ボクのヒーローアカデミア くらっしゅ!!   作:ぺぺぺぺぺぺぺ

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今後もちょくちょく遅れると思います(敗北宣言)


『子供の将来はその母の努力によって定まる』

「鉄板にー! A5肉が来た!!!」

 

「うおおおおお! オールマイト最高ぉおおおお!!」

 

 じゅわーっ! と音を立てて鉄板の上で肉が踊る。ここはI・アイランドにある湖のそばのテラス。(ヴィラン)の襲撃によりI・エキスポの一般公開は延期されたため、オールマイトのはからいでバーベキューパーティーが開催されることになった。とはいえセキュリティの見直しで1日延期になっただけであり、増えた1日分の滞在費はI・アイランド側が負担してくれるので一般公開を見に来ていた生徒たちはそこまで気にしていなかったが。

 

「さぁ! みんなじゃんじゃん食べてくれよ! 余っても困るからな! HAHAHA!」

 

 そういうオールマイトも山盛りの野菜と肉を皿に乗せており、上機嫌にもぐもぐと食べている。片手にはビールを持っておりいい旅夢気分のようだ。もうおっさん丸出しな感じでグビっ! とビールを飲みご満悦である。

 

「くぅー! うまいっ! さて、皆のプレートに高級和牛は行き渡ったかな!? もし食べられなかった人が居たらすぐ言ってくれよ! 足りなければ追加で配達してもらうからな!」

 

「オールマイト! オールマイト! オールマイト!」

 

 拍手喝采でオールマイトコールが鳴り響く。肉がいい感じの焼き加減になると皆ハイエナのように飛びつき大いに楽しんでいる。

 

「爆豪くーん。クリームソーダ作ってぇ~♡」

 

「……かしこまりましたお嬢様」

 

 メスガキと八百万と響香は肉にがっついていない。メスガキの〝個性〟で作ったゆったりとしたチェアに座り、爆豪に給仕をさせている。着ているのは私服ではなく例の正装だ。

 

「爆豪、あんた肉焼くのも上手いんだね……味付けもスパイス効いてて美味しい。サンキュ」

 

「ええ。爆豪さんは本当に多才で感心いたしますわ。我が家の執事としてもすぐにやっていけるでしょうね。ありがとうございます」

 

 爆豪がこんな執事まがいのことをしているのはパーティーの余興である。レセプションパーティーにはメスガキが戻ってこなかったので余興をやる話が流れてしまっていたが、メスガキは執念深く覚えていたのだ。爆豪は不本意そうではあるものの、真面目にやる気はあるようでその有り余る才能とセンスを十全に振るって執事ムーブをしている。

 

「響香ちゃんとモモちゃんも何か頼めば?」

 

「いや、ウチまで頼むと爆豪も大変でしょ」

 

「別に大変じゃねえ余裕だわ」

 

 なんか変な部分にひっかかったらしく爆豪は「早く何か頼みやがれ」と言わんばかりに睨みつけている。

 

「爆豪さん、用意できる飲み物は何があるのでしょうか?」

 

 ヤオモモはナチュラルに頼むようだ。人を使うことに慣れているのだろう。

 

「メジャーなドリンクは大抵準備してあるみてぇだな。とりあえず言えや」

 

「そうですわね……では爆豪さんのセンスにお任せいたします。何か爽やかなものを用意してくださいますか?」

 

「んー、それじゃあウチもお任せで……」

 

「クソみてぇな注文しやがって。ちょっと待ってろお嬢様方」

 

 すたすたとメスガキと八百万が用意した簡易キッチンの方へ向かう爆豪。5分もしないうちに戻ってきた爆豪が持ってきたのは豪華なクリームソーダと2層に分かれたおしゃれな見た目のジュースだった。縁には輪切りのレモンとライムがついている。

 

「耳はパッションフルーツソーダでポニーテールはオレンジティーな」

 

「まぁ! セパレートドリンクですわね! うふふ、ありがとうございます」

 

「……いや、プロじゃん。すごすぎて逆に引くわ」

 

