ボクのヒーローアカデミア くらっしゅ!!   作:ぺぺぺぺぺぺぺ

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オレにだって……わからないことぐらい…ある…


『世界についての永遠の謎はそれが理解可能であることだ』

「お嬢様方。当機はまもなくI・アイランドエアポートへの着陸体勢に入ります。座席についてシートベルトの着用をお願い致します」

 

「わー! もう着いちゃうの? はやーい!」

 

「ね! ていうか飛行機の中だって忘れちゃってた!」

 

 A組女子勢は八百万家のプライベートジェットのなかで大はしゃぎしていた。そしてその興奮冷めやらぬうちにもう目的地に到着すると聞いて驚いている。

 

「最近機体を最新型に更新しましたのよ。私も乗るのは2度目なのでまだまだじいやの案内が必要ですわ。皆様ご自分の席につきましたわね? じいや、皆様のシートベルトのチェックをお願い」

 

「かしこまりました」

 

「ありがとうございまーす!」

 

「新斗お嬢様、もう少しベルトを締めたほうがよろしいかと。失礼します」

 

「うー……こんなの無くてもボクは平気なのに~」

 

「万が一ということもございますのでご容赦くださいませ」

 

 八百万家の出来る老執事、内村。八百万百が生まれたときから世話になっている、単なる使用人を超えた家族のような存在だ。じいやと呼ばれている彼はメスガキのしょうもないワガママにも柔らかな笑顔で応えている。まぁメスガキが大丈夫でも例えば慣性で吹っ飛んでなにかにぶつかったらくっそ迷惑なので大人しく縛られておくべきだろう。全員の安全を確認したじいやは自身も席につきシートベルトを締め、機長に連絡しこれからの予定を説明した。

 

「I・アイランドでの入国審査の終了後、私どもがホテルへお荷物をお運びいたしますので。お嬢様方はそのままI・エキスポをお楽しみください。我々はホテルにて待機しておりますので何かございましたらいつでもご用命ください」

 

「ボクたちの荷物までありがとうございますっ!」

 

「お世話になりまーす!」

 

 八百万家に来た招待状はスポンサー向けの特別なものであり、宿泊場所はI・アイランド最高のホテルのロイヤルスイートだ。そしてそれはメスガキに来たチケットも同じ。この7人で2フロアを貸切という格差の上層で益を貪る悪魔たちである。とはいえ女子勢にそこまで緊張はない。八百万家はホテルのロイヤルスイートにも負けない豪勢な家であり、もうすでに勉強会などで何度かスーパーリッチ体験をしているからだ。これ慣れちゃったらやばくない? などという会話をしているが、彼女たちは雄英を卒業すればトップヒーロー層になることが約束されている勝ち組女子なのでむしろ逆に舞い上がらないよう慣れておいたほうがいい。

 

「テーマパークに来たみたいだね! テンション上がるな~!」

 

「この都市そのものが科学をテーマにしたテーマパークと言えなくもないしねっ!」

 

 無事ハイテクな入国審査も終わりエキスポ会場の前にたどり着いた。いや、無事に終わったというのは語弊がある。実際は一悶着あった。メスガキの身体にスキャンが通らなかったのだ。招待状がスペシャルVIP用でなければもっとゴタゴタしただろうが、結局昔ながらの目視と手探りによる確認で審査を通過した。I・アイランドに住んでるようなスーパー科学者たちがそういう事があるかもと予測して入国審査の担当者に伝えていなければ門前払いされていたかもしれない。まぁぶっちゃけメスガキ自体がクッソ危険物なので何を持ってるかとかどうでもいいっちゃどうでもいい。

 

「どこから回りましょうか?」

 

「順番は気にしないけどミュージックパビリオンは絶対行きたい」

 

「私はウォーターパビリオンに興味があるわ」

 

「ライトパビリオン! ホログラムで衣装を作るんだって!」

 

「私は〝個性〟を使えるアトラクションが楽しみー!」

 

「最新のサポートアイテムの展示会があるんやって。あとヒーローたちが招待されてイベントやっとるエリアとかも……」

 

