ボクのヒーローアカデミア くらっしゅ!!   作:ぺぺぺぺぺぺぺ

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2話目です。早速書くことがない。嘘でしょ。


『人間の人間たる価値は、敗北に直面していかにふるまうかにかかっている』

「あ! 雄英からの郵便物だっ! ついに来たな……合格通知が! さっそく中身を見てみよう」

 

 ためらいもせずにびりっと開けると出てきたのは書類と映像投影機。映し出されたのは、ネズミだかクマだか分からん謎の存在であった。

 

「わあ! なに? ●ッ●ー●●●?」

 

 黎乃が突然の動物ランド(TDL)に混乱していると彼は自己紹介を始めた。

 

「ネズミなのか犬なのか熊なのか。かくしてその正体は……校長さ!」

 

 校長だった。大人の事情で下の名前が公開できない根津校長だ。

 

「筆記は全教科満点! すばらしいね! さらに実技での獲得P(ポイント)は354! それに加えて、雄英が見ていたのは戦闘のみにあらず! 人助けもまた、加点対象さ! 君は全く利益にならないはずなのに0Pロボと対峙し抑え続け、他の受験生たちを脅威から守った! 救助活動P(レスキューポイント)28を追加し、総合P(ポイント)は382! ぶっちぎりの首席合格だ! 新斗くん、おいで! ここが君のヒーローアカデミアさ!」

 

「ありがとうございまーす!」

 

 投影映像なので返事をする意味はないのだが、黎乃は律儀に返事をし、ぺこりと頭を下げた。そして意気揚々とリビングに駆け出すと、最愛の家族に合格の報告をした。

 

「お父さん! お母さん! 見て見て! ホラ! 喋るネズミだよっ! お母さんは●ッ●ー●●●好きだったよねっ!」

 

 可愛い娘が無邪気に喜ぶ様子に、いつもと変わらぬ愛情たっぷりの笑顔を向ける二人であった。

 

「……はっ! 響香ちゃんはどうなっただろうかっ! 『れすきゅーぽいんと』があったんだから、響香ちゃんならきっといっぱい加点されてるはず……! 合格……したよね!?」

 

 黎乃は響香に連絡するかどうか、迷っているようだ。彼女が落ちていたらどうしようという心配。そして自分が合格を報告すると嫌われないだろうかという不安があるのだろう。しばらく悩んでいると、彼女のスマホに着信が入った。相手はまさに今考えていた渦中の人物、耳郎響香だ。

 

「よっ。元気してた? ウチのとこは今日合格の通知来たけど、リノのとこはどう?」

 

 黎乃の危惧をあっさりとした口調で否定した彼女は、軽いノリで電話をしてきたようだった。

 

「響香ちゃん! 合格おめでとう~! ボクのところも今日来たよっ! 当然首席合格! ぶっちぎりだって校長先生が言ってた!」

 

「ありがと。てか、校長先生? あの映像全員オールマイトってわけじゃないんだ。ウチのはオールマイトだったよ。今年から教師として雄英に赴任するんだって。いきなりだったからびっくりしたわ。しかし、やっぱ首席か。おめでとう、リノ。すごいじゃん」

 

「まぁこれくらいはね! ボクはそのオールマイトを過去にするスーパーヒーローになるんだから、まだまだ道半ばさっ! でもありがとう、響香ちゃん! 一緒の学校に通えて、嬉しいよっ!」

 

「ん。学校で会うの、楽しみにしてるよ。しかしオールマイトを過去にって。大それた夢……でもないか。あんたなら本当にできるかもって思うよ。ウチも負けらんないな」

 

 その後、響香が合格祝いに家族と外食に行く、ということで通話は終わった。黎乃は自宅で知人が差し入れてくれた合格祝いの手作りスイーツ(ガトーショコラ)に舌鼓を打ちながら、家族と幸せなひとときを過ごした。

 

 

 

 時は流れ入学初日。様々な個性、体格の持ち主に対応するためにクソでかく作られている扉を開けて教室に入るなり、黎乃はハイテンションにぶっ放した。

 

「おはよー諸君ッ! 超絶可愛いこのボクのクラスメイトになれた幸運を噛みしめる準備はできてるかなッ? その価値! 今は分からなくてもいいッ! いずれ分かるッ! ボクの名前は『新斗 黎乃』! これから常にキミたちの先を歩み続ける、最高のお手本にして最強の美少女だっ!!」

