ボクのヒーローアカデミア くらっしゅ!! 作:ぺぺぺぺぺぺぺ
「今日のヒーロー基礎学は俺とオールマイト、そしてもう一人の3人体制で見ることになった。内容は災害水難なんでもござれ。
午前の授業が終わり、昼休みを挟んでからのヒーロー基礎学。その初っ端に相澤が放った言葉を聞いて生徒たちはざわめき、大変そうだとかヒーローの本懐だとか色々と口にしたが、相澤がギロッと睨みながら注意するとビビりまくって黙った。未来のヒーローの姿か? これが……。相澤がコスチュームつけるかも自分で判断しろよ、的なことを言いながらぽちっとスイッチを押すと、壁からガゴゴ……という前回と違う音を出しながら
「バスの席順でスムーズに行くよう、番号順に二列で並ぼう!」
「偶数の方はこちらへ、奇数の方は飯田さんの方へ並んでくださいませ」
委員長の飯田が張り切って指示をすると、副委員長の八百万がさっと補佐をし、生徒たちは「さすが様になってるなぁ」と思って速やかに従ったが、実際に乗ることになったバスはよくある4列シートではなく、ロングシートとの混合タイプであった。最近の路線バスの殆どが4列シートなのは、安全性やプライバシー等に考慮した結果だ。しかしヒーローとしての移動、となると軍用車などに乗ることもあるので、そちらに良く採用されているシートタイプに慣れさせるため、また車内でのコミュニケーションを促すために雄英は短い移動に使用するバスではこのタイプを採用している。そして生徒たちはまんまと誘導され、雑談が始まった。先陣を切ったのは蛙吹梅雨。なにげに舌禍の多い女子だ。思いやりはあるのだが、きっぱりと物事を断言するタイプなため、友人は少ない。ただし、友人となった相手とは深く温かい関係を築ける人物でもある。彼女は早速結構なプライベートに踏み込む言葉を放った。
「私思ったことを何でも言っちゃうの緑谷ちゃん。あなたの〝個性〟、オールマイトに似ている」
この女、何を思ってこのような言葉をぶちかましたのだろう。前置きからするに、一般的にはあまり良くない言葉を言っているつもりはあるようだが、それを踏まえると非常に意味深なセリフとなる。すなわち、入学してまだ日の浅い時期に、このカエル女は「お前、オールマイトの隠し子か何かかよ?」という疑いを持っていて、それをクラスメイト全員の前で尋ねるという、信頼もクソもないぶっこみ方をしているのだ。そりゃ友達も少ないわな。いや、友だちが少ないからそうした機微に対する理解が鈍い、という方が正しいかもしれない。どう見てもクソナードな男子相手に「梅雨ちゃんと呼んで」と要求するのも対人能力の低さを露呈している(かわいい)。案の定緑谷は大いにうろたえた。
「そそそそそうかな!? いや、でも僕はその、えー……」
何かあります、と全力で自白する反応を見せた緑谷に、バス内の空気がヒリついた。相澤もしれっと聞き耳を立てている。しかしそこに空気の読める男、切島が救いの手を差し伸べた。
「待てよ梅雨ちゃん。オールマイトは怪我しねえぞ。似て非なるアレだぜ」
「えー? そんなのこれから怪我しなくなるんじゃないの? 少なくとも緑谷くんはそう確信してたよねっ! 明確なビジョンが見えているってことはつまり親なり親類なりに同系の〝個性〟が居るってことでしょ~?」
お分かりいただけただろうか。切島は怪我をすることを根拠にオールマイトとは違う、と言っている。だが、メスガキが指摘した通り、これはかなり薄い根拠だ。オールマイトの〝個性〟は彼が何十年もマイトジョークで誤魔化し続けているため、詳細不明であり、切島だって当然オールマイトの〝個性〟の詳細を知るわけがない。そして怪我をしている当人である緑谷の認識は「そのうち怪我をしなくなる」であることは相澤とのやり取りで確認できるのだから、今怪我をしていることはオールマイトとの類似性を打ち消せない。それどころか「オールマイトが自分と同じ、または類似している〝個性〟だから将来どうなるか分かってる」という推測すら出来てしまうのだ。