ボクのヒーローアカデミア くらっしゅ!!   作:ぺぺぺぺぺぺぺ

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頑張って早く出した(つもり)


『経験とは、すべての人が自分たちの過ちに与える名前である』

「わーたーしーが! しゃしゃしゃ謝罪に来た! ……本当にすまなかった、新斗少女。私は結局君の心配を無下にした上に、段取りをめちゃくちゃにして、今も不要な重荷を背負わせている」

 

 メスガキが緑谷出久に連れて行かれたのは寮の裏手の森の中。向かった先に居たのはムキムキマッチョマン。「オールマイト! 今新斗さんがすごく上機嫌なのでチャンスですよ! 謝罪のチャンス!」というメッセージを見て即座にやってきた。機を見るに敏だが、絵面がどう見ても事案通り越して事件ですね。

 

「あっ……えっと、新斗さん! 重荷……『オールマイトちゃん』についてはその、僕にも責任があると思うんだ……僕がオールマイトの後継者としてふさわしい強さを既に持っていれば、こんなことには」

 

 まぁ見た目がロリ系超絶美少女でも中身は最強生物なのだから、身の危険を感じるべきなのはキモオタとマッチョの方なんだけどね。

 

「し、辛気臭いっ……何なのキミたち……せっかくごきげんだったのにじめじめしたやり取りに巻き込まないでほしいなぁ、もぅ~」

 

 メスガキは上機嫌なままに何も考えずついてきたので話の流れにがっかりした。貰ったキーホルダーを眺めながらニヤニヤしていただけだったので何の話かまるで予想していなかったし、出てきた話も本人視点だとしょうもなかった。

 

「ほんとうにすまない……」

 

「ごめん、新斗さん……オールマイトがすごく困ってたから今しかないかなって思って……」

 

 クソナードは割と策士なのでわざとやっているが、だからといって罪悪感がないかと言うとそんなことはない。

 

「まぁいいけど。はい許しました~。お話は終わりですかぁ?」

 

 クソナードの『メスガキの上機嫌にかこつけてオールマイトを許してもらおう』という目論見は大成功した。しかし緑谷出久に達成感などない。卑劣な策略で友人の時間を邪魔してしまったという後悔でいっぱいだ。やらなければ良かった、とは思わない。しかし、この埋め合わせはいつかしなければならない。そう思った。

 

「え? 終わり? ……あの、もっとこう、恨み言とかぶつけてくれて良いんだよ。君の将来にも関わる重大な……」

 

「終わった話を続けてまだボクの幸せな時間を奪おうっていうんですか? 緑谷くんもなんとか言ってよ~」

 

「新斗さんは許してくれましたよオールマイト! 良かったですね!」

 

 早速ちょっとだけ役に立てる機会が来たのでここぞとばかりに追従した。メスガキが終わらせたがってる話にこれ以上食い下がってもむしろ逆に機嫌を損ねるだけなのをクソナードはよく知っていた。しつこく謝るとネチネチした説教が始まってしまう……! 

 

「えぇ……」

 

 愛弟子の怒涛の勢いに困惑するオールマイト。こんなふうに強引に話を打ち切るのは珍しい。ちょっと寂しい。

 

「オールマイト、ボクからも頼み事があってぇ~……緑谷くんちょっと……あ、別に良いのか、聞かれても」

 

 緑谷も既に仮免持ちだ。つまり『守秘義務』が発生するれっきとした公務員となっている。それにオールマイトがここだけの話とか言って何でも明かすだろうことは目に見えていたので隠す意味がないと思ったらしい。なお実際はわりとクソナードには秘密にしている事が多い。

 

「おお! 珍しいな! 何でも言ってくれ!」

 

「ちょ、オールマイトそんな安請け合いして大丈夫ですか?」

 

「HAHAHA! 安請け合いなんかじゃあないさ。新斗少女に頼み事をされるなんて今後一生ないかもしれないことだぞ?」

 

 それに実際そんな無理難題は出てこないだろう。『能力不足』という原因はメスガキにはありえない。つまり必然『立場』だの『権利』だのの話になるはずで、オールマイトの心情的にどうかはともかく『できる』話しか出てこないのが分かりきっているためだ。

 

「な、なるほど……」

 

 確かにレアリティが高いかもしれない、とキモオタ目線で判断するクソナード。なんでも自分でやってしまえる彼女の頼みごととは、一体なんだろう? 

 

「どういう意味ですか? なるほどって何? 失礼な奴らだなもう! ボクはどっかの人間不信師弟と違ってちゃんと人に頼れますぅ~!」

 

「に、人間不信師弟って……私はともかく緑谷少年は……」

 

「……えっと……」

 

「オールマイトが『OFA』しか信用してないこととか、緑谷くんの献身の裏にある願望じみた痛々しい祈りとか細かく指摘しましょうか?」

 

「祈り……?」

 

 オールマイトはピンときてないようで、緑谷出久の方を何気なく見た。オールマイトにとって緑谷出久は人間不信とは程遠い、むしろ信じすぎているきらいすらあると思っていたので、きっとキョトンとしているだろうと思った。だが、違った。緑谷出久は何か痛みに堪えるような表情でうつむいている。

 

「で、本題ですけどぉ。来期のチャートについて、オールマイトはいかがお考えですか?」

 

「ん……ビルボードチャートかい? ……ああ、ヒーロー公安委員会からなにか聞いてるのかな」

 

 気にはなったが、話が移ってしまったのでとりあえずそちらに意識をやるオールマイト。メスガキは無視されるとものすごい勢いでロジハラしてくるからな……。

 

「ですね~。引退ブーストは考慮されないのと神野の独断専行で貢献度が全然ひくいのでぇ、エンデヴァーが1位になりそうなんですけどぉ、世間は納得しないでしょうし、オールマイトが陥落するのも問題でしょ~? 来期チャート、辞退してもらえますぅ?」

 