 

 その自己肯定感に溢れまくった言葉に教室に居た一同はぽかーんとした。ただ一人、響香だけは苦笑しながら手を振り、「こっちこっち」と呼びかけた。黎乃は不敵なドヤ顔から満面の笑みに表情を変え、毛先がプリズムカラーに輝く美しい銀髪のツインテールをふわふわと揺らしながら「ツッテケテー」と駆け寄った。

 

「同じクラスなんて最高だね、響香ちゃん! 制服似合ってるよ! ボクの次に可愛い!!」

 

「ありがと。つーかお世辞なら一番可愛いって言いなよ。リノも制服決まってんじゃん。ゴスロリのイメージが強かったけど何着ても似合うな。小柄だけどスタイル良いよね」

 

 腰の位置も高く細くまるでモデルのようだ。唯一胸が平坦なのが玉に瑕だったが、響香にとってはそんなところも好感を持つ要素にしかならなかった。不遜な態度も今更というか、おかしみを感じてすらいるのだ。非常に親しげな二人の会話に、混乱から回復した生徒が次々に口を挟んできた。

 

「誰が最強だって!? 調子に乗るなクソガキッ! 最強は俺だボケ!!」

 

 最初に文句をぶちかましてきたのは『爆豪(ばくごう) 勝己(かつき)』。自身が入試2位と聞いてイライラしていたが、まさかこのチビが1位なのか? と内心では警戒し、しっかりと相手を観察している。ただのビッグマウスでないならば、先程の言葉はそういうことになるのだ。

 

「めちゃくちゃ飛ばすじゃねーか! でも言うだけあってカワイイな!!」

 

 肯定的な反応を返したのは『峰田(みねた) (みのる)』。スケベな彼にとって可愛らしい女子が増えることは喜ばしいことだった。ロリ系ボクっ娘銀髪ツインテ美少女の登場にテンションアップだ。わかる。

 

「俺は私立聡明中学出身! 飯田天哉だ! しかし、雄英の生徒としてもっと謙虚であるべきではないか!? 他の模範となるような行動を心がけたほうが良いと思うぞ!」

 

 クソ真面目に自己紹介を返した上で、ロボットダンスのごとくカクカクしながらおカタい言葉をぶつけたのは『飯田(いいだ) 天哉(てんや)』。内容そのものより態度が気になったようだった。怒っているというより文字通り「そうした方が良い」と思ってアドバイスをしているのだろう。そんなこんなで場がわちゃわちゃとしてきたところで廊下から冷たい声が響いた。寝袋に入って横たわる不審者がそこに居た。雄英は"自由"な校風が売り文句。そしてそれは"先生側"もまた然り。廊下に寝そべってロリ系ボクっ娘銀髪ツインテ美少女JKのパンツを見ることも雄英の教師なら可能なのだ。

 

「青春ごっこがしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ」

 

 ゼリーのエネルギー飲料を「ヂュッ!」とひと息で飲み干し、不審者ごっこを辞め、ゆっくりと寝袋から出て立ち上がった彼は「静かになるまで8秒かかりました」とかいう教師がよく使う嫌味をかましたあと、自己紹介をした。

 

「担任の相澤 消太だ。よろしくね。早速だが体操服に着替えてグラウンドに出ろ。『個性把握テスト』を行う。ホラ、急げ。時間は有限だぞ」

 

「みんなーっ! 更衣室へ行こー! 場所がわからない人はボクについてくると良いよ! 男女の更衣室は隣同士だからねッ!」

 

 入学式やガイダンスをすっ飛ばしていきなりの宣言に、黎乃は全く頓着すること無く指示に従い、更衣室に向かった。周りの生徒もそういうものなのか……となんとなく納得してぞろぞろとあとをついて行った。グラウンドに出ると相澤はすでにテストの準備を終わらせており、黎乃に質問した。

 

「新斗。中学の時ソフトボール投げ何メートルだった」

 

「測定不能ですっ。グラウンドから飛び出しました!」

 

「……〝個性〟でズルしてないだろうな?」

 

「ボクのこのカワイーボディが生まれつき優れすぎていることが原因なのでそれを『個性でのズル』と定義するならズルかもしれませんねっ!」

 

