ボクのヒーローアカデミア くらっしゅ!! 作:ぺぺぺぺぺぺぺ
黎乃は殆ど一瞬で山岳ゾーンに到達した。仲の良い友人でもあり、黎乃の欠点である『索敵』を補える存在である『耳郎響香』をすぐに見つけ、彼女に攻撃を加えようとしている
「響香ちゃんおまたせ! モモちゃんと上鳴くんも一緒だったんだねっ!」
「リノ! 救けに来てくれたの!? あっちはどうなってる!? 相澤先生は!?」
索敵能力を持つ耳郎響香。様々な道具を作れる八百万百。通信装置を持つ上鳴電気。事態を打開するために有効な〝個性〟がここに揃っていた。メスガキはさっさとその場に居た
「すげー……一瞬で終わったな。あ、さっきから通信は試してるんだけど全然ダメだわ。飯田が上手くやってくれるのを期待したほうがよさそうだ。一応こまめに試すけど」
「上鳴さんの電撃で制圧してもらおうと絶縁シートを作っておりましたが、捕縛用のロープに切り替えたほうが良さそうですわね」
「ううん、大丈夫! この100万倍は出せるから! それよりみんなの救助のために、3人の力が必要なんだ! モモちゃん、集音装置は作れる? ボクがキミを抱えて飛びながらでも『創造』はできるかな?」
「なるほど! 響香さんのプラグに適合した集音装置を作成し、施設全体を調査するんですね! 20秒ほどお時間をいただきますが、移動中も『創造』は可能ですわ。上鳴さんの電力使用を前提とした強力なものを作成します」
「20秒なら右往左往するより全体を把握しやすいここで集音してから移動のほうが良いかなっ! 作ってもらってる間にこれからの動きを」
ボゴ……と黎乃の背後の地面から腕が出てくる。全滅させたと見せかけての伏兵。勝利の後こそ人が最も油断する瞬間。それを突く狡猾な策。「敵が勝利を確信した時が大きなチャンス」ってオールマイトも情熱大陸で言ってた。
「そのまま隠れてればよかったのに」
「えっと、作ってもらってる間に一応これからの動きを説明するね。まずはみんなの位置と安全を把握する。そうして危険な状況の生徒を優先して救助しながら、ボクがみんなを抱えて移動する。ひとかたまりになって動くカンジ。全員持ち上げながら移動するパワーはあるから安心してね。最終的には13号先生と合流して」
そうして喋っていると八百万が「出来ましたわ」と言ったので説明を切り上げ装置を取り囲む。
「このコードに電気込めればいいのか。よっと」
上鳴が八百万に渡されたコードに電気を注ぎ込むと八百万の作った装置が起動した。響香も早速それにプラグを差し込む。
「おっ。いい感じ。これチューニングもしてる? 声っぽいのだけ聞こえるわ。ヤオモモすごすぎ。……オッケー、みんな無事っぽい。出口付近のグループに飯田が居ないから脱出に成功してるかなこれは。他は一緒にいる人と喋りながら広場に向かってるのがほとんど。けど青山と葉隠だけちょっと分かんない。それっぽい呼吸音はあるけど喋らないから多分どっちも一人で隠れているのかな。推定葉隠の位置はあそこの土砂崩れしてるとこ。推定青山の位置はその先の建物が倒壊してるとこだね。呼吸が荒いからかなりビビってるぽい。
広場で戦う相澤は驚いていた。自身の服を覆っている黎乃の〝個性〟が自身の動きを全く阻害しないのだ。星でキラキラとした見た目は不審者丸出しのおっさんの服装としては少し滑稽だったが、相澤はそういったことは気にしない。何らかの防御能力を持っているのではないかと思うが、今のところノーダメージであるし、わざわざ試すのも不合理なため思考を切り替え戦闘を継続した。広場に居たのはしょうもないチンピラばかりだが、相澤の見立では危険な存在が三人居た。一人目は先程取り逃がしたモヤの男。推定ワープ持ち。二人目は少し離れたところで様子をうかがっている全身に『手』を身に着けた指揮官らしき男。最後にぼんやり佇んでいる黒い大男。雰囲気も動きも他のチンピラとは全く違う、異質な存在だ。
「23秒」