「……え」

 

 ぱっと顔を上げてオールマイトを見るクソナード。

 

「なるほど……うーむ……」

 

「え、渋るとは思いませんでした。何か懸念でもあるので?」

 

「エンデヴァーのことさ。彼はずっと私を超えることを目標にしていただろう? それが叶いそうだというなら、辞退だと勝ち逃げみたいになってちょっと申し訳ないかなって」

 

 オールマイトはイメージを大事にしているのでもはや辞退は決定事項だ。負けると分かってるなら逃げることに抵抗などない。そもそもオールマイトにとってランキングの重要性が低いというのもある。

 

「まだそんな認識なんですか? エンデヴァーはもうその夢は子供たちに託しましたよっ!」

 

「え! そうだったのか……じゃあいっかぁ! No1であることも平和の象徴であることにとってはいい影響があったけど、今後はより象徴化させていかないといけないし、チャート辞退はその第一歩にふさわしいだろう」

 

「しょ~もな~。平和の象徴なんて早く終わらせなきゃ」

 

「僕が終わらせないから! ……というかオールマイトって意外とそういう事も考えてたんですね」

 

 クソナードは先程までの様子とは打って変わって力強く象徴を継ぐことを宣言した。この部分はもはや腹が決まっているので、断固たる響きがあった。あとに続く言葉はおずおずとしていたが。

 

「今更~? 『ナチュラルボーンヒーロー』なんて都合の良い存在居るわけ無いじゃん。なろうとしなきゃなれないよ、そんな欠陥生物。民衆が『好きでやってるんだから』って見て見ぬふりするための欺瞞でしょ? このおじさんはそれが『自分の目的にとって都合がいい』から放置してるんだよ。不誠実っ!」

 

 それを欠陥と呼ぶのはあまりにも残忍で酷薄だったが、一面の事実だ。あらゆる物事に全く恐れを感じていないように見える人物がいる。常人であれば恐怖しか感じない状況に意欲や快楽をも感じる遺伝子を多量に保持する存在だ。それは欠陥ではなく、群体生物として『開拓者』が必要であるという『生存戦略』によるもの。未知を、危険を切り開く『役割』を与えられたもの。通称『冒険遺伝子』と呼ばれる英雄の資質。あるいは、愚者の。

 

「新斗少女は辛辣だなぁ。まぁ事実だからしょうがないけど」

 

 平和の象徴。それは最初、漠然としたヴィジョンでしか無かった。そもそも最初は『OFA』のことなど知らなかったのだから、今とは全く違うものを考えていた。〝無個性〟でも戦えると、勇気を持って立ち上がるべきだと周りに伝えるために、鍛えて強くなろうと思ってお師匠に弟子入りを志願した。〝個性〟が無いから、何の『役割』も持てない自分。人生に意味が欲しかった。……だから本当に最初の最初は、自身の死を前提としたものだったのだ。『個性の母』のように、命を賭して世界にメッセージを放つつもりだった。

 

「無理してたんですか? オールマイト……」

 

 以前も言っていた。怖いときほど笑うのだと。オールマイトは恐怖しないのではなく、恐怖を抱えながら戦っている。知っていたはずなのに。

 

「緑谷くんなんかショック受けた顔してるけどどういうメンタルなの? 無理してたことはキミが誰より知ってるはずじゃないの」

 

 普通とは違う精神を持っているから平気だ、なんて思っちゃいけないはずなのに、そう思っていた。緑谷出久のファンとしての部分がまだオールマイトに幻想を持っているのだ。それを実感して、ショックを受けている。え……ファンやめなきゃいけないの……? そりゃそうでしょ。師匠を超えるのが弟子の役目だぞクソボケ。親みたいに思うにしたって超えていくのが孝行だっつーの。

 

「新斗少女。緑谷少年が言ってるのは肉体ではなく精神の話さ。だがそうだな……緑谷少年にはまだ話していない私の過去の話をしようか。あれはまだ私が中学生で、〝無個性〟だった頃──」

 

「ボク帰っていいですか?」

 

 現時点では悲しいことに『後継者』として振る舞う気がないメスガキのほうがそれに近い。世間というものは愚かだが低能ではない。メスガキのオールマイトへの敬意のない態度に、むしろ称賛が集まっているのはそのためだ。ただの木っ端ヒーローがこの態度なら『平和の象徴への敬意が足りない』となっただろう。だが『オールマイトの愛弟子にして後継者』ならば『そのくらいの気概があっていい』のだ。技名を真似してニヤついているのは『フォロワー』であって後継者ではない。巷にもたくさんいる、有象無象だ。

 

「え、寂しい。新斗少女も聞いていってよ! もっと私に興味を持って欲しい!」

 

 構ってちゃん。今までも遠回しにアピールしていたがついに直接言ってしまった。オールマイトは他人に依存して生きている。他者が居ないと生きていけない。自分で自分の価値を定義できないからだ。借り物の力で成し遂げた事が低評価であれば『もっと頑張らないといけない』からだ。この社会の中で、『役割』を持ち続けたいから。もう……『役立たずの木偶の坊』と言われながら無為に生きるのは、嫌だ。

 

「ご両親の復讐だって話でしょ? 何度目ですかそれ。同じ話こすりすぎ……ボクが唯一熱心に聞いた話だからってほんとにもう……」

 

 クソナードはぎょっとしたがメスガキとオールマイトにとっては今更の話なので動揺はない。

 

「まだ4回目くらいじゃないっけ?」

 

「チラチラ匂わせてたのも含めると12回です! しょうもない誤魔化ししないでくださいっ! 内蔵引っこ抜きますよっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ! 小型哺乳類の校長さ! 新学期にこうして誰一人欠けずにまた揃えたこと、とても嬉しいよ!」

 

 9月2日。始まった新学期に、始業式。今回は相澤クラスも普通に出席している。

 

