ボクのヒーローアカデミア くらっしゅ!!   作:ぺぺぺぺぺぺぺ

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名言引用タイトルは果たしていつまで続けることが出来るのか?


『欠陥が私の出発の基礎だ。無能が私の根源だ』

「わーたーしーがー!! 普通にドアから来た!」

 

 HAHAHAHA! と笑いながら午後の教室にやってきたのはNo1ヒーローである『オールマイト』。今年から教師になった新任の上これが初授業にもかかわらず堂々とした態度だ。まぁヒーローとして人前に出た経験は豊富だし、講演会などもやっているので当然と言えば当然だが。生徒たちは実際にオールマイトが教室に来たことで本当に彼が教師となったことを実感したらしく「画風が違う」と騒いでいる。

 

「私が教えるのは! ヒーロー基礎学! ヒーローとしての素地をつくる為様々な訓練を行う課目だ! 早速だが今日は戦闘訓練を行う! そしてそれに伴って~……ポチッとな!」

 

「ガゴッ」と音を立てて壁から何かがせり出してくる。入学前に出した書類に沿って作られた、各生徒の〝個性〟にあわせた『戦闘服(コスチューム)』だ。

 

「着替えたら順次グラウンド・βに集合! 格好から入るのも大切な事だぜ少年少女! 自覚しな! 今日から自分は……ヒーローなんだと!」

 

 準備ができた生徒から順にグラウンドに出てくる。それぞれのコスチュームによって着替えやすさが違うのでタイミングが自然とバラけることになるが、最も早くグラウンドに待機していたのは、いちばんやかましいメスガキだった。友人の響香も、普通と違うのはブーツくらいなので、同じく着替えが早かった『創造』の〝個性〟を持つ『八百万(やおよろず) (もも)』、『帯電』の〝個性〟を持つ『上鳴(かみなり) 電気(でんき)』と軽く会話しながら直ぐに出てきた。女子同士、男子同士はある程度更衣室でお互いの姿を確認しているため、グラウンドでの品評会は通常男女で行われるのだが、黎乃は更衣室に来なかったので他の女子も彼女の戦闘服(コスチューム)を見るのはこれが初めてである。

 

「〝個性〟で服作ってるだけあって早い……更衣室来なかったけど制服はどした? つーか戦闘服(コスチューム)も自前なんだね。試験の時と変わんないじゃん。いや、ちょっとデザイン変わった?」

 

「実は制服も「ダークマター」で作ってるから着替える必要ないんだよねっ! ピカッと光って即変身! デザインはちょこちょこアップデートしてるよーっ! カワイーは毎日の努力で作るものだからっ! 響香ちゃんは試験の時より大人っぽい感じ! そのブーツで個性の補助をするんだねっ!」

 

「新斗すげえ格好だな! ゴスロリ? ってのだっけ? 似合ってるぜ!」

 

「ありがとーっ! 上鳴くんは電気の個性だったよね! そのヘッドホンは通信機かな? (ちょっと響香ちゃんと被ってるな)」

 

(さっきから思ってたけどウチとちょっと被ってんな)(やべえ良く見たら耳郎と服装被ってるわ気まずい。八百万の方ばっか見てたから今気づいた)

 

 ちなみにこの二人の戦闘服(コスチューム)のデザインに類似性があるのはデザイナーが同一だからである。両者共にサポートアイテムに機械を要求しているので、そういった分野に長けたデザイナーがどちらも担当したためだ。

 

「耳郎さんと新斗さんは仲がよろしいんですのね。同じ中学校の出身なのですか?」

 

「いや、全然別の中学。入試の時に話して仲良くなったんだ。聞いてよヤオモモ、リノってば駅から出てきた途端いきなり」

 

「わー! リノちゃん可愛い! プリユアみたい! ダークプリユアっぽい!」

 

 第二陣、とでも言うべきか、比較的着替えに時間のかかるメンバーがぞろぞろとグラウンドに現れ、その中でもぶっちぎりの陽キャ、『酸』の〝個性〟を持つ『芦戸(あしど) 三奈(みな)』が早速目立つ黎乃に反応した。推薦の八百万は『入試の時に仲良くなった』と聞いて少ししょんぼりした。黎乃は「こんな事もできるよーっ!」と手のひらに〝個性〟を収束させ女児向け玩具のような杖を作って陽キャのかわいがりに応えた。ような、というかモロそれだった。