「なーんかそれ、お茶子ちゃんの趣味っていうか……」

 

「ねー! もしかして、そういう!?」

 

「えっ! そ、そんなんとちゃうから!」

 

「あ、もしかして緑谷くんと会いたいの? お父さんと来てるだろうしきっと会えるよっ!」

 

 メスガキの発言を聞いて全員が黙り込む。いや、思ってたけど言っちゃいけないやつで、大っぴらにしたらまずいやつ。せっかく明言せずにふわっと話してたのに台無しだ。とりあえず話を逸らそうとしたのか、芦戸が慌てて提案した。

 

「え、えーと、そう! まずは近くから行こうよ! ウォーターパビリオン! たのしそー!」

 

「ケロ……そうしましょう」

 

「リノ、雄英の外ではその話やめようね」

 

「分かった~!」

 

 雄英の中でも辞めたほうがいいと思いますよ耳郎さん。メスガキと居ると物差しがバグるので響香ちゃんは順調に毒されていっているが、この部分に関してバグらせたのはクソナードだ。ウォーターパビリオン、ライトパビリオン、ミュージックパビリオンを見回り、ついにヒーロー候補生としてのメインコンテンツとも言えるサポートアイテムの展示会へと足を踏み入れると、元気良く声をかけてきた人物が居た。クラスメイトの飯田だ。

 

「こんにちは皆! 楽しんでいるようだな!」

 

「飯田くん! 楽しんでるよ~っ!」

 

「おー! 飯田だ! そう言えば来るって言ってたね! ところでそちらの車椅子の人ってもしかして……」

 

「ああ! 紹介しよう! 俺の兄、飯田天晴だ!」

 

「どうもこんにちは皆さん、天哉の兄の天晴です。いつも弟がお世話になっています! 特にホーリーナイトは色々とありがとうな!」

 

「ビッグ・イング! 気にしないでくださいっ! おまんじゅうおいしかったですっ!」

 

「……ああ! そう言えば取り急ぎってことで天哉に渡してもらってたな!」

 

「私たちも分けてもらっちゃいました! ありがとうございまーす!」

 

 この場にいる飯田以外のクラスメイト全員がまんじゅうを食べたので全員で頭を下げると天晴は少し驚いたようだったがすぐに朗らかに笑った。

 

「いやはや、華やかだな。天哉はこんな素敵なお嬢さん方と同級生になれた幸運をしっかりと噛み締めるんだぞ?」

 

「ああ、兄さん! 皆本当に素晴らしいヒーローの素質を持っていて、いつも負けられないと発奮させて貰っているよ!」

 

「お、おう……そうか。……本当に後悔のないようにな? 兄ちゃん心配だぞマジで……」

 

「?」

 

 飯田は良く分かっていないようだ。まぁでもこれはお兄ちゃんも悪いんだよ。そろそろいい歳なのに浮いた話もない兄を基準に物事を考えているからそういうことに全然興味持ってないんだわ。

 

「俺達は今からサポートアイテムを開発している企業と会う約束があるのでそろそろ失礼するよ!」

 

「皆邪魔してゴメンな! ホーリーナイト、今度もっとちゃんとしたお礼するから! それじゃまた!」

 

 飯田はピシッとした動作でキビキビと車椅子を押して去っていった。兄はそういうカクカクした動きしないんだなぁ、と女子たちは思った。一家の特徴ではなく彼だけのものらしい。

 

「あ、アレ緑谷じゃない?」

 

 飯田が去ってからややあって会場に入ってきたのは皆さんご存知モサモサそばかすクソナードだ。めっちゃキョロキョロしているので視界に女子勢も入ったはずなのだが、サポートアイテムに夢中で意識には入らなかったのだろう。

 

「ほんとだー! おーい! 緑谷くーんっ!」

 

「え? あ、皆! 奇遇だね!」

 

「楽しそうやね、デクくん」

 