「皆も知っての通り今年の夏休みには非常に重大な出来事があった。平和の象徴、その弱体化と引退を見据えた活動縮小。これは日本社会、ひいては世界そのものに衝撃を与え、今もなお揺れている状態さ」

 

 オールマイトは海外でも平和の象徴であった。自国の犯罪率を一桁まで下げたことが輝かしい実績として称賛されるのみならず、オールマイトの台頭以降世界中の敵犯罪率も5~30%ほど減少しているのだ。特にアメリカは一時期本人が実際に活動していたこともあり、世界的に見れば低めの20%にまで抑えられている。

 

「その影響は既に顕著に現れ、犯罪率は増加しつつある。今後大きな社会的問題となるだろう。ヒーロー科の諸君にとっては特に身近な問題となる。2・3年生の多くが取り組んでいる『校外活動』もこれまで通りとは行かないことが多々あるだろう。危機意識を持って励んで欲しい」

 

 教師陣からも一旦中断すべきではという声が上がっている。もちろんずっと中断しているわけには行かないが、次期チャート発表までの期間はNo1不在となっているため特に状況が悪い。ついでに1年生を参加させることについては議論が紛糾していて結論は未だ出ていない。

 

「サポート科の諸君もこれまで以上にヒーロー科の活動を意識して有機的な連携を取っていくこととなるだろう。既に寮では試験的に他科との関わりを増やす試みが行われているね」

 

 地下のトレーニングルームや開発室なんかは一応設置されている棟に住んでいる住民優先だが、申請すれば他科でも使うことが可能だ。例えばトレーニングルームの使用の申請をすると「今は1-Aのトレーニングルームの使用率が低いためそちらへ向かうこと」みたいに案内されて、学年や科を超えた交流が可能となっている。

 

「普通科、経営科にとってももちろん他人事ではないのさ。むしろ社会の未来という点では君たちの将来の課題とすら言えるだろう。社会が激変するときに最も負担がかかるのは社会的弱者さ。あえてこう言わせてもらうが、君たちは強者だ。だからこそしわ寄せを受ける人々のことを意識していくことが肝要となる」

 

 雄英高校普通科はヒーロー科のおまけではない。もちろんヒーロー科への編入を目論む人物もそれなりの数が入学してくるが、雄英高校は進学校としても最高峰なので『普通科』と言うより『進学クラス』という方が実態に近い。ヒーロー以外のエリート職……医者も、政治家も、弁護士も、雄英卒というだけで非常に強い信頼を得ることが出来る。なんなら大学が何処かより重視されることすらある。特に政治家なんかは雄英高校や士傑高校等ハイレベルなヒーロー科が存在する学校の普通科卒だとすごい有利。ヒーローを使う側の人間がヒーローに無知では話にならないからだ。

 

「引退会見でオールマイトが言っていたこと……『一人ひとりが未来の平和の象徴』となることを忘れないでくれたまえ」

 

 校長のありがたい話を全校生徒が噛み締めている。壇上よりぴょこぴょこと降りる姿は非常に愛くるしかったが、一同はそこに威厳を感じていた。短くまとめたでしょ、ほめて、とかブラドキングに話しかけているコメディみたいなシーンを見てもその敬意は変わらなかった。

 

「それでは最後に生活指導のハウンドドッグ先生より連絡事項があります」

 

「今年度より寮制が始まったことで皆さん戸惑うことも多いかと思われます。問題があれば基本的に担任の先生に相談するよう聞いているかとは思いますが、私ハウンドドッグもいつでも相談を受け付けております。特に寮生間のトラブルについては私の管轄なので、何かあればことが大きくなる前に早めのご相談を心がけてください。慣れない寮生活だからこそ、皆が少しずつ譲り合うことでより良くしていきましょう。以上です」

 

 その日の授業も恙無く終わり、放課後。寮のロビーで生徒たちは授業内容を振り返っていた。

 

「やー、リノちゃんとヤオモモの勉強会に参加しといて良かったぁ! なんかフツーに授業で習ってない文法出てきてたよね!?」

 

「やっぱ予習要るんだなぁ……はやくも良く解んなくなってきたぜぇ……」

 

「お役に立てたのであれば幸いです。上鳴さんもよろしければいつでも参加なさってくださいね。事前に言っていただければまたプリントなどもご用意できますし、リノちゃんのおやつも出ますのよ」

 

「勉強も気になるけどインターンも気になる~! 指名がないのがこんなに響くなんて~!」

 

「インターンかぁ~……おかしらのところはやってるのかなぁ?」

 

 芦戸の言っているおかしらとは職場体験先のヒーローである『パイレーツクイーン』のことだ。やたらセクシーなコスに身を包み『気圧操作』というクソ強〝個性〟で巨大な帆船を縦横無尽に操る海難救助系のヒーローである。立派なパイを持っていて男性人気がとても高い。マウントレディのデビューに焦って最近布面積がちょっと減った30歳。〝個性〟を圧縮し粘度を上げるコツを伝授してくれたのも彼女で実質的に『アシッドグルー』の生みの親でもある。

 

「パイレーツクイーンいいよな……」

 

「いい……」

 

「おっ。おかしらは年下の男の子と結婚したいとか言ってたから紹介してあげようか?」

 

「え、結婚はちょっと……」

 

「そうだな。遠くから見ているのがいいんだ、パインちゃんは」

 

「おかしらすっごく素敵な人なのに……なんでか皆結婚したがらない……」

 

 ヒーローは幻想だからいいってところがあるんだよ、三奈ちゃん。あまりにも高嶺の花すぎるってのもあるし。理想も相応に高いみたいだしな。何が男の子だ。

 

「最近犯罪増えてるから1年生のインターンは慎重に検討中って言ってたけど、リノちゃんはもうやってるんだよね?」

 

「そだね~! ホークスのところと~……I・アイランドでもちょろっとやったよぉ」

 

「え、I・アイランドで? なんてヒーローのとこ?」

 

