ボクのヒーローアカデミア くらっしゅ!!   作:ぺぺぺぺぺぺぺ

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『悪いことに対抗しても、あなたが良くなるわけではない』

「それじゃあ皆またねーっ!」

 

 ここは木椰区ショッピングモールのへんなオブジェの前。テスト明けの休日を利用して林間合宿のための買い物にA組の皆で行こうよ! という感じの葉隠の提案に乗って親の病院に行くという轟と付き合ってられっかと吐き捨てた爆豪を除いた全員が集まった。

 

「たまには大人数で集まるのもいいね。楽しかった。いい感じのバッグも買えたし」

 

 切島はだいぶ仲良しクラスっぽくなってきたことに大喜びだったが、爆豪が居ないので時折寂しそうにしていた。しかし途中でなんとショッピングモールに来ている爆豪を発見。爆豪は他人に合わせて動くのが嫌で誘いを断わっただけでそもそも最初から同じ場所に買い物に行くつもりだったのだが、寂しくなって来ちゃったんだな、みたいな生暖かい目で見られた。そして本人はそれに全く気付いていなかった。

 

「私も今回のために一新しましたわ。お二人共よろしければ私の迎えの者に伝えてお送りしましょうか? その、もう少しお話したく思います」

 

 それぞれ買うものが違ったのでバラけて買い物し、昼食を楽しみ、しおりを見ながら皆で買い忘れがないかチェックしたり、明日からの補習について話したりして大いに楽しんだ。そしてつい先程、遠くから来ているクラスメイトもいるので日が暮れる前に解散しよう、となったところだった。

 

「んー、駅までってことなら是非!」

 

「サンキュ。お言葉に甘えようかな。ヤオモモ、お願いしても良い?」

 

「もちろんですわ! 響香さんはお家まで、リノちゃんも駅まではご一緒しましょう!」

 

「ボーナスタイムだねっ! ありがとー!」

 

 帰りの車内でもきゃいきゃいとしたいつものトークが繰り広げられる。メスガキがイキって八百万に感心されて響香が窘めたり。八百万がナチュラルお金もちな感覚でなにか喋った事に響香がツッコミを入れたり。響香と八百万の音楽トークをメスガキが楽しそうに聞いたり。そんな、よくあるいつもの楽しい会話もすぐに終わり、駅前の広場で手を振って八百万家の車を見送り、名残惜しそうに帰路につく。

 

「おー! 君雄英の人だよね! 体育祭で優勝してた娘だ!」

 

「わー! 実物はテレビで見るよりカァイイですね!」

 

「炎効かなかったよな。アレどうやったんだ? 教えてくれよ」

 

 なんかチャラそうな3人組がメスガキに話しかけてきた。いきなり話しかけられたにも拘らずメスガキは愛想よく返した。

 

「そうでーす! 最高に可愛いボクのヒーロー名はホーリーナイトっ! ドリームヒーロー ホーリーナイトですっ! ぐっすり眠れる聖なる夜をっ! わくわくする明日を貴方にお届けっ! ホーリーナイトをよろしくお願いしますっ! 炎が効かないのは無敵だからです!」

 

 にぱっと笑顔を振りまくメスガキに3人は気を良くしたようで「いい名前じゃん」とか「無敵ってすごいな」とか「もっとお話をしようよ」とか「いま時間ある? 良かったら遊ぼう」とかナンパみたいなことを言ってきた。男2女1でこんな事言う奴らには絶対ついて行ってはいけないとお前に教える。

 

「ん~……ちょうど暇になったところなのでちょっとなら良いですよっ!」

 

「お、ノリ良いな。そんじゃとりあえずそこのベンチに座ろうぜ。つーか敬語じゃなくていいぞ」

 

「そうですよ! もっとナカヨクなりたいです! あ、私は敬語じゃなくてこういう喋り方なので気にしないでください!」

 

 このJKもどきはそういう喋り方をするように『教育』されているので相手に敬意がなくてもこういう喋り方をする。

 

「ベンチかよ。暑いしどっか店に入ったほうが良くないか?」

 

