圧倒的女性社会で提督業   作:針葉樹

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動き出す

佐世保鎮守府 執務室

 

そこでは提督が業務をさぼっていた

 

「ねーねー。何でこんなに仕事あんのー?毎日毎日資源の収支と睨めっこ。僕こんなんやりたくないよー!」

 

机の上に突っ伏して、彼女、奈々華那珂は嘆く。

前の世界では大学生で、主にスポーツ方面で活躍していた彼女には、事務作業は辛いのだろう。

いつもは元気な彼女の透き通った青い瞳は伏せられ、赤色のポニーテールも重力に従い机に接している。

そんな那珂に対し秘書官である川内は苦言を呈す。

 

「駄目だよ提督!夜戦をするにも、事前の計画や資源は大事なんだから!

つまらなくても、頑張んなきゃダメ!」

 

川内はもっともらしいことを述べる。

那珂の影響か、この世界では割とまとも枠になりつつあるのだろうか。

 

「てか、もはややんなくてよくね!?どうせまた横須賀が足並みそろえてくんないんでしょー?」

 

「そ、そうだとしても、こっちの鎮守府の維持業務はしてよ!」

 

奈賀はだるそうにペンを持ち、心底めんどくさそうに手を動かし始めた。

 

「あぁー……この世界に来てもう3年がたつのに、毎日変わんないし、戦局は動かないし………」

 

「た、確かに、横須賀との連携が取れない都合上、戦線の無為な拡大は難しいし、その通りだけど………」

 

川内は自分の胸に手を当てる。

確かに、那珂の言うとおり、戦局に変化わない。それはいい意味でも、悪い意味でも。

大規模作戦には各鎮守府の提携が必須だ。

別に、佐世保単体で反抗作戦や、領土奪還作戦が発令できないわけではない。

だが、成功するかは別だ。

仮に成功したとしても、その後の防衛に必要な戦力が増え、戦線が伸びるだけでなく、攻撃後の充足の下がった部隊を守るための戦力もいる。

それほどの戦力を単独で有するのは現状、横須賀のみだ。

その横須賀は海軍直轄で、戦果を焦り勝手に動き、提督すらいなくなる始末。

 

「あぁ……せめて男、彼氏が欲しいよぉ………」

 

「それは無理だよ提督。この世界に海軍につきたがるまともな男なんていないんだから」

 

そう、軍務につきたがる男なんて、大抵ろくでもないやつばかりだ。

松井大将が、その最たる例だ。

あいつは男というのを十二分に活用し、軍の中枢に潜り込み、様々な分野に影響力を持つ。

 

「それに、提督はその立場上、合コンとか行けないし、お見合いとかも転移者である提督にはないんだから、彼氏作るのは無理だと思うよ」

 

「……いや、いや、わたしは諦めないよ。いつか超絶イケメンが転移してくるかもしれないし!」

 

「………だと、いいね。」

 

川内は諦めるようにそう言った。

そんなことあるはずないが、希望を持つのは自由だ。

仕事をしてくれるのであれば、いう事はない。

 

「よし、超絶イケメン君にアピールできるように、可愛い!すごい!天才!シゴデキ!な奈々華那珂のイメージを強めるぞー!」

 

那珂がやる気を出し、書類に向かおうとしたとき、電話がかかってきた。

那珂は書類とペンを放り投げると、すぐに受話器を取った

 

「はいはーい、佐世保鎮守府の提督、那珂ちゃんだよー!どしたのー?」

 

「ちょ!提督!相手がだれかわかんないのにそんなフランクに話しかけちゃダメだよ!?」

 

『チッ、相変わらずうるさいな、君は』

 

受話器の向こう側からは、心底鬱陶しそうな声が聞こえてきた。

明らかに那珂の声に対する苦情だ。

 

「あ!心愛ちゃん!久しぶりじゃん!どしたのいきなり電話してきて、もしかして寂しくなっちゃった?」

 

那珂の言葉に対し、心愛は怒りを募らせ、声を荒げる。

 

『そんなわけあるか!私が君に対し業務以外で電話をするわけがないだろう!?』

 

「そんなこと言って、本当は寂しかったくせにー」

 

『はぁ……君と話していると時間を無駄にしているような気がしてならないよ……

まぁいい。そんなことより朗報だ、よく聞け。

横須賀鎮守府に新しい提督が着任した。どうやら私らと同じ転移者のようだ』

 

「え!マジ!?僕らとおんなじ転移者なん!?え、それってさ、男!?それとも男!?はたまた男!?」

 

『落ち着き給え、騒音女。男性か否かはまだ分かっていないんだ。

分かっているのは名前と転移者という事だけ。名前は雨晴晶というらしい』

 

「ちょ、騒音女ってひどすぎ!

那珂ちゃんはこう見えても大学ではノーサイレントって言われるくらいに静かだったんだからね!