「I・アイランドは〝個性〟の使用自由だから管理者はヒーローじゃなくて科学者の人だよ~。警備の相談とか受けたり、ボクの〝個性〟でセキュリティを強化したりのお仕事だねっ!」

 

「ああ、リノは『二人の英雄』のうちの一人だもんね。知名度も信用もバッチリってわけか」

 

 インターンについての話はどの生徒も非常に興味があるようでメスガキの話を聞きたがる生徒が多かった。バラバラに話かけられて話がとっ散らかってるのを見たヤオモモがなんと翌日にはもう活動をまとめた冊子を作ってくれた。やさしい。

 

「ほえ~……本当に色々しとるんやねぇ」

 

 翌日の夜のロビー。自主練等も終わりつかの間のリラックスタイムも話の内容はヒーロー関連のものだ。麗日たちが見ているのはヤオモモ制作のメスガキ冊子である。

 

「職場体験とはぜんぜん違うのね。黎乃ちゃんが優秀だからというのもあるでしょうけど、プロと遜色のない活動に見えるわ」

 

 生徒たちが注目したのはI・アイランドのインターン活動……ということになっている実質お仕事の方だ。警備ロボを様々な方法で破壊して耐久力を調べたり、〝個性〟で悩む人の問題を研究したり、セキュリティに口出ししたり、対応マニュアルを一新したりと、なんかすごいズブズブである。

 

「管理者のひと……デヴィット・シールド博士ってあの時の!?」

 

「バーベキューの人だ! すっごい美味しかったねぇ~! また食べた~い!」

 

「メリッサさんのお父さん! メリッサさんはまだ来ないのかな~! 雄英に交換留学? に来るんだよね?」

 

「技術交流だよ~。こっちから行く人は居ないねっ! メリッサさんがI・アイランドとアメリカの最新技術を持ってこっちに来てぇ、雄英の技術を学んで帰ってそれをI・アイランドとアメリカに反映する感じ~! 日米とI・アイランドのこれからの交流の要になる超重要人物だねっ! そろそろ日本に来るって聞いてるよ~? お楽しみに~!」

 

 メスガキは何が楽しいのかニヤニヤしている。

 

「そういえばもう一つのこれ……潜入捜査? って何したの? あんまり詳細が書いてないけど」

 

「そっちは守秘義務がある情報が多いからあんま話せることないかな~。ごめんねぇ」

 

 敵連合へ潜入したことはまだ内緒である。なんせ逃げられたからな。取引で逃がしたんだけど。連合が今後どう動くか不透明……と、いう事になっているので関わりも大っぴらにしない方針になったので、知ってるのは教師陣に捜査に関わった担当者たち……公安と警察のみである。

 

「お仕事ならしょうがないよね! 将来重大な犯罪を起こす可能性のあるグループへの潜入、かぁ~……ど、どんな人達だった? やっぱりこう、やばばな感じ?」

 

「ん~……あくまでボク個人の印象だけどぉ……」

 

 メスガキはどこか遠い目をしてぽつりとこぼした。

 

「普通の、人たちだったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ大体話がまとまったので本格的にインターンの話をしていくぞ。入っておいで」

 

 相澤の声に応えて扉を開けて入ってく来たのは3人の生徒。黒髪の陰気そうな青年。ふわふわした雰囲気の女性。明るくつぶらな瞳をしたマッチョ。

 

「現雄英生の中でもトップに君臨する3年生……通称ビッグ3の3名だ。多忙な中わざわざ時間を割いてもらっていることをしっかりと意識して話を聞き、糧にするように。それじゃ自己紹介をよろしく。天喰から」

 

「……」

 

 鋭い眼光で教室中を睥睨する天喰に生徒たちは気圧された。これが……ビッグ3! 

 

「あの……相澤先生……ビッグ3なんてもはや虚名では……? 俺は壇上に立って偉そうに自己紹介だなんて出来るような立場じゃあない……か、帰りたい……」

 

 緊張していただけだったらしい。くるっと振り向いて黒板に頭を押し付け弱音を吐き始めた。

 

「不思議! 天喰くんここに来る前は後輩にビシッと言ってやらねばとか息巻いてたのにね! 私は『波動(はどう) ねじれ』と言います! こっちの急に日和っちゃった彼は『天喰(あまじき) (たまき)』! 今日は皆にインターンのお話をしてほしいと言われてここに来ました! よろしくねっ!」

 

 こっちはちゃんとした先輩っぽい! と一同が思った次の瞬間、その信頼は一瞬で崩壊した。

 

「ねぇねぇ君どうしてマスクを付けてるの? おしゃれ? それとも風邪? はたまた口に関する〝個性〟だったり?」

 

 すこし空気が緊張した。クラスメイトは皆障子のマスクの理由を既に知っている。その決意に込められた高潔さに感動したことは記憶に新しい。障子が回答しようとした次の瞬間、彼女はそれを無視して別の質問に移った。

 

「あ! それに一番うしろの……轟くん! どうしてそんなところを火傷したの?」

 

 轟のやけどについて知っているのは数名だが、それでも『炎を出す側が火傷している』のはなにか複雑な事情があることは皆分かっていた。すでに「天然っぽーいかわいー」なんて喜べるテンションではない。解答無視と合わせて、無邪気ではなく無神経であるとはっきりした。 

 

「ねぇねぇ! 新斗さん! 貴方の〝個性〟って何でも出来るよね! ドラゴンを作れるなら人間も作れるの?」

 

「ノーコメントで」

 

 ぎくっ、とした反応をして黙り込む波動。静まり返っている教室。メスガキに驚いたのではない。そうなるのが当然、というシラケた空気。新斗黎乃から出てきたのは非常に冷たい声だったが、誰も窘めなかった。波動ねじれにはそれが最近は聞くことの無かった『拒絶されるときの声』だと分かった。また、やってしまった。同級生たちは波動のことを分かってくれているので、もうこういった反応をすることはなくなった。だが、それに甘えていたツケだ。

 

「あー! えっと、俺! 大トリは俺なんだよね!?」

 

 わちゃわちゃと変な動きをしながら慌てて身を乗り出してきたつぶらな瞳をした青年。天喰とネジレチャンのやらかしをフォローしようとしているのだろう。

 

「先輩らしい所ちゃんと見せてくださいね?」

 

「大丈夫! ここから俺が巻き返すんだよね!」

 

 メスガキの硬い声にも怯まず笑顔を向けた彼は、耳に手を当ててくいっと上半身を突き出すというコミカルなポーズをしながら声を張り上げた。

 

「前途──!?」

 

「洋々──っ!!」

 

 メスガキは先程までの絶対零度の声ではなく、楽しそうなロリボイスで元気良く応えた。うたのおにいさんにはしゃぐ幼児か? 