「なんでだよクソ耳!」

 

 悪態はつきながらも淀みなく動き配膳していく爆豪。こいつはメスガキに勝つ以外ならなんでもできるのだ。

 

「ん~♡おいしい♡ありがとう爆豪くん♡それじゃあ余興はこのくらいにしとこっか~! 楽しかった! お肉食べに行っていいよっ!」

 

 はぁ、とため息をついてそのまま肉を食べに行こうとした爆豪だったが、肉を食いながら一部始終を見ていた瀬呂、切島、上鳴、峰田に捕まってしまった。

 

「爆豪! あれなに!? 俺にも作ってくれよ!!」

 

「俺も! めちゃくちゃ美味そうじゃん!」

 

「あ? なんで俺が。自分で勝手に作れや」

 

「作り方教えてくれよ! それならいいだろ?」

 

「先に肉食わせろ……腹減ってんだよ」

 

「そういや爆豪まだA5肉食ってねえんじゃねえか?」

 

「ああ、それなら緑谷が確保してくれてるから大丈夫だぜ」

 

「なんでクソナードが俺の肉管理してんだよふざけんな!」

 

 まぁじゃあ誰がそこら辺の面倒見るかと言うと緑谷以外だと切島くらいしか居ないわけで、切島は緑谷が爆豪に変なフォローをすることに慣れたというかもう考えないようにしてるので大体こうなる。

 

「オールマイト! この串もおいしいですよ! どうぞ!」

 

 当のクソナードはかっちゃんのお肉を取り分けて確保しつつ、オールマイトにあれこれと世話を焼いていた。ヒーロー科だけあってみな献身的と言うか他人の世話を焼くのが好きなので、あまりやることはないのだがそれでも細々と何かしら見つけてオールマイトの周りをうろちょろしている。

 

「おお! ありがとう! 緑谷少年も楽しんでいるかな?」

 

「はい! 本当に……本当に楽しいです!!」

 

 バーベキューパーティーやオールマイトのそばにいることも楽しいが、一番喜ばしいことは別にある。オールマイトがこんなにも楽しそうに食事しているなんて……感無量だ。緑谷は彼が小さなお弁当をちびちびと食べている姿を知っていた。消化に良さそうなものだけが少量詰められた本当に小さなお弁当箱。それを見るたびに彼の犠牲について考え、胸がズキズキと痛んでいた。だがもう考えなくて良いのだ。I・アイランドの謎の名医に感謝である。事前にも道中にも怪我の治療については何も言ってなかったので、何らかの機密技術なんだろうなと緑谷は想像し、そのことについて尋ねず、言及もしなかった。

 

「新しい飲み物取ってきましょうか! あ、でもお酒は程々にしてくださいね!」

 

「HAHAHA! 今日くらい大目に見てくれよ!」

 

 甲斐甲斐しく世話を焼く緑谷の姿が周りにどう見えているか、この二人はあまり深く考えていない。オールマイトはうかれマイトだしクソナードも舞い上がり谷だ。まあとはいえ今更気にしている生徒はいない。メリッサだけがちょっと不思議そうにしているくらいだ。そう、このパーティーにはメリッサとデイヴも参加している。そしてデイヴはどちらかと言うとホスト側だった。

 

「おまたせ、オールマイト。君が大好きだったトライティップと付け合わせだよ」

 

 塩・胡椒・ガーリックパウダー・パプリカのドライラブを擦り込み直火で焼かれたジューシーな肉。ピンキートビーンズ。トマトベースのさっぱりしたサルサソース。さくさくに焼き上げられたガーリックブレッド。在りし日々の青春の思い出。オールマイトのヤングエイジの味だ。アメリカ式のバーベキューは日本のスタイルとは違う。外で肉焼いて食えばバーベキュー、みたいな曖昧なものではなく、割とかっちり形式がある。デイヴの出身地であるカリフォルニア州では数時間かけて燻製するというポピュラーなスタイルとは違い、専用のグリルで直火焼きをして高速で仕上げるサンタマリアスタイルという独特の形式でバーベキューが行われる。まさにアメリカン! という感じの味だと若かりし八木俊典は衝撃を受けたものだ。