それに名前が晶だって!?それじゃあ男か女かわかんないじゃん!もう!」

 

『そんなこと、私に言われても困るな。

どうしても気になるなら直接会いに行けばいい』

 

「会いに………そうだね、そうするよ!ありがと心愛ちゃん!僕、今から横須賀に行ってくるよ!」

 

『!?今からだと!?しょ、正気か?横須賀の提督はまだ着任したばかり、あまりに性急すぎるだろう』

 

「そうと決まれば川内!準備して」

 

『ま、まて、話はまだ終わって―――』

 

那珂はその静止を聞くことなく受話器を置いた。

那珂は急いで出かける準備をする。

川内はそんな提督を見て、焦り始める。

 

「ちょ、待ってよ提督!そんな急いで準備して、本気で今から横須賀に行くつもりなの!?」

 

「当たり前でしょ!僕のこの胸のときめきは、一瞬たりとも待てないの!

待ってなさい、雨晴晶!絶対に惚れさせてやるんだから!」

 

「でも仕事がまだ残ってるよ!せめて今日の文と明日以降の人員の手配をしないと!」

 

「そんなん、神通とかに任せときゃいいのよ!それに、この僕のときめきはもう止めれないの!」

 

その後、川内の抑止もむなしく、那珂は川内をつれ、横須賀へ向け出かけた。

留守中の管理はすべて神通と那珂(艦娘の方)に丸投げされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞鶴鎮守府 執務室

 

受話器からツー、ツー、という音が流れる。

それは那珂が電話を切ったことの証明であり、彼女がもうこれ以上聞く必要はないと判断したという意味だ。

執務室では自身の腰まであるオレンジ色のゆるふわロングヘアが怒りに震え、その琥珀色の瞳は軽蔑するような視線を受話器に向けていた。

 

「はぁ……あの騒音女め、一方的に切りやがって!

今度あったら絶対に叩いてやる!グーで顔面を殴ってやる!」

 

この子供のような顔と背丈をした、怒りに震える女性こそ、舞鶴鎮守府の提督、御子柴心愛だった。

心愛は受話器をがしゃんと乱暴に置いた。

 

「あいつのせいでまた計画が延期になるではないか!

知能が足りていないんじゃないのか!?

確かに私は言ったさ、会いに行けって!

だが今すぐなんて一言も言っていないだろう!」

 

心愛は机をバンバンと叩き、怒りをあらわにしていく。

しかし、その体躯のせいで、そこまで迫力はない。

擬音をつけるならペしぺしとか言いそうな威力だ。

 

「それに、人の話は最後まで聞けと何度も何度も言っているだろう!?

なのにあの騒音女は切りやがって!クソ!これだから嫌いなんだ!

前の世界とはいえ、大学生だったならもっと思慮深く行動すべきだろう!?

考えはない、戦術もない、戦略もない、突拍子しかない!

そんな奴が提督をしている事も間違いなんだ!

だというのに、南方最前線だからと有する戦力は第三位!

あんな奴のもとにこの国の海軍戦力の20%も預けるなど!

正気ではない!

こんな調子では海域奪還など夢のまた夢ではないか!」

 

心愛は久しぶりに激怒したためか、肩で息をする。

 

「はぁ……はぁ……ふぅ………はぁ………」

 

「提督さん、その、休憩しません?」

 

由良は荒ぶる心愛に、一度落ち着くためにも休むことを提案する。

 

「………そうだな、そうさせてもらうよ」

 

「わかりました。ささ、提督さん、ソファの方に」

 

由良はソファに提督を案内し、座らせると、コーヒーを作りに行く。

ほどなくしてお茶を作り戻ってきた由良は、提督にコーヒーを差し出した。

 

「ありがとう、由良。少々怒りが高まりすぎて荒れてしまったようだ」

 

「いえ、お気になさらず。提督さんも、気苦労がおおいでしょうから」

 

心愛は落ち着きを取り戻したが、それはそれとして那珂に対する怒りは収まっていなかった。

 

「にしてもあの馬鹿は、本当に焦りすぎだ。

順序というものがあるだろうに……」

 

「えっと、由良でよければ、お話し相手になりましょうか?」

 

「……あぁ、ありがとう。由良」

 

心愛は由良に対し、あったことを話していく。

横須賀に提督が着任したこと。

その提督が転移者であること。

それを聞いた馬鹿(那珂)が先走って横須賀に行ってしまったこと。

話が終わってないのに電話を切られたこと。

 

「なるほど……それで、本来ならどうする予定だったんですか?」

 

「本来なら、提督同士で集まれる日程を調整。顔合わせをしたのち、互いの現状確認などの情報共有を行いうつもりだったのだ。

だから、別にそう遠くないうちに会えたというのに……

だというのに、予定を調整する為に電話を掛けたのに、用件を聞く前に切りやがって………

もうあいつの日程考えず予定組んでやろうかな」

 

由良は心愛の頭を優しく撫で、そのまま膝上に誘うる。

心愛はそれを心地よさそうに受け入れ、目を細める。

 

「お疲れ様です、提督さん。今はいったん忘れて、由良と一緒に休みましょ。ね?」

 

