ボクのヒーローアカデミア くらっしゅ!! 作:ぺぺぺぺぺぺぺ
「おはよー! インゲニウムちゃん!」
「よぉ、インゲニウムちゃん。今日も元気そうだな」
「インゲニウムちゃん! めっちゃ話題だねー!」
「ちっがーう!! ホーリーナイト! ホーリーナイトですっ! インゲニウムちゃんではなく!」
説明しよう! 『インゲニウムちゃん』とはにわかチェッカーである! メスガキがこのような呼ばれ方をしているのは今話題になっているとある動画が原因だ。
『エンデヴァーとホークスが
裏路地から血まみれのヒーロー(ネイティブ)を運び出すエンデヴァーのサイドキックとよく分からん黒い塊を運び出す雄英体育祭の優勝者が出てきて、黒い塊がぱかって開いたら『ヒーロー殺し』がこんにちはして口喧嘩が始まる、という感じの動画だ。それがかなりバズって、最後の啖呵の部分の切り抜きなんかも出回ったせいで、メスガキは『インゲニウムちゃん』というあだ名が付いていた。
「いいじゃん、インゲニウムちゃん。いや、冗談抜きでかっこよかったぜ」
「そーそー!私じーんときちゃった!評判もすっごくいいし!」
インゲニウムがそもそも有名ヒーローなのと、実際のヒーロー名が『インゲニウム』ではないことは元動画を見ていれば分かるので、本当にただの愛称だ。あーあの子ね、インゲニウムって名前でしょ? などと知ったかぶりすると恥をかく。しかしそれ以外にも「あーあのゴスロリの娘ね、インゲニウムの妹が名前を継いだんでしょ?」みたいな「親族があとを継いだらしい」的な噂だけ聞いて勘違いしている人などもいてかなりカオスである。
「リノ、おつかれ。色々大変だったね」
「リノちゃんは立派に成し遂げたんですね。それにひきかえ私は……」
いつメンの二人は時事ネタに乗っからずに普通に職場体験の終了を労った。もうすでに
「おはよう新斗くん! これを受け取ってくれ! うちの一家からのお礼だ!!」
「あっ! インゲニウムまんじゅう(二十個入)だ!! 皆で食べよーっ!!」
「ひゃっほー! 群がれぇー!」
飯田はいや、今食べるために渡したわけじゃ……とちょっと戸惑って注意するべきか迷った。菓子類の持ち込みは禁止されているわけではないが掃除の手間は増やすなよと相澤先生に言われたことがあるので。
「……皆!こぼさないように食べよう!」
まぁ、喜びに水を差すことはあるまい。飯田はインゲニウム事務所で揉まれてちょっと柔軟さを覚えて帰ってきたのだ。動画を見た人が「ステインを捕まえていたあのヒーローは誰?」といった問い合わせをするのは当然というかなんというかインゲニウムの事務所であったため、ようやく引き継ぎの目処が立ち落ち着いてきたと思ったインゲニウム事務所がまたしても忙しくなってしまっていたが、にも拘らずインゲニウム及び関係者一同はメスガキにとても感謝していた。
「それでその……名前についてだが! 新斗くんには非常に申し訳ないのだが……譲るわけにはいかない!」
「あたりまえでしょお!? ボクはホーリーナイトっ! 聖なる夜に安眠を齎すドリームヒーローなの! ターボヒーローじゃないからっ!」
インゲニウム事務所としては、精神的な感謝はもちろん絶大だが、それと同時に経営的にも非常に助かるイメージアップであった。というのもやはりヒーローが
「傷が癒えたらぜひ講演を、なんて話も兄のもとにかなり舞い込んでいてね。まだまだ引退は出来ないな、なんて言いながら笑顔を見せてくれたよ! 家族間でも事件後初めての明るい話題となった!」
「そっかぁ! 家族みんな元気が出たんだねっ! 良かったぁ!」
にこにこと本当に嬉しそうにするメスガキ。クラスメイトたちは今になってかつて彼女が飯田に言った「良かった」という言葉の意味を実感していた。無論大怪我をし、ヒーローとして戦闘することは最早叶わなくなったというのは悲劇だ。しかし「生きていればヒーロー活動はできる」と言い放った彼女の言葉は本当だった。いや、現実にしてみせたのだ。インゲニウムが、飯田の兄が、生きていて良かった。不幸の中にも幸福を見出すことは出来るのだ。インゲニウムの事務所はチーム主体で、ドライな言い方をすればインゲニウムが居なくても十分回せるし、なんならインゲニウム(旧)が指揮を執るためだけに復帰することも出来るだろう。あの日、クラスメイトの中で彼女だけが、未来を見ていた。現実と戦う覚悟を、既に持っていたのだ。