一番危険そうに見えた大男ではなく、指揮官らしき男が突っ込んできた。捕縛布や格闘で迎撃したが、やはり他のチンピラとは違い相澤の動きにもしっかり対応してくる。どうやらこちらの〝個性〟のインターバルを測っていたらしく、解析結果を自慢気に話しながら掴みかかってきた。肘をキャッチされた時、恐らく何らかの〝個性〟を発動させたのだろう。しかし何も起こらなかったことが意外だったようで、「あ?」と呆けたので顔面に一発良いのをぶち込んでやった。チンピラが背後から襲ってきたので追撃できずに居ると、身を起こした手だらけの男がイライラした様子で顔をガリガリと引っ掻きながら言った。
「ちっ……ブラフを仕込んでいたのか? やるじゃないか、イレイザーヘッド。楽しくなってきたぜ。脳無。やれ」
その言葉を聞いた途端黒い大男の姿が掻き消え、相澤は背中に強い衝撃を感じた。地面に叩きつけられるが、咄嗟にその反動を利用して素早くその場から離れると先程まで相澤が居た地面が陥没するほどの一撃を大男が繰り出していた。あの力で背中を殴られ、地面に叩きつけられたのなら、一撃で終わってもおかしくなかったが、この『鎧』が役に立ったようだ。鈍痛こそあるものの、行動に支障はない。先程恐らく敵の〝個性〟を防いだことと合わせると、素晴らしく高性能な鎧だ。チンピラ共は大男のあまりの強さと、その一撃に耐えた相澤にドン引きしたようで、明らかに及び腰となりジリジリと下がり始めたが、状況は好転したわけではない。むしろ恐ろしく強力な
「良く耐えたな。そいつは対平和の象徴……改人『
手だらけの男はメスガキの〝個性〟を13号の隠し技か何かだと勘違いしたようだ。『ブラックホールの応用で衝撃を吸い込んだ』という一見それっぽい理屈を脳内で連想してしまったのだろう(ゲーム脳)。見た目も黒い服に星が煌めいているという宇宙的な感じなので無理もない。当然相澤は訂正したりしなかった。
「吹っ飛んでたし完全ノーダメージってわけじゃなさそうだな。もっと力を込めてボコボコにしろ、脳無」
ひゅん、と風を切るような音と共に目にも止まらぬ速さで相澤に攻撃してくる脳無。自分よりパワーが有って、自分より速い相手との戦いに慣れている相澤は、ギリギリ反応してガードしたが、全身が軋むのを感じる。この怪物が生徒の方に行ってしまえば、間違いなくろくでもないことになる。幸い手だらけの男は相澤を痛めつけたいらしく、大男と相澤の戦闘を見学するだけの置物になり、ビビって立ち竦んでいるチンピラどもに指揮するつもりもないようだ。さらに言えば、もっと力を込めて、という命令の影響だろうか動きが大振りで回避はしやすい。正直先程のパンチでも十分に致命打であり、むしろ逆にコンパクトに攻撃されたほうが不利であったため、助かる命令だ。もはや相澤は一秒でも長く耐えることで、救援が来るまでの時間を稼ぐしかない。おそらく俺は今日ここで死ぬ。冷静にそう考えながら、相澤は脳無との戦闘を続行した。それは諦めではなく、むしろその逆。自身のすべてをここで出し切る、という決意だ。そして生涯二度目となる人生最高の集中力と会心の動きで、捕縛布を巻き付け拘束することに成功したが、僅かに停止させたのみですぐに力ずくで引きちぎられてしまった。でたらめなパワーだ。『鎧』がなければ時間稼ぎすらままならなかっただろう。掠っただけで死んでいたのではないだろうか。その後も回避を続けるが、捕縛布の大部分が破損したことに加え疲労と集中力の限界により、ついにボディにクリーンヒットを貰ってしまった。その結果動きが鈍り、さらなる攻撃を受けてしまう。文字通りボコボコにされ、崩れ落ちぐったりとした相澤の頭を脳無が踏み潰そうとするが、男がヘラヘラしながら声をかけた。
「脳無。それはやめとけ」
それは慈悲などではない。ムカつく存在をここで終わらせずもっと痛めつけてやろう、という幼稚な嫌がらせであり、本末転倒な命令であった。しかも「ボコボコにしろ」と「それはやめとけ」という2つの矛盾した命令がコンフリクトを起こし脳無はフリーズしてしまった。