 麗日はなんかいまだかつて聞いたことのない感じの平坦な声色で言った。視線の先には緑谷の隣で親しげに微笑んでいるパッキンのチャンネーが居る。そのグンバツのマブいスケはイケてる感じの声でクソナードに優しく話しかけた。

 

「デクくんのお友達?」

 

「はい! 学校のクラスメイトです! えっと、みんなにも紹介するね。こちらメリッサ・シールドさん。ノーベル個性賞を受賞したあのデヴィット・シールド博士の娘さんで、今会場の案内をしてもらってるところなんだ」

 

 クソナードはなにかやましいことでもあるのかちょっと様子がおかしい。そういうとこだぞ。隠し事自体に向いてないのはまぁ嘘がつけないと好意的に見てくれている人も居なくはないが……。

 

「へぇ~! メリッサさんは緑谷くんとどういう繋がりで案内を?」

 

「私のパパとマイトおじさまが……」

 

「わ~~!! ちょ、ちょっとこっちに来てください!」

 

 緑谷がメリッサの手を引っ張って離れていく。もうバレバレで隠す意味はあまりないのだが、クソナードの中ではまだバレてないことになっているようだ。ちょっと離れたところで小声で話したところで、耳郎ならば容易く聴くことが出来るので無意味だ。メスガキも本当に繋がりが気になったのではなく「オールマイトの相棒の娘と随分仲よさげじゃん」という含みだらけの質問をオールマイトにロジハラするときの顔をしながら意図的にぶつけたのだ。

 

「またいつものやつかぁ……」

 

「なんで事前に言っとかないんだろうね」

 

「ていうかシールド博士の娘さんと一緒にこの会場うろついてる事自体がもう迂闊じゃない? あっちのパネルにデカデカとシールド博士の功績書いてあるし」

 

「そろそろ注意して差し上げたほうが良いんでしょうか……」

 

 この会場にあるサポートアイテムの殆どにデヴィット・シールド博士の技術が関わっています。彼はオールマイトがアメリカで活動していたときの相棒で、今も彼のスーツはシールド博士が手掛けています。そんな感じのことが書いてある電子パネルがある。メリッサの口を塞いだところで徒労以外の何物でもない。クソナードとシールド博士の娘が一緒にいる事は、知らない人が見てもなんとも思わないだろうが、A組の生徒が見たら「あっ……」ってなることうけあいだ。まぁオールマイトとの関係を隠したいです、という話をいつ切り出せば良いんだよというのは分からんでもない。

 

「あの人が旧交を温めている間に会場の案内を頼まれた、って感じかな?」

 

「まぁそんな感じだろうね。……引退の相談とかしてたりするのかも」

 

 そんな事を話しているとクソナードたちの方も話がついたようでメリッサがニコニコしながら話しかけてきた。

 

「皆さんよかったらカフェでお茶しませんか? ヒーロー候補生さんたちのお話、是非聞いてみたいわ!」

 

 アメリカンな感じだ。何がって、話の逸らし方の強引さが。マイトおじさまなんて言ったかしらうふふとか言い出しそうなくらいイイ笑顔で無理やり今までの流れや質問を無かったことにしようとしている。

 

「……いいですねっ! お話、しましょうっ!」

 

 メスガキは緑谷を見逃したのではない。泳がせたのだ。まだまだ甚振れる。そういう幼稚な嗜虐心まるだしのニヤニヤ顔をしている。メスガキは顔がいいのでメリッサにはいたずらっぽい笑顔に見えてしまい、その邪悪さは伝わらなかった。全員でのこのこオープンスペースのカフェに移動し、自己紹介をしたあとぽつぽつと職場体験の話をメリッサに聞かせると、彼女はどんな話にも目を輝かせてすごいすごいと褒めてくれるので、女子たちもどんどん盛り上がってきて緑谷は完全に蚊帳の外になってしまった。

 

「でもやっぱ一番は実際に敵を倒して捕まえたリノと緑谷だね」

 

「あ、え、ハイ!? 何?」

 

