TS少女のヒーローアカデミア   作:ネコ023

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4.爆発的襲来

 

 緑谷と親交を深めつつ、少し早めの肉体強化を始めて半年が経過した頃。

 もはや習慣となりつつある筋トレやトレーニングを済まし、個性を用いた訓練をしていると河川敷に思わぬ来客があった。

 

 いやまぁ、そのうち現れるとは思っていたけれどな。

 

 毬栗のように刺々しい頭髪と、両手から絶えず繰り返される小規模な爆発。土手の上からこちらを見下ろす姿からは不機嫌さがあからさまに見て取れた。視線で人が殺せるなら、きっと数百人は殺ってる……。

 

 そんな彼は、ズンズンと大股で近づいてくる。

 

「おい、デクッ! どういうことだっ、そりゃぁッ!? あぁ?」

「か、かっちゃん……」

 

 ドスのきいた声で緑谷との距離を詰め、流れるように胸倉を掴み上げる。

 マジかよ一切の躊躇すらなかったぞ?

 

「個性使ってたよなぁ!? テメェは無個性のはずだろッ!?」

「そ、それは、僕自身の個性じゃなくて……」

「じゃあ、どういうことだ!?」

 

 彼の名は爆豪勝己。

 緑谷の幼馴染にして、『無個性』を理由に彼を虐めていた虐めっ子。自尊心の塊みたいなやつで、あの緑谷でさえ『嫌なやつ』とはっきり明言したような存在だ。

 

 実際、爆豪が行った所業は結構ヤバくて。

 蔑称を付けるのは序の口で、私物の爆破や暴言は当たり前。

 挙句の果てには、自殺を促すような発言までしてた。

 

 コイツ、本当にヒーロー志望か? って首を傾げたくなる言動と問題行動。普段はそれなりに落ち着いて……落ち着い……。いや、普段からこんな感じかも。

 

 ただ、根底にはオールマイトへの憧れもあるみたいだし。

 生まれながらの邪悪ってほどヤベー奴ではないはずだ。

 

 実際、その言動や行動で後に登場する『ヴィラン連合』から直接のスカウトを受けるけれど、『オールマイトに憧れた』って一蹴してたし。

 

 緑谷さえ関わらなければ真っ当なヒーロー志望。……なんだと思う。

 

「オレの個性のおかげだよ。オレは個性を付与できる」

「あぁ!?」

 

 そろそろ緑谷が限界そうだと横から声を掛けてみれば、ギョロっと人相の悪い顔がこちらを見据えた。

 

 漫画でも随分凶悪な顔してたけど、リアルで見ると尚のことヤバい顔してるな。ビキビキと目を吊り上げて、こっちを見下すその姿はとてもじゃないがヒーロー向きとは思えない。

 

 ヒーロー目指してるなら、もっと優しい顔してろよ。

 人気でねーぞ?

 

「誰だテメェはッ!!」

「オレは三組の複世。名前くらいは知ってるだろ?」

「端役なんぞ知るか、クソがッ!!」

 

 えぇ……。こないだの定期テストで、緑谷に次いで成績三位だったのに。

 テスト結果張り出されていたから多少は目立てていたと思ったんだけどな。

 

 ちなみに爆豪は無論一位でした。……この天才がよ。

 

「んじゃ、改めて。オレは複世巫与。よろしくな」

「テメェとよろしくしてやる義理はねぇ」

「おっ? もしかして、お前って女子と話せないタイプか? そりゃ悪いことしたな。女子の前だと緊張するタイプだとは。見た目に反して純情なのな」

「するかっ!! ぶっ殺すぞっ!!」

 

 少し煽ってみれば目に見えて反応する爆豪。

 それから一言『爆豪勝己』と名乗ってくる。

 

 『よろしく』の一言を付けないあたりが彼らしい挨拶の仕方だ。

 

「で、緑谷の個性のことだったな?」

「あぁ、そうだ……。訳を言いやがれ」

「言ったら緑谷放してくれるか?」

「内容によっては殺す」

「理不尽だよ、かっちゃんっ!!?」

 