 暑いのはそのマフラーのせいだろう。ツギハギ男はなんかこうデリケートな触れ辛い空気を纏わせながら顔面を隠している。怪しさ満点だが、この〝個性〟社会だと変な格好してるやつなんてありふれているのでそこまで目立たない。

 

「ボクはどっちでもいーよっ! とりあえず座ろっ?」

 

 メスガキはまぁまぁ乗り気のようだ。ちょっと奥まった場所にある自販機コーナーのベンチへ「ツッテケテー」と移動し率先して座るとちょいちょいと手招きをした。

 

「えへへ、私がお隣ですっ! ちっちゃくてカァイイねぇ、カァイイねぇ」

 

「そんじゃ俺が逆隣で。席足りないから荼毘は立ってろ」

 

「ハァ? なんで俺だけ。お前が立てよ」

 

「(破綻JKしか比較対象がいないから)一番頼りになるからな、お前は。ダンスもやってるし。せっかくの楽しい話に変なやつが寄ってきたら困るから護衛みたいなもんだ」

 

 ダンス万能説である。ダンスをやってるやつは大体なんでもできる。そういう説得力がある。荼毘はダンスやってるからな。寄ってきた変な奴らの筆頭であるぽんこつ3人組のボスは似たようなやつには来てほしくないらしい。

 

「まぁ、そういうことなら」

 

 納得してしまった。まぁそもそもこいつ人の言うことすぐ鵜呑みにするし、一つのタスクに夢中になったらそれしか出来ないタイプの天然かつ視野狭窄のバカガキのまま脳のタンパク質が固まっちゃってるのでさもありなん。

 

「とりあえず自己紹介するか。俺は死柄木弔」

 

「トガヒミコです!」

 

「とど……なんでもない」

 

「え、ボクも本名を名乗れって圧かけられてる?」

 

「いや、そういうわけじゃない。ホーリーナイトで十分だ。……俺のこと、覚えてないか」

 

「覚えてるよー! ヒーローが救けてくれなかったから敵になっちゃった可哀想な死柄木弔くん! 謝罪とお悩み相談しに来たんでしょ? どーぞっ!!」

 

 場に沈黙が降りた。なんかあっさりついてきたので気付いてないんだろう、と思っていた死柄木弔はあっけにとられた。しばらく黙っていた死柄木だったが、次に口を開いたときに出てきたのは意外な言葉だった。

 

「ああ……そうだな。可愛い女の子に意地悪言って悪かった。ごめんな。許してくれるか」

 

「わあ! 弔くんってちゃんと謝れたんですね! 絶対謝らないってカンジの人だと思ってました!」

 

「俺もだ。すぐキレるし謝らないしなんなら自分が悪い癖に黒霧に謝らせてるよな」

 

「破綻者どもは黙ってろ」

 

「いいよ~! ボクはとっても優しいから許してあげるっ! こっちもひどいこと言ってごめんね! ハイ、仲直りー! やったー!」

 

「わーい! 仲良くなれたんですね! 早速ですけど血を貰ってもいいですか? チウチウしたいです」

 

 いいですよ! なんて言ってくるやつが居たら見てみたい。いや、居るには居るだろうけどそんなの絶対下心あるぞ。その代わりに俺もチウチウするぜ~みたいなこと言ってくると思われる。

 

「やったぜ。めでたしめでたしだな。ところでなんで炎効かないんだ? 教えてくれよ」

 

 荼毘はそれで頭がいっぱいらしい。多分まともに動く部分が少ないのだと思われる。だましだましで動いてるいつ止まってもおかしくないスクラップなのでね……。

 

「何だこのノリは。俺がツッコミ役なのか? 嘘だろ?」

 

 死柄木弔は養殖(ヴィラン)なので天然モノのアレっぷりにはついていけないのだ。かわいそ……。

 

「出血なんて生まれてこの方一度もしたこと無いから血をあげるのは無理かなー! 炎が効かないのと同じで、ボクは無敵だから!」

 

「え!? 一度もですか? それじゃあ」

 

 わかったこの話はやめよう。ハイ!! やめやめ。

 

「だからどう無敵なのかが知りたいんだよ。なんかカラクリがあるんだろ。あの黒い〝個性〟でどうやってるんだ?」

 