「そうか。……それじゃ、立ち幅跳びは何メートルだった」

 

「測定不能ですっ。グラウンドから飛び出しました!」

 

「そうか。……爆豪。中学の時ソフトボール投げ何メートルだった」

 

「……67メートル」

 

「よし。じゃあ〝個性〟を使って思い切りやってみろ。円から出なきゃ何しても良い。工夫しろよ」

 

「死ねクソガキィ!!!」と叫びながら爆豪が『爆破』の〝個性〟を駆使して投げたボールは「712.8m」と計測機器に表示された。周囲の生徒は「急にどうした? こわ」と引いていたが、当のクソガキちゃんは全く気にせず爆豪の悪態を受け流した。めちゃくちゃ態度が悪いことは気になったものの、生徒たちは爆豪の工夫に感心し、自分たちも個性を思いっきり使って記録を出す事を「面白そう」だと口々に語りだした。だがその楽しそうな態度が逆に担任の教師の相澤の逆鱗に触れた! 

 

「お前達、ヒーローになるための3年間をそんな浮ついた気持ちで過ごす気か? ヒーローは命がけの危険な仕事だぞ。危機感を持て。よし……こうしよう。トータル成績最下位のものは『見込みなし』と判断し、除籍処分とする」

 

 シーンと静まり返ったあと、我を取り戻した生徒たちは理不尽な仕打ちだと抗議するが、相澤は理不尽を覆すのがヒーローだと宣言し、全く取り合わなかった。

 

「放課後マックで談笑できるとでも思っていたか? これからの3年間雄英は常にお前たちに苦難を与え続ける。"Plus(プルス) Ultra(ウルトラ)"だ。全力で乗り越えてみせろ」

 

 相澤はマック派だった。マクド勢は頑張ってほしい。え? 公式がマックって言ってるって? それは公式が勝手に言ってるだけだから……。計測が始まると、それぞれが『何が出来て、何が出来ないのか』が浮き彫りになった。そして、残酷なまでの『生まれつきの差』も。

 

「新斗……また計測不能か。ダメだな。この機器じゃ何もわからん。一応最新型なんだがな」

 

「それはそうでしょうっ! そんなの所詮は学生レベルの機械! 規格外のボクをこれまでの人類用のやり方で測れるはずがないですよっ!! 生まれたときから最高最強ですからねっ! 恵まれすぎて逆に不便なのは今に始まったことじゃないので気にしませんけどっ!」

 

 イキりまくってたメスガキだが、彼女の快進撃を阻む人物が現れた。ここまでの彼女の測定結果は全て「計測不能」であり、総合1位は確定しているが……。

 

「わあああああああ!!! 無限!!? 無限ってナニ!?!? ウッソだろ!!! このボクが!!!! 負けた!?」

 

 髪や服に土がつくのも気にせずに、地面を「ごろんごろん」と転がる美少女がそこに居た。っていうか、黎乃だった。ひとしきり転がった後に立ち上がったかと思うと今度は地団駄を踏みながらツインテールをぶんぶんと振り回して何事か喚いている。その原因、『無限』の記録を出し黎乃に文字通り土をつけた、個性『無重力』を持つ『麗日(うららか)茶子(ちゃこ)』は、彼女のあまりの狂態ぶりに心配になり、何か声をかけようと思うが、何を言っていいか分からない。

 

「まぁそういうこともあるっしょ。一つ負けたくらいで夢が壊れちゃうわけじゃないし、切磋琢磨できるライバルが居てよかったじゃん」

 

 べしべしと身体にあたるツインテをものともせずに肩に「ぽん」と手を当てながら響香が発したその言葉を聞いた瞬間、「ぴたっ」と黎乃の恥ずべき痴態が止まり、お茶子をじっと見つめた。突然の事態にお茶子が戸惑っていると、黎乃は笑顔になりお茶子の手を握った。

 

「響香ちゃんの言う通りだっ! 麗日さんっ! キミってすごいんだねっ! これからもお互いを高めあっていこうっ!」

 

 あまりにも急なその態度の切替に周囲は驚いたが、お茶子は「うんっ! そうやね!」と優しく受け止めた。人間が出来ている。すべての計測が終わり、相澤が手元の機器を何やら操作すると、集計が宙に表示された。最初は相澤側から読めるように表示されたため、生徒たちは「?」となった。彼は無言で一旦消去し、生徒たちに見えるように再表示した。最下位となったのは……ソフトボール投げ以外パッとしなかった、地味顔のいかにもナードって感じの生徒。『緑谷(みどりや) 出久(いずく)』だ。