「なんだ? 融通が効かないな。チャットAIかおまえは。しょうがない、そのまま適当に……」
曖昧な指示のせいで変な動きをするのはAIの責任ではなく人間の問題だ。そしてこの場合脳無にしょうもない命令を出している男に100%責任があるが、彼にとってはそんなことは関係ない。他責思考の塊でなければ
「『
「は? ……は? 黒霧……黒霧! 黒霧!!! おまえさぁ……ちょっと調子こいてるんじゃないか? 『ワープゲート』だから殺されないと思って適当やってるだろ?」
「いえ……そのようなつもりは……」
「じゃあどういうつもりなんだよ。言ってみろ」
「いえ……すみませんでした」
「はぁ? 俺はどういうつもりか言えって言ったんだが。また命令無視か? やっぱり調子に乗ってるよな?」
「すみません……返す言葉もございません……」
「俺はどういうつもりか言えって命令してんだよ。逆らうな。殺すぞ」
「すみません……調子に乗ってたかもしれません……どうかお許しください……」
「かもしれません? まだそんな事言ってるのか。はぁ──……。救援を呼ばれたならゲームオーバーだ。帰るか。さっさとゲート出せ役立たず。それしかお前の価値ないんだから。話の続きは帰ってからな」
恐ろしく粘着質な男である。しかもまだ続けるつもりだ。水難ゾーンから脱出し、教師との合流を目指して中央広場に向かっていた緑谷は、丁度相澤と脳無の戦闘が始まったタイミングで広場に到達していた。遠くから見ていたというのにいつ相澤の背後に周ったのか全く分からなかった。恐ろしい速さで攻撃された相澤は不意打ちされたにも関わらず即座に対応し、追撃を完全に回避すると、明らかに相澤より速く大きくパワーもある相手に一歩も引かなかった。それどころか流れるような動きで大男の捕縛すらしてのけた。まさにヒーローという感じのかっこよすぎる活躍に緑谷はすっかりイレイザーヘッドの大ファンになってしまったくらいだ。しかしイレイザーヘッドが作ってくれたそのある種の余裕、安心感はその後すぐに大男が捕縛布を引きちぎってしまったせいで崩壊してしまった。イレイザーヘッドとの戦闘中にも一切の衰えを見せなかったそのパワーは〝個性〟ではなく自前なのだ。あまりの恐ろしさに身が竦んだが、その後の戦闘で倒れたイレイザーヘッドを救けるために飛び出そうとした矢先、唐突に始まった説教。中断させてしまえば再びイレイザーヘッドへ矛先が向く可能性もあったため、説教が終わるタイミングを伺っていたせいでパワハラをじっくり聞く羽目になり色んな意味で戦慄していた。
「ちょっと待ったーっ! 逃げるな負け犬っ! チキン野郎ーっ! お風呂入ってなさそう!」
最も危険な場所は今や中央広場で、救援の必要があるのは相澤であった。故にメスガキは急いでここに飛んできた。脳無に掴まれていたはずの相澤が、いつの間にか黎乃の後ろにふわふわと浮いている。〝個性〟を使って救出したのだろう。高校生が言ったとは思えない幼稚な挑発で、敵を逃さないようにしたいようだ。すでに救援が来るのは時間の問題。足止めすれば捕縛できるかもしれない。しかしこのようなしょうもない挑発に引っかかるアホは居ないだろう。
「はぁ? 逃げてないけど? これは戦略的撤退っていうんだよ、ガキンチョ。まぁお前程度じゃわからないか、この
ムキになって言い返してくる同レベルのガキがここに居た。ラスボスの姿か? これが……。生き恥という他ない恥ずべき痴態だ。
「へぇー? 高レベルならボクのことなんて蹴散らせるんじゃないのぉ? 出来ないことを出来るふりしちゃって弱そぉ~! 雑ー魚っ! ざぁこっ!!」
「俺は大人だからお前みたいなクソガキに何言われたって効かないんだよバーカバーカ。おい脳無、ぶん殴れ」
「死柄木弔。早く逃げないとまずいですよ」
脳無が恐るべき速度でメスガキの顔面をぶん殴った。
「……え?」
一部始終を呆けて見ていた緑谷は絶望した。どうして僕は飛び出せなかった? 肝心なところで何故? どうして恩人の死を見過ごしてしまった? なぜ体が動かなかったのか?