「ホーリーナイト! 本当に……本当にありがとう! 君は……君は僕が……兄さんと同じくらいに尊敬する、最高のヒーローだ!」
飯田は目尻に涙を湛えて、しかし晴れやかな笑顔でそう言った。乗り越えたのだと、クラスの誰もが思える、そんな表情だった。
「……ふっふ──ん!! そうでしょー!! 可愛い上に最強で最高なボクが、本格デビュー前から逸話……作っちゃったかなぁ~!!」
「インゲニウム事務所はホーリーナイトをいつでも歓迎するぞ! 良かったら……いや、是非! 遊びに来てくれ! みな君に会いたがっている!」
「そうだねっ! そのうち遊びに行こうかな~っ! インゲ
「ああ! その時は……今何か変な言い方しなかったか!? ええと、まだ非公式なんだが兄は『ビッグ・イング』と名乗る予定だ!」
にやにやぴこぴこぴかぴか。ツインテがふよふよと浮かび上がり毛先がちかちかと輝き出す。メスガキは全身で感情表現をするので見ていて非常に分かりやすい。ごきげんだと毛先はゲーミングな感じに光るし、不機嫌だと色が減る。悲しんでいると光らなくなるし、ツインテが露骨にしょんぼりする。本当に怒ったときは目が赤く染まり周囲の空気がおかしくなる。楽しそうにみんなと話すメスガキを見ている緑谷は、ふいにあの時の恐怖と……悲しみを思い出す。
(ヒーロー殺し、ステイン。彼は17人も殺し、23人を……インゲニウム……ビッグ・イングを含めて沢山の人を勝手な感情で傷つけた。絶対に許してはいけない犯罪者だ。でも、どうしてだろう。新斗さんに気圧されながらも必死に喋るステインが……僕には救けを求めているように見えた。言ってることは正直全く共感できなかった、っていうかよく分かんなかったんだけど、あの人がすごく傷ついて……苦しんでいることだけは本当だったんだ。何か僕にできることはなかったんだろうか。何か声をかけてあげるべきだったんだろうか。僕に何が出来たんだろうか……)
クソナードはどれほど相手がクソカス犯罪者でも「じゃあ救けなくていいや」とは考えない。目の前にある苦しみがどれほど勝手なものでも目を背けることが、あるいは割り切ることが出来ない。どうすれば救けることが出来たのか。あるいはいつならば彼は引き返せたのか。これからどうすれば彼のような人を減らせるのか。考えてしまうのだ。ただそれを口に出さない分別はある。おかしいのはいまそんな事を考えている自分だ、と十分に分かっている。このあたりはかっちゃんが教えてくれたことである(笑)。
「緑谷と轟も一緒に映ってたよな! ヒーロー殺しってどんな感じだった? そっちの方もバズってるけどなーんか嘘くさいんだよなぁ」
「そうだな。俺が見たヒーロー殺しはなんというか……怒り狂っていた、って感じか? とにかく社会への不満でいっぱいだったんだと思う」
轟は緑谷と違い怒りが気になったようだ。自分もあんな眼をしていたのだろうか? 他人のせいにする思考。あるいは甘え。そういったものは他人事と思うにはあまりにも身に覚えがあった。
「雄英に落ちて転落したってマジなのかなぁ。なんか身につまされるよな」
上鳴は成績がクッソ悪いので他人事とは思えなかった部分はそこのようだ。まぁお前はマジで勉強したほうがいいぞ。
「うん。僕達は……沢山の人を押しのけて少ない席に座った。でも、だからこそ申し訳ないって思うんじゃなくて……その価値があるんだって、証明しなきゃね」
結局のところ勝者が敗者にしてやれることなど存在しない。いや、何をしたところで施しにしかならない。この点においてはメスガキと爆豪がよく知っているだろう。世の中には競争があって、勝者と敗者がいる。だが、敗者はまだマシなのだ。戦うことすら選べない、あるいは選ばない人だっているのだから。
「おぉ! 良いこと言うな。なんか聞いた覚えがあるんだけど、なんかの名言的な?」
「僕の個人的な恩人の言葉……かな」
「ケッ! 負け犬の僻みなんぞいちいち気にしてられっか! カスはカスらしく大人しくしてりゃいいんだよ!」