「お前らまじで黙ってろよ。そんなのはこれからの話が上手くいけば後でいくらでも出来る話なんだから。なぁ、ホーリーナイト。現在の世の中って窮屈だと思わないか」

 

「めっちゃ思うー!!」

 

 好感触である。つかみはオッケーって感じだ。なんか色々と具体的エピソードを話して説得しようと思っていた段取りが無駄になったが、思ったよりもずっと実感のこもった言葉だったので死柄木も言葉に熱が入る。

 

「…………だろ!? そうなんだよ窮屈なんだ。トガ、荼毘、お前らもそうだろ」

 

「はい! 生きにくい! 窮屈です! 血に染まりたい! 生きやすい世の中になってほしいです!!」

 

「そうだなァ。頑張っても報われないおかしな社会だぜ」

 

 すごい一体感を感じる。今までにない何か熱い一体感を。死柄木弔の人生でここまで他人と『分かりあえた感』を味わったことがあっただろうか。

 

「こんな世の中はぶっ壊すべきだ。そう思うだろ、ホーリーナイト」

 

「その通りッ! ……諸君っ! 今の世の中は問題だらけだっ! 不理解! 不寛容! 拒絶と差別、そして格差! それに無力感を覚える人がたくさんいる! キミたちもそう!」

 

 メスガキのいつものやつがまた始まった。大げさな身振り手振りで演説をしている。クラスメイトなら最早8割位は聞き流すやつだ。無視しているわけではなく言ってることがちょいちょいアプデされるので2割は聞いてくれているということだ。慣れてないぽんこつ3人組はちょっと圧倒されている。

 

「そうなんです! 私は……私は! 生きにくいっ! 生きているだけで苦しい……!」

 

 破綻JKは完全に真に受けてしまった。なんだかんだで素直な性根はしているのでスッと入ってしまったのだ。言葉に全く嘘を感じなかったのも大きい。この娘は本気で言っていると、トガヒミコには分かった。

 

「世界には必要なんだ! オールマイトを超える真なる頂点がっ! それがこのボク!! 世界を「ボク」と「それ以外」に塗り替えてあらゆる格差を是正する新人類なのだっ!」

 

「おお……。それがお前か。そうか、そうなんだな。思ったよりちゃんと考えてて安心したぜ。俺達は仲間だ。気に入らない今の世界をぶち壊す。同じ目標に向かう同志なんだ。一緒に行こう。アジトに案内する」

 

 死柄木も感じ入るものがあったようで、珍しく笑顔など浮かべてそう言った。ムカつく餓鬼だと思っていたが、いいじゃないか。仲間。死柄木弔にとって、壊したくないと思えるもの。あのバーや、黒霧。コーラとアイス。甘い物。

 

「そうだねっ! 同志だっ! でも(ヴィラン)になるのはちょっと……ボクは世界一のヒーローになって世の中を変えるんだから(ヴィラン)なんてやってる場合じゃないし、お父さんとお母さんに怒られちゃう!」

 

「は? ……は? そんなの……そんなのどうでもいいだろ!! 親に怒られるだと!? そんなものは無視すればいいんだ!!! …………そんなものは……!?」

 

 何かが死柄木弔の頭の奥でざわめいている。肌が痒い。ムカムカとした不快感が全身を支配する。手当り次第何かを壊したくなってくる。それは……駄目だ。『我慢』しろ……! ここに居るのは仲間だ……!! 壊しちゃいけないものなんだ……! 死柄木弔が恐ろしい爆弾と化していることにも気づかず愚者たちの座談会は続く。

 

「わ、分かります……親はコワイです……私も家に近づけない……」

 

「ハッ……俺は焼き殺すつもりだけどな。まぁ人生において親の存在が重大ごとなのは俺にも分かるぜ。だからこそ俺は……」

 

「え!? 焼き殺すなんて、そんなのボクは絶対に許さないぞっ!! そんな事したってキミが不幸になるだけだよっ!」

 

「不幸になるだって? もう不幸なのが分かんねえかなァ。このツギハギだらけの体を見ろ。終わってんだよ俺は」

 

「まだ生きてるんだから終わってないっ! 幸せになろうとしていないだけじゃないの!? 不幸に浸っちゃだめだよっ!」

 

