ボクのヒーローアカデミア くらっしゅ!!   作:ぺぺぺぺぺぺぺ

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★ネイティブ速報★
ネイティブさんが少し元気になりました!
ありがとうございます!


『誰もが世界を変えたいと思うが、誰も自分自身を変えようとは思わない』

「やっホーリー♡黒霧くんいつもお疲れ様っ!」

 

 駅の自販機スペース。相変わらずひっそりとしていて夏休みだというのに誰もこない。クソみてぇな聞いたこともないメーカーのクソみてぇな自販機しかないので。『生搾り! ガチ生姜スパークリング』だの『超! 酢っぱレモン』だののゴミラインナップの中からメスガキは『飲む! ガトーショコラ』を選んで飲みはじめた。これはこのメーカーの生命線とも言える唯一の売れ筋商品でメスガキもかなり気に入っている。深いコクにとろっとした口当たり、超甘ったるいクリーミーさでかなり人を選ぶのだがその分熱心なファンがそこそこ遠方から買いに来たりする。

 

「どうもどうも。それで早速なんですけど、急ぎの話とは何でしょう?」

 

 黒霧はこの話が「じゃあ今から捕まえるね」だった場合死柄木弔のもとに連れて行くわけにはいかないのでこの場で聞くことにした。ドキドキしながら即座に逃げられるようこっそりゲートを後ろ手で展開している。逃走は難しいだろうな、と思っているが諦めたりしない。"Plus(プルス) Ultra(ウルトラ)"だ。

 

「オトクなお話だよぉ~! 『八相縁起』の居場所、リークしてくれない?」

 

「……え?」

 

 固まる黒霧。いきなり上司を裏切れという要請だ。いや、もうすでに死柄木弔にも同じ要請を受けているのだが。人望ないね、梅干しおじさん。でもしょうがないんよ、カリスマたっぷりの『悪の魔王、死柄木全』はもう死んでいるからね……。

 

「公安が提案する司法取引ってやつだよっ! もうアレに従うメリット無いでしょ? キミたち。それどころかもう危険性ばかりが高まってるよ~」

 

 これはおばさん会長と打ち合わせて決定された正式なものだ。公開こそされないもののしっかり記録も残ることになっている。

 

「……取引内容は?」

 

 最悪の内容ではなかったことに少し安心し先を促す。受ける受けないはともかく聞く価値はある。公安が現在どう考えているか、自分たちがどう見られているかを推測する材料になるからだ。故に黒霧は突っぱねずにまずは話を聞くことにした。

 

「まずキミ。『黒霧』は公安所属のヒーローに内定です! もうすでに『ハイドクラウド』って名前で記録上は3年前から活動してたことになってまーす!」

 

 表沙汰になってはいないがヒーローの中には元(ヴィラン)がちょこちょこいる。なんならホークスも微妙にそう。公共の場所での〝個性〟の使用は問題行為だ。もちろん人命救助であれば基本的には違法と判定されるようなことはないが、事態が悪化したと判断されたら罪となることもある。

 

「私のことはいいので死柄木弔がどうなるかを教えてください」

 

 黒霧にとって重要なのはそのことだ。もちろん仲間たちのことも大事だがまずは死柄木弔のことだ。重く見ているか、軽く見ているか。危険視されているかどうか。それが待遇から見えてくるだろう。

 

「余罪が分からないからなんとも? とりあえずボクが聞いた分の過去のあれこれと雄英と保須の襲撃はチャラになるよっ! キミも含めて全員世間には捕まったって発表されるけどね~」

 

 こんなもんである。死柄木弔の〝個性〟が『崩壊』であることはメスガキからの報告のみが情報源であり、USJではメスガキアーマーが防いでしまったので実害を出したことがなく脅威度は低く見積もられている。現状雄英バリアをぶっ壊したくらいしか実績がない。本当はドチャクソやべぇ〝個性〟なのだが……。

 

「……彼が従うと思いますか?」

 

「まっぴらごめんだ、現行制度に屈するなんてありえない、でしょ~?」

 

 従わないであろう事はメスガキも百も承知だ。少し話しただけでも現状の社会への根深い恨みと不信感が伝わってくる。

 

「ええ。死柄木弔が『現在(いま)』に阿ることなど決してありえません。あなたも知る通りです。そうでなければもうとっくに獄中からあなた宛にファンレターでも送っていたでしょう」

 

 雑談もそれなりにした。カードゲームに興じたこともあった。とむらとおろかななかまたち。連合のバカどもは『ホーリーナイト』を敵だと思っていない。理解できない存在だと思っていない。ただ強いからヒーローを目指せているだけの、はみだしもの。『仲間』だった。見れば見るほどに、知れば知るほどに突きつけられる。『これほどの強さがあってもこうなのか』と。

 

「……ま、こんなのただの会話のフックだよ。実現したら公安も大喜びで、一番いいけど~……」

 

 死柄木弔は『信念』を得た。もう止まらない。止まれない。止まるつもりがない。『現在(いま)を壊す』という子供じみた癇癪が、言葉は変わらぬままに意味が変わったのだ。

 

「ちょっと独り言を言うね。この話に『乗ったふり』すれば『ホーリーナイト』と『八相縁起』がぶつかるタイミングをコントロールできそうだよねー? 事前に準備もできるしどさくさに紛れての逃走もしやすくなるだろーねー? はい、独り言終わり」

 