 

「指一本のみを犠牲にしたボール投げは悪くなかったが……残念だったな緑谷。お前は除籍だ」

 

 相澤の温度のないその言葉に生徒全員が静まり返る。何処か現実感のなかった『除籍』が現実のものとなったのだ。

 

「先生~っ! なんで緑谷くんが除籍なんですか? 先生が除籍と言い出したのは『態度が浮ついていたから』という理由のはずですけど、緑谷くんはずっと真剣でしたよ?」

 

 誰よりも早く口を開いたのは黎乃だった。最初からそうするつもりだったのだろう反応速度だ。相澤は「ピクリ」と眉を動かし、彼女に向き直った。その表情はマフラーのように巻かれた捕縛布に隠れて良く分からないが、鋭い目つきは到底機嫌が良さそうには見えなかった。

 

「ほう。確かにきっかけはお前達の態度だったが、緑谷の除籍理由は『見込みがない』からだ。ズルズルと続けるより、早めにきっぱり終わったほうが本人のためにもなるだろう」

 

「見込みがない、の基準はなんですか? 何を根拠にその判断を? 最下位だから、は見込みがない理由にはならないと思いますっ! 麗日さん以外全員、ぶっちぎりでボクに負けてるんだから、どんぐりの背比べでしょ! 順位なんて飾りですっ!」

 

「根拠か。俺の独断だ。それに緑谷以外も『見込みがある』と決まったわけじゃない。『まだ見極めている最中』だ。おまえも含めてな」

 

「独断!? ムムム……ボクは反対です! 先生の判断力は信用なりませんっ! ボクの『見込み』なんて子供でも分かりますよっ! それを『まだ最中』だなんて絶対に節穴ですっ!」

 

「…………まぁ、それはそうだな。お前のようなのがヴィランに堕ちたらたまらん。雄英で正しく導いてやる必要があるだろう。失言を撤回するよ。お前は『見込みがある』と認め除籍しない。これで節穴じゃなくなったろう。満足したか?」

 

「むぎゅ……緑谷くんっ! キミも黙ってないでなんとか言えよっ! 悔しくないのかっ! こんな不審者丸出しのおじさんに人生丸ごと否定されかかってるんだぞっ! キミは入試に合格したんだっ! 沢山の人を押しのけて僅かな席に座ったんだっ! キミにその価値があると証明しなければ! 踏みにじられた人が哀れだろっ! 自分の価値を誇れっ!! 証明しろッ!! 除籍の根拠はこの不審者の気分一つなんだから、それを変えるだけの気概を持てっ! 今!! ここでだ!!」

 

「不審者丸出しのおじさんとは随分な評価だな。まぁ事実だからしょうがないが」

 

 相澤がぼそっと呟くのを他所に、緑谷は「ハッ」とした。自分はどうしてここに立っているのか? あこがれの人の後を継ぐと、決意したのではなかったか? 自分がここに居る代わりに、居られなかった誰かがいる。もうすでに自分だけの問題ではないのだ。

 

「先生! 僕もこのままでは終われません! この欠点も必ず克服してみせます! どうか、どうかもう一度チャンスを下さい! お願いします!」

 

 指の痛みも忘れ限界まで腰を曲げ頭を下げる。そうだ。このままでは終われない。なんとしてでもしがみつき、食らいついていかなければ。別に中卒でもオールマイトの後継者は目指せるが、回り道になることは間違いない。最高の環境で学び続けなくてはならないのだ! このまま除籍されどっかの私立に再入学して1年もしないうちに中退したあと時代錯誤のヒーロー論を街頭演説したけど誰にも相手にされず親のスネを齧りながら10年引きこもって殺人術を鍛錬するなんて未来は絶対に嫌だ! そんなのオールマイトに、両親に、顔向けできない! 

