エイリアンは人間になりたい   作:にしきだ

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媚びれ!キモカワの地位を手に入れろ!

 戦士ユードリックに手当を行い、一先ずは危機を去った『夜露の誓い』専属運び人のルカは『同胞喰らいのリイシャ』に敵意がないと判断し、次いで魔術師リトリーの流血部位を消毒した。

 

 なおリイシャはその間も腹を向けワシャワシャしていた。リイシャはそれが一番の媚び方と確信していた。大ハズレである。

 

「すまねぇなルカ、リトリー……。俺があの時トラップを踏みさえしなければ……」

「良いんだユードリック。むしろ僕を庇ったせいで君が」

 

「イチャイチャしてるとこ、もーしわけないけど。アレ、どうするの。リイシャよアレ」

 

 リトリーはリイシャを指差すと、関心をこちらに向けているのを理解したのか、よりキモい面()をこちらへ向けてくる。それが許されるのは哺乳類であり、カブトワームは決して該当しない。

 

「命の恩人ではある。だが警戒しない理由にはならない。なんなんだあの動きは」

 

 ユードリックのその言葉にリイシャはショックを受けたかのように動きを止める。

 

「襲ってこないなら早く逃げましょ。ルカ、覚えてるでしょ?」

「うん。記録(・・)してある。香草もまだあるからモンスターを避けながら帰れると……思う」

 そう言ってルカはポーチから入らないであろう大きさの松明を取り出す。

 そう彼らはこれまで照明を使っていない。リトリーによって召喚された光の妖精が辺りを照らしていた。

 

 そしてルカの才能(ユニークスキル)輝く世界をあなたへ(ブルー・デルフィニウム)

 他者が必要と言ったもののみ、自分が所有している土地の広さと同じだけ虚空に収納、自分が歩いた周辺を詳細に地図へ記録出来る【専属運び人】である。

 

「言い切りなさいよ……。あたしもまだ本調子じゃないから、火球連弾(ファイア・バレット)を3回……4回唱えられるくらいかしら」

 

「ブラッドウィドウの糸がまだあるなら、俺が盾になれる。今ので多少は慣れたみてぇだ。お前らを無事に帰らせなきゃ親父に顔を見せれねぇ……。っておい!」

 

 ユードリックは静かに指を向ける。パキ、ボキ、という音を響かせながらブラッドウィドウを捕食するリイシャの姿があった。

 それを見たルカは息を呑み、小さく声を出す。

 

「あの、さ。アレが襲ってこないのって、ご飯が他にたくさんあるからだったり、するかな?」

 

 同胞喰らいのリイシャ――その名前を彼らは思い出す。

 そして同時に考える。さっきまでの動きは自分たちを油断させるものではないかと。

 酷い悪寒が彼らを襲う。冷や汗は体温を奪い、パニックを促す。しかし彼らは優秀な冒険者である。

 

「なぁ、俺の腕に巻いてる糸って何回使えそうだ?」

「…恐らく、あと1回だけ毒を消してくれる。でも逃げれるかな。それにアレの毒の話を聞いた時がない」

「……ねぇ、私を置いていかない?」

 

 カブトワームは寄生生物だ。そして雄より雌を好む。――それは何故か。

 雄にも寄生はする。だが雄では幼体が育ちにくく増えても5匹だ。しかし雌であれば幼体が30匹は育つ。

 リトリーの発言は、自分を捨てて生き延びろ。優秀な苗床をカブトワームが逃す理由がない。という意味だ。

 

 リイシャがそれを聞いて、理解している。

 その可能性を彼らは考慮していなかった。

 

 

 ★

 

 

 ふぅ……。無視、ですか。俺氏最高の媚びに目もくれず居ない存在として扱うわけね。

 ふーん。そうかそうか君たちはそういう奴だったんだな。もう二度と俺の媚び姿を見れると思うなよ畜生め。

 

 ユードリックと呼ばれる戦士というよりモンクと言ったほうが良さそうな筋肉マッチョメンに、でっかい背嚢背負った主人公っぽい雰囲気醸し出すイケショタなんだけどさ。ほんま出来てるんか?ってくらい近いのなんなん?