「……なるほど。それは喜びそうですね」

 

 本題はこっちなのだろう。つまり、一旦は見逃してやるから奴の居場所を吐け。あるいは、おびき寄せろ。『公安らしい』提案だ。もちろん建前の司法取引が通るならそれはそれで構わない。『先生』の『共同正犯』たる黒霧は非常に重罪だが、表に出せない事柄が多すぎてどう裁けばいいのかも決まってないほどなので、逆に言えば『捜査中』ということでずっと保留にできるからだ。

 

「ちなみに『ハイドクラウド』についてだけど~」

 

 ずずず……とメスガキの手のひらの上に黒いモヤが渦を巻く。

 

「!!」

 

 驚愕する黒霧。それは紛れもなく自身の展開する『ワープゲート』だ。そしてその『霧』が黎乃の身体を包み込むと黒霧のパチモンのような姿になった。服装はフリルフリフリの執事のようなスーツ。ソシャゲキャラかってくらい装飾過多だ。

 

「この通りでございます。交渉が決裂した場合ワタクシがプロヒーロー『ハイドクラウド』として連合の皆様方を拘束いたします」

 

 長年の経験を持つ執事のような優雅かつ忠実さを感じさせる仕草。男女が混ざったような独特の響きを持った『声』。口調まで変えてノリノリである。機械音声の如く平坦なトーンだ。ゆっくりしていってね。

 

「私の〝個性〟を……どうやって奪ったんですか……?」

 

 全身から力が抜けそうになる黒霧。これほどか。これほどの絶望が。ありえないと、他人事だと思っていた〝個性〟の強奪。だが、守らなければ。死柄木弔を……。

 

「……ん? いや、これは『再現』であってキミから何か奪ったわけじゃないよ~」

 

 ぶわっとモヤを散らしていつもの姿になったメスガキは黒霧の勘違いに気づき優しく訂正してあげた。でもアイデンティティは奪ってると思うよ。何でも出来るやつの一番駄目なとこだな。トガちゃんとかこれ見たら精神崩壊しそう。

 

「あっ……そ、そうなんですか。これは失礼しました」

 

 ハッとして自分の手をさっとゲートに出来ることを確認してホッとする黒霧。まぁ身近にすぐ〝個性〟パクるやつが居るからそう思うよね。無理もないとはいえ根拠もなく疑ったことちゃんと謝れて偉い。ちょいちょい栓抜きされているせいで中の人と混ざりつつある。『白雲 朧』は子供の面倒を見るのが大好きだったのだ。

 

「さすがに『ワープゲート』の解析には時間が掛かっちゃった! 『負の質量』じゃなくて『ワームホール』の方だったんだね! 応用したら『空間の断絶で切断』もできるねぇ、これ。やったことある?」

 

「脳無で試したことがありますよ。私の中に血や臓物がぶちまけられて本当に困ったので二度とやりたくないです」

 

 空気が緩んだせいでいつもの雑談が始まってしまっている。メスガキは黒霧に興味津々だ。以前いつものロジハラをふっかけたらバグったので慎重に手探りしている。黒霧は「オールマイトを切断するために脳無で練習しました」などという余計なことは言わなかった。

 

「ワープの時はこの『霧』をクッションにして危険な『断面』から守ってるんだよねっ! 優しい〝個性〟だっ! キミ、(ヴィラン)向いてないよ!」

 

 それはきっと白雲朧の遺志。他者を守るための『(クラウド)』。残骸と成り果ててもなお生き続ける夢の残滓だ。

 

「死柄木弔にも似たようなことを言われましたね。しかし私は私のやりたいことをやっているだけですから。それをなんと呼ぶかは周りの都合であって私には関係ありません」

 

 黒霧のやりたいこと。捨てられていたあの子を……なんだっただろう? とにかく大切なことだ。三人で一緒に育てて……そして、なんだって、なんだってやる。そう、何だってできる。オレは『守る者』だ。バラバラにちぎれた思考の中でもブレない芯が『黒霧』を支えている。ぐちゃぐちゃになった中身を纏めるのはいつだってこの『信念』だ。

 

「そーだねっ! ボクは呼んでほしい名前があるからそう振る舞ってるけど、そうじゃなかったらそんなもんかぁ……話がズレたねっ、『建前』の方に興味がある人が居たら教えてね。それじゃ弔くんにヨロシク~」

 

 ぴょん、とベンチから立ち上がるとメスガキは立ち去る素振りを見せた。

 

「え? 一緒に来ないんですか? これからトガヒミコを迎えに行く予定だったんですけど」

 

 とりあえず今回は捕まらない。それどころか一時的ではあるものの本当に『仲間』として行動することになる。黒霧にとってもはや現在のメスガキは警戒対象ではないので「まだゆっくりしていってもいいでしょう?」みたいな世話焼きおばさん的な一面が出てしまった。

 

「お話の機会作ってくれるの~? ありがとっ! 黒霧くんって気が利くねっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出久ー! 雄英から何か送られてきてるわよー!」

 

「え、なんだろう?」

 

 心当たりがないのでちょっとドキドキしながら封筒を開けると出てきたのはそれなりに分厚い書類の束だ。そこに書いてあったのは……。

 

「お母さん、雄英に寮ができるんだって!」

 

 プロヒーローも暮らしています! セキュリティは万全! 小高い丘の上にある日当たりの良い物件です! などなど景気の良い文言がこれでもかと書いてある、寮の開設のお知らせだった。