 急に自分に水を向けられて慌てる緑谷。コミュ障なので自分もこの会話に参加しているという意識はもう砂塵の彼方へ消えていたのだ。

 

「緑谷は保須市でなんだっけ、脳無だっけ、あれをやっつけたんでしょ」

 

「ああ、アレは殆どグラントリノ……職場体験先のヒーローがお膳立てしてくれたものだから、実力で倒したわけじゃないっていうか……2体目は殆ど見てただけだし……」

 

「いや、そもそも戦闘に参加させてもらえないのがフツーだと思うよ、職場体験って」

 

「お客様扱い感あったね~。敵が出てもサイドキックの人と一緒に避難誘導って感じで、まぁそれが当然なのは分かるけどね!」

 

「リノちゃんもそうですが、プロヒーローに戦っても良いと認められたのは誇って良いのではないでしょうか?」

 

「ホークスは結構ぽんぽん許可出してくれたかな~。事務所はすっごくアットホームな職場だったよっ! ファンサについていっぱい教えてくれたのが印象深いねっ!」

 

「もうファンサを!? さすが速すぎる男、先を見据えているんだね! ホークスのファンサの満足度は地元福岡での高評価はもとより遠征先でも変わること無く素早くも温かみのあるものとして評判でブツブツブツブツ」

 

「ホークスと言えば若くして日本のNo3となった新進気鋭のヒーローね! 彼の航空被服は飛行・高速移動のサポートに加えて防塵、抗菌機能を備えた上に彼の〝個性〟に連動して超振動し清潔さを保つといった衛生と機能性を高いレベルで融合した着る飛行機とでも言うべきものだわ! ただサードアイリッドはオーソドックスな防風・防塵用のものだから例えばさっきデクくんに見せたような高機能なセンサーなどを内蔵すればさらにYAPYAPYAP」

 

 先程まで素晴らしい聞き役だったメリッサの突然の限界化に戸惑う女子勢だったがクソナードはキラキラした目で彼女を見つめた。彼は自分がベラベラ喋るのも好きだが他人の蘊蓄を聞くのも好きなのだ。特にサポートアイテムの詳しい仕様などは非公開と言うほどではないがあまり表に出てこない情報なため非常に興味深いものだ。ちなみにサードアイリッドとはホークスが付けているゴーグルの名称で、日本語で言うと瞬膜。鳥などが視覚を維持したまま瞬きするためのもので第三の瞼とも言われている器官の名称である。

 

「……と思うのだけれどホークスはなぜあのシンプルなゴーグルを愛用しているのかご存知? やっぱり重量かしら」

 

「そうだねっ! ホークスは装備の重量を一番重視してるって言ってた! それに本人の眼もすごく良いし『剛翼』に感知能力もあるからゴーグルで分析まですると処理が大変なのもあるんじゃないかな?」

 

「なるほど! やっぱりコスチュームやサポートアイテムは本人との密接な打ち合わせが重要だと痛感するわ……I・アイランドは素晴らしい場所だけどヒーロー側に来てもらわないといけないのが大きな欠点ね」

 

「さっきのパネルだとシールド博士はマテリアル系っぽい印象だったけどメリッサさんはメカニック系なの~?」

 

「私も父もどちらもやっているわ。ただオールマイトの活動についていけるような機械式のサポートアイテムは嵩張りがちだからマイトおじさまがアメリカに居た頃は素材研究に注力していたらしいわ。父の最近の研究内容そのものは機密だから私も知らないけれど、私の今の研究テーマは」

 

「緑谷ァーーーッ!! おまえーっ!! 何だその羨ましい状況はァーーっ! クソボケがーーーっ!!」

 

「気に障ったら謝るけどよ……まさか“ガチ”じゃないよな……? どういうことだよえーーーっ!?」

 

「あ! 上鳴くん! 峰田くん!」

 

 クソナードはクソみたいな難癖をつけてきた二人の登場にも嬉しそうだ。自分以外女子しかいないこのシャレオツオープンカフェ空間、クソナードにハーレム状態な喜びなど無く、ただただ場違いな気がしてプレッシャーが掛かっていたためである。あと幼馴染のおかげで罵倒に対する耐性もバグってる。

