この海軍学校に来てから早いもので一カ月がたつ。
戦況が芳しくないため、教育課程はいくつか省略されており、一年ほどで卒業となるらしい。
この一カ月の間に多くの知識を教えてもらった。
まず提督と艦娘の関係性だ。
提督というのは艦娘にとって必要な不可欠な存在であり、提督がいない状況下では艦娘の性能は制限される。
また、提督になるには適正がいるらしい。
提督になるために必要な適正、それが妖精という存在が関係しているという。
適正は四段階に分けられる。
1.妖精を視認できるが、会話や意思疎通は不可能な状態。
2.妖精を視認でき、妖精の喜怒哀楽などそういった大雑把なものはわかる程度の状態。
3.妖精を視認でき、かつ妖精と会話、および意思疎通が可能な状態。
4.妖精を視認でき、かつ妖精と会話、および意思疎通が可能な上、妖精が自然と集まる状態。
この四段階のうち、3以上であれば提督としてやっていけるという。
ちなみに僕は第四段階。
というのもこの世界では圧倒的女性社会。
その為男というだけで特別視される。
ちなみにそれは妖精にとっても同じようで、自然と僕の周りに集まることがある。
「アマハレ、ナデロ」
結構図々しかったりする。
次に現在の日本の状況。
国内向けに話している状況とは異なるようで、戦況は拮抗。防衛線は維持できているものの、前線を押し上げることはできていない。
食料不足の観点から国内では配給制。
物価も以前いた世界よりとんでもなく高くなっている。
ちなみにこの世界の日本の食料自給率は100%を超えており、政府の努力が垣間見える。
石油とかはどうしているのかと思ったら、アリューシャン列島を通じたアメリカとの貿易と政府による徹底管理により、ギリギリ何とかしているようだ。
鉄もリサイクルを徹底したり、貿易でギリギリ何とかしているという。
最後に男女比。
学校に来てから気づいたが、僕が思っていた以上にこの学校は男性が少ない……というか勘違いで無ければ僕しかいない。
詳しく調べたところ、もともと男性の出生率が少なく、女性社会極まれりな状態。
あまりにも少ないせいで男性を保護する法律があるほどで、男性の兵役免除制度まである。
戦況の観点から督職の適性があれば徴兵される現状下でも、男性は免除されるため、学校にはいないのだと。
そのため必然的に僕は孤立する……かと思ったが、思ったよりも彼女たちは男性に耐性があるのか、かなり親しくしてくれている。
勉強面もイフの助けもありかなり好成績を維持できているので、卒業すれば提督コースまっしぐら間違いなしだな。
「あっ雨晴君!つ、次の講義…移動授業だからさ……よければ一緒に…ね……?」
「そうだね。一緒に行こうか。」
最初は男性ということもあり距離を取られていたが、最近では向こうから積極的に話しかけてくれるようになった。
おかげでかなり楽しい生活をおくることが出来ている。
はぁ
……なんだかイフにとても呆れられている気がするが気のせいだろう。
「アマハレドンカン」
「では今日の講義はここで終わります。あ、雨晴君はこの後校長室に来るように」
講義終わりに校長室に呼ばれたのは初めてだ。
何だろうかと思い、校長室に向かう。
ちなみに後ろの方で「あの校長……まさか!」「あの女狐め……」と、怨嗟が聞こえてくる気がするが気にしない方がいいだろう。
「わざわざ呼びつけてすまないね。」
部屋に入ると校長が中央のデスクに座っており、その傍らに女性が一人立っている。
校長の服装は一般的なザ・海軍士官という格好で、その顔からも凄みを感じる。
階級は確か……
元帥です。
あぁそうだ元帥。
「いえいえ。それよりも要件というのは?」
「あぁ。君の卒業後の話だ。」
卒業後の話!まさかもう来るとは!
このタイミングで来るという事は
繰り上げによる早期卒業の可能性が考えられます。
そういう事だ。
現状の日本に余力はなく、現場は戦力がとにかくほしいはず……
それに第四種級の適性を持つものは稀というし、イフのおかげで僕の成績は優秀。そのうえ適正も高いときている。
そんな人材を遊ばせておく余裕などないのだろう。
「君はこの世界に巻き込まれた被害者だ。だというのに無理やり徴兵し、こんな女所帯の軍隊に在籍させている。本当に申し訳ないと思う。そして君は成績、適正ともに優秀だ。本来ならしっかり学習期間を設けたかったが、それも叶わない程、戦況は芳しくない。せめてもの償いとして、君にはいくつか選択肢を用意した。ぜひとも検討して。それと、気になることがあるなら何でも聞いて。」
手渡された資料を読む。
艦隊司令部のエリートコースに補給関係の支部、よりどりみどりといったところか。
だが僕が狙うはただ一つ、提督職のみ。
提督になってリアル艦娘を拝むんだ!
これでもない、これも違う……あった!
提督職!
「これでお願いします!」
雨晴は紙をとり、校長に手渡す。
校長は手渡された紙の内容を見て、すこし考えた後、これで本当にいいのかと再度聞き返す。
雨晴は自信満々にはい!大丈夫です!と答える。
書かれていた内容も深く見ずに。
「まぁいいでしょう。確かにあなたならあの鎮守府を立て直せるかもね。
あ、それと貴方の卒業時期なんだけど、一か月後ね」
ん?今更っとすごいことを言われなかったか?