 

「あら、でも家はそんなに遠くないしここから通えば良いんじゃないの?」

 

「うーん、そっかぁ。それもそうかも」

 

 等と言いつつも二人で書類を読み進めていく。寮に入るかどうかはともかく、ヒーローオタクのクソナードにとっては雄英高校の書類と言うだけで読む価値がある。

 

「……あら、ものすごく安いわね……さすが国立……」

 

「へぇー。最高峰なのに学費も安くて寮も安いってすごいね!」

 

 結局のところヒーローも一種の嘱託公務員なので国から手当がガッツリ出てる。その上国防能力にも関わる分野なのでマジでものすごい予算が防衛費の中に計上されているのだ。当然そのヒーローを育成する機関の最高峰たる雄英高校にも大量の補助金が出ている。

 

「出久はどう? 寮に入りたい?」

 

「え? えーっと、どちらかと言えば? 登下校中も筋トレとかはしてるけどやっぱりどうしても周りのことを考えると何も出来ない時間があるしね」

 

「そう……そうよね。金銭的には問題ないけど入る? 環境もすごく良いみたいじゃない。個室だし、夜間用のトレーニングルームまであるのよ」

 

 読めば読むほど寮に入れない理由がなくなっていく。ハイスペックにより導き出された宣伝文句にガッツリと踊らされているのだ。もちろん虚偽などは書いていないので問題があるわけではないが。

 

「うーん……でもやっぱりお母さんが心配だから良いかな」

 

 母が一人でこの家にいる場面を具体的に想像すると寮に入りたい気持ちがしぼんでいく。クソナードは母が自分の希望を優先して意見を変えたことで逆方向に傾いてしまった。プロヒーローも暮らしています! という文言にはものすごく心を惹かれているが、それでもなおだ。

 

「出久、そんなことは気にしなくていいのよ。お母さんはね、貴方がずっとなりたかったヒーローの道への足かせにはなりたくないわ」

 

「足かせだなんてそんな事無いよ!」

 

 緑谷にとって母は決して足かせではない。いや、そう母に思わせないように頑張らなければいけないと思っている。沢山の人に安心してもらえる平和の象徴(ヒーロー)になるには、まず家族を安心させなければならないのだ。

 

「そ、そうね、ちょっと言い方が悪かったかも。でもお母さんは出久の夢を応援したいと思ってるわ」

 

 かつて緑谷引子はそれが出来なかった。いや、〝個性〟が遅まきながらも発現しなければそれが変わることはなかっただろう。だが今は違う。背中を押してあげるのだ。今度こそ。

 

「お母さん……」

 

 じーん、と感動するクソナード。家族に夢を応援してもらえるのはやはり嬉しいものなのだ。もちろんその事自体は実感していたし聞いていたが、何度聞いても嬉しいものであった。

 

「新学期までに決めれば良いみたいだから、ゆっくり考えましょうか。爆豪さんのところはどうするのかしら? ちょっと聞いておくわね」

 

「かっちゃんは間違いなく寮に入りたがると思うよ。光己さんが許すかどうかじゃない?」

 

 パパの勝さんの意見は考慮されません。そういうお家です。これは単なるかかあ天下なので闇ではない。4歳ちょいの頃から10年以上も険悪な関係の幼馴染のことがまだ普通に食卓で話題に登るのはちょっと闇。

 

 

 

 

 

 

「え、寮? 響香、寮に入りたいのか?」

 

 耳郎家の食卓にて、響香は根津校長お手製のプリントを渡して両親に切り出した。そのうち正式な書類を送ってくるらしいが、他の生徒より先行して校長先生から話を聞いている。

 

「んー、寮が良いって言うよりほら、これどう考えてもあの子向けのやつなんだよね。なんかあの子、大物(ヴィラン)に目をつけられてるらしくてさ」

 

 響香はきっと覚悟を問われた。どこで知ったのか、根津校長は響香がメスガキのサイドキックを目指していることを知っていて、その立場には今後も様々な危険が降りかかるであろうことを教えてくれたのだ。

 

「どれどれ……ははは、すごい豪華だな! 学生寮って言うよりホテルみたいだ。雄英高校はどうしてもあの子に、そして響香に来てほしいわけだ。友達いっぱいなら気分良く来るだろうって感じか?」

 

 響徳は内容だけでなくグラフィックデザインの『アンサー』とでも言うべき作り手のこだわりを感じるプリントにも好感を持ったようだった。

 

「自惚れだったらハズいけど……多分そういう感じのヤツ……ウチはあの子を一人にしたくない。いやまぁ、他にも寮に入る人は居るだろうから一人ってことはないと思うけど」

 

 校長は何も要請しなかったし、要望も言わなかった。ただ情報を教えてくれただけだ。選ぶのは響香だと、その意志はあるのかと考える時間をくれた。

 

「ほら、ここ見て。自宅への帰宅は簡単な申請で行なえます、だって。外泊って言葉を使わない辺り、寮というより学校に宿泊施設を作ったので泊まっていいですよって感じね」

 

 美香はちょっと呆れながら言った。裏の事情を知っていると結構露骨だ。

 

「金額もこれどう考えても採算取れないよな? ああいや、雄英なら〝個性〟使い放題だからそうでもないのか?」

 