「あああああああ!!!」
ボロボロと涙を流し、遅まきながら叫び声を上げて水から飛び出す。全身からバチバチと力の奔流が溢れたそれは、緑谷の全身全霊の後悔と決意に『
「乙女の顔に無遠慮に触るなんて失礼すぎるっ! そんなんじゃ好きになった子にも相手にされないぞっ!」
恐ろしいことにメスガキは無傷だ。それどころかその場から動いてすらいない。緑谷はぽかーんとした。ちょっと限界を超えていたので全身にズキズキとした鈍痛があるが、それを意識できないほどだ。
「あ、緑谷くん! 危ないから下がってて! この無職から非モテが感染っちゃうよ。君染まりやすそうだし」
「誰が無職だ貧乳。つーか女とか興味ないし。俺は世界の崩壊について考えるのに忙しいんだよ。おい脳無、もっとボコれ。言われなきゃ何も出来ないのか?」
脳無は命令がないと何も出来ない。まだまだ自律的に高度な思考が出来るほどの完成度はないのだ。そんなことは事前に『先生』に説明されているにも関わらず、頭に血が上った死柄木はそれを忘れていた。脳無は恐ろしい力でメスガキをタコ殴りにしはじめたが、メスガキは微動だにせず完全無視している。ようやく冷静になった緑谷は高速で思考を回し始めた。おそらく〝個性〟の応用だ。なんらかの性質、というか先程相澤のコスチュームに施した『衝撃の吸収』を更に高度に行っているのだろう。衣服に浸透できるなら、肉体にも浸透できるはずだ。いや、微動だにしないのはもしかしたら因果関係が逆なのかもしれない。つまり、動かずに対処できている、ではなく、対処しているから動けないのではないだろうか? そうなってくると自分が余計な事をして彼女の集中を乱すのはまずいかもしれない。いつでも飛び出せる準備のみをして、彼女を見守るべきだ。
「おまえーっ!! 女の子の身体的特徴になーっ! いい歳してなーっ! 良くないぞっ!! 最低っ!! 最低だよキミっ!! 女の子には優しくしろってご両親に教わらなかったのかっ!」
「きっしょ。物理無効の〝個性〟かよ。だからそんな生意気に育ったんだな。お前の親もさぞ苦労したんだろうなぁ」
「死柄木弔。オールマイトが来てます」
「マジか。なんだこれ。チャンスか?」
「ピンチです。対オールマイト用脳無がそちらの女性に完封されている以上勝ち目ゼロですよ。早く脳無に撤退の命令を出してください。プロヒーローだっていつ来てもおかしくない。一刻の猶予もありません。作戦は失敗です」
「お前のせいだろうが。俺が失敗したみたいに言うな」
黒霧はさっきからもう身体の9割くらい『ワープゲート』に潜り込み、死柄木も半分くらいゲートに入っている。メスガキが〝個性〟で拘束しないのはその素振りを見せたらすぐに逃げてしまうと判断したからだ。黒霧はあまりメスガキを刺激したくないのであえて『女性』として扱った。狡猾な
「オールマイトっ! 相澤先生と女の子がボコボコにされてからようやく到着ですかぁ? 当初の予定だと今日は最初から居るはずだったんですよねぇ? あれれ~? おっかしいぞぉ~? なぁ~んで居なかったんでしょう~? 新任って立場に甘えてますぅ? それともNo1ヒーローって立場に驕ってるんですかぁ? 私が来た、じゃあないでしょ。遅れてごめんなさいでしょ?」
「そうだぞ。なんで居なかったんだ社会のごみ。予定が狂っただろうが。でも遅刻したら流石に例のにやけ面じゃないんだな。いつも救えなかったやつなんて居ないみたいにヘラヘラしてやがるくせに」
何が気に入らなかったのかメスガキはいきなりオールマイトへと罵倒の矛先を向けた。こいつには自らの身体も顧みずに救けに来てくれた平和の象徴への感謝は無いのだろうか? しかも何故か