「んぅ……ありがと……由良ぁ………」

 

心愛はそのまま由良に甘えながら、ひと時を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

横須賀鎮守府 廊下

 

僕はあの後龍驤に案内を受け、施設のことを大まかに理解した。

一応日本最大戦力を持ち、海軍直轄、帝都防衛の最前線鎮守府だったこともあり、施設レベルは非常に高い。

具体的に言うと、建造ドックと入渠ドックが全開放って感じ。

食堂も広く、大学のカフェテリアレベル。

寮も一応見たが、元海軍のエリート達が寝泊まりする場だったこともあり、ベットの質はよく、各部屋に冷蔵庫などもある、ちょっとしたホテルのようだ。

この世界でも海軍さんは贅沢なんだな。

船だけでなく寮まで完備とは、陸の大和ホテル……てかただのホテルか、もはや。

その後、横須賀鎮守府の艦娘を集め、着任式を実施。

みんな黙って静かに聞いていてくれたみたいで、何事もなく着任できそうだ。

そう、思っていたのだが………

 

「ひゃ!え、て、ててて提督!そ、そそその今日はお日柄もよく、えっと、その、いい天気だな!

て、そうじゃない!えっと、えっと、お、おはようございます!

その、オレは、用事があるので、失礼します!」

 

………あの天龍が、すれ違っただけであれほどおびえ、焦り、逃げ出すとは。

どうやら僕は気づかない内に艦娘たちに恐れられる存在となっているようだ。

大淀も………

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『あ、大淀!確認した事項があって!』

 

僕は大淀に声をかける。

その瞬間、大淀は僕から顔をそらす。

 

『ひゃ、ひゃい!ど、どこでしょうか!』

 

『この報告書なんだけど……』

 

僕は大淀にも見えるように、彼女の隣に行き、互いに報告書を見れるようにする。

すると、大淀は何もしゃべらなくなる。

不思議に思った僕は、大淀に声をかけた

 

『大淀?どうしたの?』

 

『ひゃ、あ、う………わた、し、は………』

 

そのまま大淀は倒れた。

 

『え、ちょ!?大淀!?大淀―!!!』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

て感じで、やたら怯えていたしな。

 

 今日から朴念仁と呼びますね

 

え、何で何で!?僕別に不愛想じゃないし、無口な方じゃないでしょ!?

 

 黙れ朴念仁

 

ひ、ひどい!

こんな扱いを受けたのは初めてだ!

ま、まぁそんな感じで、艦娘たちからは謎に恐れられている。

仲良くしてくれる艦娘なんて、一部の子ぐらいだ。

具体的に言うと海防艦や、潜水艦、一部の空母、戦艦。

重巡軽巡は殆ど僕を恐れ、駆逐艦も大半に避けられている。

 

「あ、司令!おはようございます!」

 

「おはよう択捉」

 

歩いていると、択捉から声を掛けられた。

やはり、海防艦はかなりフランクに接してくれるようだ。

しかし……あれだな。こうしてみてみると、択捉を見てるとなんか、従妹を思い出すな。

僕は択捉の頭を無意識に撫でていた。

 

「んへへ、司令の手は暖かいですね」

 

択捉は心地よさそうに頭をこちらに預けながら、甘えてくる。

そして、気が付かなかったがどうやらもう一人、佐渡がいたようで、不満しかない瞳でこちらを見詰めながら距離を詰め、頭をぐりぐりと押し付けてきた。

 

「むぅー!司令!佐渡様もなでろ!えとだけとかずるいぞ!」

 

あぁー……可愛いなぁ………。

マジ従妹みたい。癒されるわー。

僕は佐渡の頭もなでる。

えへへと言いながら甘えてくる佐渡。

目を細めながら、体をこちらに預け甘える択捉。

全く、海防艦は最高だぜ!

 

 ペドフィリアですか

 

ちゃうわ!そんな目で見てねぇ!

猫とか犬とかに向ける感情とおんなじ系統だわ!

 

 !?人を犬猫などの動物同然ですって!?

 

ちげぇわ!そうじゃねえ!庇護欲のことを言いたかったんだよ!

 

 つまり幼い子供を庇護(監禁)したいと……?

 

ち!が!い!ま!す!

イフお前わかって言ってんだろ!

 

 今後、貴方のことは小児性愛者と呼びます。

 

まって!やめて!

てかほんとに違うから!

 

「司令?どうかしましたか?」

 

「………いや、なんでもない。

少し、考え事をしていただけだ」

 

その後、僕はほどほどに二人の頭をなで、移動を再開する。

今日の予定は倉庫の資源情報の精査だ。

僕は倉庫に向け移動をし始めた。




奈々華那珂 
佐世保鎮守府の提督。某アイドル系軽巡洋艦と同じ名を持つが、無関係。
前の世界では大学生をしており、年齢は23になったばかり。      
一人称は僕。性格は明るい元気っこで、割と馬鹿。      
髪色は赤。長さはミディアムで、後ろでポニテを作っている。身長162。
目の色は水色。
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