 雄英高校の教師は高給取りだが、それに見合うだけの能力をバリバリに持っている。根津校長、セメントス、パワーローダー、エクトプラズム。彼らのクリエイト能力はI・アイランドにも匹敵するレベルなのだ。建設にかかる費用はタダみたいなもんである。

 

「本当に実費のみって感じなんでしょうね。……私は良いと思うわ。ヒーロー科ってそもそも全寮制のほうが多いし、響香がヒーローを目指すって聞いた時から覚悟はしてたもの」

 

 親離れが早かったなぁ、と美香は思う。娘はすごい早さで大人になってしまった。まだ子供でいてほしかった、と思ってしまうのは止められない。寂しくて、誇らしい。

 

「えー? 父さんは反対だなァ。家近いんだし通えば良くないか? なんならあの子も(うち)の子になったら良いんだよ。響香の部屋の隣物置にしちゃってるじゃん? あそこ片付けてさァ」

 

 夢みたいな事を言う響徳。彼は本気だ。血の繋がらない娘なんてロックでイイネ! と思っている。実の娘ともども一生面倒を見るから一生家にいてほしいと、そう思っている。

 

「リノはそう言ってもらえたこと自体は喜ぶとは思うけど……了承はしないと思う」

 

「はァー……まぁそうだろうな。もう家出ちゃうのかぁ? ずっと居ていいんだけどな」

 

 とはいえそうはならないことも分かっている。もちろん寂しくて辛い。だが、喜びもある。

 

「あなた。情けないわよ。音楽もそうだけど何事もそれに費やせた時間がモノを言うわ。寮なら登下校が無くなる分だけ使える時間が増えるのだから、音楽とヒーロー、どちらでも一流を目指すならば入るべきでしょう」

 

 愛する妻のストイックな言葉に敬意を新たにする。今までの人生で何度そう感じただろう? そんな妻の娘だからこそ、こんなにしっかり者に育ってくれたのだろう。パパはまぁまぁちゃらんぽらんだからな……。

 

「だよなー……あぁー! 父さん寂しいぞ、響香ァ!」

 

「うっさ。しょうもな。つーか近いんだからちょくちょく帰ってくるよ。それでいいでしょ」

 

 言葉こそ突っぱねるようなものだったが、そこには確かな愛情と感謝が詰まっていた。

 

 

 

 

 

 

「おい親父。これを見ろ」

 

 トレーニングルームでの訓練の終わり。疲れた体に鞭打って轟くんはエンデヴァーに書類を渡した。

 

「む? 何だこれは。……『新寮開設および入寮希望者の募集について』?」

 

「ああ。お前のクソみたいな教育もどきよりプロの管理のほうが良いだろ? 親の了承が必要だ、よこせ」

 

 まぁこれは理由の半分くらいだ。もう半分はこの親父のうざったい干渉から逃れたいというものがある。

 

「焦凍。お前が俺を嫌っているのは分かるが、本当に俺の教えが不要だと思うか? 炎の扱いをこれから高めねばならんのに、俺から離れるのが良い考えだと思うんだな?」

 

 ド正論である。はっきり言ってこの環境を捨てるのは慢心を超えた慢心だ。どうしてNo2ヒーローにみっちりと教えてもらえる環境を捨てようと思うのか? 寮でNo1と同居するわけでもないのに。

 

「……つってもお前も毎日いるわけじゃねえだろ。週2が良いところで、今日だって久々じゃねえか。車田さんに毎日送迎させてるのも申し訳ねぇんだよ俺は」

 

 とはいえそれを考慮しても寮ぐらしをしたい理由は他にもある。登下校の時間に車田さんが少しでも親子仲を改善しようと『エンデヴァーのちょっといい話』をしてくれるのだが正直聞きたくないのだ。申し訳ないのも本当だが。

 

「冬美はお前まで家から居なくなると寂しがるだろうな。ただでさえ夏雄が寄り付かなくなっているのにな」

 

「く、クソ親父……てめぇが言うのか……?」

 

 氷漬けにしてやろうかこのクズ、とヒーローにあるまじき暴言が出そうになったが踏みとどまったしょーとくん。我慢できてえらい。

 

「いいか焦凍。相手の弱点を見極めそれを突くことを躊躇うな。お前が与えたその時間を(ヴィラン)がどう使うか分からんのだぞ」

 

 このようにこの親父と喋ることは無価値ではない。焦凍もそれは分かっている。分かっているが不愉快なものは不愉快なのだ。一応メスガキとの約束もあるので頑張って会話の機会を増やしてみたりメッセージに返信してみたりはしているのだが。

 

「……許可しねえってのか?」

 

「いいや。お前が本当にそちらのほうが良いと思うなら構わん。だが、足踏みにならんと思っているんだな?」

 

 エンデヴァーの声色には咎める響きがあった。お前はそんな道をのこのこ歩いていく余裕があるのか? そういう目をしている。そしてそれが分かっていないはずがない、と息子を信用している。

 

「……帰宅は比較的自由らしいから、お前が訓練できる日は家に帰る。それが最短ルートだろ」

 

「妥当だな。良かろう。冬美とはこまめに連絡を取って寂しがらせんようにな。大体お前はメッセージの返事も遅いし既読無視が多いし電話にも出ないし」

 

 エンデヴァーにとっては書類を読んだ時点でこの結論は見えていた。だから最初から言うべきことも決まっていたので続く言葉もスラスラと出てきた。

 