「お前はまたそういう事を言う~。そんな事言ってインゲニウムちゃん見まくってるんだろ? あとイメチェン似合ってるぞ」
かっちゃんの髪型はなんかピッチリしている。ベストジーニストの所で言動だけでなく髪まで矯正されたらしい。言動は改まらなかったが、髪は屈してしまったようだ。
「見てねぇわあんなクソカス動画! んなことよりこれはイメチェンじゃねえ! 癖になって直らねえんだよ!!」
ちなみにこの「直らねえ」は九州地方の方言とは関係ない。もとに戻らないという意味だ。爆豪の頭はちょっと壊れてるかも。パチパチキャンディ食ってろ。そして何故動画だと知っているのか。インゲニウムは男だろうが! とか言ったほうがいいぞかっちゃん。
「どうだったんだ? ベストジーニストの事務所は。まさかずっと髪型ピッチリしてたわけじゃねぇだろ?」
「ちっ。そのまさかだよ! ジーンズ履かされて日程の8割はひたすら説教されたわ!」
「マジか? え? ベストジーニストが付きっきりだったってこと? 俺が行ったフォースカインドさんのとこはそんなずっと相手してもらえなかったぜ」
そう。普通はかっちゃんみたいにみっちりぴっちりきっちり見てもらえないし、髪にクセが付くくらい何度も何度もプロ、それもトッププロに相手などしてもらえない。ベストジーニストは本当に爆豪がいいヒーローになると信じて、貴重な時間をガッツリ割いてくれたのだ。確かに身体をあまり動かせなかった。しかし期間中ほとんどずっとベストジーニストのありがたいお話を聞いていたのだ。今はまだ納得しているわけではない。しかし、優秀な爆豪の頭には聞いた内容はしっかり残っている。いずれそれが花開く時が来るのだろう。
「やっぱお前は期待されてんだろうなぁ。体育祭でのガッツはマジで凄かったからな!」
「ガッツだけじゃ意味ねんだよ! 結果が出てねえだろうが!」
怒鳴りつけてはいるが、内心は喜んでいるのだろう。言われてみればベストジーニストは本当に自分に付きっきりだったことを思い出したのだ。ニヤつきそうな口元を抑えようとして失敗して微妙な表情をしている。
「ギャハハハハ!! 何だその顔! ウケる!!」
「
「てめぇらマジで大概にしとけよボケカス!!!!」
ボンッと爆豪の髪型がいつものやつに戻る。切島と瀬呂にヘッドロックしながらぎゃあぎゃあと大騒ぎするかっちゃんを見てなんだかちょっと安心する緑谷。そんなもんにやすらぎを感じるな。上鳴がうわぁ……って顔してるぞ。
『ヒーロー殺し ステイン』が逮捕されて数日経ってのこと。グラントリノはオールマイトに電話をかけていた。
「デクはまぁまぁ仕上がってきてるな。脳無だったか、あれと2回戦ったが、どちらでも棒立ちにならず、よく動いた。まだ引き出せる力は少ないようだが、お前よりはずっと自制心があるな。内側にある無鉄砲さをしっかり抑えてる」
「ありがとうございます……しかし私が教えたというより自ら学び取っている、という方が正しいかと……大したことはしてやれていません」
「そうなのか? その割には随分と慕っていたが……まぁいい。本題は別件だ」
「ヒーロー殺しについてでしょうか? その、やつは私からは逃げ回っておりまして、取り逃し続けておりました。言い訳のしようも……」
「そうじゃねえ。いや、ヒーロー殺しの話もあるが先に聞いときてえ。ホーリーナイトってのはどんなヒーローだ?」
「ホーリーナイト……ああ、新斗少女ですか! グラントリノから見て何か問題が……?」
「いや……問題ってほどじゃない。単にジジイの老婆心だ。大丈夫なのか、あいつは」
「……はい。大丈夫です。いえ、そのように導いてみせます。命に替えても」
「そうか……それならいい。だがお前、後継者に甘えてんじゃないだろうな。力の継承は順調に見えるが、知識がスカスカの雑魚雑魚じゃねえか」
「え!? そんなはずは……緑谷少年は成績優秀ですし、自由時間も勉強に費やすほど熱心ですよ?」
「そうじゃねえ。
「……どういうことでしょう。やつはその……あの怪我で生きているとは思えませんが……」
「そうだな。俺もそう思っていた。ヒーロー殺しとその顛末を見るまではな。最近の世の中のニュースなんかの流れにどうも嫌な雰囲気がある」