 てか3人とも革装備だな。溶けない革着込んでるのか?それとも駆け出しパーティーなのか?

 どちらにせよアレに出会ったら拙いよな〜。防御力ヨワヨワに見える。革じゃ防げないだろうし。

 

 おん?リトリーって名前のスレンダー美少女が本を方手にヤレヤレしてる。その立ち位置イケショタがやるところじゃねぇの?

 

 てかなんだそのレザーアーマーは。超本格的に見えるんすけど。男らよりレザーアーマー来てるじゃないですか。おいまて!なんだその下半身!

 もしかしてあれ!ハイレグレザーアーマーすか!?覚悟してきてる人だ……。眼福眼福。

 

 ほんなら男らの四肢に集中してレザー装備されてるのはなんぞや?胴体部分とかすっぽり空いてるのには理由があるはずだよな。

 元々何かを装備していたけどあえて外した感じ? 

 

 てかさ!俺!異世界の言語理解できるぞ!よっしゃ〜!盗み聞きしますよ。何何?糸があればなんとやらだって?

 あれか?高級そうめんみたいな口当たりの蜘蛛の糸か?よっしゃおじさんがとったるけぇの!蜘蛛は何度も捌いちょったからな!

 

 ちゃらっちゃっちゃらちゃ〜ら〜。(オープニング) 

 皆様こんにちは。リイシャによる蜘蛛クッキングのお時間です。本日の食材はこちらっ! そこそこデカイ蜘蛛です!

 こちらの蜘蛛ですが食材としてとても優秀で、ほとんど余すこと無く頂けるんですよっ!

 

 そして今回頂くのは、そうめんやっぱり蜘蛛の糸でお馴染みの蜘蛛糸!というわけで糸疣(いといぼ)から糸線にかけて捌いていくわよっ!

 

 ねぇ、ねぇリイさん。なんですかシャさん。これって人も食べれるのかしら?あたしが知るわけないでしょ!あたしも食べれるんだからきっと食べれるわよ!

 

 それで、いいかしら。切るべき場所はここ!分かるかしら?生殖口と肛門の間に、ちょっと膨らんだ所があるでしょ?

 やだ〜。やらしいのねリイさんったら。ちょっと、ちょっとあんた。何言ってんのよ。なによっ子どもたちが見てるでしょホントあんた。わきまえなさいよっ。わきまえるのはあんたでしょ!

 

 ここのね。先端をちょこっと切っちゃいます!あらやだっ!白いのが出て……固まったわよ!後はコレをちょっと引っ張ると、ほら!糸が出てくるわよ!それじゃこれをまーきまき、まーきまき、巻き取ります! 

 えーっ。意外と簡単に出来るのね!

 

 じゃあ、これをあの子達にプレゼント、しちゃいましょ!

 あー。蜘蛛の内臓弄るのキメぇ〜。頭の中でモリモリクッキングしてないとおかしくなっちゃうよ。(1敗)

 

 さて、こいつを持っていけばいいよな〜。

 ってなんや置いていけとか話してんぞ!?仲間割れすか!?

 

 おーん?もしかして俺の事、アレと一緒だと思ってんの?

 

 あー。やっぱ俺って見た目アレなんだ。あんなキモいのと一緒にしてほしくないんだけど。

 初心者パーティーみたいだし、助けたい気持ちはあるけど、アレと同じ扱いなのか。

 

 なんか萎えるなぁ。あっちも悪気は無いだろうけど、知性体として化物扱いされるのは心に来る。そっかぁこれが理性ある化物の気持ちかぁ。やだなぁ。

 

 気を取り直して、ほら蜘蛛の糸じゃよ。これが欲しかったんでしょ。針に乗っけて渡して終わり。後はそんなに手伝いとかせずに着いてこ。

 旅は道連れ世は情けだ。カニ退治したし蜘蛛から糸も取ったし理解してくれねぇかな?俺文字も書けないからどう伝えればいいんだろうな。

 

 ちょっとテンション下がってるけど、蜘蛛の糸受け取ってくれたし、……もうちょい捌くか。

 

 ん?