 気に入らないからぶっ殺す。もうそれ悪党の台詞なんよ。

 それはそれとして、隠すようなことでもないので正直に話しますか。

 

「ある種の実験だよ。こうして個性を付与し続けていたら、果たして無個性は個性に目覚めるのかってね」

 

 一応、オレが緑谷と個性訓練をする理由はそうなってる。

 特異な個性を使用する以上、ありえないことではない。なんて、それらしい理由を付けてオレが強引に続けさせてるのだ。

 

 本当のところは、緑谷との関係を維持するためだったり、OFA継承後の個性運用をスムーズに行うための準備だったりするんだけどな。緑谷も何か裏がありそうだと感づいてはいる様子だが、それでも彼はオレの手を取った。

 

 そして、今日までずっと頑張ってるわけだ。

 まぁ、公共の場での個性使用は法律違反だから、やるにしてもオレの使ってる『加重』や緑谷のお母さんのご厚意で貰った『引力』くらいなものだけど。

 

 結果? んなもんあるわけないじゃん。個性の運用が上手くなることはあっても、緑谷に個性が芽生える兆候なんて見られずだ。

 

 むしろ目覚められたら困るわ。原作ブレイクにも程がある。

 

「ありえねぇ……。んなことして、デクが個性に目覚めるわけねーだろがッ!!」

「確証は無いけどな。でも、やってみなきゃわからねーだろ?」

「……~~ッ!!!」

 

 おぉ、なんか爆豪の顔が凄まじく凶悪になってる。

 コレは、焦りか? 無個性と馬鹿にしてきた奴が、個性を発現するかもしれない可能性に若干の危機感でも覚えてるんだろうかね?

 

『余計な事しやがって』なんて感情が駄々洩れだ。

 

「まぁ、個性に目覚めなくても一緒にヒーロー目指せばいいだろ」

「えぇっ!?」

「何驚いてんだよ。緑谷はヒーローになれる素質があると思うけどな、オレ」

 

 というか、原作で明言してるし。”最高のヒーローになる物語”だってさ。

 自分を犠牲にして他を守ることに奔走する。例え傷つき倒れかけても、背中に守るべき弱者がいるのなら、自分を鼓舞して戦い続ける。

 

 その姿は正しくヒーローだろう。

 

 まぁ、少々行き過ぎた自己犠牲の精神すぎるけどな。

 その辺はオレが隣で支えりゃいいだろ。

 

 軽い感じで口にしてみれば、爆豪は突き放すように緑谷の胸倉から手を放す。倒れこむ緑谷を見下しながら、悪魔のような形相で『ありえねぇ!』と連呼する姿はもう一周回って面白い。

 

 掌の爆発は最早止まらず、彼の苛立ちをこれでもかと表現していた。

 

「それじゃあさ、試してみるか?」

「アァ!?」

「緑谷がヒーロー足りえるか、自分の目で確かめてみりゃいいじゃん」

「複世さんっ!?」

 

 そんな苛立ちMAXの爆豪にオレはそう提案してみる。

 ここ最近の緑谷は多少なりとも身体が出来上がってきてる気がするし。週に一回は戦闘訓練と評して殴り合いもしてるから、戦闘センスも磨かれてるはずだ。

 

「ケッ! なんで俺がこんなクソナードを試してやらにゃいかんのだ!?」

「ん? どうした爆豪。まさか、自信がねーの? ついこの間まで無個性だった緑谷相手に尻尾巻いて逃げるつもりか?」

「上等だ、クソがッ! ぶっ殺してやんよッ!!」

 

 挑発すればすぐに乗ってくるあたり、爆豪って実は単純なんだろうか?