「……グラントリノもそう思うのならば、杞憂ではないようですね。嫌な予感はしておりました……」
「そうか。一致したならやはりと言うべきか。チンピラ集団だったはずの雄英襲撃犯。これがいま思想団体として認知されつつある。メディアの扱いはまだ小さいが……長く続くだろう」
「本人か、あるいは後継者か、とにかく奴の手口によく似ていますね……死柄木弔……の裏にいるという『先生』でしょうか」
「折を見て後継者に話しておけよ。お前の力にまつわる全てを。俺からも多少は話してやったが……お前から聞いたほうがいいだろう」
「流石にNo2とNo3が同時に出てきたら強めの脳無でも大した活躍はできなかったな。ヒーロー殺しも捕まったようだし。ああ、残念だ」
時間は巻き戻ってステイン逮捕当日。彼が捕まったのを目撃した死柄木の表情は全然残念そうではない。ざまぁみろ、と顔に書いてある。
「ですが破壊規模は昨今で言うとかなりのものです。きっと話題になりますよ。壁にもちゃんとメッセージを書いておきました」
黒霧がこそこそコツコツと裏路地などにいくつか残したメッセージ。『敵連合withヒーロー殺し参上! 仲間募集中!』である。意気揚々とアジトに帰ってからの明けて翌日、死柄木はワクワクしながらニュースを見たが、どこを見てもエンデヴァーへの勝利インタビュー一色だった。
『エンデヴァー! ヒーロー殺しの捕縛おめでとうございます! 今の心境をお聞かせください!』
『ふん! このエンデヴァーとNo3であるホークスが組んだのだ。当然の結果だろう』
レポーターは一瞬だけ意外そうな顔をした。いつも愛想が悪く取材などをすぐに切り上げたがるエンデヴァーがもっと聞いていいぞと言わんばかりのマスメディア向けな前フリをしてきたからだ。
『エンデヴァー事務所が主体となって捕らえたとのことですが、やはりホークス事務所の活躍も大きかったのですか?』
よほどホークス事務所の活躍が大きかったのだろうか? エンデヴァーがチームアップした事務所を褒めるのは大体そのような時だったはずだ。
『地上と空より追い詰めたのだ。どちらが活躍した、というものではない。人数の関係上俺がリーダーとなり総指揮をしたが、はっきり言って大した仕事ではなかった。実働で言えば2日で終わったからな。我々はあるものがすでに既にお膳立てしていた状況を終わらせたにすぎん。なんなら職場体験に来ている息子とその友人だけでも解決出来ただろうな。なにせ実際に捕縛したのはホークス事務所に職場体験に来ていた学生なのだから』
実際は指揮はしておらず別行動だったが、最終的に報告などを取りまとめたのはエンデヴァー事務所であるし、通信の中身だけ聞けば指揮下にあるように聞こえるのでそういうことにしていた。
『なんと! ここにはいらっしゃらない誰かが最大の功労者であると!? その方はどなたですか? エンデヴァーから見たMVPを教えて下さい!』
『インゲニウムだ。知っての通りヒーロー殺しは神出鬼没。その強さより逃走力、秘匿性が問題だった。彼が奴の襲撃から生き残り、情報を残したことこそが、この容易な捕縛を可能とした』
『現在療養中の『ターボヒーロー インゲニウム』ですか!』
『ヒーロー殺しは同じ街で必ず4人以上殺傷するというシグネチャーを行っていた。にも拘らず奴が捕まらなかったのはそれが発覚するのに時間が掛かったからだ。ステインはインゲニウムの殺害に失敗したことで自縄自縛状態となった』
『といいますと?』
『通常であればやつの仕業だと発覚するのは4人目以降。いつでも逃げ出せる状態だ。しかし今回はインゲニウムが生き残り、すぐに意識を取り戻し証言したことで1人目の時点で発覚してしまった。残り3人をどうするか、やつは己の評判とリスクを天秤にかけ評判を取った。いや、取らざるを得なかった。逃走してしまえば主張の根幹である『自己犠牲』が揺らぐからだ。しらばっくれるのも不可能な状況だったからな』
『なるほど! インゲニウムの功績が大である、というお言葉の意味がわかりました! 彼の回復が待ち遠しいですね!』
映像がスタジオに切り替わり、コメンテーターたちが好き勝手に色々といったあと、脳無の話題がちらっと出て『敵連合』との繋がりについての話題になったが、壁の落書きはいたずら扱いのようだ。