 

「おー! 『ダークバトン』!? すごっ! そんな事もできるんだ! アレやってアレ! 必殺技!」

 

『星のきらめきよ! 闇を切り裂け! ダークラプソディア!』

 

 〝個性〟を駆使してエフェクトまでバッチリ出して再現している。このメスガキはどこまで属性を過積載すれば気が済むのだろうか。至極ノリノリである。

 

「あはは! 味方バージョンだ! めっちゃかわいー! そういうきらきらした星も〝個性〟で出せるんだ!」

 

 女子たちは同世代なので大体同じプリユアを見て育っている。すなわち……ぬるっとプリユアトークが始まってしまった。八百万は全くプリユア知識がなかったため、ついていけず、さらにしょんぼりしていたが、直ぐに気付いた響香が話を振ったため、八百万がプリユアを見ていないことが判明し、一同は驚愕した。オールマイトは「きゃいきゃい」とした女子トークについていけない男子生徒たちに向かって「ムキッ」とボディビルポーズを見せファンサービスした。いい歳してプリユアに対抗心を燃やす新任教師がそこに居た。No1ヒーローとは思えない恥ずべき痴態である。その場に居た生徒たちはみな喜んだが、着替えに手間取りまだグラウンドに来ていない緑谷は、後で話を聞いて滝のような涙を流した。第三陣であるフルフェイスや全身スーツ等の着替えにかなり時間のかかる戦闘服(コスチューム)のメンバーが現れる頃には、オールマイトの軽妙なトークとファンサで場はすっかり温まっており、全員が揃ったことを確認した彼は力強く宣言した。

 

「皆かっこいい戦闘服(コスチューム)だな! それじゃあ始めようか有精卵共! 戦闘訓練のお時間だ!」

 

 その言葉を聞いて、生徒たちは口々に質問をしだした。雄英高校ではさっさと意見を表明しないと、相澤がやったように教師が勝手に決めてしまう。オールマイトもそうに違いないと思ったのだろう。口火を切ったのはやはりクソマジメガネの飯田だ。

 

「先生! ここは入試の演習場ですがまた市街地訓練を行うのですか? ポイントを計測するのでしょうか? 順位なども付くのでしょうか?」

 

 その後も各生徒が思い思いの疑問を口にした。

 

「一体何と戦うんですか? まさかオールマイトと戦うんですか!?」

 

「また除籍とかあるんですか……?」

 

「あの巨大ロボって費用はどのくらい掛かるんですか?」

 

「チーム戦ですか? 個人戦ですか?」

 

 オールマイトはわたわたとしながら訓練の説明を始めた。曰く、屋内での対人戦闘訓練。統計的には凶悪なヴィランは屋内に出ることが多いのだという。この訓練は生徒を「(ヴィラン)組」「ヒーロー組」に分けて、2対2の屋内戦を行うとのことだ。状況設定は「(ヴィラン)」がアジトに核兵器を隠していて「ヒーロー」はそれを処理しようとしている。「ヒーロー」は制限時間内に「(ヴィラン)」を捕まえるか「核兵器」を回収すること。「(ヴィラン)」は制限時間まで「核兵器」を守るか「ヒ-ロー」を捕まえること。

 

「そしてコンビ及び対戦相手はくじで決定するぞ!」

 

 オールマイトがそこまで説明すると黙って聞いていたメスガキがぴっと手を上げて質問の許可を求めた。意外と律儀な態度に周囲は少し驚いた。飯田だけは「ウンウン」と頷いていた。

 

「質問ですオールマイト先生っ! 『捕まえる』と『回収』の定義についてお願いしますっ! また、『核兵器』の詳細については「ヒーロー」「(ヴィラン)」共に把握している想定なんでしょうか?」

 

「いい質問だ新斗少女! 『捕まえる』はこの『確保テープ』を巻くこと! 『回収』は『核兵器本体』への物理的接触とする! 『核兵器』の詳細の把握については、『私が決定することではない』としよう! 疑問は解決したかな!?」

 

「はーいっ! ありがとうございます!」

 

 殆どの生徒は「前半は分かるけど後半の質問は何だ?」と疑問に思ったが、八百万だけは「ハッ」として感心するような表情を新斗に向けた。オールマイトが淀みなく説明したので、訓練に関わりがある話だということは生徒たちも分かったが……。

 

「オールマイト先生。核兵器の詳細は教えていただけないのかしら?」

 