 

「くぁ~~っ!! たまらん!! これだよ、これ!!」

 

 こればかりは生徒に振る舞うのも忘れてかぶりついてしまうオールマイト。もう二度と食べることができないと思っていた味を噛み締める。何か思うところがあったのか緑谷が静かにビールをジョッキに注いだ。まだ不慣れなようだが最初に注いでくれたときよりしっかりと泡が立っている。ホスピタリティ溢れる後継者に更に上機嫌になる俊典。

 

「さぁ、みんなもどうぞ。たっぷり作ったから好きなだけ食べてくれ!」

 

 高校生なんだからこれくらい食べるやろ、という感じでデイヴは10キロ分も作っている。まぁ余ることはないだろう。オールマイトは絶好調で底なしの食欲を見せているので。

 

「私の思い出の味だ! 本場アメリカのバーベキューを皆も是非味わってほしい!」

 

「シールド博士すごーい! 料理まで出来るんだ!」

 

「原初の科学である錬金術は台所から始まった。食はサイエンスなんだよ」

 

「うまぁーい! 男の子って感じの味だ! サイエンスショック!」

 

 でかい肉をメリッサが豪快に切り分ける。ミディアムレアの美しい色合いに生徒たちが感嘆の声をあげ、味わい、舌鼓をうつ。

 

「デイヴは教師も出来そうだな! ああ……今日はいい日だ……本当に……!」

 

 来たるべき巨悪との戦い。因縁に決着をつける時は近いだろう。食べれば食べるほど残り火が燃え盛るのを感じる。かつて後継者としたOFAについての考察。いつか消えてしまう、そういう感覚があったから『残り火』としたが、試しに薪を継ぎ足すイメージをしてみたら、うまくいっているように思える。しかし問題がないわけではない。本家OFAに流れていっていると感じていた生命力。これが少し弱まっているのだ。ここはおそらくイメージではなく大本の機能なのだろう。つまりオールマイトが力を維持していると後継者への譲渡が滞る。といっても効率が落ちているだけで依然として流れ込んでいるため、いずれは完全に移ることだろう。特に『身体能力』については衰えが止まらないので、いずれこちらは完全に常人……常人? オールマイトは常人ではないが、とにかくOFAによる後付分の身体能力はなくなる。

 

(残り火の維持自体はおそらく可能だ。今のようにたくさん食べて、生命力……『力』をストックする。それが出来ている感覚がある。継承者の方々が継いですぐに亡くなられていたから気付かれなかっただけで、もしかしたら本来はこのように継ぐことで仲間を増やす〝個性〟だったのかもしれん。あるいは私の心境の変化に応えてくれたのだろうか)

 

 継承者同士の繋がり。『One for all, All for one』とは、一人は皆のために、みんなは一人のために、という意味……ではない。『一人はみんなのために、みんなはひとつの目的のために』という意味だ。構成員一人ひとりの主体的な行動がチームや組織の目標達成に不可欠であることを説いた言葉である。

 

(意思を継ぐことと『OFA』の性質を混同していた、ということか? あるいは『OFA』は歴代の継承者の想いに応え続けその性質を変えていき、今発覚しただけなのか。それとも……)

 

 友人たちと楽しそうに……失敬、幼馴染と肉の所在についてぎゃあぎゃあとしょうもない言い争いをする後継者を見つめる。

 

(彼が仲間を求めるから、なのかもしれない。緑谷少年が私と共に戦うことを望むから……それに応えてくれているのか、『OFA』よ)

 

「オールマイトぉ~……? 随分とご機嫌ですねぇ~~? そうかそうか、つまりキミはそんなやつなんだな」

 

 ぎくり、とする八木俊典。いつの間にかメスガキがオールマイトのご機嫌空間(メスガキは全員分の体格に合わせたアディロンダックチェアと簡易デスクを用意してくれた。やさしいね)のそばに立っており、じとーっとした目でオールマイトを見つめている。

 

「あ、新斗少女……! 違うんだ! これは……その……」

 

 何が違う? 言ってみろ。メスガキは何も間違わない。命をなんだと思っているんだ。生殺与奪の権を他人に握られていることを自覚しろ。お前もメスガキにならないか? 