 

「先生! 初日から除籍はやはり理不尽……いえ、不合理かと! 除籍自体はいつでも出来るでしょう!? どうか長い目で見てはいただけないでしょうか!」

 

 クソ真面目なメガネくんはやはり内心反対だったようで、雰囲気に押されついに口を開いた。それを皮切りに他の生徒たちも次々に意見を表明した。

 

「ウチもいきなり除籍は気が早すぎると思います。他の先生方にも意見を聞いてみるべきじゃないですか?」

 

「で、デクくんは入試ですごいでっかいロボを一発でやっつけてます! 絶対にヒーローの資質があると思います!」

 

「良いんじゃね? 除籍でも。クソナードじゃ遅かれ早かれだろ」

 

「すげえこと言うなお前!? 同じ中学出身っぽいのに! 庇ってやれよ! 先生! 俺からもお願いします! いきなりクラスメイトを失いたくねえよ!」

 

「私も除籍には反対ですわ。除籍は在籍記録すら残らない厳しい処置。見込みがない、という理由であればせめて自主退学を促すのが筋ではありませんか?」

 

「え? そうなん? コワ~。先生、見逃してあげてくださいよ。俺もふざけてたの謝ります。本当にすみませんでした。……だめっすかね?」

 

「せんせー! 私も甘くみてました! ごめんなさい! みど……緑くんを許してあげてください! 私のせいで巻き込まれるなんて嫌だ!」

 

 生徒たちの言葉を一通り聞いた相澤は、しばらく黙っていたが、「ふっ」と笑って、ようやく口を開いた。

 

「お前たちの気持ちは分かった。各々、しっかりと危機感を持ち、反省したな? 緑谷の除籍は撤回する。だが、油断するなよ。この程度の理不尽に膝を屈するようじゃ、本当に見込みなしだ。今回は緑谷だったが、他人事と思わずに精進し続けるように。これにて授業は終わり。教室にカリキュラムなんかの書類があるから目ェ通しとけよ。それと緑谷。これ持ってリカバリーガールのとこ行って怪我を治してもらえ」

 

 緑谷に『保健室利用書』を差し出しながら言ったその言葉が徐々にクラスメイトに浸透し、理解が広がると、大きな歓声が上がった。口々に「良かったね」「助かったな」と声をかけられた緑谷は、改めて皆に頭を下げ、すでにスタスタと何処かへ行こうとしている相澤の背に「ありがとうございます!」とお礼を言った。相澤は振り返りもせずぶっきらぼうに「ん」とだけ言ってそのまま立ち去った。爆豪は「ちっ」とつまらなそうに吐き捨てたが、単純な不機嫌とはまた違う不思議な表情をしていた。

 

「これが最高峰……雄英か! しかし、良かったな、緑谷くん! 保健室へは一人で行けるか? 指がだいぶ腫れ上がっているが」

 

「緑谷くん保健室の場所分かる? 超絶美少女のボクが案内してあげよーかっ? こんなチャンスめったにないよっ!」

 

「デクくん! 本当に良かった! 絶対いいヒーローになれるから自信持って!」

 

「飯田くん……新斗さん……麗日さん……! 本当にありがとう! 特に、新斗さん! 君が抗議してくれなかったら、僕は僕に期待してくれた人たちの想いを、踏みにじってしまうところだった。この恩は忘れないよ!」

 

 怖いと思っていた飯田は、真面目で良い人だった。エキセントリックだと思った新斗は、仲間思いの熱い人だった。入試のときに二度も助けてくれた麗日は、またもや助けてくれた。クラスメイトたちにも、支えられた。僕は人に恵まれている。緑谷は改めて強くそう思った。そして麗日の「デクくん」という呼び方を訂正するかどうか非常に迷った結果、結局言い出せなかったが、そのすぐ後に新斗が「名前は出るに久しいでデクって読むの?」と話を振ってくれたおかげで説明と訂正の機会を得た。しかし麗日に『デク』という蔑称を「頑張れって感じで好き」と言われて思考がコペルニクス的転回を果たし、緑谷は『頑張れって感じのデク』になることを決意した。飯田には「浅いぞ!」と言われ、新斗には「スイキューとかもよくない?」と更に変なあだ名を付けられそうになったが、友達ができた、と思えた一日だった。ずっと指は痛かったが、そんなことは気にならなかった。嘘だ。安心したあとめっちゃ痛んだので正直早く保健室に行きたかった。だけどなんか友達ができそうな流れだったので我慢した。さっそく頑張れって感じのデクだった。

 

 

 

「相澤くん! 初日から飛ばすね!」

 

「オールマイトさん……見てたんですか?」

 