だが、そんなことは切島だって分かっている。彼は単にセンシティブな話題っぽいから話をそらしてあげたかっただけだ。オールマイトが唐突に赴任してきたのと同じタイミングでオールマイトに似た〝個性〟(しかも自傷する)の人物が入学してきた。こんなもん勘ぐらないほうがアホである。『オールマイトは(もしかしたら息子の)緑谷を心配して雄英に赴任してきた』という推測は割と簡単にできてしまうのだ。つまり切島も「緑谷の〝個性〟オールマイトに似てんな」と思っていて、だからこそ素早く否定の言葉を差し込めた。そしてメスガキはそんなことは百も承知で更にぶっ込んだのだ。まさにクソガキである。
「……新斗の〝個性〟はヒーローっぽくて良いよな! 見た目も綺麗だし、出来ることも多い! 実際俺も手も足も出なかったしな!」
漢、切島は一度決めたことはやり遂げるのだと覚悟を持って緑谷を庇った。それを成し遂げるためであれば、自身の敗北を持ち出し、メスガキを持ち上げることすらやってのける。もちろん、ただのおべっかではない。切島自身も本気でそう思っているからこそ、本気の言葉として相手に伝わる。まっすぐに褒められたロジハラクソガールは、緑谷への追求をあっさりと辞め、切島の話に全力で乗っかった。
「え~嬉しい~! 切島くんって女の子褒めるの上手~! まぁ~? ボクの「ダークマター」を超える〝個性〟なんてこれまでもこれからも存在しないだろうねっ! でも切島くんも汎用性の高い良い〝個性〟だと思うから、ボクみたいな人類の極点と比較して気に病んじゃダメだぜっ」
「対人じゃ結構強ぇと思うけど、汎用性?」
「〝個性〟使った時皮膚の形が変わってるでしょ~? そこ鍛えたらいろんなことが出来ると思うよっ! 例えばもっと刃物っぽくするとかね! 訓練して思い通りの形を作れるようになれば、災害の救助なんかにもとっても役に立つと思う!」
「おぉ! なるほど! 考えたこともなかったぜ! そういや硬いだけじゃなくて形も変わってたな!」
大成功だ。今度は守れたんだ……という温かな達成感が切島の胸に広がった。その上自身の〝個性〟について新たな可能性まで知ることが出来た。情けは人の為ならず。まさに今日の彼のためにあるような言葉だ。細やかな成功を積み重ね自信をつけていくことは、切島自身の成長にも良い影響があるだろう。そもそも彼が自身の〝個性〟の『斬撃』の拡張をあまり考えてなかったのは、初めて〝個性〟が発現したときに自身の身体を斬りつけてしまったという自覚のないトラウマにより「鋭利に切る」という才能を無意識に封印しているせいであり、今回のようにポジティブな体験と共に『斬撃』も含めた様々な可能性を考慮できたことは、本人も自覚のないトラウマの解消ともなった。そして緑谷は切島の気遣いに気付かず、しかし感謝を込めてその話に乗った。
「切島くんの〝個性〟は見た目もかっこいいよね! 形を自由に変えられるなら、強さだけじゃなくてビジュアル面も十分プロで通用するすごい〝個性〟だよ!」
クソナードのこれもおべっかではない。心の底から切島の〝個性〟を素晴らしいものだと感じ、素直な心情を吐露しただけだ。というか元“無個性”の緑谷にとって、どのような〝個性〟であっても称賛の対象である。機会さえあればいくらでも称賛したいのだ。もちろん切島に感謝の気持ちを込めて称賛したのもある。そしてその謝意が顔に出ていたので「やっぱ触れちゃまずい部分なんだな」と殆どのクラスメイトが察してしまったが、対人能力の低い緑谷はそれにも気づかなかった。師匠は誤魔化しのプロだが、弟子はその方面ではゴミカス! 緑谷はオールマイトと比べて色々隙が多いのだ。15歳の少年なので仕方ないっちゃ仕方ない。人間関係で苦労してきたため、他者の痛みや苦しみ、悲しみには敏感なので良し悪しではある。
「プロなー! ヒーローは人気商売みてえなとこあるし、形状の変化も真面目に考えたほうが良いのかもな! もっと鎧っぽくするとか、剣っぽくしてみるとかか?」