「……冬美姉もそろそろ結婚相手とか探してぇんじゃねえのか? 俺達の面倒をいつまでも見させるのはどうなんだ」

 

 故にこの想定外の切り返しは大ダメージだった。冬美ちゃんは本当に素晴らしい娘でエンデヴァーはとってもとっても愛している。もちろん全員愛してはいるが娘というものは父親にとっては特別なものだ。息子はある程度ほっとけるからな。でもショートくんその「そろそろ結婚しないの?」はマリハラっていうらしいよ。

 

「ぐっ……先ほどの教えを早速実践できたようだな……だが冬美にはそのうち俺が素晴らしい男を見つけて──」

 

「……ハァ?」

 

 底冷えするような声。こいつは今なんて言った? まさか冬美姉までおぞましい計画に巻き込もうっていうのか? 気分ではなく物理的にひんやりとした空気が部屋を満たす。

 

「いや……これは違う! 焦凍! 誤解だ! そうじゃない! そうじゃないんだ!」

 

 自分がまるで普通の父親みたいな事を言っていることに気付いて驚愕するエンデヴァー。そしてそれが誤解されたことに動揺してうろたえている。もしここに(ヴィラン)がいたら「ここだ♪」とか言われてガッツリ隙を突かれただろう。本当に幼稚炎司。冬美ちゃんが二人が訓練室から出てくるのが遅いのに気付いてやって来て、「父親ってそういうものなのよ」と笑顔で取り持ってくれるまで誤解は解けなかった。本当に良い娘だな、大事にしろよ、エンデヴァー。

 

 

 

 

 

 

「ええ、(うち)は寮に入れるつもりなんですよォ」

 

 緑谷家からかかってきた電話。爆豪の母、光己はそれに大喜びで対応している。息子はまだ出久くんに見捨てられていない。そう確認できるからだ。

 

「…………」

 

 むっつりと黙り込んでいる爆豪。寮に入ることをあっさり認めてもらえたときは上機嫌だったのだが……。

 

「そうなの、寮ぐらしで自分のことは自分でやってちょっとは親のありがたみを分かってもらわなきゃねぇ」

 

「…………」

 

 いらいら。むかむか。好き勝手に言われている。それを黙って聞かされている。まだ書類にサインを貰っていないから、部屋に引っ込むことが出来ない。書いとけよババア、そう言い残して去って、長電話で忘却されたらたまらないからだ。しっかり目の前で書かせるためにじっと待っている。

 

「その点そちらの出久くんが羨ましいわぁ。……あらそんな、本当に馬鹿でどうしようも無い奴で」

 

「ふざけんなクソババァ!!! 誰がクソナード以下だと!?」

 

 かっちゃんのイライラは最高潮に達しついに臨界点を迎えた。流石にあちらの親に聞こえるかもしれない状況で名前を侮辱する「クソデク」と言わない程度の理性はあるのだが。その程度の理性しか残ってないとも言える。

 

「誰がババアだって!? すべすべつやつや肌だっつーの!! それにちゃんと出久くんって言いなさい馬鹿息子! まったくもう! ……ごめんなさいねぇ、うるさくしてぇ」

 

 スパァン! と頭を叩いて電話対応に戻る光己。派手な音はするが痛みはない。そういうふうに加減をされている。

 

(電話の時の甲高い声クッッッッッッソムカつく! 早く家出てぇ……!)

 

 爆豪は早く自立したいと思っている。なんだかんだで両親には感謝しているし家族愛はあるのだが、だからずっと一緒に居たいかと言うとそうではない。一刻も早く一人でもやっていけると証明しなければならないと思っている。

 

「ええ、またいつでもお電話してくださいねぇ! ……勝己ィ……あんたいい加減にしなさいよ! 引子さんと出久くんが優しいからっていつまでも甘えちゃって何様なの!?」

 

 電話が終わった途端に、また始まった、と爆豪は思った。また始まるのはいつまでも改まらないからなのだがそこは棚に上げている。指摘通り、甘えているのだ。このノンデリ男の甘え方はこういうもの。他人に甘えて甘えて甘え倒しのドロカス甘え男である。ちなみにニトログリセリンは甘い味がします。

 

「毎回うぜぇ! なんで俺がババアのダチに気を使わにゃならんのじゃ! 関係ねえわ!」

 

 幼稚を超えた幼稚。高校生にもなってこれ。親へ反抗することしか甘え方を知らない悲しきモンスター、爆豪勝己。スパァンと頭を叩かれすぎてイカれちゃったのかな? でもひっぱたかれてる本人はこの育て方は有効だと思ってるんですよ。こわいね。

 

「あんたって子は~~!! あんたが他所で迷惑かけるたびにお母さんがどれだけ恥ずかしい思いをしてるか分かんないんでしょうね!!」

 

「知るかボケ! テメーの育て方が悪いんだろうが!」

 

 言ってから爆豪はしまった、と思った。光己の瞳が明らかにぶれた。これはガチで傷ついた時の反応だ。またやってしまった。そんなふうにしたくなかったのに。そのために強くなっているはずなのに。

 

「このっ、もうあんたなんか知らないから!」

 

 ドタドタと走って自室に引っ込んでしまった。背を向ける直前、母は目尻に涙をためていた。どうしてこうなるんだろう? どうして自分はこうなのだろう? 己の感情をコントロールすることがこんなに大変だと、気付いたのはいつからだっただろうか。

 

(クソが……)

 