「幸せね。今更どうやってなるんだか。もう俺にはこれしかねぇんだよ。邪魔をするならおまえも……」

 

 荼毘の言葉が止まる。眼の前の女に、炎は効かないのだ。今更ながらに荼毘は自分が死刑台の上にいることに気付いた。

 

「ふーん? ボクをどうするって? もう分かったよね。キミのしたいことが、ううん、ボクがさせたくないことは出来ないってことが。親御さんと仲直り、しよ? そのほうが幸せになれるよ。ボクの友達の轟くんも、ギスギスだった家族と仲直りしようと頑張ってるんだけど、少しずつ笑顔も増えてきたよっ!」

 

「は? なんだって?」

 

「なに? どこが分からなかったの?」

 

「焦凍が……仲直り? 誰と?」

 

「体育祭見てたんじゃないの? 轟くんのお父さんのエンデヴァーとだよっ! お母さんとも気まずかったみたいだけどそっちは」

 

「そんなことはありえねぇ! 嘘をつくんじゃねえよっ!!」

 

「……? もしかしてキミってエンデヴァーの関係者? え……それじゃあまさか……」

 

「…………」

 

「夏雄お兄さん!」

 

「ちげえよ。燈矢だ!」

 

「誰……? 知っているのが当然みたいな態度で知らない名前出されると気まずいからやめてねっ!」

 

「夏くん知ってて俺のこと知らないのか」

 

 荼毘はアホなうえに天然入ってるからわからないようだが、学友に理由もなく「俺には死んだ兄貴がいてな……」とか話さない。家に招いて仏壇を見られたら話す可能性が発生しなくもない、くらいだ。

 

「燈矢くんって言うんですね! 荼毘くんよりカァイイので今後はそっちで呼びます!」

 

「あぁ……クソ。もっとこう、段階を踏んで明かすつもりだったのに……」

 

 名前にも表れているが荼毘はなかなか自己プロデュースタイプと言うか、浸りきって演出しているタイプだ。他人に……エンデヴァーにどう見られるかが気になってしょうがない。

 

「あ、そろそろ日が暮れちゃう! ボク帰るね! 君たちもう犯罪行為なんてやめようね! ボクまだ免許無くて現行犯でしか捕まえられないから今は見逃してあげるけどっ!」

 

「えっ!? 私たち仲間ですよね!? なんで捕まえようとするんですか?」

 

「え? 仲間だからだけど……間違ってたら止めてあげるのが本当の思いやりなんだよ?」

 

「……そんなの……嘘です……それに私捕まったら死刑になっちゃいます。私を殺すんですか……?」

 

「死にたくないならなぜ死刑になるような犯罪を……? ていうかヒミコちゃん何歳?」

 

「……17歳ですけど」

 

「じゃあ100%死刑にはならないよ。18歳未満の死刑は無期刑に置き換わるからね。むしろ死にたくないなら早く自首したほうがいいんじゃないかな!」

 

「えっ」

 

「燈矢お兄さんは……親……エンデヴァーだよね? あの人を殺すことで何が欲しいの? それは本当に殺せば手に入るの? そんなことは無理だとか、なるはずがないとか、そういうの全部取っ払って、理想の『こうなったらいいな』をしっかり思い浮かべたほうがいいと思う!」

 

「…………うるさい……」

 

「弔くんも! 今度はちゃんとお悩み、聞かせてねー! 現在(いま)をぶっ壊すのはボクがやってあげるから安心してぐっすり寝るといいよ! ……『先生』にもそのうちご挨拶に伺いますって言っといて! それじゃまたね!」

 

 ぴょん、とベンチから跳ねるとすたすたと歩き去るメスガキ。通報などはする気がないようだ。死柄木弔はじっと衝動に耐えている。重苦しい沈黙にトガがついに耐えきれなくなり口を開いた。

 

「……か、帰りましょうか、燈矢くん、弔くん」

 

「…………」

 

「……帰る? ……どこに帰るんだろうな」

 

 またお前はそういう事言う。轟燈矢の帰りたい場所なんて一つしか無い。そしてトガヒミコは帰りたくない場所しか無いのでどこにいても同じ。話が合うはずもなく、死柄木弔も黙ったままなので地獄のような沈黙がさらにしばらく続いたが、どんなに悪い天気もいつかは晴れるように、どれほどのクズにも等しく朝がくるように、救世主がやってきた。