 気になったことを我慢できずに聞いたのは『蛙吹(あすい) 梅雨(つゆ)』。蛙っぽいことなら大体できる〝個性〟をもつ女子生徒だ。着るのに時間の掛かりそうな体のラインの出るスーツを着ていて、峰田が笑顔でそれを見つめている。

 

「ふむ……もう少し詳しく言おうか! キミたちはヒーローとして、あるいは(ヴィラン)として『ビルの見取り図』と『ペアと繋がる小型無線』を所持することになる! 核兵器についての知識があるかどうかは、君たち次第さ! 私の中にいくつか想定があるから、それに沿っていると高評価となるぞ! 状況を分析して考えてみてくれ!」

 

 いくつか想定がある、とはどういうことだろう? 生徒たちはざわついた。

 

「制限時間があるんだから爆発寸前……とか?」

 

「いや、増援が来るのかもしれないし、あるいは政治的な制限があるのかも? 何らかの取引がすでに進んでいるとか、ヒーローの独断専行だから止められちゃうとか、逆にヴィランの焦りによる起爆の可能性も……」

 

「よし! そろそろ始めよっか!」

 

 ブツブツブツブツと独り言を言い出した緑谷にみんなはちょっと引いた。「いや」という否定から話に入るのもコミュ障ナード丸出しだった。地下アイドルのライブとかでハッスルしてそう。オールマイトはナンセンス界の超新星たる後継者の印象がこれ以上悪くならないようにサクッと話を進めた。くじにより最初の対戦はヒーローチーム『緑谷・麗日』VS(ヴィラン)チーム『爆豪・飯田』となった。(ヴィラン)チームは5分先に入りセッティングを行い、ヒーローチームはその後潜入。他の生徒は地下のモニター室から観察だ。画面に映るハリボテの『核兵器』に黎乃と八百万は「あー、そういう感じね」という顔をした。響香は友人二人が納得しているように見えることに疑問を覚え聞いてみた。

 

「ねね、ふたりとも今何を納得したの? ウチにも教えてよ」

 

「分かりましたわ。まずあの外見ですと」

 

「すとーっぷっ! 八百万さん! まずは自分で考えるのもこの手の訓練のキモだよっ!! 響香ちゃんも考えてみてっ!」

 

「ええー? なんだろ? えーと、なんかミサイルっぽい見た目してるよね。あ、飯田が持ち上げてる。重さは再現されてないんだね」

 

「うんうん。なんでそう思ったの?」

 

「え? だって核兵器って重いんじゃ……?」

 

「具体的な重量は知ってる~?」

 

「いや、なんとなくイメージで……? 二種類あったんだっけ?」

 

「形状的にモデルは『ファットマン』のほうかと。本物であれば重量は4672kgになります。つまり」

 

「もうちょいまって八百万さん!」

 

「す、すみません……つい……」

 

「あっ! いや、ボクも強く言い過ぎた……ごめんね……」

 

「うーん? 実物とは重さが違うんだからそもそも偽物……とか?」

 

「いい『想定』だねっ!」

 

「なるほど……たとえばヒーロー側になった場合に戦闘メインでやって『核爆弾は偽物だと看破したためヴィランの確保を優先した』とか講評で言い張れば高評価ってことかな?」

 

「私もそう思いますわ。もちろん本物だと『想定』して行動しても高評価となるでしょう。それに『核兵器の詳細については私たちの知識次第』ということは今の耳郎さんのように見学で得た情報も使用できます。後発のほうが多少有利となりますわね」

 

「相手がどういう想定……『情報』を持っているか予想すれば行動も読めるかもね! それに『核兵器』と一口(ひとくち)に言っても色々あるから! 最新のやつは一人で持ち運べるらしいから、外見は無視して重さを根拠にそっちだと想定してもいいかもねっ!」

 

「私は奇を衒わないオーソドックスな想定で行動することにしますわ。つまりオールマイトの最初の説明と、あの見た目通り『原子爆弾』として扱います。恐らくそれが正攻法でしょうから」

 