「まずは爪の延長、強化から試すのはどうかなっ! 長いやつは追々でイイんじゃない? 切島くんの〝個性〟なら自傷はしにくいだろうけど、素人が刃物振り回すのは他人が危ないからねっ!」
「ゆくゆくは肘からブレード! とかどーよ? かっこよくね?」
「トゲ増やしたら攻防に使えそー!」
「出したり引っ込めたり出来るならもしかして『射出』もできるようになるかも!? 仮に出来なくてもそれっぽい形にするだけでブラフとして機能するかもしれない! それにたとえば可燃性ガスが発生している現場なんかだと金属の工具が使えないから切島くんの〝個性〟ならブツブツブツブツ」
きっしょ。という言葉を飲み込んだのは誰だったか。楽しい〝個性〟トーク中に急にテンションを高めて一人でブツブツ言い出した緑谷に周囲はドン引きだ。そう、緑谷は「皆と一緒に〝個性〟トーク」という成長過程で誰もが経験しているはずのことを経験していないのでさじ加減が分からないのだ。現代社会の闇、環境が生み出した悲しきモンスターである。とはいえヒーローとして向上するならば〝個性〟と向き合わなければならないので、今後はこの『普通じゃない分析』も有効活用されていくだろう。
「か、かっこよくて強い〝個性〟なら爆豪と轟もだよな!」
気遣いの男、切島。クラスで浮きまくっている二人にも鉄板の話題たる〝個性〟トークを振るとともに、微妙になった空気を切り替えるという神業。これこそが本物の陽キャ(高校デビュー)。しかし闇のコミュ障である轟は完全無視。やかましいだけで陽キャではない拗らせ男の爆豪(しかもモテない。母親以外からバレンタインチョコを貰ったことがないレベル)は「ケッ」と吐き捨てたが、それ以上の悪態をつかず顔を逸らしたのでこれは内心喜んでいるやつである。思ったようにはいかなかったが、陰キャの独り言から皆の意識がそれたのでとりあえずこれでよし、と切島が思っていると、光のコミュ障であるカエルちゃんがまたしてもぶっ込んできた。
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなさそ」
恐るべき切れ味である。切島鋭児郎って名前に改名したら? ヒーローは人気商売という話からのこれ。すなわち「お前ヒーロー向いてないよ」宣言だ。今度は前置きもない。彼女の素朴な本心がバスに響き渡った。爆豪が即座に「んだとコラ出すわ!」と怒鳴りつけなかったら、車内の空気は一体どうなっただろうか。そこにさらにクラス一のアホである上鳴が「付き合い浅いけどお前の性格煮詰めたドブ川みてぇ」と追撃を加えた。彼はいつものノリで女子に追従しただけだが、爆豪は意外と繊細なメンタルをしているため、恐らく相当傷ついているだろう。これまでの人生で周りにチヤホヤされまくってきた爆豪は生来の負けず嫌いで耐えているだけで、打たれ強くはない。アホがたまにやる核心を突く指摘に対し、割と論理的な爆豪は否定の言葉が出てこなかったため、発言の内容ではなくボキャブラリーに言及するという負け惜しみしか言えなかった。これらのありのままの言葉が『いじり』として成立したのはひとえに爆豪が強烈に反発したからであり「わぁ……ァ……」みたいな反応だったらバスの内部が紅蓮地獄(八寒地獄の一つ。恐ろしく寒いため皮膚が裂け出血する様が紅蓮の華のように見えるという苦しみを与える)になるところであった。育ちの良い八百万が「低俗」とバッサリ切り捨てるのも当然のかなり品のないやり取りだ。やかましい地元の喧騒(ガテン系建設会社の良く言えば遠慮のないやり取り)を思い出した麗日は上機嫌になったが、だいぶギリギリだなと思った相澤は「そろそろ目的地だからいい加減にしとけ」と会話を強制終了させた。
「すっげー! テーマパークに来たみたいだぜ! テンション上がるなぁ~!」
バスから降りた一同は、訓練施設の中に入ると感嘆の声を上げた。正面に見える広場には美しい噴水があり、各所にアトラクションのようなものも見えたからだ。しかし実際に注視してみると、それらはアトラクションではない。水難事故、土砂災害、山岳救助、火災、倒壊、暴風と多種多様な災害が再現されている、恐ろしい施設だ。
「あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も『
施設の説明をしてくれたのは現地で待っていた、というか先行して施設をせっせと稼働させていた『スペースヒーロー 13号』だ。彼女(13号は僕っ娘の女性。28歳。ちょっと待てよ今年齢言う必要あった?)はファンであるという麗日やヒーローオタクのクソナードがテンション高くはしゃいでいるのを他所に、なにやら相澤と話しはじめた。生徒たちに聞こえないようにしているようだが、教師の内緒話が気になるメスガキの要請でプラグを地面に当てていた響香にはバッチリ聞こえてしまった。「オールマイト来てないけどなんで?」という質問に「制限時間ギリギリまで活動したから仮眠室で休んでいる」と回答しているという明らかに聞いちゃいけない系の話である。オールマイトに活動制限? しかも制限を超過すると仮眠が必要になる? 無敵だと思っていたヒーローの弱点(自己管理の出来てない無様な恥ずべき痴態)に動揺する響香。わくわくしながら響香の説明を待っているメスガキをちょっと恨めしい目で見ていると、オールマイトが来ていないことに対する生徒たちへの説明は一切無しに13号のお小言が始まった。
「皆さんご存知だとは思いますが僕の〝個性〟は『ブラックホール』。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」
そこまで話したところでクソナードが我慢できずに「その〝個性〟でどんな災害からも人を救いあげるんですよね!」と口を挟む。お小言中なのに恐るべき胆力だ。しかし13号は特に注意はせずそのまま続ける。流れを中断しない言葉だったからだろう。人間が出来ている。
「ええ……しかし簡単に人を殺せる力です。みんなの中にもそういう〝個性〟がいるでしょう」
殆どの生徒が「死ね」「殺すぞ」と普段から喚いてる
「君たちの力は人を傷つけるためにあるのではなく、救けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな。以上! ご清聴ありがとうございました」
新任でぐだついたオールマイト。不審者丸出しのおっさん(しかもめちゃくちゃ厳しい)。それらとは比べ物にならない、優しく暖かく、しかし必要な言葉はしっかりと伝える紳士的な振る舞いを見て、授業がまだ始まっていないにも関わらず生徒たちのテンションは最高潮だ。ステキー! ブラボー! カッコイイ! これからの訓練で13号先生のようになりたい! と思わせることに成功した彼女(僕っ娘。28歳)は相澤に目配せをした。それを受けて相澤が「そんじゃあまずは……」と口を開いたその刹那。広場に『何か』が現れた。
「一かたまりになって動くな! 13号! 生徒を守れ!」
生徒たちは戸惑いながらもとりあえずこころなしか密集した。近くの生徒と「これなに?」「またなんかの試験?」「入試と同じパターンか?」等と話している姿には緊張感は見られない。そんな生徒たちに、相澤は鋭く言い放つ。
「お前たちは動くな! あれは……
やはり先日のはクソどもの仕業だったか。ぼそっと呟かれたその言葉に八百万と響香は先日の騒ぎを思い出す。あの日警報が止まったのは解決したからではなく『出し抜かれた』からだったことに思い至り、身を固くする。他の生徒達は過日の響香たちのように「ヒーローだらけの雄英に来るなんてバカじゃん」と楽観的な発言をしている。相澤は警報が機能していないことに気付くと戦闘の準備を始めた。一応色々と連絡を取るよう指示を出してはいるが、期待はしていない。信頼がないのではなく、根拠のない楽観を持たないだけ。自分の力でなんとかしなければならないと、知っているのだ。
「先生! 一人で戦うんですか!? あの数じゃ先生の戦闘スタイルだと……」