 

「き、昨日は言う通りにしたから! でもホラ……食欲がモリモリ湧いてきちゃって……仕方ないだろう!? 君の! 力じゃないか!」

 

 聞くともなしに聞いている周りは何の話をしているかいまいちよく分かってないが、メスガキが昨日事件の解決に奔走しオールマイトとも色々と話したらしい事は知っていたのでそれ関連だろうな、とすぐに意識から追い出された。A組で楽しく過ごすための必須スキル……『スルースキル』だ。

 

「ふーん。ふーん。ボクがその気になればよわよわの雑魚雑魚になっちゃう事ちゃんと分かってます??」

 

「いやいや、ここはもっとつよつよにしてくれて良いんじゃないかな? もう本当に今日だけ! 今日だけだから! ねっ!」

 

 恐るべき図々しさである。世界最高の名医でも出来なかったオールマイトの再生医療。いや、というよりDNAや情報の流出を恐れて様々な制限・条件を課したままでは出来なかったのであって技術自体が存在しないわけではないのだが、とにかく隠していた超大怪我をこっそり治すという恩を受けておいてこれ。まぁオールマイトの貢献を思えばこの国に生きている時点で恩恵を受けていないわけがないが、主観的に世話になったと感じるのはなかなか難しいところだし、オールマイトもそれを他人に求めたりはしないので。

 

「シールド博士からもなんとか言って……あっ」

 

「えっ」

 

 カシュッ! と良い音を立ててビールの缶を開けるデイヴ。メリッサが色々と焼きながら女子勢と楽しげに話している隙をついたらしい。

 

「いや、まいったなハハハ。とはいえ単に楽観しているだけではないよ、ホーリーナイト。オールマイトがどれくらい飲めるのか、私は知っている。『体調』については私がチェックしておくから安心してくれ」

 

 グイっとビールを缶から直接飲みながら茶目っ気たっぷりにウインクをするデイヴの言葉にメスガキは納得したようだった。彼をかなり信頼しているらしい。

 

「まぁ博士がそう言うなら……あ、装置も持ってきてるんですねっ!」

 

 デイヴはこっそりと簡易スキャン装置をメスガキに見せたあと、すこし声を潜めて言った。

 

「データ的にはむしろ栄養失調でね。食べられるなら食べたほうが良いんだ。君のお陰で例の……『部位』は全盛期のそれだから問題はないよ。いやまぁ問題ないこと自体は逆に異常なんだけどね」

 

「ほらほら! デイヴもこう言ってるし、私も最高級和牛を食べてくるよ! それじゃ失礼!」

 

 いそいそと逃げ出すオールマイト。彼は負けるつもりで戦ったことは生涯一度もない。つまり負けるのが確実なときは逃げてきた。AFO相手にもそうやってしぶとく生き残り、最終的には……いや、最終ではなくなったが、とにかくついには勝利をもぎ取ったのだ。

 

「うーん、まぁ健康ならいっか! ありがとうございますシールド博士! 良かったらそのデータ、あとでボクも頂いてもいいですか?」

 

「ん? 君なら構わないが、誰かに見せるつもりかい? 相手は慎重に選んで欲しいところだ」

 

 ごく僅かな人間はオールマイトの怪我について知っている。そしてそれらの人物にはI・アイランドで治療したことを話すわけだが、メスガキの〝個性〟によるものだと隠すからにはスケープゴートが必要になる。そしてそれはデイヴだ。もちろん「デイヴに治療してもらいました」などとバカ正直に言うわけではなく、秘密だけど治療してもらったとぼかしておけば相手が勝手に想像し、デイヴに質問が来ても否定せずにはぐらかす、そういう流れを想定してのことだ。