 ぼけーっとモニターを見ている生徒、真剣に分析する生徒、あるいはこの会話に聞き耳を立てる生徒、オールマイトに話しかける生徒など、様々な行動をしていたが、意識の違いというものはすでに差を作っている。しかし八百万は自分の想定をポロッと話して大丈夫なのだろうか? メスガキは先んじてやんわり『自分の想定が他人にバレたら不利かも』と響香に言ったし、他の生徒が聞いていることも考え『想定は変わるかもよ』と欺瞞情報を流そうとしたようだが、素直な八百万は友人に自分の想定を話すことを全く問題視してないようだ。あるいは彼女も欺瞞情報を流しているのだろうか? そうこうしているうちに最初の訓練が始まった。

 

「爆豪が走り出したけど飯田は戸惑ってるな。いきなりの独断専行か?」

 

「あ、緑谷くん対応した! 不意打ちなのにやるぅ!」

 

「一本背負い! 柔道でもやってたのか?」

 

「うーん、経験者の動きじゃないねあれ。見様見真似だと思う」

 

「爆豪めっちゃ悔しがってる(笑)」

 

「何話してんだろうな? 音声無いと分かんねえ」

 

 早速モニターを見ながらいろいろと話し合う生徒たち。爆豪の不可解な動きが注目されているようだ。

 

「時間制限もあるし核の場所もわからないしこれヒーロー側不利じゃない?」

 

「そうだね! 意図的にそう設定されているよ! "Plus(プルス) Ultra(ウルトラ)"さ!」

 

 芦戸の疑問にオールマイトが応える。やっぱりオールマイトもJKは好きなのだろう。その気になればJKも食い放題な立場のオールマイトだが、彼は未だ童貞である。平和が恋人のナチュラルボーンヒーローだ。じゃあ世の中が乱れたら恋人がビッチになって寝取られた……ってコト!? 彼の個性『ワン・フォー・オール』は人から人へと受け継がれてきた個性。そしてその譲渡は意志と遺伝子によって行われる。つまりこの〝個性〟を持った状態で女性とチョメチョメ(昭和のスラング。スケベな行為をぼかして伝える時の表現)してしまえばうっかり譲渡して四肢爆散、お相手の女性は死んだ上に聖火のごとく受け継がれてきた遺志のバトンも虚空へ消えるという割と洒落にならない事態になる可能性があったため、そういった行為は控えてきた。なので『オールマイトはね。スケベなことなんてしないんだ。なんか不思議なパワーをズムってして子作りするんだ』的な本人の幸せを願えないクソみたいなファンも安心だ。まさに後継者のクソナードに相応しい童貞強制個性である。そう、すでに緑谷に不思議なパワーをズムって譲渡したオールマイトはもはや童貞でなくても構わないのだ。クソみたいなファンは震えて眠れ。

 

「緑谷全然〝個性〟使わないな。まぁリスクでかいもんな」

 

「爆豪イラつきすぎじゃね。大丈夫かあいつ」

 

 麗日を先に行かせ、確保テープを巻こうとする緑谷。しかし爆豪は攻撃を加えることでそれを防ごうとする。回避するため大きく動いたのでテープを巻くことに失敗した緑谷は、一旦引いて体勢を立て直すことにしたようだ。爆豪が麗日の方に行けば一気に不利になる行動だが……自分を追ってくると確信しているのであろう。

 

「あ、麗日が核見つけたな。索敵無い組だから運が良かったな。いやでも最上階の中央、いかにもって感じの場所だからそうでもないか?」

 

「飯田さんにバレましたわね。油断ですわ」

 

 何があったのか分からないが麗日が音を立てて飯田がそれを発見したようだ。まさに気の緩みとしか言いようがない、恥ずべき痴態である。

 

「爆豪少年ストップだ! 殺す気か!」

 

「わっ! なになに? オールマイトなに?」

 

 生徒の戦闘服(コスチューム)について把握し、また音声も聞いているオールマイトには、爆豪がでかいのを一発かまそうとしているのが分かったため止めようとしたが、生徒たちはピンとこなかったので「急に何だよ」みたいな反応をした。しかしそれも爆豪が実際にぶちかますまでであった。

 

「うお! すげえ威力! こっちまで振動来たな」

 

「ありえねー! 何やってんだあいつ! 授業だぞこれ! 先生! 止めたほうが良いんじゃないですか!?」

 

「そうですよ! ていうかここは大丈夫なんですか? 倒壊して生き埋めとか……はオールマイトがいるし大丈夫か!」

 

「麗日は衝撃を利用して上手く動いたが飯田が一歩上手だったな」

 