 

「おっ! ツカミは大成功だ!」

 

「意気──っ!?」

 

 メスガキの反撃だ。というより遊びのお誘いと言ったほうが良いかもしれない。

 

「揚々ー!! 電光──!?」

 

 筋肉男はそれにわずかの逡巡も見せず即座に反応し、更にもう一度ふっかけた。

 

「石火──っ!! 暗中──っ!?

 

「飛躍──!! いっちー?」

 

「「団結──っ!!!!」」

 

 二人の声がハモる。イレ先だけは感心した表情だが、他の3年生を含めたその他全員はぽかーんとした表情で固まっている。あっけにとられている1年生とはちがい、3年生の二人は通形ミリオにここまでノリよく返す生徒を初めて見たからだ。

 

「はい、ありがとう! 他の皆は何が何やら、って顔してるよね! でも今のやり取りで俺はいくつもの情報を得たんだよね! 君たちがまだまだ未熟なこと、そして『ホーリーナイト』が既にプロレベルの意識を持ってるってことをね!」

 

 むっ、とした感じの顔になる生徒たち。いきなり現れておかしなコールをしてきた変な人に対する信用などゼロであり、そんな人物に未熟と言われても納得などするはずがない。

 

「まず俺が見たかったのは思考の瞬発力! あるいは想定力と言い換えても良いね! 俺のいきなりのコールに反応できたのは彼女唯一人! その上同一ルールの言葉遊びを返すという高度なレスポンス! 未だ不満顔で固まっている君たちと、柔軟に対応したホーリーナイト! 知識、学力、体力、個性、それだけではなく本来対等なはずの『意識』すら君たちは負けてるってことなんだよね!」

 

 指摘に理解を示すような表情がわずかに混ざりはじめる。っていうかヤオモモと飯田だ。なるほど! そういうことだったのか! と納得顔である。通形はそれがちょっとだけ予想外だったが、予定通り話を進めた。

 

「3年生がいきなり教室にやってきて、わけの分からないことをまくし立て始めてどう思った? 俺が何を言うか、どんな予想をしていた? 分かるよ、何も考えていなかっただろう? どんな言葉を言うか待ってただけ! そんな受動的な姿勢じゃ先が思いやられるんだよね! インターンは指示待ちじゃあダメダメ、能動的に学び取る姿勢がないなら行っても無駄だからね!」

 

 思考停止するな。要はそういうことだ。最近聞いたばかりのそれが、全く身についていないことに気付き恥じている飯田とヤオモモ。他の生徒にも反省の表情が混ざり始め、納得しきれていない生徒も話を真剣に聞いている。

 

「例えばイレイザーヘッド! 俺のコールに対して彼は呆れてたんだよね! 俺が何をしたがってるか即座に理解して……「そういうのはまだ早いだろ」って顔をした!」

 

「ほう……そこまで分かるのか……大した奴だ……やはりビッグ3か……」

 

 この洞察の深さ……間違いない……サー・ナイトアイの弟子にしてビッグ3筆頭……『透過』の〝個性〟を持ち『プロを含めて最もNo1に近い男』と称される雄英生……。ウワサ通りいい指摘だ! ついていこう! 

 

「3年生の俺が呼ばれたから自分の話をしている、つまり3年生レベルの話ってことだから確かにまだ早いとは思う! けど雄英高校の3年生ともなれば求められる水準はセミプロではなく、プロレベルなんだよね! そしてインターンの受け入れ先はともかく、(ヴィラン)が年齢を考慮してくれると思うかい? 「1年生だから手加減してあげよう」なんて敵が思うはずないんだよね!」

 

「せんぱぁい。お名前まだ聞いてないですけどぉ?」

 

「おっと、ごめんごめん! 自分語りはここまでにして、自己紹介しようか! 俺は『通形(とおがた) ミリオ』! よろしくね、皆!」

 

「よろしくお願いしまーすっ! ……みんなどしたの?」

 

 しょんぼりしていて返事を返せなかった生徒たちをメスガキが不思議そうに見ている。相澤はふぅとため息を付いたが、お説教などはしなかった。今は受け止め、受け入れ、消化し、昇華するフェイズだ。

 

「ちょっとお説教ぽくなりすぎたかな! 口だけ男だと思われないように……ホーリーナイト! 模擬戦、しようぜ! 雄英高校最強決定戦だ!」

 

 ミリオの ちょうはつ! 