 爆豪は買い物に出かけた。夕食の材料を買いに行ったのだ。ババアはああなると長いので待っていても飯は出てこない。だから爆豪は自分で料理をする。……家族のために、料理を作る。クソオヤジが帰ってきたらきっと、うまく慰めてくれる。だからそれが終わったら、美味しいものを食べてほしい。それでどうか、許してほしい。機嫌を直してほしい。だからかっちゃんの料理は、とってもとっても美味しいのだ。ピリッと辛くて刺激的、でもちょっぴり甘いのが、ニトログリセリンである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女の子同士の話♡なので黒霧はバーではなくいくつかあるセーフハウスの一つを提供してくれた。死柄木弔はおそらく話に乗る。建前の方ではなく『のったフリ』のほうだが。だからもはや廃棄する予定となったバーの近くのこのセーフハウスを使うのは最後だろうと荷物などをまとめ始めておりこの場にはいない。メスガキとトガヒミコに飲み物を出したっきりだ。

 

「しばらくぶりです! リノちゃんのニュース見ましたよ! あの筋肉のおじさんああいう〝個性〟だったんですねぇ。お話してみたかったです」

 

 ストローで死柄木がトガのために用意させた柘榴のジュースをちうちうとすすりご機嫌になる破綻JK。パッと見は和やかだが会話の内容はグロテスクだ。なにせトガヒミコの言う筋肉おじさんとは『血狂いマスキュラー』のことで、その戦い方とは全身から血を吹き出しながら戦うという猟奇的なものだったので。

 

「うん、しばらくぶり~。ヒミコちゃん『今筋 強斗』の知り合いかなんかだったの~?」

 

 メスガキは不機嫌になったらしく白けたジト目になってトガヒミコを見つめた。メスガキにとって『血狂いマスキュラー』は不愉快な存在で思い出すのも腹立たしい人物だ。不愉快度で言えば眼の前の犯罪者もなかなか度数が高いがある一点だけは好感を抱いている。

 

「仲間候補? だったんでしょうか? そのうち会わせる、って弔くんから聞いたあとすぐに捕まっちゃってて残念です! 私ああいうボロボロになって戦う人好きなのでっ!」

 

「ふ~ん……あんなののどこが良いか分かんないけど……ていうかヒミコちゃんの『好き』ってさぁ~……『性欲』じゃないの?」

 

「!? な、なんてこと言うんですか!?」

 

 いきなりぶっ放すメスガキ。最初にガツンとやってあとは流れで……というのは相澤式である。今までもまぁまぁ会話していてそれなりに打ち解け、プライベートな話題まで引き出されてからの不意打ちにトガちゃんびっくり。自首しろとは言われていたが、それがメスガキなりに自分を思い遣ってのことだとは分かっていたので、なんだか裏切られたような気持ちだ。

 

「いやだって……喋ったこともない相手なんでしょ、あの筋肉。今まで聞いた話もそうだったけど、相手と心が通じてるかどうかは関係ないように聞こえるよ~? 性欲だと思う!」

 

 すぐ好きになっちゃうトガヒミコ。とりわけ吸血衝動には相手からどう思われているかはあまり関係がない。トガヒミコは他者の『心』を考慮しない。つまり『感情』ではなく『欲望』ということだ。

 

「ちが、ちがいますゥー! わたっ、私のこれはもっと純粋でピュアピュアなやつですっ!」

 

 しどろもどろ。口でこそ否定しているがはっきり断言されてしまうとそうだったような気がしてくる。『性欲』。トガヒミコにとっては裏路地で良く向けられたもの。そんなのじゃない。あんなのじゃない。

 

「ぴゅあぴゅあ~? 自己認識が事実とズレてると不幸になるよ! 実例がキミね!」

 

 経験談である。黎乃にとってこれは非常に重大な問題なのでニヤニヤ笑顔は消えて真剣な表情だ。七色の瞳にじっと見つめられたトガヒミコは少したじろいだが、聞き捨てならない言葉を言われたので強く反発した。

 

「不幸じゃない! そうやってそっちの尺度で決めつけないでください!」

 

 一般的な尺度で測られることはトガヒミコにとっては耐え難いことだ。自分は不幸じゃない。『好き』に生きている。そう思っている。

 

「えぇ~? 散々生きにくいって言ってるのに……話してていつも思うけどヒミコちゃんって全然論理的じゃないね!」

 

「ろんり? とかどうでもいいです! カァイクない!」

 

 ぷいっと顔を背ける。幼稚な仕草だ。メスガキといい勝負。トガヒミコの情緒なんてこんなもんである。4歳児で止まった幼い精神しか持っていない。そのうえ低学歴なのでマジやべぇ。トゥワイスなんかは低学歴だけど社会で働いていた経験があるので情緒はしっかりして……しっかりして? 分裂していること以外はまぁしっかりしている。

 

「じゃあキミ今幸せなんだね? それなら現状維持したほうが良くない?」

 

「……いや、それは、その……」

 

 世の中を変えたい(こわしたい)という動機はどこから出てくるのか? 生きにくい。生きやすい世の中になってほしい。まぁ人間の状態は『幸せ』『不幸』の二種類ではなくそれらのグラデーションであるし、『幸せ』でも『不満』は消えないので普通に詭弁だが中卒のJKもどきにはそんなことは分からない。

 

「普段喋ってることと反射的に喋ることが逆だよねヒミコちゃん。覆面くんと仲良しなのそういうトコなんだろーねー」

 

