ボクのヒーローアカデミア くらっしゅ!! 作:ぺぺぺぺぺぺぺ
ある夏の暑い日、キミたちは快適なバーで涼みながらくつろいでいた。
ふと、リーダーの青年がこう言った。
「世の中をぶっ壊そうぜ」
覆面の男がすかさず同意した。
「いいね、やろう」
彼は仲間が大事で、仲間の幸せを願っていた。
だから仲間がやりたがっている事なら全力で応援しようと思ったんだ。
「なぁ、おまえはどう思う?」
彼はシルクハットの男に尋ねた。
「テンション上がってきた。俺の目的にも都合がいいし、やろうぜ」
言葉通り愉快そうに彼は答えた。
けれど困難なのは目に見えていたので、気遣いを口にした。
「おっと、女子高生にはきついかな?」
話を振られた彼女は笑顔で答えた。
「いえ、いいと思います! 今の世の中は生きにくいですから!」
彼女は最後の一人に話を振った。
「あなたはどうですか? もしかしてそこまでじゃなかったりします?」
誰か一人でも不満なら一緒に反対してあげようと思っての質問だったが、その人物は答える。
「もちろん賛成よ! 皆のやりたいことが私のやりたいことを叶えてくれるの!」
全員が乗り気だと分かったキミたちは、それから必死になって世の中を壊すために頑張った。
長い道のりだ。辛く苦しいこともたくさんあった。
大切な仲間を何人も失い、挫けそうになったが、それでもついにやり遂げたんだ!
達成感のままに瓦礫になったバーの廃墟に集まってこれまでのことを振り返る。
覆面の男は苦痛に満ちた声色で言った。
「俺は別に世の中なんてどうでも良かったんだけど、皆がやりたがってたから頑張ったぜ。仲間を失って辛いけど、皆は嬉しいよな?」
それを聞いた大柄な『彼女』は悲しげな顔で言った。
「私の友達も死んじゃった。安全な場所にいたはずだったのに、悲しいわ。大好きだったの」
シルクハットの男はがっかりした顔で落胆を口にした。
「俺の目的は達成できなかったな。こんなはずじゃなかったんだけど。皆はどーなの?」
笑顔を失った彼女は窮屈そうに言った。
「私は世の中がもうちょっと生きやすくなって欲しかっただけなのに、もっと生きにくくなっちゃいました」
リーダーの青年は困惑した顔で言った。
「俺はお前らが窮屈そうだからぶっ壊してやろうと思ったんだが」
……そう、皆で本音で話し合ってみると、本当は誰一人こんな結果を望んでいなかったんだ。
キミたちはクーラーの効いたバーで、ドリンクを飲みながら似たような苦しみを共有する仲間たちと居るだけで楽しかった。
本当は皆がそのままそこで心地よく過ごしたかったのに、それを言わなかったせいで、楽しい時間は終わっちゃったんだ。
顔のない男が楽しそうに言う。
「やぁ君たち。僕の役に立ってくれてどうもありがとう。それじゃあ死んでくれ」
キミたちの壊した世界のあとに、キミたちの求めたわけではない新しい秩序が生まれた。
その中ではまたマイノリティが苦しめられて、幸せになれたのは新しい基準での『普通の人々』だ。
キミたちは最初から最後まで誰かの利益のために動かされていたのに、それを自分の意志だと思い込まされていたんだ。
はい、ボクのありがたいお話はこれでおしまい。
本当にやりたいこと、そうなってほしいこと、言葉にしてみたことはあるかな?
本当はやりたくないこと、そうなってほしくないことは、言葉にしたかな?
もう一度良く考えてみてね。
死んじゃったら取り返しはつかない。
何をどうやっても戻ってこない。
他人もキミたち自身も、砕け散ってからじゃ……遅いんだよ。
独自設定とか
・アビリーンのパラドックス:メンバー全員が別にやりたくもないことを、他の人は賛成していると思い込んだ結果、誰も望んでいない目的地に到達する現象を指す。
・満場一致のパラドックス:全員の意見が一致しているときこそ結論の信頼性が低下しているという矛盾が起こる現象を指す。
・集団極性化:話し合いをすればするほど、意見が中立的になるどころか、極端な方向に振れてしまう現象を指す。