 

「えぇ? ん~、この期に及んでまだボクに勝てると思ってる人がこの学校に居るわけですか?」

 

 メスガキには こうかが ないようだ……。そもそも通形ミリオは自分より天喰のほうが強いと思ってるし。

 

「だから俺が」

 

「嘘。ボク嘘は嫌いです、先輩。何を持ってボクを欺けると自惚れているんですか? 先輩はボクに勝てるかどうかが分からないようなボンクラじゃないですよね。立ち振舞いも、意識も、肉体も、ボクが見てきたプロ……トップクラスの方々と遜色ないですよ? ホークス・エンデヴァー・ギャングオルカと並んでいても違和感のない水準です」

 

「オイ! 言われてるじゃないか! 勝てるのかい! 勝てないのかい! どっちなんっだいっ! 勝──てーないっ!!ハッ(笑顔)」

 

 腕をぺちぺちしながら自分の筋肉に問いかけたかと思うと右腕をばっと掲げながら情けないことを言うきんにくん。メスガキもクラスメイト一同のようにぽかーんとしたあとくすくすと笑い出した。面白かったらしい。プロのお笑い芸人レベルに洗練されたネタだ。同じことを何度やられても笑ってしまう不思議な魅力がある。

 

「……イレイザーヘッドも自分の生徒がビッグ3の俺に勝ったとなったら嬉しいはずさ! ですよね?」

 

「いや別に」

 

 なにそれ? という感じのシラケ顔の相澤くん。そんな学内での勝敗なんてどうでもいい。イレ先が気にしているのは生徒が何を学ぶかで、喜びは教え子が無事に立派なヒーローとなることである。ちなみに通形のギャグには捕縛布で隠した口元でニヤニヤしていたが話しかけられて即座に真顔を作った。

 

「だと思ったよね! 俺が戦いたいんですけど許可してもらえませんか!?」

 

 通形ミリオは3年B組。つまり1年生の時の担任はブラドキングである。なのでいまいち相澤の解像度が高くなかった。

 

「戦いたい理由を説明しろ、通形。こいつらに何を見せたがっている?」

 

「彼女はまだまだ力を隠していますよね! それを俺が引きずり出します! それを通して俺の言葉に説得力を与えてみせましょう!」

 

「おっ。なかなか面白いこと言ってくるじゃん。ボクは良いですよ、せんせ♡」

 

「……全員体操服に着替えて体育館γに集合。5分で準備を済ませろ。ハイ、行動開始」

 

 滅茶苦茶な指示にも文句一つ無く従う生徒たち。ぶっちゃけ5分で更衣室に行って着替えて体育館γへ、って普通に無理である。大体8分くらいかかって体育館へ集まった生徒たちだが、特にお説教とかはなかった。なるはやでよろ、程度の意味しか無い合理的虚偽だったからだ。

 

「いつでもかかってくると良いよね! カモン!」

 

 体操服になった通形が変なポーズで戦闘の開始を告げる。

 

「それじゃあ遠慮なく」

 

 メスガキの〝個性〟が帯のように伸び通形の全身を包み込む。しかし一瞬の後、地面からものすごい勢いで飛び出してきた通形の拳がメスガキのうすほそボディに直撃……しなかった。

 

「すごい展開速度なんだよね! まず回避しようと思ったのに包まれるとは! それに初見で回避されるとは思わなかったんだよね!」

 

 ひょいと雑な動きで通形の拳をかわしたメスガキはそのまま空中に飛び出した通形をキャッチした……かに見えた。

 

「すり抜ける〝個性〟ですかぁ」

 

 しかしその拘束に意味はなく、そのまま通形は透過して着地した。余裕の表情を見せる通形だが内心は全く違った。

 

(動きが素人すぎる! なんの型もパターンもない雑な動き! なのにとにかく速い! 見てから回避余裕でしたって感じで予測が効かない! ……やる前からわかってたけど……勝ち目がないんだよね!)

 

 当たらないし、当たってもおそらく攻撃力が足りない。ヒーローである以上例えば透過の応用で内蔵パンチなんかはやるわけにはいかない。何故ならば通形ミリオの透過は自身の皮膚の常在菌にも効果が及ぶからだ。つまり蜂窩織炎や菌血症、敗血症などに疾患するリスクは甚大。……簡単に言うと重篤な感染症を引き起こす毒パンチになる。

 

「じゃあこれで」

 

 黒い塊がいきなりミリオとメスガキのちょうど中間ほどのやや高さのある位置に唐突に発生した。謎の物体を警戒するマッチョマン。

 

(なんだ? とりあえず透過で様子見を……引き寄せられる!? こんな事も出来たのか!)

 

 それは『重力球』だった。先程透過した通形が着地したこと……『透過中も慣性や重力の影響を受け続けている』ことに着目したのだろう。ふわっと浮かび上がった通形のマッチョボデーがべしっ! と黒い塊に叩きつけられたあとびったりと張り付き動けなくなる。

 

「うぎぎぎぎ……降参! 高校3年生だけに! なんつって、たはは!」

 

 少しの間通形は脱出できないか色々と試みていたが、試せることを一通り試したあと降伏を宣言した。こんなになっちゃったからにはもう……ネ……。その間も周りの岩山っぽく作られたコンクリートから破片が飛んできている。重力に引き寄せられているのだ。当然通形は予測してたので透過を発動させたが、ぶつかる前に全てが地面に落ちた。メスガキの〝個性〟が叩き落としたのだ。見学していた生徒たちは引き寄せられないように皆踏ん張って耐えていたようだ。

 

「重力……ってやつなのかな? やられたね! 俺の負けだ!」

 

「んー、でも宣言通り使ったことない力を引き出されちゃいましたね」

 

 メスガキは不服そうだ。負けだ、などと通形は言っているが、その実まんまと目的を達成しているのだから。一方通形は有効な能力を発見したら即座に使用するメスガキの決断力に感心していた。足裏だけは透過していなかったのだが、一瞬浮いてしまえばもはや抗うすべはなかった。通形の挑発に勝負中は一切頓着をしておらず、最適行動をとったわけだ。

 

「自分の言葉には責任を持たないとね! ところで俺の『透過』のタイミングはどうやって見切ったんだい?」

 

 いちいち明言しなかったが通形は透過のときに口を噤んでいる。そうやってあからさまに呼吸が鍵だとアピールするのはブラフを混ぜるためだ。「口が開いてるから透過していない」だとか「口を閉じているから透過中だ」といった勘違いを誘発するためだ。まぁそもそも隠すのが難しく、プロになれば周知されてしまうであろう条件であるがゆえの苦肉の策だが、それでも1年生に見破られるとは思ってなかった。