緑谷はヒーローオタクなので相澤のヒーローとしての姿である『抹消ヒーロー イレイザーヘッド』の戦い方についても知識がある。とはいえメディア露出の少ないアングラヒーローなので断片的なものだ。しかしその程度の知識でも分かるほどに不利な盤面であることは明白だった。
「ボクの「ダークマター」で全員捕縛しましょうか~? ここ雄英の施設ですし、警報の無効化に不法侵入って、先制攻撃しても『正当防衛』ですよねっ!」
何の緊張もないメスガキのその提案に相澤は一瞬だけ思案した。遠隔で強力に捕縛できる彼女の〝個性〟の助力は非常に有効だ。生徒たちの安全のためなら新斗あるいは轟の〝個性〟を使わせ『面』で制圧すべきだ。『イレイザーヘッド』はそう考える。しかし『相澤消太』は生徒たちをまだ戦わせるべきではないと考えた。唐突に広場に現れた『
「新斗は13号の指示に従い、他の生徒達を守れ。13号! 任せたぞ! 上手く使え!」
言うが早いか、『イレイザーヘッド』は「バッ!」と大きく飛ぶと、一気に広場の正面に突っ込み、戦闘が始まった。自身より大きな体格の
「相澤先生は意外と格闘タイプっ! 13号先生! ボクの「ダークマター」は鎧みたいに使うことも出来ます! こう……服に浸透させて、単純に頑丈にできますし、性質の付与、たとえば『衝撃の吸収』みたいな性質を与えれば、肉弾戦なら無敵です! ここからでも相澤先生に付与できます! 許可をくださいっ!」
13号は、そんな事もできるの!? と内心驚愕していたが、努めて動揺を押し殺し、なるべく冷静に聞こえるように指示を出した。
「分かりました! 僕の〝個性〟っぽく見せかける欺瞞行動にあわせてこっそりやってください!」
やる意味は正直そこまでない欺瞞であるがやらないよりはマシだ。13号は「てやぁーっ!!」っと相澤にもなにかしますよ、と伝える意味も込めて大声を出しながらそれっぽいモーションをした。メスガキはそれに合わせて13号の足元からスーッとすばやく星に彩られた黒い帯のような〝個性〟を地面に沿って伸ばした。『帯』は相澤にくるっと巻き付くと、服に染み込むようにすっと消えたが、その途端相澤の服が星のようにキラキラしてちょっとファンシーになった。彼は一瞬チラッと視線を送っただけで何かやろうとしたのを察していたらしく、見慣れた黎乃の〝個性〟に抵抗せず、意識を逸らさずに戦闘に集中していた。とりあえず出来ることをやった13号は
「すごいです新斗さん! 効果だけではなく展開速度も一流! 戦闘中の先輩に一瞬で巻き付く器用さ! やろうと思えばあの速度で捕縛もできるんですよね?」
「目視できてますしあの程度の数なら余裕ですねっ! 相澤先生はどうしてボクに捕縛を命じなかったんでしょうか?」
「……まだ1年生の君の将来のことを考えてじゃないでしょうか。対人相手に戦闘行動中でもあんなに器用に出来るって確信が持てなくて、加減を誤らないか心配だったんじゃないかと思います」
13号は最も重要な懸念のみを話した。他にも例えば「おそらく数年もせずに出所するであろうこの人数の
「なるほどっ! ボクは出来る事しか提案していませんけど、それを周りが信じてくれるかは別問題、ということですねっ! 知ってたつもりでしたが、所詮つもりでしたか! それじゃあ13号先生、ボクに捕縛の指示を……」
生徒たちに不安を与えないため「新斗さんは僕より強そう」という言葉を飲み込んだ13号。その後のメスガキの話の途中で「ぞわり」と生徒たちの前の空間が歪んだ。一瞬で黒いモヤが広がり、『
「初めまして。我々は『
黒いモヤの男が何かをしようとしている。そのタイミングで飛び出す生徒が二人いた。爆豪と切島だ。彼らはモヤの男に攻撃を加えたが、攻撃により散ったモヤはすぐに元通りとなり、結果的には無意味だった。いや、13号の『ブラックホール』の吸引力による防御が使えなくなってしまったので、総合的にはマイナスだった。相澤が大事なことだから二回「動くな」と言ったのに無視した結果、モヤへの防御が疎かとなり、生徒たちの殆どはそれを避けることが出来ず、飲み込まれてしまった。