 

「二人も雄英のお友達かしら?」

 

 出会い頭にドン引きするような叫び声を発していた狂気のイエローモンキー共にもパッキンチャンネーは全く怯んでいない。メリッサのような努力家で美貌もある陽のクイーンビーにとってこの程度のキョロ充の相手など慣れたものだ。世界的権威の娘ということもあり変な奴らとの遭遇も多いのでこの程度かわいいものなのだろう。

 

「ハイッ! 緑谷くんとはとっても仲良しです!」

 

「その通りです! 緑谷! オイラたち親友だよなぁ!?」

 

「み……峰田くん! うん! 僕達は親友だよ!!」

 

 クソナードはコミュ障だが別に言葉の裏がわからないわけではない。平常時であれば「あはは、そうだね」くらいの返しができたであろう。ただ緑谷の精神は隠し事をしながら女子に囲まれているというバッドコンディションだったため、USJからこっちそれなりに親しく話している峰田に「オイラたち親友だよな?」といわれて普通に嬉しくなってしまったのだ。圧をかけたつもりだった峰田はめっちゃ嬉しそうなクソナードの表情に目に見えてトーンダウンした。

 

(ちが……オイラ……そんなつもりじゃ……親友だと思ってないわけじゃないけど……! 緑谷のことかっけえって思ってるけど……! 今言うことじゃなかった……!)

 

 峰田は自分がギャグキャラな自覚があり言動もそれを踏まえてのものなのでこんなふうに真に受けられると困りがちだ。アホと良くつるんでるだけあってアホ度合いでは負けてない。

 

「なんか楽しくなってきたな! なぁお前ら、爆豪と切島と合流しねえ? あいつら轟とずっと『ヴィラン・アタック』ってアトラクションのタイム競ってんだよ」

 

 上鳴は自分で口にした言葉で脳が友情モードに切り替わったらしく先程までの険しい顔を一変させ朗らかに誘いをかけた。響香ちゃんはそんな上鳴のアホっぷりを見て自分の尻尾を追いかけてぐるぐる回るわんこが脳裏に浮かんでブフっと吹き出した。麗日はそれを見て理由もなくもらい笑いをしてこっちもお茶を吹いた。

 

「ウワーッ! ありがとうございます!」

 

 位置と身長の関係で割とガッツリお茶を被った峰田がなんかきっしょいお礼を言った。本当に気持ち悪いよ。お茶子ちゃんが謝ることも忘れて絶句してるぞ。

 

「ん~、爆豪くんとそういう場所で遭遇したら絶対競おうとしてくるからボクはやめとく~。行きたい人が居たら……っていうかレセプションパーティまで別行動でも良いかもねっ!」

 

 メスガキはどちらにせよどこかのタイミングで誰かしらの研究者に会って〝個性〟を分析させてあげるつもりだったのでちょうどいいと思ったらしくそんな提案をした。誰に会うか決まってないのはI・アイランドの性質上、特定の研究者からの個人的なお招きが推奨されないからだ。一応招待状に特に興味を持っている科学者の名前が列挙されていたのでその場の気分で決めるつもりだったが、ちょうどいい感じの理由が発生していた。

 

「メリッサさん! ボクはシールド博士に会って〝個性〟の分析してもらおうと思っているんだけど、どこに居るか知ってる? あ、シールド博士のご招待を受けて、ってことだけど」

 

「あら、そうだったの? えっと、パパは多分マイトおじさまと研究所でお話していると思うわ! 案内しましょうか?」

 

 メリッサはちょっとサプライズのタイミングが悪かったかな、と心配になった。父親が誰かを招いている事など知らなかったので、思いっきりバッティングしてしまったようだ。

 

「んーん! 緑谷くんの案内をしてあげて! シールド博士の研究所はセントラルタワーだよね? 迷いようないからっ」

 

「リノ、それウチもついて行っていいやつ?」

 