 

 いや、爆豪なりにメリットなんかを加味した上での決断なのかもしれない。何せ、合法的に気に入らない緑谷をボコボコにできるわけだし。

 

 そうして急遽始まった緑谷VS爆豪のガチンコバトル。

 学生服を脱ぎ捨てて袖を捲り、臨戦態勢の爆豪に対して緑谷は困惑したままオロオロと立ち尽くしてる。

 

「えっ!? えぇっ!?」

「ほれ。緑谷も、さっさと準備しろよ」

「う、うん……!」

 

 覚悟を決めたのか、爆豪から距離を放して立つ緑谷。顔こそ緊張しているものの、日頃から続けてた戦闘訓練が功を奏したのか自然体を維持してる。

 それに対して爆豪も、こちらもまた自然体。

 先程の凶悪な人相も形を潜め、静かに緑谷を見据えていた。

 

 二人の準備が整ったところでオレは腕を振り上げる。

 

「ルールは簡単だ。とりあえず、一撃良いのを当てること。ただし、気絶するまでやるんじゃねーぞ? 戦闘訓練ってのを忘れるなよな」

「即殺だ、デクッ!! 俺が上ッ!! テメェが下だッ!!」

「ぼ、僕だって……いつまでも雑魚で出来損ないのデクじゃないぞ……。かっちゃんッ!!」

「よしっ、開始!」

 

 合図と共に手を振り下ろす。

 直後二人は同時に地面を蹴り激突した。

 

「オラッ、死ねぇぇぇぇッ!!!」

 

 初撃は爆豪の右手の大振り。これは原作通り。そして、緑谷の対処もまた同じものだった。『その攻撃が来ると思っていた』とばかりに爆豪の間合いに自ら身体を潜り込ませ、腕を掴んで投げ飛ばす。

 

 結果、成す術のない爆豪は背中から地面に叩きつけられた。

 

「……は?」

 

 それはどちらの声だったのか。

 投げた緑谷か。それとも投げられた爆豪か。

 小さく聞こえたそんな声にオレは右手を振り上げる。

 

「よし。まずは緑谷の勝ちね」 

「なっ!? 俺はまだ負けてねぇッ!!」

「いや、見事なまでの背負い投げだったろ? 初戦はお前の負けだよ、爆豪」

「~~~~~っっっ!!!!」

 

 認められないとばかりに爆豪がオレに詰め寄ってくる。

 おお。ただでさえヤバい顔が更に酷いことになってるな。けど、いくら凄もうとも結果は結果だ。覆りようが無い。

 

「今のは完全に緑谷が爆豪の動きを読んだ結果だな。なんか秘訣でもあったん?」

「あっ、えっと。かっちゃんは大抵最初は右手の大振りなんだ。だから今回もきっとそうだと目星をつけて……。何とか成功したみたい」

 

 ホッと胸を撫で下ろす緑谷。

 おう、そうだな。原作でもそうやって対処していたし。

 

「ところで緑谷。少し残念なお知らせだ」

「え? っと、何かな?」

「今ので完璧に爆豪の心に火が付いたみたい」

 

 オレの言葉に緑谷がソロリと振り返る。

 そこにはビキビキに吊り上がった目と、掌から爆破を出し続ける爆豪の姿。ただでさえ刺々しい頭髪は、彼の心情を表すかのようにさらに逆立っている。そして、極めつけはその口元だ。

 

「おいデク……。テメェ、もう一回だ……。殺してやる……!!!」

 

 笑ってる。いや、口元も吊り上がってるというべきか。

 自然界では笑顔は威嚇の意味を持つとはいうけれど、爆豪の笑みはそういう笑顔だよ。あの顔を見れば、大人でも怖気づいてしまうね。

 

 さて、そんな表情で睨まれる緑谷はというと、先の勝ちで少しだけ自信がついたんだろう。迎え撃つように拳を構えた。

 

「――うん、やろう。……かっちゃんっ!」

 

 …………その後、再度行われた戦闘訓練はもちろん爆豪の圧勝だった。

 

 何をしても緑谷の攻撃は当たらず対処され、逆に爆豪の攻撃は当たり続ける。まさに蹂躙ともいえるほどに一方的なものとなるのだった。

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