 

「空気中の埃がすり抜けたのを見て発動を確認しました」

 

 通形も自分の『透過』が『重力』を無効化できないことは身を持って恐怖とともに知っていた。だから『重力』と『透過』の発動順が逆ならば何をされたか気づき、脚力で距離を取ることが出来たかもしれない。それを踏まえての発動タイミングだったのだろう。周囲の物を利用してその場に留まる、ということが透過中は出来ない。ついでに大気も透過している通形は他者より動かしやすい。『浮かばされる』タイミングで発動された時点で詰んでいた。引き寄せる力自体は観戦者の距離ならばぎりぎり耐えられる程度……非常にスマートな解決方法だ。

 

「シリョクー! 俺に想定外なんてめったに無いと自惚れてたけどまだまだ世の中は広いんだよね! 勉強になったよ!」

 

 なお通形は全裸である。話している最中も全裸。メスガキが全然気にしないので通形も頭から抜けている。

 

「通形。終わったなら服を着ろ」

 

「こりゃ失礼! ちんちん見せないように頑張ったけど張り付いてるときはそんな余裕無かったから見えちゃったかな! たはー! ……あっ……本当にすみませんでした」

 

 女性陣が顔を真っ赤にしているのに気付き真剣に謝罪する通形。そっかぁ……ダメだったか……。全員やらかしちゃったな……。しくじり先輩……。

 

「さて! 俺の〝個性〟についてはホーリーナイトに暴かれちゃったわけだけど、どう思った? 良い〝個性〟だと思ってくれたんじゃないかな?」

 

 全員がそう思っただろう。メスガキと『戦闘』が成立したのを生徒たちは初めて見た。体育祭のごとく魅せプではない、塩展開量産技である拘束を使ってなお戦闘になったのだ。生徒たちは口々に彼の〝個性〟を褒め称えた。

 

「ワープ? みたいなのしてましたけどあれはどういう原理なんですか?」

 

 クソナードは気になったことを質問してみた。いつの間にかメモを取り出していて準備万端だ。

 

「あれは俺の〝個性〟……『透過』の応用さ!」

 

 通形は自分の〝個性〟の原理を説明した。全身があらゆるものをすり抜けること。ただし重力のみは例外であること。そのため迂闊に発動すれば地面……地中に落ちてしまうこと。そして質量のあるものは重なり合うことは出来ないらしく解除をすると地面からはじきだされること。修練によりその弾かれる角度を調整できるようになり技に昇華したこと。

 

「今でこそ有効活用できているけど鍛え始めた当初は全身あらゆるところをぶつけまくってアザだらけになる有様だったんだよね! だから当然入学当初の雄英での成績はビリッけつ! そんな俺がなぜ今ビッグ3なんて過分な呼ばれ方をされるまでに成長できたのか? その答えがインターンなんだよね! 君たちに色々偉そうに言ったけど、それらは全て過去の俺に言ってあげたいことなんだ!」

 

 通形は続けて語る。自身の個性に最も重要だったのは予測。そして予測を成り立たせるのは経験。その経験を得られるのがインターンだった事。そして自身がどのような〝個性〟だったとしてもヒーローとしてやっていくなら相手の〝個性〟の予測は必須であること。

 

「危険はある! 時には自分や他人の死すら身近に感じるだろう! 無責任にやれ、と言えるようなことじゃない! それでもあえて言うよ! ヒーローとして強くなりたいなら! 行こう! インターン!」

 

 ぐっ! と拳を握りしめて話を締める通形。そこにメスガキがすっと手を上げたので通形は爽やかな笑顔で「どうぞ!」と促した。

 

「ボクからも一つ。先輩の言う通りインターンは職場体験と違って守ってもらいながら学ぶわけではありません。一人のヒーローとしての行動、つまり社会人としての振る舞いが求められます。学生気分で浮ついて先方に迷惑をかければ先生方を含めた雄英高校そのもの、すなわち全校生徒のみならず卒業生の方々やこれから入学してくる未来の後輩たちにも迷惑がかかることを重々認識するように!」

 

「おっと、それも重要だよね! いろんなヒーロー事務所が雄英生を快く受け入れてくれるのは諸先輩方がしっかりとここでの教育の成果を示し続けたからだってこと、忘れないで欲しい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん、通形……」

 

「何の謝罪かな! 分かんないんだよね!」

 

 本当に分からないわけではない。気にするな、と言っても気にしてしまう彼女に対する気遣いだ。

 

「ミリオ、助かった……あの子のあの眼……今思い出しても震えが来る……」

 

「環ー! ビシッと言うんじゃなかったのかよー! 俺が全部やる羽目になって話の持っていき方が強引になっちゃったんだよね!」

 

 通形は咎めるような口調ではあるが、ぺしっと天喰の肩を叩く態度は明らかに親しみと友情が滲んでいた。元々は天喰が「うちのミリオが最強だ」的に持ち上げてメスガキとのバトルに持ち込むつもりだったのだが、その準備としてメスガキをにらみつけるしたらマジックコートで跳ね返されて弱体化してしまった。

 

「こう……バチバチに演出しようかと思ってたけど失敗だったんだよね!」

 

「言うはずだったセリフを全部忘れてすまない……頭が真っ白になってしまった……」

 

 下級生のために何をしてやれるだろう? そう考えたときに壁になってあげるのがいいと思った。だからこう、鼻持ちならない感じにして発奮させようと思っていたのだ。しかしメスガキのにらみつける返しに天喰は事前に考えていた挑発セリフの数々がすべて吹っ飛んで置物になってしまった……。 

 

「うー……またやっちゃったよぉ~……なんで私ってこうなんだろう……」

 