「来てくれるの? もちろん良いけど、退屈なんじゃないかな~?」

 

「そう? シールド博士にも会えるし、リノの個性について聞けるし、良いことばっかじゃない?」

 

 メスガキは椅子からすっと立ち上がると響香のそばに立ち、ぎゅっと抱きついた。なんか感極まったらしい。響香がとくに驚きもなくメスガキの頭をなでなでするとツインテの毛先の発光が強まり目まぐるしく色が変わりだしたのでメリッサが興味深そうに見ている。ヤオモモは私も行きますわと発言するタイミングを逃してオロオロとしている。副委員長として女子勢の引率者気分だったのでどちらと行動すべきか決めかねているようだ。

 

「ヤオモモ、リノはウチが見とくからみんなの事お願いね」

 

「モモちゃんがみんなと居てくれるなら安心だねっ!」

 

 寂しがり屋のメスガキが退屈するから来なくていいよ的なことを言うのはおそらく本当につまんないんだろうな、と思った響香は八百万には残ってもらうことにした。彼女の〝個性〟からすると色々なアイテムやアトラクションを見るだけでも刺激になるだろう、というのもある。

 

「……分かりましたわ! レセプションパーティの準備の時間が迫りましたらお知らせしますので連絡が取れるようにしておいてくださいね」

 

「了解。んじゃ行こっかリノ。みんなまたあとでね」

 

「またねっ!」

 

 二人が立ち去ったあと結局みんなで『ヴィラン・アタック』を見に行くことにした。道中の話題はメスガキと響香のことだ。

 

「耳郎ってなんか新斗のかーちゃんみてぇだな」

 

「思ったー! なんか耳郎ちゃんいつもリノちゃんのこと気にかけてるよねー!」

 

「響香さんは面倒見が良く優しい方なのでリノちゃんのことが気になるのでしょうね。私ももっとリノちゃんに甘えてほしいのですけど頼りないのでしょうか……」

 

「え!? そんなことねえだろ! 八百万はめちゃくちゃ頼りになるぜ!」

 

 上鳴は入学からこっち八百万に世話になりっぱなしなので心からの言葉であろう。

 

「そーそー! 副委員長の仕事もピシッとしてるし、勉強会のときもすっごくわかりやすく説明してくれたし、めちゃくちゃ頼りがいあるよー!」

 

「そ、そうですか? ありがとうございます。これからもなんでも頼ってくださいまし!」

 

 アシカミアホコンビにそんな事を言ってしまうと卒業までベッタベタに頼ってくると思うが大丈夫なのだろうか? まぁヤオモモは他人に頼られると嬉しいタイプなのでWINWINなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「やあ! 良く来てくれたね、アラトさん! 君のような才媛に研究所に来てもらえるなんて私は幸運だ! もう一人のレディはご友人かな?」

 

「HAHAHA! 私がすでに居た! びっくりしたかな!? デイヴ、彼女も私の優秀な生徒さ! 耳郎少女! 自己紹介をお願いしても?」

 

「メリッサさんに居るって聞いてたので別に驚きはないですよ、オールマイト先生……はじめましてシールド博士、耳郎響香と申します」

 

「ボクのことはご存知ですよねっ! いろんな研究者がボクの〝個性〟を解析したがっているみたいですけど、友人が娘さんに良くして貰ったようなので貴方を選びました! なにかわかると良いですねっ!」

 

「ああ、そうだね! それじゃあ早速だけどまずはこのカプセルに入ってもらえるかい? どうやら入国審査のスキャンでは全く解析できなかったようだが、これは更に専門的な機器だからきっとなにか分かるはずだ」

 

「はーいっ!」

 

 大人しくメスガキはカプセルに入ったが、やはり何一つ分からなかった。入国審査の時と同じ。「UNKNOWN」だ。そこに未知の何かがある、ということだけしか分からない。

 

「うーん、「ダークマター」のサンプルを頂いてもいいかな?」

 

「どーぞっ!」

 