「ヤな共通点見つけないで……っていうか別に逆じゃないです」

 

 トガヒミコはトゥワイスとよく話す。気が合うからだ。矛盾した発言も気にならない。後半を聞き流せばだいたい言っていることは分かるからだ。

 

「ふーん? キミって普通?」

 

「普通です! 普通に生きてます!」

 

 本人はこのように主張している。彼女は自分のことを『普通』だとアピールしている。『これ』は当然のことだと、それを認めない周りが悪いと言っている。

 

「そお? 男所帯の犯罪者グループに混じってる中卒無職のJKもどきって普通なんだ。へぇー」

 

 まぁどう考えても『普通』ではない。そもそも『普通』とは環境によって変化するものなので定義など時代や場所やタイミングによってバラバラだ。そして誰だって『普通』じゃない部分を持っている。良くも悪くも。そして誰だって持っている。『普通』の部分を。

 

「そ、そういう言い方したらリノちゃんも普通じゃないです!」

 

 自分が言われたくない言葉がつい出てしまった。男所帯で(肉体的に)女一人なのはトガヒミコも多少は問題視している。なにせ彼女の〝個性〟は裸になる必要があるので。だから『ホーリーナイト』が来て男女比をちょっとマシにしてくれるのをいつも楽しみにしていた。今だって、そう。ヤなことをいっぱい言われても話すのをやめようとは思わない。だって彼女は……。

 

「本当に愚かだなぁ~。ボクはあらゆる意味で旧人類とは違う特別な存在だよ? 普通なわけ無いじゃん!」

 

「……あれ?」

 

 オウム返しが反撃として成り立つかどうかは状況によって変わるがメスガキにはだいたい通用しない。外れ値で規格外で桁外れ。突然変異の塊だ。

 

「ほら~。もうバグっちゃった。OSが貧弱~。ていうかさぁ、ヒミコちゃんは自分が変なことをちゃーんと分かってるんだよ?」

 

 反論しようとするトガヒミコをやれやれ、こんなことも分からないのか、みたいなちょっとアメリカンな仕草で制して言い放つ。

 

「だって『ここが変だ』って分かってないと『普通のふり』なんて出来ないんだから」

 

「う……」

 

 トガヒミコは蓋をしていた。選り分けて押し込めることができた。何が『変』かをこの上なく知っていた。そう『教育』されたから。だからトゥワイスの『変』な部分も無視してあげることが出来る。

 

「キミが今も息苦しいのは、家に居た頃と、学校に通っていた頃と何も変わってないからなんだよ? だからどこにいてもキミは窮屈だし、このままここにいてもおんなじ~」

 

「……何が言いたいんですか……」

 

 こわい。聞きたくない言葉が言われる。言われてしまう。だが逃げられない。だって、だって彼女は……。

 

「キミが犯罪するのってさぁ。それが『違法』(わるいこと)だからだよね。『合法』(いいこと)だったらやらない。そうでしょ? だってキミが犯罪をするのはさぁ」

 

 少し溜めてもったいぶる。次の言葉に注目を集めるためのテクニックだ。

 

「親への『甘え(claim)』だから。『お前たちの育て方のせいでこうなったぞ』って親に、世間に知ってほしいんだ」

 

「…………」

 

 トガヒミコの〝個性〟は非常に秘匿性が高い。『変身』中に身体から離れたもの……血液や唾液などは変身後のものとして固定される。つまり『変身』していれば毛髪を筆頭とした物理的な証拠は残らない。にもかかわらず彼女は『連続失血死事件』の容疑者として追われている。逃走には気を使っているが、隠蔽はそうではない。

 

「ご両親の言うことに従うか、逆らうか。キミの『基準』は家出したあともずっとそのまま。やること為すこと全部『両親がどう思うか』で決めてる」

 

「……ちがいます。自由に生きているだけです……」

 

 年頃の『娘』がふらふらと路地裏を歩いている。悪い奴らと付き合って犯罪行為に加担している。『まともな親』なら卒倒ものだ。それに、他人に対する気遣いは今でもしている。たとえば、トゥワイスに。ヤなことを言われても『我慢』している。

 

「だから『トガヒミコ』なんでしょ? 本当はいっぱいニュースになってほしかったんだよねぇ? 『犯人、渡我被身子』って」

 

 ──トガです! トガヒミコ ──

 

「見てほしかったんでしょう? ご両親に。知ってほしかったんでしょう? 世の中に。だから『ステ様』なんだよねぇ? 『お手本としてリスペクト』してるんだよね?」

 

 メディアは未成年の犯罪を報道しなかった。『トガヒミコ』は未だ無名。一山いくらのただの未成年殺人者で『有名人(ネームドヴィラン)』ではない。だから『ヒーローを沢山殺せば(ステインになれば)』いいと思った。そうすればネットでバズって『本名』と『生い立ち』が拡散される。『赤黒血染』のように。『インゲニウムちゃん』になっては困るのだ。『女吸血鬼カーミラ』ではダメなのだ。『渡我被身子(トガヒミコ)』でなければならない。

 

「……ちがうもん……」

 

 聞きたくない。聞きたくない。だがこの場から去ることはできない。だって、だって、だって、彼女は……。

 

「犯罪者になって『普通の両親』を傷つけようと思ったんでしょう? それが一番『思い知らせることができる』から。『私の親の教育は普通じゃない』って『世間にアピール』できるから」

 

「そんなんじゃない! 私は……私は『復讐者』じゃない!! そんな『よくある感じ』じゃないっ!! そんな『枠』に押し込めるなっ!!」

 

 トガヒミコにとって最も嫌なこと。基準の押し付け。どうしてそれが嫌なのか? 