 それをフォローしようと前に出たのが波動だった。しかし彼女のノンデリ発言は演技ではなく普通に天然である。つまり単に空気を一旦切り替えようとしただけだったのだが、いつものクソカスノンデリ無神経質問が出てしまいメスガキのビッグ3への期待度はマイナスに突入。さらに自分に投げかけられた質問も腹立たしかったので「もうお前らの話は聞いてませんよ」という態度になってしまった。それを神がかり的な先輩ムーブで巻き返したのが通形だ。

 

「まぁ……今まで散々言ってきたから俺から言うことはないんだよね! 今後も頑張っていこうぜ!」

 

「仕方ない……人にはどうしても変えられないサガというものがある……とはいえ少しずつマシになっていると思う……そんな事情は相手には関係がないが、俺達は分かってるから……」

 

 彼女の好奇心は悪意のあるものではないので、友人である二人は伸び伸びと振る舞わせてあげたいし、周りの理解を得られたあとは仲が深まるきっかけにもなるためなくしたほうがいいとは思わないが、初対面で発揮するのは今回のようにハイリスクだ。入学当初と比べたらこれでもかなりマイルドになっているので通形や天喰だけでなく同学年の生徒たちは好意的にみてくれるのだが……。

 

「俺のギャグには笑ってくれたからあの子も悪い子じゃないよ! きっといつか分かってもらえると思うし、そのための努力と助力を俺も惜しまないよね!」

 

「その……今回は順番が良くなかったかもな……顔の下半分を覆うマスクに顔面の火傷痕……いかにもセンシティブな事情がありそうな部分だ……他の質問のあとなら悪意のない好奇心だからと説明して分かってもらえる目もあったとは思うんだが……その2つのあとだからおそらく最大限に悪く捉えられたんだろうな……」

 

 ねじれちゃんは他にも沢山気になっていることがあったのだろうことが二人には良く分かっていた。まだまだいっぱい質問するつもりだったのだろうし、それら全てが今回の3人にした質問のようなクソカスノンデリ無神経ムーブだったとは思わない。二人はねじれちゃんの行動を問題視していないわけではない。というか本人も色んな人を怒らせて孤独に過ごしていた時期のほうが長いのでダメなことは分かっている。いや、ダメな事しか分からないと言ったほうが良いかもしれない。どれがダメだったのか、分かっていないからだ。つまりやらかしたら今回のように必死に我慢して無言で黙り込むしか出来ない……。そうやって頑張ってることを二人は知っている。

 

「マスクのこと聞いた時点で教室の空気がピリッとしてたんだよね! その時はちょっとくらいひりついてたほうが次の話に繋げやすいと思ってたんだけど……つまり止めなかった俺の責任だよね!」

 

「そもそもヘイト役は俺が引き受けるはずだった……というか俺が止まらなければ波動さんが前面に出る必要もなかった……すまないミリオ、波動さん……」

 

「ううん……二人ともほんとごめんね……私もまだまだ全然そういう機微が分かんないよぉ……むずかしいぃ……」

 

 インターン先で既に一人のサイドキックとしてサー・ナイトアイに頼りにされている通形と、まだまだ面倒を見てもらっているところのある天喰と波動の差が顕著に出たとも言える。メスガキが初めて接したサポート科の3年生の先輩は非常に面倒見が良くメスガキにも好意的で思いやりがある上に、既に自立し自分の世界観を確立した素敵な生徒だった。なのでメスガキは上級生、特に3年生に幻想を持っていたためギャップで余計ひどく見えたところもある。だが、先輩と言っても彼らもまだまだ未熟な雛鳥でしかない。このように失敗を重ねて少しずつ成長していくのだ。それが出来るように雄英高校は今日も生徒たちをときに厳しく、ときに優しく、健全に育てるように見守っている。




独自設定とか

・痛々しい祈り:信じたいのだ。
・オールマイト辞退:なんかすごい公安がかっこよく盛り上げてくれると思います。
・せいぞーんせんりゃくー!:スリルジャンキー。
・個性の母:無個性の八木俊典が参考にできる『偉人』。
・役立たずの木偶の坊:こたえられないなんて、いやだ。
・海外の敵犯罪率:まぁ下がってるんじゃないかな。これからまた上がりまぁす。
・普通科:なんか作中だと補欠扱いっぽい演出だけど将来的にヒーローを顎で使う役職に就くのはこっち。
・犬先生:怒ってないので敬語で喋る。
・パインちゃん:パイレーツクイーンの略。ぱいぱいぱいんぱいん。
・I・アイランド:メスガキはフリーパス。
・かわいーキャンセル:上鳴くんが火傷の事情を原作より詳しく知ってるので……。
・人間も作れるの?:サポ科の先輩との出会いがなかったらノーコメントじゃなくて結構ひどい返しをしたと思われる。我慢した。
・ネジレチャン:ごめん……でも初対面でメスガキと意気投合できるタイプじゃないから……。
・先輩らしい所ちゃんと見せてくださいね:前二人への嫌味。
・前途ー!!?:多難ー!他のやつは意気消沈・電光朝露・暗中模索・一知(いっち)半解。そういう言葉遊び。
・お名前まだ聞いてないですけど:貴方だけは覚えておきます。前二人へのネチネチした嫌味……。
・どっちなんだいっ!:パワー!!
・ミリオだけB組:協調性があるからな!
・重力球:13号先生といちゃつきながら身につけた。
・ミリオのブラフ:原作でも「ときに欺く!」って言ってるからやってると思われる。
・ミリオちんちん:でかい。
・かっちゃん:話のあとミリオに挑んでボコボコにされました。かわいい。
・他の皆:腹パンなし。必要ないくらい「すげえ」って思われてる。
・社会人として~:インターン行ってるのに出来てねえやつがいるよなぁ?というネチネチした嫌味……。
・ミリオ:メスガキの嫌味は全部わかってる。
・マジックコート:へんかわざを反射するわざ。
・ビッグ3:まだ学生やし……。
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