 画面内ではビルの揺れで動揺した飯田の隙をつき麗日が『無重力』で大ジャンプし核の確保に動いたが、飯田が素早く核を抱え移動したことで失敗したシーンが映し出されていた。それをきっかけに飯田は麗日と戦うのではなく核を奪わせない方向に舵を切ったようだ。

 

「音声を聞く限り当てる気はなかったようだ! とはいえ、爆豪少年! 次それ撃ったらアウトな! 屋内での大規模破壊はヒーローとしてはもちろん、(ヴィラン)としても愚策! 大幅減点だぞ!」

 

「格闘になったな」

 

「みみっちいなあいつ。やらかすくせに減点は怖いのかよ」

 

 オールマイトの通信を境に再び格闘戦に移行した爆豪に皆言いたい放題である。とはいえ動きそのものは高評価だ。それ以外の要素が台無しにしているが……。

 

「爆破を器用に使ってる。意外と繊細な動きだな」

 

「おい、いまテープ巻けただろ。何だこれ。リンチか?」

 

「愚かな……状況に染まったか……」

 

(ヴィラン)になりきりすぎってことか? 戦闘センスはすげぇけどあんま冷静じゃねえんだな」

 

「あ、緑くん逃げた!」

 

「爆豪顔やべえ。先生、マジで止めなくて良いんすか? 人殺しそうな顔してますよあいつ」

 

 流石にオールマイトもこのままじゃやばいか? と思い、中止を宣言しようとした瞬間。オールマイトの耳に入ったのは後継者の力強い宣言。授業前は贔屓しないようにしようとか思ってたくせに完全に贔屓だが、もう少しだけ続けさせることにした。そしたら画面の中では緑谷がビルの中央を〝個性〟の力でぶち抜き、麗日がそれに合わせて瓦礫を弾き飛ばすという大幅減点ムーブをかました。オールマイトは思わず「oh……」と呟いた。そして飯田が核を庇った隙に麗日が核に飛びつき、ヒーローチームの勝利で初戦は終了した。

 

「負けたほうがほぼ無傷で勝ったほうが倒れてら」

 

 緑谷は負傷のため保健室に運ばれ、講評の時間が始まった。オールマイトは「ベストは飯田少年! 何故か分かる人~?」と高校教師なのに小学校みたいな呼びかけをした。そんなオールマイトに八百万がぴしっと回答した。爆豪は『私怨丸出し・独断専行・状況設定の軽視』、緑谷も爆豪と同じ、麗日は『気の緩みによる油断・最後の雑な攻撃』が低評価の要因である。麗日に対しては一応なんらかの『想定』があったのか確認するためか「最後の攻撃はどのようなおつもりだったのですか?」と聞いていたが、麗日が「特に何も考えていませんでした……」と言うと溜息をついて、飯田が一番状況をしっかり想定して動いていたことをベストの根拠として挙げ、オールマイトは「飯田少年もちょっと固いけど、その通りだ!」と答えた。爆豪は反発するかに思われたが、去年使い忘れて湿気ってしまった線香花火みたいにしんなりして黙って聞いていた。

 

「異議ありっ! 状況へどれくらい適応しているか、を評価基準とするのであれば、勝利という結果を軽んじるべきではありません! 目的達成の優先度が低いのであれば、勝利条件を設定するより時間いっぱい訓練させるべきだと思います! 更に今回の『状況』は「(ヴィラン)が核兵器を所持」という甚大な被害が想定される非常に危険な設定です! タイムアップが『引き分け』じゃないってことは時間を稼げば(ヴィラン)は目的を達成してしまうんでしょう!? 大量の犠牲者を防いだ、あるいは(ヴィラン)の目的を阻んだという結果そのものをもっと高評価するべきだと思います! ていうか『タイムアップで(ヴィラン)の勝利』と『核兵器』って組み合わせはヒーロー側の多少のリスクを正当化しちゃう失敗設定だと思います! ただの爆弾でいいでしょ! オールマイト先生はいかがお考えですかっ!」

 