 

「自覚しろッ! キミは自由なんかじゃないッ!! 未だ窮屈な籠の中っ! ごはんをちょうだいとぴぃぴぃ鳴いている小鳥のままだッ!!」

 

 トガヒミコが壊したい『世の中』とはどこなのか? ……あの家と、あの両親。ちいさなちいさな狭い世界だ。なぜ世間がトガヒミコを『普通』だと言わないと壊したくなるのか? 

 

「違う! 違う違う違う!! 私は自由(すき)に生きている!! あの人たちなんてどうでもいい!!」

 

 嘘だ。どうでも良くなんかない。だって彼女はこだわっている。『普通』にすがりついている。両親から押し付けられたはずの『基準』。『普通』なんてクソくらえ。だれが『普通』なんてなってやるもんか。あるいは何が『普通』かなんてどうでもいい。そうなっていないのは何故か? これが『普通』だ。私は『普通』だ。それを認めない社会が悪い。そう主張するのはなぜか? 『両親』がそれを求めているからだ。世間がトガヒミコを『普通』だと認めれば。トガヒミコはあの家に帰ることが出来る。そして……『異常者はお前たちだ』と、突きつけることが出来る。

 

「ムカつくから嫌がらせがしたい! 自分だけは特別だと思ってる! この社会にありふれている、思春期で、反抗期で、典型的で、甘ったれな、どこにでも居る──」

 

 聞いてはいけない。聞かなくてはいけない。だって彼女は……『ホーリーナイト』は……。

 

 

 

 

 

 

「『普通の女の子』! それがキミだっ!!」

 

「あああああああ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 トガヒミコ(渡我被身子)を、殺して(たすけて)くれるのだから。

 

 

 




独自設定とか

・ネイティブ速報:お便りの数で復帰後の活躍の度合いが決まるシステム。
      現状:ヒーローとしてまた頑張る決意を固めたようです。
・やっホーリー:流行らない。
・クソ自販機:たまに見たことないメーカーの自販機あるよね。
・事態が悪化したら罪:飛田くんとか。
・ハイドクラウド:灰。hide。Hyde。メスガキはちっこいので逆に胴体部分に隠れることが可能。
・ワープゲート解析:できたぁ!
・空間の断絶:黒霧はメスガキに試すなど考えたことすらない。AFOは検討し始めた(遅い)。
・脳無で試した:AFOにとってこれを使うのは「自分じゃできない」と認めることなのでオールマイト以外には使用しないつもりだった。
・『白雲』の遺志:『黒霧』がめっちゃ頑張らないと切断はできない。特に生物相手には強い制約がかかる。
・寮なんか豪華じゃね?:原作と違って時間に余裕があるし客引きをしないといけないので。
・夢の応援:そもそも息子が心の底では諦めていたことを無意識に感じ取っていた。愛じゃよ。
・うちの娘マジ:●ルノグラフィティだぞ!って()えなかったの。エッチって()われちゃうから。
・プロの管理のほうが:プロヒーローNo2「あのっ」 育成のプロって意味だから……。
・車田運転丸:実際どう登校してるか分からんけど末っ子わがまま気質なのは原作設定。
・仲直り:一応これでも原作より遥かにマシな関係という闇。
・マリッジハラスメント:エンデヴァーというデバフと教師という出会いのなさの相乗効果がなかったらとっくに結婚していたと思われる。
・素晴らしい男:マジで個性婚とか一切考えていなかった。自分のことを棚に上げて「そんなもんが冬美に降りかかるとか絶対許せねぇ……!」と思ったし「冷を抱きしめてあげたい」とか思ってガチ反省している。本当に不器用で冷はそこが可愛いと思っている。
・すべすべつやつや肌:〝個性〟の影響ですっごい若々しい。
・有効な育て方:うちはこうやって育てられてンだよ!とマセガキに同じ事をしようとしていた。
・育て方が悪い:本当は一ミリも思っていない。かっちゃんは強がりで本心とは逆のことをよく言う。
・かっちゃんの料理:息子の不器用な愛情に対して光己はうまく言葉が出ない。似たもの親子だが黙れる分だけ大人。
・クソオヤジ:本当は「自分にできないことが出来る」と尊敬している。クソナードに似ていることにはまだ気付いていない。
・リノちゃんのニュース:実際はオールマイトのニュース。またまたお手柄!指名手配の大物敵撃破!と拍手喝采。原作はそれどころじゃなかったからな……。
・メスガキの好悪:結構好き嫌い激しい。態度に出るのは相当危険信号。
・性欲:ヘマトフィリア。普通に実在する普通の性癖。他者を害すると『病気』となる。
・裏路地:少年誌じゃ描写できねえあれこれがあったと思われる。
・普通のフリ:かなり長いこと隠蔽して生きている。むしろ最近がはっちゃけているだけ。
・トゥワイスに我慢:原作でも悪魔とか言われてる。
・トガです!:初登場したときの自己紹介。どうして苗字を強調するんですか?
・普通の女の子!:原作の名言を愚弄していくスタイル。
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