トリップした先は、男女平等な世界でした。   作:亜豆

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前のを消して新しい話にしました。


三話 千秋と酢豚と黒兎

 

 

 

「いやー、疲れたなぁ〜」

 

 

 

久々の重労働だった。

肩を回せばゴキゴキと自分でもビビる音が鳴る。

 

 

 

「ごめんね、一夏くん。部屋の修理(あとしまつ)手伝ってもらっちゃってさ」

 

「いや、世話になるんだ。これくらいやらなきゃな。……でもさ、あんなやつ(無人機)があるなら、俺、必要無かったんじゃ……?」

 

 

束さんが修理を始めると同時に何処からともなく現れた全身装甲(フルスキン)の黒いIS。

千秋曰く無人機らしいそのISは束さんの命令を受けながら、部屋の修理を開始。あっという間に部屋を新品同様にしてしまった。

そして俺はそんな無人機のサポートをやらされた。

重い器具を持つだけという簡単で厳しいサポートの結果は、ダルすぎる腕とゴキゴキと鳴る肩が物語っている。

 

因みに今は二人で俺の日用品を買いに行った帰りだ。

女子に荷物を持たせるなんて、とは思ったが、「あんたその腕でどうやって荷物持つの?」という言葉に甘えたんだ。

 

しかし、ここは本当にほぼ男女平等の世界なんだと実感した。

街の何処にも男をこき使う女がいなかった。

売り場もデカデカと女性コーナー、というものが無かった。

 

 

 

「一夏くん?どうかした?」

 

「わりぃ、なんでもない」

 

 

 

つい考え込んでしまったらしい。千秋が心配そうな顔で此方を見ている。……本当に千冬姉にソックリだ。

 

と、そうこうしているうちにIS学園島に着いたようだ。

 

この世界のIS学園も、首都東京から離れた人工島に建てられており、外見もさほど変わらない。

だが敷地面積は三倍ほと広く、俺がいた世界では十五歳からの入学出来る高校だったのが、中等部・高等部の2つが出来ていた。

 

そして、IS。

この世界のコアの絶対数は768。

確か俺のいた世界の絶対数は467だったから……301多いのか。

なんでも束さんは一回はコア製造を拒否したらしいんだが、ある日からまたコア製造を始めたんだとか。

 

それで、今年度……というか中等部二年は異様に専用機持ちが多いのだとか。

その数ざっと7人……一国に余裕でケンカ売れるな。

 

 

 

「……お?」

 

 

 

視線の先にあるアリーナから爆発音が聞こえてくる。

確か今は夏休みで生徒はおろか教師も残っていないってきいたんだが……

 

 

 

「ああ、小龍とゲオルクか」

 

「?」

 

「夏休み帰省拒否組だよ。まぁゲオルクはもう日本国籍だから違うとして、小龍は戻りたくねぇんだろうなぁ〜」

 

「あの、小龍とゲオルクって?」

 

「織斑一夏と愉快な仲間達のメンバー。二人とも男で、小龍は中国代表でゲオルクは元ドイツ軍人の代表候補生。因みに小龍はチートクラスの実力者」

 

 

 

多分ゲオルクこてんぱんじゃない?と千秋は笑う。

 

ちょっと待て、恐らく十四歳で国家代表⁉︎どんだけエリートだよソイツ⁉︎

それに“織斑一夏と愉快な仲間達”ってなんだよそれ⁉︎

というか千秋、そっちは研究所じゃないぞ?

 

 

 

「気になるんでしょ、行く?」

 

 

 

答えはもちろん、決まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリーナは予想以上に広かった。

今、俺の眼下ではマゼンダと漆黒がぶつかっている。……否、正しくはマゼンダに漆黒がぶつかりに行っている。

 

マゼンダのISは龍のようなシルエットで、背面の非固定浮遊部位に一対の巨大な丸い装備が特徴的だった。

 

漆黒のISは正に軍用機!と言わんばかりの無骨なシルエットで、両肩の大口径リボルバーカノンが特徴的だった。

 

そのリボルバーカノンが火を噴いてマゼンダのISに襲いかかるが、マゼンダのISはそれを軽く受け流し、次の瞬間、漆黒のISがアリーナの壁に叩きつけられた。

見ればマゼンダのISの丸い装備の蓋が開いていた。

 

漆黒のISはジグザグに動きながらマゼンダのISに近寄ろうとするが、マゼンダのISは一定以上の距離を保ちながら漆黒のISを追い詰め、遂に漆黒のISのシールドエネルギーが底を尽き、マゼンダのISの勝ちが決まった。

 

 

 

 

 

「小龍。貴様、また腕を上げたな」

 

「ゲオルクこそ。千冬さんにでも扱かれたか?」

 

「……言うな、教官のあれは、拷問だ…………!」

 

「お疲れ様ー」

 

 

 

二人のISパイロットに親しげに話しかける千秋。

きっと友人なんだろうな、二人も楽しそうに会話している。

 

俺?少し離れた場所でそれを眺めている最中だ。

 

やがて話がついたのか、千秋が二人を伴ってこっちへやって来た。

 

 

 

「小龍、ゲオルク。紹介するわ。こいつは織斑一夏。並行世界のいっちゃんだな。一夏くん、こいつらは凰 小龍とゲオルク・ボーデヴィッヒだ」

 

「へぇ、男の一夏ねぇ。男でも可愛い顔してんじゃん。あ、気軽に小龍って呼べよ!」

 

「ゲオルク・ボーデヴィッヒだ。元ドイツ代表候補生だ。私も気軽にゲオと呼んでくれ、織斑一夏」

 

 

 

 

小龍は砕けた笑顔で、ゲオルクは軍人のように腕を後ろで組んで此方を見ている。

二人とも小柄なのに、纏うオーラのせいか俺よりも身長が高く思える。

 

 

 

「此方こそ、よろしくな!」

 

 

 

そして二人と握手を交わす。

 

しかし、小龍……なんか鈴にそっくりだなぁ……身長含めて……

と思っていたら憤怒の形相の小龍に吹っ飛ばされた。

ゲオは目を丸くしているし、千秋は大爆笑しているし……というかなんで思ってることがバレたんだ⁉︎

 

 

 

「アンタ、顔に出てるんだよ‼︎世界違ってもそこは一華と同じだよな全く‼︎」

 

 

 

そ、そうですか…………

 

 

 

 

 

 

 






長く放置してすみませんでした。
最初に書いた話では後々矛盾が出るなぁ、とスランプになり、思い切って書き直しました。




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