 メスガキがビー玉みたいにまとめた〝個性〟の塊を渡すとシールド博士は様々な機械であれこれ解析をしようとするが、どの機器も「謎の何かがあります」という反応しか示さなかった。

 

「ふむ……「性質の付与」をお願いしてもいいかな? そうだな、発光させてみて貰えるかい?」

 

「了解でっす!」

 

 光を検知しているが何から発生しているかわからない。データ的にはそのようになった。

 

「性質の付与で既存の物質に偽装することはできるのかな? 例えばH2O……水の性質を与えることは?」

 

「出来ますよーっ!」

 

「……これは驚いた。分析結果は水だね。しかし球体のままだ……これは、まだ君の意志で動かせる……んだよね?」

 

「はい! この通り!」

 

 機械の中で水がふわーっと空中に浮かんだ。

 

「解析によるとこれはただの水だ。つまり球体になるはずもないし浮くはずがないんだが、球体で浮いてるね……うーん、何の力場も検知できない……もとの「ダークマター」には戻せるのかな?」

 

「これでいいですか?」

 

 星を散りばめた黒いビー玉。そんな感じの見た目に戻った。

 

「oh……一体何がどうなっているんだ? 君自身をスキャンできないのが痛すぎるな……個性数値も全く測れない……」

 

「ボクが機械で測れないほどすごいのは分かってましたけど、可愛いこと以外本当に何もわからないんですね!」

 

「そうだね。いや、何もわからないということが分かった、と負け惜しみを言っておこうか。これが次世代のヒーローか……」

 

「ああ。彼女だけではない。そこで新斗少女の頭を撫でている耳郎少女も素晴らしいヒーローの卵さ! だから、大丈夫だ、デイヴ! 何も心配はいらない。今この瞬間にもきっとどこかで、私を超えるヒーローが産声を上げている!」

 

「トシ……ああ、きっとそのとおりなのだろうな……決意は固いのかい?」

 

「ああ。とはいえ今すぐに、というわけではないさ!」

 

 オールマイトはぼかしているつもりなのだろう。しかし響香には分かった。平和の象徴の活動限界。やはり相棒に引退の相談していたのだ。シールド博士の悲痛な表情を見ると胸が痛む。それはそれとして会話内容が迂闊すぎてハラハラする。この人はもうずっとこんな感じなんだろうな。結構色んな人が「オールマイトのひみつ」を知ってそうだと響香は思った。

 

「オールマイト! ついにむぎゅっ」

 

 またなんか失言しそう……というか絶対引退ネタ擦ろうとしてた。そういう顔をしてた。メスガキは響香に頭をぎゅっと胸に抱え込まれ黙らされてしまった。何度分からせされてもまったくこりない悪びれない。

 

「リノ、おつかれ。何も分かんなかったけど、博士の言う通り何もわからないことが分かってよかったね」

 

「はふ……うん! まぁオールマイトの〝個性〟も謎だしなんとかなるよねっ!」

 

 言われてみればその通りだ。良く分からん謎の〝個性〟であることはむしろトップヒーローの条件なのかもしれないな、なんて響香は思った。




独自設定とか

・プライベートジェット:なんかこうヒロアカ科学で作られたすごいやつ。ベルトは別になくても良い。
・スキャン無効:人型のなにかということしか分からない。
・パビリオンの名前:適当に捏造。
・ビッグイング:まだ見えないところは包帯だらけ。
・メリッサの日本のヒーロー知識:体育祭は見てないっぽい。まぁ流石にNo3 くらいは抑えてると思う。
・ホークスーツ:空の上は色々舞ってるから……。
・YAPYAPYAP:ぺちゃくちゃ。おしゃべり。
・メリッサ限界化:ホークスにではなくサポートアイテムやコスチュームに対してのもの。
・轟とかっちゃんの競争:何度も並び直している。九州の方言とは関係ない。
・「ダークマター」:何もかもが謎の“個性”。
・ついにむぎゅ:ついに引退するつもりになったんですね!あとはこの最強にかわいいボクに任せて縁側でお茶でも飲んでていいですよ!
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