TS少女のヒーローアカデミア   作:ネコ023

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9.雄英入試っ!

 目指せ合格アメリカンドリームプラン(仮)を開始してから十カ月。

 とうとうこの日がやって来た。雄英入試日である。

 

 入試当日ということもあってか、今日は朝の訓練も休み。

 ぐっすり快眠、意識もハッキリしてて最高のコンディションだ。

 

「あとはチャチャッと入試受けて受かるだけだなー」

「……ふ、複世さん、余裕だね……。僕なんて、緊張で脚が震えてるよ……」

「アンだけ訓練積んだんだ。受からねぇ道理はねェ」

「そ、そうだね! ありがとう、かっちゃんっ!」

「誰も励ましてねぇ……。勘違いすんじゃねぇ、カス……!」

 

 などなど話をしながらやって参りました、雄英高校。

 

 入試当日ってこともあってか、周りには多くの受験者が歩いている。

 その様は多種多様で、緑谷のように緊張してる奴もいれば、爆豪みたいに張り詰めた空気を纏った奴もいる。

 

 なんて観察していると、何だか視線を感じてそちらを見遣った。

 

「なぁ、アレって複世じゃね?」

「あぁ、ヘドロ事件の……。うわ、マジじゃん。本物だわ……」

 

 おい、ひそひそ話してるけど聞こえてんぞ!?

 爆破したろか、この野郎……。

 

「き、気にすることないよ、複世さん。人の噂も七十五日って言うでしょ?」

「もう十カ月以上経ってるけどな」

「かっちゃんっ!?」

 

 クソがよ。原作じゃ事件の被害者は爆豪だったってのに。オレが被害者になってるもんだから、『ヘドロ事件』の象徴がオレになっちまってる。

 

 行く先々で『あぁ、ヘドロ事件の!』とか、『大変だったね』とか言われるのは当たり前。このロリボディも相まって、憐みの視線で見られることも多くなった。

 

 全く。人を見るたび、ヘドロ、ヘドロとさ……。

 オレはトトロの親戚じゃねぇんだぞ、ったく……。

 

「なにぼさっとしてんだ。行くぞ」

「……おう」

「ま、待ってよ、二人とも……! ……うわっ!?」

 

 爆豪に続くようにして歩き始める。

 すると背後から出遅れた緑谷の悲鳴が聞こえた。

 

 おや? そういえば、雄英高校入学時に何かしらイベントがあったような気がするな。なんて思いながら振り返ってみれば、ふわふわと不自然な姿勢で宙に浮かぶ緑谷と、その傍に立つ女の子の姿。

 

 間違いない。ヒロアカのヒロイン、麗日お茶子ちゃんだ。

 

「大丈夫?」

「わっ! えっ!?」

 

 ほわほわとした見てると安心するような笑顔と、見ず知らずの受験者の危機に手を差し伸べられる慈愛に満ちた精神。コートに隠れているけれど、その下はオレと違ってかなりスタイルが良いと予想される。

 

 そこから導き出される答えは、圧倒的なメインヒロイン感だ。

 

「私の個性。ごめんね、勝手に。でも、転んじゃったら縁起悪いもんね」

「そ、そうだね……。その、あ、ありがとう……」

「ううん。気にしないで。お互い頑張ろうねー」

 

 緑谷の姿勢を戻し、手を振って先を行くお茶子ちゃん。

 そんな姿を真っ赤な顔して見送る緑谷に、なんか、こう……胸の中にモヤッとした感情が芽生えるのを感じた。

 

「じょ、女子と話しちゃった……」

「おい。ここにも女子がいるんだが?」

「ハッ! テメェは女子というより女児だろ。胸も身長もねェもんな」

「爆豪、お前なぁ……! 人が最近気にし始めてることを……!!」

 

 中学三年生に至るまで、この身体はロリボディを脱することはできなかった。

 

 牛乳を飲んでも無駄。

 寝る時間を増やしても無駄。

 食事を変えたりしても無駄だった。

 

 努力は必ず報われるという言葉が存在するのであれば、オレのこの努力だって実を結んで欲しかったよ。残念なことに、そんな奇跡は起こらなかったけどな。

 

 盛大にため息を吐きながら、オレは爆豪と未だに顔を真っ赤にしてる緑谷を連れ立って、試験会場へと足を進めるのだった。

 

 

 

 ▼

 

 

 

『実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜッ!! アーユーレディ!?』

 

 プレゼントマイクの言葉に会場がシンと静まり返る。

 掴みは最悪。誰の返事も貰えなかった彼の身体が羞恥心か何かで震えてた。

 

(ボイスヒーロー『プレゼントマイク』だ! すごい……! ラジオ毎週聞いてるよ、感激だなぁ……! 雄英の講師はみんなプロのヒーローなんだ……!)