 

「探しましたよ、死柄木弔。それに二人も。新斗黎乃との交渉はどうなりましたか?」

 

 黒霧だ。いつものおしゃれなスーツではなくなんかチャラそうなフード付きパーカーを目深に被ってモヤ顔なのを誤魔化している。

 

「黒霧さん! えっと、うまくいったんですけど、(ヴィラン)にはならないらしいです」

 

 まだギリギリ喋ることが出来るトガが代表して伝える。一番現実逃避が上手いとも言う。完全に営業妨害になっていた自販機コーナーのどんよりした空気は黒霧には感じられないようで平常通りの慇懃無礼な声にトガは安心感を覚えた。しかし全然要領を得ない説明だったので黒霧には伝わらなかった。

 

「? すみません、わかりません。どういうことでしょうか」

 

「世の中は壊すみたいです。ヒーローになるのに忙しいから(ヴィラン)はやらないって言ってました」

 

「??? とりあえず帰りましょう。あとでゆっくり聞かせてください。歓迎パーティの予定でしたが、中止ですね。まぁそのまま晩御飯に流用しましょう」

 

「黒霧……お前はなぜ俺に従っている」

 

 黒霧が来たことで死柄木はようやく落ち着きを取り戻したらしい。そして今更ながらに自分や黒霧が何者なのか分からなくなって本当に今更な質問をした。

 

「はい? 急になんですか? 貴方に従っている理由は……なんでしたっけ? えーっと……そう。夢を……3人でユメを叶えるンデす」

 

「俺の夢……世界の崩壊を……? 3人って、先生もそれが夢なのか? ……先生はなぜ俺を育てたんだ?」

 

 先生が育てた、と言っているが実質的に育てたのは黒霧である。毎日の食事も黒霧が用意し、基本的な知識の学習も黒霧が指導し、戦闘の訓練も先生は最初に指示したあとはたまに見学するだけで、死柄木の代わり映えのしない日常は黒霧とともにあった。

 

「ワカりません。私もそういった話はあの方とは滅多にしませんのデ……アレ……3人でユメを語り合ったはずなんでスが……あの屋上で……おすし……」

 

「屋上? 俺も覚えてないな。先生の夢か……聞いてみないとな……晩飯は寿司か」

 

 帰ったら寿司ではなくチキンだのポテトだのピザだのだらけだったのでお腹がもう寿司モードになっていた死柄木はめちゃくちゃがっかりしたが黒霧の様子がなんか変なので当たり散らすのはやめてやった。文句はしっかり言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「補習、終了~~!」

 

「お疲れ様でしたァーっ! みんな本当にありがとうな!!」

 

 夏休み二日目。相澤がプライベートをそこそこ犠牲にして行ってくれた事前の補習が本日ついに終了した。現在時刻はちょうど正午。雄英側の厚意によりランチラッシュがデザート付きの昼食を用意してくれるということを聞いていた生徒たちはハイテンションだ。生徒たちは自分たちの要望の対価だと思っているが、実際は善意で雄英側のカリキュラムを手伝ってくれたわけなので、ちょっとした報酬も兼ねている。

 

「いやー! これで君たちとお別れかと思うとせいせいするよ!」

 

 デザートを食べながらそう言ったのは物間寧人。B組唯一の赤点でブラキン先生がイレ先に頼んで事前補習に混ぜて貰ったという経緯があるとは思えない態度のでかさだ。ちなみにブラキン先生はここにはいない。A組生徒たちが手伝うことになっているので教師2名は過剰だと判断され、ブラキン先生は逆に相澤の仕事を肩代わりするなど教師側の調整に奔走しているからだ。

 

「初日はしおらしかったのになぁ」

 

 B組はA組のように赤点だと林間合宿に行けないという合理的虚偽の流れはなく、つまり赤点は補習としか聞いていなかったので、物間の認識だと「このA組との合同補習がなければ実は自分が林間合宿に行けないはずだった」といきなり聞かされるというびっくりサプライズとなった。ブラキン先生は相澤がそういう嘘を吐く事自体は聞いていたのでAとBの生徒が認識合わせもしても問題ないように曖昧な言い方をしていたのだ。

