その日の夕暮れ。厳しい訓練を終え、道具を片付けている最中だった。
ふと、隣で汗を拭うロサのうなじが目に入った。
ほつれた黒髪。白く濡れた肌。そこから立ち上る、汗と革と、そして微かな「日向の匂い」のような、ロサ特有の体臭。
その瞬間、ルジェの中の「雄の衝動」が、理性の堤防を決壊させた。
「……ルジェさま?」
ロサが振り返るより早く、ルジェは背後から彼女を抱きすくめていた。
「ル、ルジェさま!?」
ロサが驚いて身を固くする。
当然だ。主君が従者に、こんな場所で抱きつくなどありえない。
だが、ルジェは腕の力を緩めなかった。むしろ、しがみつくようにロサの首筋に顔を埋め、その匂いを肺いっぱいに吸い込んだ。
「……すまない。少しだけ」
声は震えていた。
ロサは、それを「日々の疲れや心細さからの甘え」だと解釈したのだろう。彼女は抵抗をやめ、困惑しながらも、少し照れたように身体を預けてくれた。
「……はい。私でよければ、いくらでも」
その献身が、ルジェには痛かった。
違う。僕は君に甘えているんじゃない。
僕は今、君を「雌」として嗅いでいる。この柔らかい乳房の感触と、君の匂いを脳裏に焼き付けて、後で「使う」ためにデータを集めているんだ。
ルジェは獣のような呼吸音をひた隠しにし、限界までその匂いを貪ってから、パッと身体を離した。
「……ありがとう。落ち着いた」
嘘だった。股間は痛いほどに張り詰めていた。
ルジェは赤面するロサから逃げるように、「先に上がる」と告げて納屋の影へと駆け込んだ。
***
暗がりの中。
ルジェはズボンを引き下ろし、荒い息を吐きながら自涜に耽っていた。
(ロサ。ロサ……)
鼻腔には、まだ彼女の匂いが残っている。
腕には、彼女の柔らかい肉の感触が残っている。
それを燃料にして、ルジェは指を動かした。
これは冒涜だ。
僕を守るために剣を振るってくれる彼女を、脳内で犯し、汚している。
だが、その背徳感がたまらなく興奮を煽った。
「っ、くぅ……!」
従順なロサ。驚くロサ。そして、僕の下で乱れるロサ。
現実の彼女の信頼を裏切るように、ルジェは妄想の中で彼女を貪り尽くし、やがて欲望を地面に吐き出した。
果てた瞬間、ルジェは膝をつき、しばらく動けなかった。
地面に染み込むシミが、自分の魂の汚れのように見えた。
***
翌朝。
ルジェが目覚めると、昨夜の嵐のような性欲は嘘のように引いていた。
「白の波」も「赤の波」も凪いだ、平常運転の朝。
だからこそ、地獄だった。
冷静な頭で、昨夜の自分の行いを反芻させられるからだ。
「おはようございます、ルジェさま」
朝の水汲み場で、ロサがいつも通りに挨拶をしてきた。
だが、その頬はわずかに朱に染まり、昨夜の抱擁を思い出して恥じらっている様子が見て取れる。彼女はあれを、信頼の証だと思っているのだ。
「……ああ。おはよう」
ルジェは、ロサの目を見ることができなかった。
吐き気がした。
あんなに純粋な信頼を寄せてくれる少女に対して、自分は昨日、獣のような欲情をぶつけ、影で自慰の道具にしたのだ。
(僕は……なんてことを)
自分は、平原の豚のような領主たちと同じだ。
立場の弱い者を力でねじ伏せ、搾取し、自分の欲望を満たすだけの獣だ。
「王族だから」「高貴だから」というメッキの下にあるのは、制御の効かない性欲と、身内さえ汚す卑しさだけではないか?
「ルジェさま? 顔色が悪いですが……」
「触るなッ!」
心配して手を伸ばしたロサを、ルジェは反射的に怒鳴りつけて拒絶してしまった。
ロサが傷ついた顔をする。
それを見て、ルジェの自己嫌悪はさらに深まる。
「……すまない。頭痛がするんだ。……一人にしてくれ」
ルジェは逃げ出した。
この平常心に戻った朝の冷徹な光こそが、ルジェにとってはどんな闇夜よりも残酷な断罪だった。
セクシーすぎないかな。R15でおさまるといいけど