 

 

 ★

 

 

「「置いていく訳が無い」」

 洞窟に声が響く。

 

「そろそろはっきり言っとかねぇとな。アイツの事、好きなんだろ?思いを伝えられずに死ぬなんて嫌だろ?」

「そうだよ。朴念仁とか言われてる僕でも分かるよ。彼の事好きなんだなって」

 

 二人は笑みを浮かべ、声を出す。

 

「「我ら【夜露の誓い】は、幸せの探求者であり続ける。皆が幸せになるよう助け、歩を進める最高のパーティーである」」

 

「……二人とも……ありがと……」

 消え入る声での礼は、A級冒険者である2人の耳が零さなかった。

 

「「どういたしまして」」

 しかしその和やかな雰囲気は砕かれる。

 

「LoL」

 

 人体から発声されない木琴の様な鳴き声を響かせ、ソレは近づいてくる。

 

 そして不思議では無いだろうか?何故A級冒険者であるこの3人がすぐに逃げないのか。

 ソレがとてつもなく強いモンスターであるのに、まるで道化のように扱い、無害だと思い込んでいる。

 思考逃避、思い込み、様々な言葉はあるが正解は、人間に寄生した際にカブトワームが生じさせたとあるフェロモンによるものである。

 

 安寧(あんねい)フェロモン。

 

 カブトワームが持つ固有スキル「媚薬生成」で、そのようなモノが作れるのである。

 これには恐怖心、不安を静め安心感をもたらす効果があり、それにより警戒心が無くなっている。

 

 リイシャにとってそのフェロモンは無意識に発しているものであり、強力なデバフとも言える。

 そして冒険者3人は何の疑問も持たずにブラッドウィドウの糸を受け取った。その時、リトリーは何を考えたか声を上げる。

 

「ね、ねぇ!あなた、もしかして、私達の言葉が分かるの……?」「LoL」

 

 返答があった。この世界において意思疎通が出来る事はとても重い意味を示す。

 言うならば新種族「リイシャ」

 

 オークという種族が居た。彼らは人を襲い弄ぶモノと呼ばれていたが、知性が有り会話が出来た。

 現在彼らはニルドランド神聖帝国から海を越え、黒睡蓮共和圏のとある港町で暮らしている。

 

 彼ら人間の冒険者にとって、リイシャと呼ばれる新種族を発見した事は、罪深い過去からの裁きとも言える出来事に変わった。

 

「……こういう時どうするんだったか」

 筋肉は知恵に乏しい。この状況の中、彼女が居たことは奇跡と言える。

 

「ナナリー様とリリア様に、御加護をお願いしなきゃいけない」

 アドリブに強いルカはリイシャに話しかけ、問を投げかける。

 

「えーと。ごほん。言葉は理解できるんだよね?僕らと一緒に外に出ない?」

 

「Li,Sya?」

 

 リイシャ自身、何が起きているのか分からないが、とりあえず返事をした。渡りに船であったので。

 

 ■

 

「ラクナ様!お待ちください!」

 巫女服と修道服が混ざったような衣装を纏ったエルフが、大理石の床に音を立てながら自分よりも背丈の低い女性を追いかける。

 

「待ちません」

 その女性は鎖鎌を腰に持ち、スパイン自治区製の小型無線機を耳にかけた。

 

「再臨祭は如何なさるおつもりですか!?貴女様程の方が行くような件ではありません!」

 

「既にナナリー様とムカデ様に今年はお伺いできない事、お伝えしております。」

 

「そんなっ……それでも、リ・リエの王とニルドランドの王も参列するのです!貴女様が居なくては!」

 

 薄緑色の指を自分に向け、ラクナは返す。

 

「たかが、王でしょう?それに、あの子が珍しくお願いをしてきたのです。アレが進化するか見届けてほしいと」

 

 アナタは神の啓示を無視なさるのですか?

 ラクナのその言葉にリ・リエのフォーム枢機卿は口を閉じるしか無かった。




ちょと短いし遅くなっちゃった。これも全て創作意欲よりも破壊意欲が増したのが原因です。
まだ破壊意欲が残ってるけど更新頑張りやす。
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