「今のは何だ? 『収納』か? 『ワープ』か? ボクの友達を何処へやった!」
メスガキが珍しく「にやにや」を消して真剣な顔をしている。冷静に素早く索敵を行った障子が落ち着いた声色で彼女に言った。
「新斗、大丈夫だ。散り散りにはなっているが皆この施設内にいる。少々聞き取りづらい場所に行ったものも居るようだが、現時点では全員無事だ」
「……やっぱり『聴覚』は頼りになるっ! それじゃあみんなをレスキューしなきゃ! 13号先生っ! 指示をお願いしますっ! こいつを捕縛しますか? 飛行して何処かへ救援に向かいますか? それとも学校に飛んだほうが良いですか?」
「! 新斗さんは『ヒーロー 13号』の責任において自己判断による戦闘を許可します! 把握できる限りでいいので、危険そうな生徒のもとへ向かい、救援をしてください! 飯田委員長! 君は学校まで駆けてこの襲撃の事を他の先生方へ伝えてください! おそらく
救助の分野は13号の専門だ。素早く判断を下すと即座に指令を出した。13号から見た黎乃の戦闘能力は、凡百のプロヒーローを遥かに凌駕していた。また、
「新斗! あちらの山に耳郎が居る! 合流して索敵を補え!」
「! 障子くんって本当に気が利く素敵な男の子だねっ!」
黎乃は即座に翼を出すと山岳ゾーンの方へすっ飛んでいった。飯田は一瞬戸惑ったが、黎乃を見習い指示に従って走り出した。色々言いたいことはあったが、すべてを飲み込んだ。委員長として最善を尽くさねばならない。そして飯田にはまだその最善の判断ができない。13号の指示に従うのが最善であると信じるしかない!
「学校へ向かいます! 皆! 援護を頼むっ!」
「おっと。そうはさせませんよ!」
モヤの男がそれを防ごうとぶわっと広がり飯田を包もうとする。
「こっちのセリフですっ!」
13号がさらにそれを防ごうと『ブラックホール』でモヤを吸おうとしたが、モヤの男はそれを読んでいた。『ワープゲート』の〝個性〟を使い『ブラックホール』をワープさせカウンターを目論む。
「わわっ!?」
背中が少し引っ張られている感じになった13号は慌てて『ブラックホール』を引っ込めた。背負っていたサポートアイテムがチリになったところで停止できたが、間一髪だった。出力を落とし、もっと遠距離、すなわちワープの範囲外から吸い込むことで行動を妨害する戦法に切り替える。
「むっ……上手く決まったと思いましたが浅かったようですね。これは少々見くびっていましたか……」
戦闘経験が少ないゆえの迂闊な初撃にあわせたカウンターで決めきれなかったのはモヤの男にとってあまり良くない事態だ。13号は初撃とは違い小さな『ブラックホール』を細かく使うようになってしまったので、よほど上手くやらないと行動不能にすることすら厳しくなった。生徒を守ろうと焦っている状態の内に撃破しておきたかったのだが。生徒たちの〝個性〟もなかなか強力で、それに冷静になった13号の援護まで入ると一気に不利になってしまい、ついには飯田を取り逃してしまった。
独自設定
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・オールマイト隠し子問題:原作で轟くんに言われるって本当になんかあるのバレバレだったんだろうなって。
・切島鋭児郎:ヒロアカネームの法則から言うと『硬化』じゃなくて『刃』とかそんな個性になるんじゃねえかって思って捏造。過去エピ自体は公式。
・13号の戦闘許可:この時点でいきなり生徒戦わせるとかマジ?相澤先生だったら「この場の全員をその“個性”で包んで守れ」とかそういう防御的な指示をしたと思います。メスガキは攻めの提案ばっかして思考を誘導していますがイレ先は引っかかりません。僕っ娘28歳の戦闘経験は一般ヒーローからすら半歩劣るので引っかかりました。
・13号の背中がチリにならない:メスガキの存在によって変化したことは神のみぞ知る。