 

「もちろん感謝はしているさ! でもそれとこれとは話が別!」

 

 B組の生徒は物間しかいないので、当初はもっと浮くのかと思われたが切島を筆頭に何かと話しかけていたし、A組に対抗心をむき出しにする発言も軽く流された。というかなんか生暖かく見られていた。悪態で言うと爆豪のほうがひどいし、幼稚さで言うならメスガキのほうがひどいのでA組の面々は慣れていたのだ。拳藤のツッコミがないので延々と続くそれは物間も辞め時を見失ってちょっと困っていた。バカ丸出しだ。

 

「物間! A組もなかなか纏まってきただろ!? 爆豪がいねぇのが残念だけど……」

 

 切島は体育祭のB組をみてこんなふうに結束したい! と思っていたので割と早くそれが形になってきたことを喜んでいる。実際クラスの結束に関しての切島の貢献度はすごい。切島が爆豪くん係をやってくれてなかったらもっとギスギスしていただろう。かっちゃんは実技の手伝いにだけ一度来たが何やってるかわかったのでもう来ねえと言って実際に来なくなった。

 

「ま……そうだね。少しはマシになってきたんじゃない? B組のほうがずっと纏まっているけどね!」

 

 まぁそれはそうだな、というのは誰もが認識が一致していたので特に反論はなかった。概ねそのとおりだと全員が認識していた。

 

「物間くんってむぐっ」

 

「リノ、ウチのデザートあげる。美味しい?」

 

「もぐもぐ……うんーっ! 美味しい! ありがとう響香ちゃん!」

 

 新斗ちゃん係のインターセプト。低俗な口喧嘩だかロジハラだかが始まってしまえばせっかくのホンワカした打ち上げの雰囲気が台無しである。ランチラッシュ手作りのいちご大福(一口サイズで一人2個)の片方を生贄に捧げる献身ぶりにメスガキ大明神も大満足だ。デザートを食べ終えた物間はA組に暖かく見守られながら本人は颯爽としているつもりらしい名残惜しそうな足取りで去っていった。

 

「えへへ~。レセプションパーティーでも美味しいものいっぱい出るって招待状に書いてあったよ~。楽しみだねっ」

 

「そだね。てゆーかなんか夏休みになったのにずっとリノと一緒にいるね」

 

 メスガキは雄英体育祭で優勝したので『I・アイランド』で開催されるI・エキスポのプレオープンに招待されている。どうもいろんな科学者がメスガキの〝個性〟を解析したがっているらしくものすごく景気のいい誘い文句が大量に書いてあった。同伴者を連れてきても良い、とのことだったのでメスガキは即座に響香を誘い、響香もそれを了承した。八百万も誘ったがこちらはすでに招待状を所持しており、逆に八百万家のプライベートジェットで一緒に現地へ行こうと誘われることとなった。

 

「とっても楽しみですわ! あ、そうでした。芦戸さん、蛙吹さん、麗日さん、葉隠さん、I・エキスポのプレオープンにご興味はおありですか? リノちゃんの同伴者枠と、私の家に送られてきた招待状を合わせて4枠ありますので、よろしければいかがでしょうか」

 

「え! I・エキスポってI・アイランドであるやつ!? 行きたい!」

 

「行くいくー! めっちゃ興味あるよーっ!」

 

「是非ご一緒させていただきたいわ」

 

「行きたいけど……パーティーとかあるんやろ? 私正装とか無いんやけど」

 

「レンタルもありますし、I・アイランドは特定国家に属さないので、〝個性〟の使用が自由ですのよ。私やリノちゃんが仕立てることも出来ますわ。ドレスでしたらリノちゃんの〝個性〟のほうが良いかもしれませんわね」

 

「皆に似合う可愛いドレス作るよーっ!」

 

 メスガキデザインはなかなか良いものだが、本人の趣味がかなりメルヘンなので何も指定しなければフリッフリになることを女子勢はまだ知らない。以前チア衣装を作ったときは元ネタがあったためそこまでフリフリにはならなかったからだ。