 生徒たちの喧騒から静かに立ち去る相澤に、どこからともなく現れた『オールマイト』が話しかけてきた。今年から教師になった新任だが、かなり年上でヒーローとしても大先輩、さらに現役のNo1ヒーローとかいうクッソ扱いにくい後輩の登場に相澤はうんざりした顔をしそうになるが、先輩としての矜持でなんとか踏みとどまった。『相澤先輩』とか呼んでくれたらもっとしっかり後輩扱いできるのだが。現状教師たちはオールマイトにどう接すれば良いか全然分かっていない。とりあえず全体的に「彼が質問してきたら応える」という形になっているが、こちらからもアドバイスとかして良いのかな……でも相手は平和の象徴だし……とちょっとグダってる。

 

「ああ! 飛び出すのを我慢するのが大変だったよ! その……緑谷少年は、君から見てそんなに見込みがないのかい?」

 

 飛び出してどうするつもりだったのだろう? まさかNo1ヒーローという立場を振りかざして撤回させるつもりだったのだろうか。相澤はどんよりした気持ちになりながら説明した。

 

「……最下位だったので丁度良かっただけです。とはいえ、あのまま本人含めて誰も何も言わなければ、『除籍もあり』だと思う程度……ゼロではない、という程度の見込みですがね」

 

「そ、そうか……! つまりあれかな? クラスメイトの、あるいは自分の除籍に対してどのような反応をするか、それが見たかったと?」

 

「……そんな感じです。あとは最初にガツンとかましておけば、繰り返し説教する必要がなくなるので合理的です。参考にしてください。それでは」

 

 相澤が一番見たかったものは見られた。それは『新斗黎乃がクラスメイトの危機にどのような反応をするのか?』である。相澤から見て最も『危険(しんぱい)』なのが彼女だった。圧倒的な〝個性〟だけでも危険視するのに十分だが、それに加えて『例の件』もある。どのような人格で、何に憤り、何を求めるのかを把握することは急務だった。緑谷には多少申し訳ないとは思ったが、試金石となってもらった。しかしそのおかげで相澤はだいぶ安心できた。想定よりも随分と理屈っぽくはあったが、危惧していたような幼稚な万能感とは程遠い、理性的な態度を見ることが出来た。緑谷に発破をかけたときなど、ニヤつくのを抑えるのが大変だったほどだ。強力な〝個性〟に、安定した精神。彼女は良いヒーローになるだろう。本人もそうあろうとしている。あとは大人がしくじらなければ良い。良い友人も居るようだし、彼女に関してはこれ以上注視する必要はないだろう。なんなら爆豪のほうがやばかった。緑谷と何らかの確執があるようだが、中学からの資料には全く記載がなかったため、正直ノーマークだった。それに問題児っぷりも全く書いていないので、そもそもあまり当てにならない教師が書いたものなのだろう。『折寺中学校』から雄英合格者が出たのは今年が初めてなので、そういった『注意事項(クソ学校っぽいやつ)』の蓄積がないのだ。教師として相澤の悩みは尽きない。彼はたくさんの生徒たちの未来を背負っている。そしてその生徒たちが、将来ヒーローとして更に多くの人々を救うだろうことを思えば、彼の双肩にかかる重圧はどれほどのものか。彼らが健全に育つためならば、その引き換えに自身が恐れられ嫌われることなど、相澤にとっては些細な問題にすぎなかった。

 

 




独自設定

・●ッ●ー●●●:これだけ隠してるのに存在感つよい。
・根津校長の下の名前:ミで始まる名前があるんじゃないかなぁ……。キャラ紹介で『根津』しか書いてないし苗字もクソもない境遇だからそもそもない気もするけど。
・耳郎ちゃんの投影がオールマイト:時間が押してるとか言ってたからデク以外のも撮ってるんじゃないかなって。関係ない用事かもしれないけど。
・712.8m:怒りでプルトラした。
・測定不能と無限:成績としては同率一位判定。公式記録では未だ無敗。
・緑谷……クビです:状況の違いであって別に原作より相澤先生の好感度が低いとかではない。高くもない。
・誰がどのセリフ?:分かる貴方はヒロアカマスター(しょうもないクイズによくある過剰な持ち上げ)
・クソ学校っぽいやつ:プリントを教室にばら撒く教師。他クソ描写多数。
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