 

「ボク以外だと~……リカバリーガールくらいではないかと! 先生には色々と教わっているんです! 例のアレもそのおかげで実現できたんですよっ! なので彼女には明かすつもりです!」

 

「なるほど、そういうことか。学生レベルの知識ではないと思っていたが、かの女傑が君のメンターだったんだね。アメリカにも、I・アイランドにも彼女の威名は轟いているよ。分かった、後で色々と渡そう。私はここから出るのはなかなか厳しいからね……」

 

 デイヴは無罪となり英雄扱いになったため、権限等は事件前より増えた。ただし増えた権限を使って事件の当事者としての経験を活かしセキュリティを改善するためにこれからクソ忙しくなる。それに加えて首輪と言うほどではないが『上層部とのズブズブ感』が増してしまったので、今までもVIP科学者として制限されていた『I・アイランドから離れる事』が更に難しくなってしまった。悪いことばかりではないのだが、しばらくオールマイトの体調をそばで見ていたかったので、それが出来ないことに責任を感じているようだった。

 

「メリッサには……話そうと思う。私の罪と、オールマイトのことを。彼にも了承をもらっているから、これからはメリッサが君たちをそばで支えてくれるはずだ」

 

 当人が離れるのは難しくなったが、代わりにメリッサを名代として出すことはやりやすくなった。というよりそのためにデイヴはI・アイランドにより深く食い込むことにしたのだ。ここは科学者の聖地ではあるが、聖地であるだけあって『戒律』が厳しい。メリッサにはここの良いところだけを吸収させ、しがらみは全て自分が持っていく。その覚悟だった。

 

「ねぇ博士……メリッサさんはとっても優秀ですよねっ! やっぱりこう、嬉しいですよね?」

 

「そうだなぁ、親として鼻が高いのはあるね。ただ……メリッサがもし優秀でなくても、私の愛には関係ないさ。私とリジー……妻の子供である、ただそれだけで……愛するには十分なんだ」

 

「むー! 娘さんが立派なことは、その程度の喜びなんですか!?」

 

 メスガキは不本意……というわけではないようだが、聞きたい言葉ではなかったらしく更に食い下がった。

 

「ふふ……うん、まぁ端的に言って……最高に気分がいいよ!! さすが私と妻の娘だ!! 優しくて賢くて、妻に似て美人になった! もう世界中に自慢したいね!」

 

 酔っぱらいの赤ら顔で親バカ全開の言葉を放つ馬鹿親父。大声で叫んだせいでメリッサまで聞こえたらしく、彼女は顔を真赤にして俯いている。

 

「ですよねっ!? メリッサさんが日本に来てくれるの、楽しみだなぁ~っ! 万事ボクにお任せくださいね、博士!」

 

「オールマイトだけではなく、ホーリーナイトまでも守ってくれるなら安心だな! ハハハ!」

 

「え! メリッサさん日本に来るの!?」

 

「雄英のサポート科とI・アイランドのアカデミーで技術交流をしようって計画があるのよ。それに志願するつもりなの。必ず選ばれるとは限らないけど……」

 

 まだちょっと恥ずかしいのか顔が赤いメリッサだが喋れないほどではないようで今後の予定をほんのり話した。仲良くなったメリッサが日本に来ると聞いて特にプレオープン組は大はしゃぎしている。まぁぶっちゃけメリッサが希望すれば100%通る。最先端の科学都市たるI・アイランドが交流する価値のある場所は多くないが、その中でも最高峰のセキュリティを持つのが雄英だ。余計な政治的しがらみは校長たる根津が全て跳ね除けているため、I・アイランド側も安心して人員を送り出せるのだ。

 

「うーん、和牛も素晴らしいが私はやっぱりこれだな!」

 