「なんだ、キミってばヒーローが助けてくれなかったんですぅ~ってタイプの
「はっ? なんでそうなる……お前みたいなガキに……俺を救けることなんて……あああああああ!!!!」
ガリガリガリガリ!! と死柄木が顔面を激しくを掻きむしる。ボタボタと血が出ても気にしていない。ツインテのメスガキからのこの言葉は彼の深く柔らかいセンシティブな部分にざっくりと刺さってしまったようだ。ここに
「何やってるの? ホラ、はやくボクにお悩み相談しなよ。どんなしょうもない悩みでも、あるいは悲しき過去……でもボクがしっかり聞いてあげよう! 他人に話すだけでも多少マシになるぜ! お得っ!」
明らかに異常な反応を見せた死柄木に対してもメスガキは全く態度を変えない。彼女の眼には世界がどう映っているのだろう? オールマイトは訝しんだ。
「うるさい!! 脳無を返せクソガキっ!」
「返せ? 妙な話だねっ! 彼は誰のものでもない、彼自身のものだろっ? エゴイストめっ!」
いつの間にか脳無はメスガキの〝個性〟に縛られて空中にプカプカ浮きながらジタバタしている。誰のものでもない、などと言いながらガッツリ拘束しているのはどういう了見なのだろう。エゴイストか?
「脳無は俺が『先生』から貰ったんだから俺のものだが? ハイ論破。返せ」
「はぁ~? どこが論破? 大体『先生』って何の先生? まさか君が今やってる
「ごっこじゃない。クソが。ここからだ。俺は。ここから……いいか? 俺はここでオールマイトを殺してやる」
「たった一人のか弱い女の子も倒せないくせに? もう諦めなよ! ネガティブな目的を諦めるってことは、マイナスにマイナスを掛けるってことだからプラスになるんだよっ!」
「だまれ。何なんだお前は。どこがか弱い女の子だ。人間じゃないだろ。人間ごっこやめろチート野郎が。チートは最低だぞ。ちゃんとレギュレーション守れくず」
「どうやってボクが人間じゃないって証拠だよ!? 一向に人間なんですけど? 素敵な両親のもとに生まれた玉のように可愛い赤子でしたけど? 言い負かされたからって言いがかりやめろ!! せっかく救けてあげようと思ったのに! もう救けてやんないもんね! 嫌なら謝れよ! 謝罪しろ! 謝罪っ!! 可愛い女の子にイジワル言ってごめんなさいって言えっ!!」
完全にガキの喧嘩である。聞くに耐えない幼稚な意地の張り合いをしている間に、連絡を受けた雄英の教師であるプロヒーローたちが駆けつけた。
「死柄木弔!」
「うおっ! やめろ黒霧! まだ話は」
黒霧が強制的に死柄木をワープさせ、当人もすぐ逃げた。脳無の回収は諦めたようだ。死柄木が居なくなった途端、バタバタしていた脳無はすん……と動かなくなった。
「新斗さん! 頭大丈夫!?」
周囲にすでに動いている
「えッ!? 急に何だよキミまでさぁ! ボクは可愛い女の子でしょうがっ!? ……違うの!? 嘘だろ!?」
「えっ!? いや違うから! あ、違うのが違う! すっごく可愛いよ! まるで天使みたいでヒーローとしても絶対人気に……じゃなくて! あの脳ミソ
「そうでしょっ!? 最高に可愛い愛されガールだよね!? あ、見ての通り全然余裕だよっ! 天使みたいにかわいいボクは無敵でもあるからねっ!」
その返答と「いやんいやん」という感じで照れている仕草にようやく安心できた緑谷は、未だくねくねし続けている新斗に軽く声をかけたあともう一つの懸念、相澤の容態を確認しに行った。こちらもいつの間にかメスガキが13号のもとに届けており、応急処置を受けていた。オールマイトは施設各所から連行されまとめられた
避けようのない凄惨な未来……負けないで……オールマイト……。