一か月後?僕まだ入ってひと月ですよ?早くない?
いや、繰り上げ卒業でも半年ぐらいはかからない?
ただでさえ今、二年かけて学ぶ工程を一年に減らしているのに、それを二か月で?
二次大戦とかの兵士の繰り上げも二カ月くらいだったと聞いたことはあるが、彼らはあくまでも兵士。
士官である提督職が二か月ってどう考えてもまずいだろ。
「正式な辞令は卒業の時にまた渡すね。」
「まさかあれを選ぶとは……」
提督職、それは海軍の中で最も人気の低い職種だ。
深海棲艦出現以前はトップクラスの人気だった本職だが、現行の艦娘の管理、保守、運用を行う業務は非常に不人気だ。
業務量も異常なほど多く、給料は高いが仕事上鎮守府から離れることはほとんどできない。
しかもよりにもよってこの鎮守府とは。
ここは前提督が汚職やらなにやらもうマジでほんとにいろいろやらかしまくった結果、艦娘側からの強い要請で提督の着任が拒否されていた鎮守府。
「元帥、彼が男と言えど流石にあの鎮守府は危険では……?」
「そうは言うが、これはあくまでも彼の希望によるもの。私とて、あんな場所に貴重な人材を送りたくはない。」
以前の提督がいなくなってから半年。防衛線は維持できているだろうが、提督の指揮下にない艦娘は力が制限されるという。
いまあの鎮守府がどういう状況なのか知る者はいない。
一応定期連絡は来てはいるが、それをそのまま鵜吞みにもできまい。
「せめて信頼できるものを彼につけるべきか……」
今提督の指揮下に入っていない艦娘の中で、信頼を置けるものを一人呼び寄せるとしよう。
確か提督の指揮下にない艦娘が何人かいたはずだ。
「でしたら熊野はどうでしょうか?」
熊野……確かに彼女は礼節さを持ち合わせており、信頼はできる。今いる鎮守府からもそう遠くはない……
しかし、彼女に彼の護衛が務まるだろうか?
以前話したときに男性経験について聞いたことがある。
その時は確か『そ、そういうことはあまり……話したくはないですわ』とまるで生娘のようなことを言われたな。
うん、彼女に彼の護衛は重かろう。
「いや、今佐世保方面にいる鈴谷を召還してくれ。彼女に任せよう」
彼女の性格から考えると、彼とも相性は悪くないだろう。
それに彼女は男性経験も多そうだ(偏見)。
彼が横須賀鎮守府を立て直す希望となるかはたまた………
一か月というのは早いもので、寝て、起きて、講義を受け、自主鍛錬して、寝て、起きてを繰り返しているとあっという間に訪れた。
繰り上げ卒業のため、卒業式などはなかったが、仲のいい女子たちが壮行会を開いてくれた。
ちなみに何人かからはほぼ無理やりといってもいい形で連絡先を渡された。連絡することはあまりないかな。
まぁそんなことは割と些細なことで、僕は今日、正式に提督となった。
任官にあたり護衛として一人つけるといわれたが、丁重に断った。
だってせっかくの鎮守府、監視の目があるんじゃやりたいこともできないかもしれないからね。
あぁ楽しみだ。鎮守府には誰がいるだろうか。
元帥より渡された辞令に詳細として載っていたかと思われますが?
う、うんそうだね……でも、あの鎮守府は長らく提督がいなかったし、前提督もろくな奴ではなかったようだ。
だから情報の信頼性は低いと思うんだ。
それゆえ実際に誰がいるのかは見た方が早いはずだ。
素直に浮かれていて見ていなかったといえばいいのでは?
うぐっ……まぁまぁいいじゃないか
どちらにしろ向こうに行けばわかるのだから!
はぁ。
溜息やめてよ!僕だって見ときゃよかったって思ってんだから!
校長に呼び出された数日後、廊下にて
「え!卒業?マジで!?」
「そうなんだよ。上は戦況を打開したいみたいで、優秀な人材を遊ばせておく余裕はないんだってさ」
そんな!早すぎるッ!まだ連絡先ももらってないのに卒業なんて!
今まで生きていきて男の人なんてパパ以外見たことないし、ここを逃したら一生独り身!?
それはまずい、何とか雨晴くんを射止めなきゃ!
「へ、へぇ……ちなみにいつ頃?」
「一か月後かな。勤務先とかは機密保持の観点で言えないんだけど」
残り一か月……いや、できるはず!恋愛漫画では年単位かけるのが通例だけど、付き合うだけならそんな時間かからないものもあるし、私ならできるはず!がんばれ私!
「雨晴君、私頑張るから、覚悟してよね!」
「ん?あぁ。」
何か決意めいた表情をしながら、少女は去っていく。
この後結局告れず、連絡先を交換するのが精いっぱいだったという。
前回の投稿から三か月投稿していなかったこと、本当に申し訳ない。
言い訳をすると、12月や1月は年末ということもあり、職業柄忙しく、二月にはPCがぶっ壊れるというアクシデントがあり、あたらしいPCが届くまで執筆が完全停止していたこともあり、遅れました。
そして間もなく新学期シーズンのため、五月中旬まで忙しくなるかも。
投稿できたらしますので!なにとぞご容赦ください!