 いつの間にか戻ってきたオールマイトがデイヴの作ったトライティップにサルサソースを添えてぱくついている。オールマイトの幸せいっぱいの少年のような笑顔に一同は嬉しくなる。本当にリラックスして楽しんでいるのが分かるからだ。憧れのレジェンドヒーローにも素朴な幸せがあり、それを楽しんでいることをしっかりと見ることが出来たのは、ヒーロー候補生たちのモチベーションを更に高めてくれる良きリフレッシュとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっじゃましまーす!」

 

 ここはとある地区にある隠れ家的バー。冷房が適度に効いた居心地のいい空間に、クソみてぇな社会のはみ出しものたちが屯していた。そんな場所に黒いモヤが現れ、中からメスガキが飛び出してきた。

 

「いらっしゃいませー! 久しぶりです! チウチウさせてください!」

 

「あ、ヒミコちゃん! 久しぶりー! 自首する気になった? チウチウかぁ~、ボクの血じゃないけど血っぽいもの作れるようになったからあげるね!」

 

 ぶわっと出てきたメスガキの〝個性〟が空中で真っ赤に染まる。血液の“性質”に変化させたようだ。

 

「わー! すごいです! ちぅちぅ……ブーーーっ!! まっずいですこれ!!! 何の血ですか!?」

 

「えぇ? ヒミコちゃんの血を再現したんだけど……」

 

「わ、私の血ってこんな下水で煮込んだ汚物みたいな味なんですか!?」

 

「血の味は血の味でしょ? 気分的な問題……じゃないのか。知らずに飲んだもんね。じゃあこれはどぉ?」

 

「……? どぉ? ってなんです?」

 

「あ、見た目変わらないけど中身変わってるから飲んでみて」

 

「えぇー……嘘だったらもうリノちゃんの作った血飲みませんからね……チウチウ……うーん……これは牛肉の味……」

 

「A5肉の血だよー! おいしい?」

 

「…………まぁ私の血よりは良いですけど、美味しくはないです!」

 

「なんかいきなり猟奇的なイベントが始まったんだけどなにこれ?」

 

 呆気にとられていた仮面の男が疑問を呈した。

 

「俺にも分からん。まぁこのJKどもの頭がオカシイのは今に始まったことじゃないから気にするなコンプレス」

 

 椅子に座ってPCをカチャカチャッターンとしている死柄木弔が口を開く。いつの間にかカウンターの中には黒霧が佇んでおり、何やら飲み物の準備をしているようだ。

 

「テレビで見たよりカワイイわね♡はじめましてホーリーナイト、私はマグネよ! マグ姉って呼んでね」

 

「よろしくマグ姉~!」

 

 THE・おかま。一言で表すとそんな感じのロン毛のマッチョが愛想よく挨拶をした。メスガキも同じだけの愛想でにこやかに応対した。

 

「おっと自己紹介か。俺はMr.コンプレス! しがない奇術師さ。ホーリーナイトの〝個性〟の前じゃ俺の手品なんて文字通り児戯だな、ハハハ」

 

「みすたー! よろしくねっ!」

 

 ぱっと掌に花をだしてキザに渡してきたのはシルクハットを被った仮面の男。もうどう見てもマジシャンって感じの見た目で、実際に手品まで披露した。

 

「俺はトゥワイスだ! 体育祭見たぜ! すげぇ〝個性〟だったよな! 大したことねぇよ! よろしくな!」

 

「ボクの〝個性〟がなんだって?」

 

 血の塊が触手のように動きトゥワイスと名乗った全身タイツ男を縛り上げ空中に釣り上げる。誰も反応できない早業だった。

 

「ギャー!! ちが、違うんだ! 今のは俺の言葉じゃねえ! 本心さ!」

 

「そう……ボクの〝個性〟を嘲笑うとどうなるか、皆の見本になってくれるんだ。(ヴィラン)なのに献身的だねっ!」

 

 血の塊が質量を増し、トゥワイスの全身を包み込む。その恐るべき光景にこの場に集まった犯罪者たちは戦慄している。

 

「ホーリーナイト、離してやってくれ。そいつは本心とは逆の言葉が出ちまうんだ。あんたの〝個性〟をスゲェと思ってるからこその言葉さ」

 