「黒霧。どうなっている。どうしてこうなった」
「すみません。わかりません」
「チャットAIかお前は。昨日のサーモンがまずかったら殺してたよ。これは……失敗したか?」
「まだ分かりませんよ。しばらくニュースを見続けましょう。いずれ話題になるはずです」
それから数日ニュースを見ていると、ぽつぽつと敵連合の話も増えてきたが、ホットな話題はやはりエンデヴァーとインゲニウム、次いでヒーロー殺しの素性や分析、そして「インゲニウムちゃん」であった。
「無いわけじゃないが……思ったほどじゃないって感じだな……なにがインゲニウムちゃんだクソが。はぁ……これじゃ仲間集めも期待できないな」
その時部屋の隅においてあるパソコンのモニターから声がした。
「それについては僕が手を打っておいた。ヒーロー殺しの経歴を可哀想な感じでまとめて、同類達の共感を刺激して連合に入りたくなる感じの動画作らせてネットにアップしておいたよ」
「先生。それだと仮に上手く行っても雑魚しか集まらないんじゃないか。強いユニットが必要なんだぞ」
「おいおい。弔は勘違いしているぜ。ヒーロー殺しに感化でもされたのかい? 切った張ったは手段の一つでしかない。目的は現在の世の中をぶっ壊すことだろう? 必要なのはストーリーさ」
「ストーリー?」
「ああ。まずは『可哀想な経歴』の『敵予備軍』を集める。できれば『〝個性〟に振り回されているやつ』がいいな」
死柄木弔は何故だかよく分からないがイラッとした。ムカムカとした不快感が心の奥の奥からじんわりと広がっていく。
「そうやって集めた底辺たちに大騒ぎさせる。内容は本人に好きに喋らせて良いよ。中身はどうでもいい。大事なのはガワだ。『敵連合は可哀想な人達の代弁者だ』というイメージを作れればいい。社会に見捨てられた人間とその援助者の集まりだ、ってね」
「まぁ……ヒーロー殺しはなんかかわいそうなやつだったというのは分からんでもないな。不幸そうな辛気臭いツラしてた」
死柄木はニヤニヤ笑おうとして失敗した。これは『先生の真似』だということに気付いたからだ。俺がしたいことは破壊だ。そのはずだ。じゃあなんでヒーロー殺しを破壊しなかった。
「アレは落伍者だからな。終わった人生にしがみついている動く死体だ。もっと華々しく動けるようにお膳立てしてやったはずだったんだが、想定の中でも最低の働きだったね。期待ハズレもいいとこだ」
まただ。また何故かイライラして痒くなる。死柄木の思考はまとまらずちくちくと刺さるような痒みが神経を苛立たせる。まるであの家に居たときのようだ。あの家……?
「おっと、話がズレた。連合を大きくするには思想団体になるのが手っ取り早い。ステインはそのための薪だった。数が集まればその中には『アタリ』も混ざってくる。そいつらを拾い上げて精鋭部隊にするんだ」
「俺に新興宗教の教祖をしろって?」
「流れ次第だね。『ヒーロー殺し』の思想……『職業ヒーローへの不信』すなわち『ヒーローの職業化による弱者への無関心』を核にするのがベターだと思うが、そのあたりは臨機応変にかな。とにかく世の中の不満を煽る。そうしたら不安が蔓延する。どれだけ安定しているように見える社会も、底辺が揺らげば不安定になるのさ」
弱者に関心を持つべきなのはすべての人に言えることなので、ヒーローというネーミングなだけの嘱託公務員にすべての責任を押し付けようというのはかなり無理筋だ。だがそれでいいのだ。コツコツ煽ってきた社会への不信感を爆発させるきっかけにさえなればいいのだから。
「まてよ先生。成功したときのことしか考えていないだろ。それじゃヒーローどもの養分になるだけじゃないのか?」
「そうなるかもね。だからカスども……おっと、『可哀想な人達』をメインで使うんだ。いくらでも補充できる彼ら彼女らを暴発させるのがキモさ。思想団体っていうのは金を吸い上げたうえで人員をこき使える理想の組織なんだよ。君は特別だ、って言ってやるだけでこっちに大金を払ったあげく熱心に活動してくれる。僕の敵たちもそんな奴らが多かったよ。ハハハ。ま、もし危なくなったら上澄みだけ確保してまた潜伏すればいい」