(あー、緑谷。感動するのは分かるけど、静かにしようなー)

(うるせぇ)

 

 隣でボソボソ感動している緑谷。

 原作同様のその姿に、本当にヒーローが好きなんだなと微笑ましい気分になる。気持ちは分からんでもない。興奮するよな、憧れの人が目の前に現れたら。

 オレも、緑谷や爆豪と会ったときは同じ感じだったし。

 

 それからもプレゼントマイクの実技試験の概要説明は続く。

 

 原作同様、オレたちはこれから十分間の模擬市街地演習を行うらしい。

 持ち込みは自由で、各々個性を使用して演習場に配置された『仮想ヴィラン』三種を倒していき、ポイントを稼いでいくのが演習の内容だ。

 

 無論、他者への妨害行為はご法度である。

 

(受験番号連番なのに、会場違うね)

同校同士(ダチどうし)で協力させねぇってことか)

(じゃ、こころおきなくポイント集めができるな)

 

 などなど喋っていると、少し前の席に座る男子。まぁ、飯田なんだが。彼が挙手しながら立ち上がった。

 

「質問よろしいでしょうか!? プリントには四種のヴィランが記載されております! 誤載であれば、日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!!」

 

 ……真面目だ。漫画やアニメで見てても思ったが、彼ほど堅物クソ真面目という言葉がよく似合う男はそう居ないと思う。などと苦笑しながら眺めていると、彼が振り向きこちらを指さした。

 

「それからそこの縮れ毛の君!! 先程からボソボソと気が散る!! 物見遊山のつもりなら、即刻雄英(ここ)から去りたまえ!」

「すみません……」

 

 ありゃま、やっぱり怒られてしまったか、緑谷。

 

 とはいえ仕方ない。緑谷のボソボソはもう半ばクセみたいなものなのだ。考えてることを気付いたら口にしてたなんてこともあったりするし。

 

 そう簡単に治せるものでもないのだ。

 

(慣れたら可愛いもんだけどな、緑谷のボソボソ(これ)も)

(そう思えんのはオメェだけだ、ちび女)

 

 爆豪からのツッコミを華麗に流しつつ、話の続きに耳を傾ける。

 

 飯田が質問した内容の返答だが、こちらも原作同様四種目の仮想ヴィランの正体はお邪魔虫である。倒したところで何のメリットも存在しないため、避けて通るのが推奨されるステージギミックだ。

 

 とはいえ、ヴィランポイントの他にレスキューポイントもあるわけだし。

 気にかけるくらいはしてても良いかもな。

 

Plus Ultra(更に 向こうへ)!! それでは皆、良い受難を!!』

 

 と、考えているうちに概要説明が終了したらしい。

 

「それじゃあ、頑張りますかっ!」

「テメェら、ヘマすんじゃねぇぞっ!」

「う、うんっ! 頑張ろっ!」

 

 互いに激励を飛ばして、オレたちは各々の会場へと向かうのだった。

 

 

 

 ▼

 

 

 

 緑谷と爆豪と別れてやってきました演習場C。

 高層のビルが立ち並ぶその様は、まるで巨大なジオラマだ。オレって身長低いから、余計にそう思えて仕方ないな。

 

 なんて思いながら、指貫グローブを装着。軽いストレッチを開始する。

 脚良し、腕良し。個性『加重』も解除と。ふぅ、身体がチョー軽い。

 それじゃあ、いっちょ……。

 

『ハイ、スタートー!!』

「頑張りますかっ!」

 

 プレゼントマイクの開始の合図と同時に勢いよく跳躍。呆然としている受験者たちからなる人垣の上を飛び越え、着地と同時に駆け出した。

 

「なっ! あの女児、速っ!?」

「速いだけじゃねぇ、なんつー跳躍力だよッ! あの女児っ!」

「小さい見た目に反して、スゲーパワー個性持ちか? あの女児!」

 

 女児、女児、うるせぇッ!!

 今、オレのこと女児つった奴、顔覚えたからな!!

 演習中、困っていても優しくしてやんねーぞ!!

 

 そう思いながら真っ直ぐ走る。個性『加重』を解いたオレの身体は羽のように軽く、グングン他の受験者たちとの距離を突き離していく。

 

『標的捕捉!! ブッ殺スッ!!』

「さっそくお出ましかっ!」

 

 立ち並ぶビルの壁をブチ破って現れたのは1Pヴィランだ。

 動きは速いが装甲は脆い。そんな相手にオレが取る手段は攻撃を避けつつ肉薄し、直接触れて個性『爆破』を使っての爆散だ。

 

 頭部、腕、胴体。各部位に指先を添えると同時に個性『爆破』を付与。

 そうすれば、触れた箇所で爆発が生じて、あっという間にスクラップだ。

 

「よし、まずは1ポイントっ!」

 

 幸先の良いスタートに満足しながら、オレは次の獲物を探して駆け出すのだった。

 

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