 くたびれた冴えないおっさん……義爛が口を挟む。この場のセッティングには彼の多大なる苦労があったが、そのようなことはおくびにも出さず、クールにトゥワイスをかばう。

 

「ふーん? そうなの? 覆面くん」

 

「ああ! そうだ! 思ってもねぇ言葉が出てきちまうんだよ! めちゃくちゃ思ってるけどな!」

 

「…………」

 

「はぁ……ホーリーナイト、俺からも謝罪する。仲間の失言はリーダーの俺の責任だ。黒霧、例のものを」

 

「かしこまりました。どうぞ、ホーリーナイト。コーラフロートですよ」

 

 例のものを、ってやつがやってみたかったのだろう。出てくるのが子供の飲み物って感じじゃなければかっこよかったかもしれない。

 

「ん~……」

 

「こんなに無様な姿にされてすげぇと思ってねぇはずないだろ!? 勘弁してくれ! 俺が悪かった! いや悪くねむぐっ」

 

「悪かったって思ってるんだね? イエスなら頷け」

 

 口を塞がれたままこくこくと頷くトゥワイス。実際問題自身の悪癖、精神の病に一番困っているのは本人だ。こうやって他人の怒りを買い、まともなコミュニケーションが出来ない。

 

「……動作は逆にならないんだ。いいよ、許してあげる。でもボクには話しかけないほうが良いよ。次は許さない」

 

「ぷはっ! そんな寂しい事言うなよホーリーナイト! 仲良くやろうぜ!」

 

「……? 逆のこと言わない時もあるんだね? それとも嘘を付くと逆にならないとか?」

 

「ち、違う! 多分! せっかくの仲間なんだから仲良くなりてぇよ!」

 

「ふーん? まぁいいや、いただきまーす!」

 

 お出しされたコーラフロートを飲むメスガキ。多少は機嫌は直ったようだ。

 

「あー怖かった。でもあれね、私たちと同類なのはよく分かったわ! ねぇホーリーナイト、貴方はどうして社会を壊したいの? 興味があるわ!」

 

「おっ、そうだな。おじさんも是非聞きたいねぇ。将来を約束された雄英生でありながらこんな掃き溜めに来ちゃってさ。どんな鬱憤があるんだ?」

 

「え~? そういうの話すにはまだ好感度が足りないなぁ~! そっちが先に教えて好感度稼ぎしてねっ!」

 

「うーん、おじさんもまだ話せないかな。今後に期待ってことで」

 

「私は良いわよ!」

 

 マグネは自分語りをする気があるようだ。センシティブな話が飛び出すと思われるので具体的な描写はしません。

 

「おい、話は一旦切り上げろ。ホーリーナイト、待たせたな。話がついたぜ」

 

 スタスタと歩み寄ってきた死柄木がバーの端においてあったパソコンを指差すと、画面が切り替わり椅子に座った男が映し出された。

 

 

 

「やぁ、はじめまして新斗黎乃。自己紹介は必要かな? 僕のことはそうだな……『八相縁起(はっそうえんぎ)』とでも呼んでくれるかい」

 




独自設定とか

・かしこまりましたお嬢様:メスガキにこう返事しろと指定されたので。
・パッションフルーツ:情熱じゃなくて受難。
・BBQ:デイヴの父とかがご馳走してくれたんじゃないかな……。
・残り火:消えたあとも普通に繋がってたので。ストック尽きただけで無くなってないと思われる。
・ズブズブ:毒を喰らわば皿まで。
・リジー:エリザベス。二人きりのときはビーと呼んでいた。デヴィットシールド(ダビデの星)、メリッサ(ミツバチ)ときたので約束の地モチーフの家族と想定。
・技術交流:チームアップミッションでなんか来てたから。
・まずい血:そもそも他の血にも美味しさを感じているわけではない。気分は良くなる。
・トゥワイス怒られる:メスガキは割と短気で執念深い。
・八相縁起:信楽たぬきが持つ8つの縁起の良い特徴。
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