つまり、超常黎明期に梅干しおじさんがやったことの焼きましである。そろそろ存在はバレてるだろうから手口を隠す必要はない。というより失敗というか下振れ続きで隠す余裕がなくなってきたと言ってもいい。おじさんも自分の成功体験に引きずられているのだ。
「先生のやりたいことは分かった。だが俺もやりたいことがある」
「ほう。弔もなにか考えていたのかい? ぜひ聞かせてくれ。いい感じだったらこっちが合わせるよ」
「考えていたっていうか……そもそも根本的な問題があるよな。色々言ってるが先生が遠回りするのってオールマイトとあのガキの戦闘力に勝てないからだろ?」
オールマイトの弱体化は未だ確認できていない。出来ていないのは確認だけで、まぁ99%弱っているとは思っているが、実際に確かめることが出来ていないため、計画段階では弱体化はないものとして考えなければならないのだ。
「それだけじゃあないけど、まぁ大きな障害なことは確かだね。だからこそ彼らの土俵には上がらずに……」
「一発で解決できる良い手段があるじゃないか。獲得するなら最強のユニットだ。そうだろ?」
「……へぇ。僕には無理そうに見えるし、君が嫌がると思ってたんだけど、弔はいけると思うんだね?」
「出来るからやるんじゃない。目的を決めてから手段を考えるんだよ。ずっとやってたことだ。それに、体育祭での宣言は聞いただろ? 世の中に不満たらたらだった。どっちかと言うとこっち側だろ?あいつ」
「……いいだろう、必要なものがあれば言ってくれ。弔はそっちに集中してもらおうかな。教祖は黒霧、君がやれ」
「えっ」
可哀想な黒霧。彼は隠れ家的バーのマスターというポジションが結構好きで、暇を見つけてはグラス磨きやスキルアップなどをしていた。ただでさえ忙しいのにこれ以上のタスクを割り振られたらそれもできなくなるだろう。なんとかこの無茶振りを撤回してもらわなくてはならない。
「あの……私は色々と飛び回らねばならないでしょうし、人を従えるような資質もありません。新興宗教の教祖など無理ですよ。誰か別の人員はいないのですか?」
「うーん、仕方ないか。わかった、教祖……教祖じゃないけど……とにかくそいつは僕がそれらしい誰かを」
「いや。そっちも俺がやるよ、先生。問題あるか?」
「やる気満々だね、弔。教え子が立派になって鼻が高いよ。もちろん構わないさ」
後方保護者ヅラで自画自賛するおじさん。なかなかうまく仕上がってきたんじゃないか? などと考えているようだ。死柄木からしたら自分の仲間選びに先生の色がつくのが嫌だっただけである。梅干しおじさんはいつもそうだ。自分のものだと思っているものがそうじゃなくなっている事に、あるいは最初からそうではなかった事に気づかない。罵倒にはコンプレックスが出る。『終わった人生にしがみついている動く死体』は一体誰なのか。彼が本当に求めているものは既に失われているのに、未だにあると言い張って熱心に追い求めているのだ。徘徊ボケ老人である。
独自設定とか
・インゲニウムちゃん:バズった。
・黒脳無と翼脳無:エンデヴァーとホークスとグラントリノとデクとショート+マニュアルその他ヒーロー相手にできることあるかなぁって考えたら無かったのでナレ死。
・響香ちゃんの職場体験先:ギャングオルカのところ。
・鯨のお兄さん:昔ギャングオルカと水族館の経営についてくっそ大喧嘩したけど仲直りして今は楽しくやってる。
・インゲニウムまんじゅう:メスガキが最近和菓子にハマってると聞いてとりあえず持ってきた。正式なお礼は正式にあとを継いだ時にしようと思っているらしい。
・雄英でお菓子食べていいの?:どうだろう。どっかで設定出てたら教えて下さい。あるいはお菓子食べてるシーンとか。寮になるまでお菓子の話出てこなかったしダメそうな気もするな。
・インゲ
・ビッグ・イング:サポートアイテムはまだない。
・救けを求める顔してた:ハァ……ハァ……敗北者……?
・8:2坊やを笑わない:切島が頑張って我慢したので瀬呂も頑張ったけど片方が撃沈したらダメだった。
・変顔爆豪:承認欲求が満たされる機会が減ってるので逆に笑顔(?)が増える皮肉。
・知識すかすか♡ざぁこ♡ざぁこ♡:グラントリノは萌えキャラ。
・徘徊ボケ老人:薄鈍の人生と永訣出来ぬ弱き者。