 

「女子ばっかずりぃぞ! オイラにもくれよーっ!」

 

「男女差別はんたーい!」

 

「いや……宿泊場所とか同じになるからキミたちを混ぜるのはちょっと……先生方にチケット余ってないか聞いてみれば?」

 

「おお! もしかしたら余ってたりするかもな!」

 

「行ってみようぜ上鳴!」

 

 相澤に聞いてみたら招待状を持っていた。というか雄英の教師は全員持て余してたのでその日学校に居たイレイザーヘッド・スナイプ・ハウンドドッグ・セメントスの4名が招待状をくれたので争奪戦になるかに思われたが、予定の空いている希望者が切島、上鳴、峰田しか居なかったので一枚余った。

 

「なあ! これ俺が貰ってもいいか? 爆豪を誘いてえ!」

 

「いいんじゃねぇか? でも来るかなあいつ」

 

「そんな浮ついたクソイベ行くわけねえだろクソボケ! とか言いそう。どぉどぉ? 似てた?」

 

「いやビビったわ! 一瞬マジで爆豪かと思った」

 

「そっくりー! リノちゃんほんと何でも出来るね!」

 

「声自体は違うのにな。抑揚とかめっちゃぽかったわ」

 

「最新のサポートアイテムも見られるし予定がなきゃ来るんじゃねえかな……?」

 

 いつものアレがこないな? とクラスメイトたちは違和感を覚えた。緑谷の「かっちゃんは実は云々……」という例のアレである。切島がちらっと緑谷の方に顔を向けるとクソナードはなんか気まずそうな表情で目をそらした。

 

「どうした緑谷……はっ! す、すまねえ、緑谷も行きたかったのか。それならここに居るやつ優先だ! 貰ってくれ!」

 

「えっ!? いや違くて! 僕は別のツテで行くから大丈夫だよ!」

 

「別のツテ?」

 

「えーっと、そう! グラントリノ! 職場体験先のヒーローに頼むから気にしないで!」

 

「おぉ、そうか? ……あっ、そうか! いや、なんでもねえ! それじゃあ爆豪を誘うぜ!」

 

 明らかに変な反応を見せた緑谷を見て切島は、っていうか全員が察した。ああ、オールマイトと行くんだな、と。正解です。僕も行く予定だけど名乗り出ておかないと不自然かな、とか考えてまごまごしていたが結果的に最悪のタイミングで宣言することになった。クソナードはほんとそういうとこだぞ。そもそもグラントリノがオールマイトの紹介したヒーローだとクラスメイトは知っている。どの事務所にしようかなぁ! 選べないよ! などとはしゃいでいたクソナードがオールマイトに呼び出されて帰ってきたら誰も聞いたことのないヒーローの事務所に決めていた。こんなもん勘ぐらないほうがアホである。行動すべてが親子説をどんどん補強してく……。もはやわざとやっているとしか思えないレベルであった。




独自設定とか

・ぽんこつ3人組:ずっと待ち伏せしてた。
・一番頼りになるからな:本当は黒霧にそう思ってる。
・ハイ!!やめやめ:まさか本当に聞きたいわけじゃないんでしょう?
・親に怒られる:ヒーローの話は禁止。
・親はコワイです:隠れることばかり上手くなる。
・そんなの嘘です:思い遣りなんかじゃないもん。
・18歳未満の死刑:100万人殺しても死刑にはならない。
・死柄木弔の育成:梅干しおじさんがコツコツやったとは思えないし、黒霧も死柄木弔を育てるために作ったらしいので。
・おすし:にゃー。
・爆豪以外来てる:毎日全員居たわけではなく最終日なので揃ってる。
・物間くんって:ボクに勝てないから組の勝敗にすり替えようとしてるの?
・同伴者枠:本来は家族を連れてくるやつらしいので本人+3枠と設定。
・ヤオモモの招待状と優勝者の招待状の違い:同伴者OKのやつと個人用があるっぽい?
・I・アイランド:メスガキを存在させてはいけない場所。
・雄英教師が招待状持ってる:来るんじゃないかなぁ……。
・グラントリノ:原作の描写でもオールマイトに紹介してもらったんだろうなぁと推測するのは容易。
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