 メスガキはどうもロジハラが好きらしい。アサーティブ・コミュニケーション(相手も自分も尊重する交流)ができない未熟者である。八百万は『飯田がベストなのはなぜか?』という質問に回答しただけで本人の意見そのままというわけではなかったので素直に「なるほど確かに……」と呟いて感心したあとオールマイトの回答に期待を寄せている(かわいい)が、オールマイトは「えっ!?」という感じの顔をしてオロオロとしだした。その姿は新任教師丸出しで、平和の象徴のNo1ヒーローたる頼りがいは一切感じられない。日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態だ。この程度の理不尽に屈するようでは、ヒーローとしての見込みなしである。しかし、彼はやはりNo1ヒーロー。プリユアに対抗心を燃やす50代半ばを超えた童貞でも、矜持はしっかり持っているし、この程度の理不尽は何度だって覆してきた。しょんぼりして黙り込んだ後継者(あとその幼馴染の湿気た線香花火)とは格が違うのだ。

 

「なるほどね! それじゃあ新斗少女が考えるベストは誰か、発表してみてくれ!」

 

 LEAVE EVERYTHING SMASH!! すなわち、丸投げ! 昨日頑張って用意したカンペにこのような状況への対応方法は書いていない。しかし、オールマイトはいつだって都合の悪い質問は小粋なジョークで誤魔化してきた。40年近く自身の〝個性〟を誤魔化し続けた、誤魔化しのプロだ。オールマイトほど誤魔化し、はぐらかしの上手いプロヒーローは存在しないだろう。彼はその分野でも燦然たるNo1なのだ。ちなみにNo2ヒーローの『エンデヴァー』(本名は轟炎司。45歳)はその分野はクッソ不得意だ。家庭環境がヘルフレイムだと発覚する不祥事なんて起こした日には『真実です』とか言っちゃう系のまるきり荼毘の思い通りになるDVおやじ、略してマダオDVD(Domestic Violence Daddy)である。炎の〝個性〟なのに炎上には弱いところが長男と似ている。

 

「そんなの決まってますよ! 学校における勝利とはなにかっ!? それは成長することです!! この戦いを通して、最も成長した人物こそベストであるべき! それはすなわち、ボクの素晴らしい意見により教師としてステージを一段上げた、オールマイト先生! 貴方です!」

 

 まるで時間が停止したかのような沈黙が流れた。このメスガキは一体何を言っているのだろうか? オールマイトはワシが育てた宣言である。自画自賛も甚だしい、我田引水の極みだ。しかし、すぐに落ち着きを取り戻したNo1ヒーローは笑いながら言った。

 

「HAHAHA! これは一本取られたな!! 今後の私の成長に乞うご期待だ! それじゃあ、次のくじを引くぞ!」

 

 完璧な対応だ。相手を一切否定せず、その実ただのスルー。授業の進行を盾にそれ以上の発言を防ぐという新任らしからぬ見事な切り返し。これぞ誤魔化しNo1の真骨頂。メスガキはオールマイトの肯定的な言葉を聞いて「むふーっ」とドヤ顔になった。それでいいのかお前は。八百万と飯田は「流石だ……」とでも言わんばかりの表情をドヤ顔少女とオールマイト双方に向けていた。響香は「大丈夫かな……」とちょっと心配そうに見ている。他の生徒の大半は呆れ返ったが、一部の生徒はその圧倒的な自我に気圧されていた。これほどの自信を維持できるのは並大抵ではない。すでに実際口だけではないところも見せている。彼女は身体能力も〝個性〟も規格外。最強ケタ違い。

 

「ヒーローはFチーム! (ヴィラン)はJチームだ!」

 

 オールマイトがわざわざ今日のために夜なべして作った箱からサポート科に頼んで午前中に急いで作ってもらったボールを取り出した。箱も頼めば10分で作ってもらえたのだが気付くのが遅かったのだ。なんなら似たようなものが廃品倉庫(捨てる前に『使いたいやつ居たら使っていいよ』って感じで不要物を雑に保管してある倉庫)にいくつかあるので作る必要すら薄かった。新任教師に悲しき過去……。そんな悲しみの箱(ブルシット・ジョブ)から出てきた組み合わせは、ヒーローチーム『新斗・口田』VS(ヴィラン)チーム『切島・瀬呂』。果たしてメスガキはビッグマウス通りに勝てるのだろうか? 

 

 ネタバレ:勝てる。デュエルスタンバイ! 

 




※独自設定

・ダークプリユア:多分いると思う。
・八百万さんプリユア知らない問題:多分知らないと思う。もしどっかで知ってる描写が出てたらこっそり教えて下さい。
・核兵器のあれこれ:あったってことにします。もしどっかで関連設定出てたらこっそり教えて下さい。
・順番変わってる:気づかないフリをするんだ。
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