的?」

 

「うん。典型的なナルシシストのアレやね。同じ街では必ず4人以上殺傷しとる……ホークス!」

 

「ん? なんですか?」

 

 ちょうど一仕事終えて窓から帰ってきたホークスに声を掛けるサイドキック。速すぎる男はすたすたと早歩きで近付いてくる。サイドキックはHNを開いたままの端末をホークスに渡す。

 

「休憩中にHN見てたんですか? 熱心ですね! 結構結構! ようやく(No3)のサイドキックとしての自覚が……ん? なるほど」

 

 速すぎる男は理解も早い。彼が今一瞬で理解したこと。それはメスガキが友人の怨敵であるステインを追っていて自分のサイドキックがそれに助力しHNを調べたら重要な気づきがあったということだ。そして速すぎる男は話も早い。

 

「インゲニウムさんはまだ一人目の被害者でしたね。世間を騒がす迷惑男(ステイン)、ぶちのめしに遠征と洒落込みましょうか? ホーリーナイト」

 

 一体どうなっちゃうの~!?




独自設定

・ステイン:堀越先生もダークヒーローじゃなくてルサンチマン拗らせた中卒として描いてるんじゃないかなって……。経歴とラスト手前のモノローグがもうね。
・ステインの経済状況:すまっしゅのコンビニバイトと悩んでこうした。例えば義爛から仕事を受けてたりヴィランから奪ったりしてたら贋物のヒーローがー!とかやるのに無理がありすぎるから……。まぁ暴徒のグライダーパクってたから多分ヴィランから盗んでるけど……自己正当化の権化!カス!
・死柄木弔:大人の男が仲間に欲しい。『先生』の幼稚さにぼんやり気づいてきてる。
・もう勝負ついてるから:なんでデク攫った脳無は即殺で死柄木は保留なのかなって。現行犯かどうかとか?異形だから?もう考えれば考えるほど社会が云々みたいな展望のない近視眼的なおっさんになる……。
・ステインの代わり:使えなくなった時用に絶対準備してたと思う。ヒーロー殺しがどれだけ強くても崩壊でワンチャン死ぬしマジで死柄木が殺されそうになったら先生が出張ってでも無力化しないといけないので。AFOは目的のためにたくさんルートを作る。
・除籍ろきくん:相澤先生が「除籍までは考えていませんが……」と会議で発言しただけ。合理的虚偽。
・カップル:園児「だって焦凍がいっつも新斗新斗って言ってるから……」
・新オールマイト要らない問題:あくまで炎司さん視点の話。
・4人以上殺傷:なんか原作でその説明しているコマに被害者3人の新聞がある。まぁ途中の新聞記事ということだと思いますが。
・シグネチャー:飯田くんもすぐ分かったって言ってるしエンデヴァーも来てるし実際に保須に居るので……。その気になって見る人が見ればすぐ分かるとしました。
・意外と理論派:暗号とかも解読できる。
・ショタろきくん:身近でメスガキをみているのであれアリなんだと勘違いしている。
・調べもん得意:捏造。
・No3擦り:仲良し同士のいじり。20~30位くらいで地元に引っ込んでいたいと全員思ってる。
・話も速い男:あったよホークス!でかした!
・遠征:なんかそっちのほうが懐かれてるじゃん。我ホークスぞ?No3ぞ?という身内ノリ。
・公安所属:全国飛び回ってるの多分公安案件だと思うけどカモフラも要るよね。
・ホークスは九州人:へぇ、お母さんがこっちの人なんだ。
・あっちとこっち:九州人がよくやるナチュラルな領域展開。

ぶっちゃけあらすじどう?

  • バッチリ!
  • 思ってたのとちょっと違った
  • 全然違くね?
  • 完全に詐欺
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