「13号先生! イレイザーヘッドは大丈夫なんですか!?」
「緑谷くんに新斗さん。二人は元気そ……緑谷くんはその手、大丈夫ですか? 先輩……イレイザーヘッドは先程意識を取り戻しました。全身に激痛がして死にそうとのことです」
「ええっ!? 大変だ! 早くリカバリーガールのところへ連れて行かないと!」
「すでにこちらに向かっています。とはいえそこまで心配はいりません。見当識はしっかりしていましたし、特に2撃目をガードした左腕がひどい、といった分析も正確でした」
「ケントウシキ?」
「あ、まだ習ってませんよね。時間・人・場所を認識しているかどうかで意識レベルを測るんです。詳しくはそのうち授業でやりますが、思考がはっきりしているので脳に重大な問題が発生していない、という感じです」
相澤はおそらく一時的な脳震盪だったと思われる。一応まだ急変する可能性自体はあるため予断を許さない状況ではあるが、緑谷を安心させるためあえてそれは言わなかった。頭部への有効打は一度もなかったにも関わらず脳震盪。全身の骨も恐らくヒビだらけ、左腕はぽっきり折れていてどうやって動いていたか不思議なほどの大怪我だ。脳無の恐るべき力とそれに耐えた『鎧』の性能に13号は戦慄するとともに、彼女がヒーローとして羽ばたく日に期待を抱いた。一方メスガキの方は意識があると聞いた途端に相澤に話しかけに行っていた。
「相澤先生! 意識が戻ったんですねっ! ボクの『鎧』はどうでしたかっ!? 他人に使うのは初めてだったので感想が聞きたいですっ!」
「新斗か……全身がバキバキでな……痛みで喋るだけでしんどいから後日でいいか……?」
その言葉を聞いたメスガキはさっきまでのクソ生意気な態度がみるみるうちにしぼみ、その虹色に輝く大きな瞳に負けないくらいの大粒の涙をぽろぽろと零し始めた。
「……!!! せ、せんせぇ~っ! ごべんなざい! ぼぐがもっど頑丈にじでれば大丈夫だっだのに!!」
「ばかを言うな……お前のおかげで命拾いした。ありがとうな……」
相澤もやはり人間ということだろう。身体が弱れば心のガードも下がる。「ふっ」と笑いながら普段なら恐らく言わなかっただろう褒め言葉をこぼした。
「自信を持て……お前は良いヒーローになれる……」
その普段の冷たさが嘘のような柔らかい言葉はメスガキをさらにギャン泣きさせた。
独自設定
・八百万の『創造』に掛かる時間:捏造。
・響香ちゃんのプラグ:まぁよくある3.5mmのプラグだと思うから別に専用に作る必要ないと思うけどヤオモモはちゃんと確認したってことです。口に含んで心音感じたい。
・集音装置:ふわっとそれっぽいものが出来たってことで。
・脳無のコンフリクト:原作だと多分何らかの解釈して動くと思うんだけど。
・調子に乗るな黒霧:結構慇懃無礼なので唐突な言いがかりというわけではない。一体何雲の影響なんだ……。
・イレイザーヘッド大活躍:彼は学生時代、プロヒーローが何人もボコボコにされるような推定AFOの刺客をほぼ単独で撃破したクソ強ヒーローです。その気になれば何だってできると思うぜ。がんばれショータ!お前は強い!絶対負けない!
・どうやってボクが人間じゃないって証拠だよ!?:メスガキを強いと感じてしまっているやつは本能的に長寿タイプ
・女とか興味ないし:お母さんも華ちゃんも嫌いだ。おばあちゃんはちょっと嫌い。あの人は優しそうだったんだけどな。
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・すん……:撤退により「もっとボコれ」という命令が終了したと解釈。待機モードに移行。