聖杯は静かに泣いている   作:風梨

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風梨と申します。
よろしくお願いします。




原作開始

 

 

 

『オレ様の勝ちだな』

 

 ゴスロリの衣装に身を包んだ私の腕の中で、そう言って得意げな顔をしてみせるのは薄青色の生地のぬいぐるみだった。うさぎをデフォルメした顔立ちはシンプルの一言で、丸い目には何かの石を、口元は糸でバッテンに縫い付けてある。長年の愛用を窺わせるヘタリ具合のせいで長い耳はへにゃりと先端が垂れていた。

 

 場所はハンター試験の会場だった。どこかの地下道で、試験が始まるまでの待ち時間を潰すためにうさぎと軍議で遊んでいる。

 

 試験会場だから、当然ながら他の受験者たちの目がある。

 うさぎのぬいぐるみが動くなんてあからさまな念能力の示唆はできない。だから私が二人分の駒を動かしていたというのに、うさぎはこちらを見上げてわざわざドヤ顔で勝利宣言してきた。憎たらしい。少し強めに抱きしめて咎めておく。苦しそうにジタバタし始めたが、すぐに諦めて脱力した。

 

 もう一戦やる時間はあるだろうかと口元にヒゲを生やした紳士を見てみる。

 でも試験官である彼に未だ動きはない。一次試験開始にはまだ少し時間が掛かりそうだった。

 

『ったく、本当に弱いな、お前さんはよ』

「……」

 

 強く抱きしめた腹いせなのか、うさぎがニヤニヤと擬音が聞こえてきそうな声音でそう言った。

 うさぎの声は周囲には聞こえないが聞き捨てならない。だが話しかければ一人で喋ってるように見えてしまう。ここは冷静に、落ち着いて。端的に。

 

「……死ねばいいのに」

『うおおい!? 本音がダダ漏れすぎんだろが!?』

 

 ショックを受けたようにうさぎが仰け反った。両手を上げるオーバーアクション付きだ。

 私は中指を立てることでそれに応えた。

 そんな茶番をしていたからだろうか。周囲から、面倒くさそうな気配が近づいてくるのを感じた。

 

「一人で参加か?」

 

 にこやかな笑みを浮かべた男だった。

 軽い足取りで緊張感はまったくない。低身長に太い眉毛、そして四角い鼻の男だった。

 

「ははっ、そう警戒しないでくれって。オレはトンパ。こう見えてハンター試験のベテランなんだぜ」

「……」

『ははー!! こいつがトンパか! 聞いてたより愛嬌がある顔してるじゃねーか!? ええ、おい!?』

 

 うさぎがうるさい。

 私は無言でトンパを見つめる。

 見つめる、見つめる、見つめる。じーっと、穴が開くほどに私は見つめ続ける。……こんな顔、だっただろうか。記憶が曖昧だ。

 

「あー、すまん! 急に話しかけられたら怖いよな、こんな場所だしよ。詫びって訳じゃないが、知りたいことがあれば何でも答えるぜ? 伊達でハンター試験を受験し続けてる訳じゃないからな」

「……そう」

「おう! たとえば、そうだな。いろいろ紹介してやるよ!」

 

 そう言いつつも少し気まずさも感じているようだった。表向きは友好的だ。でも動揺でオーラが微弱に揺らいでる。

 トンパはそんな中でもぺらぺらと油の乗った舌を回し続けていた。……確か受験生を貶めて悦に浸るのが生き甲斐とか何とかだった気がする。

 それを見ながらケタケタと笑い続けるのはうさぎだった。

 

『おいおいおい、無視して喋らせといていいのか!? 変に注目されたら原作の流れが変わっちまうかもしれねーぜ!?』

 

 わざとらしく言っているが、別にここで流れが変わっても問題ない。あの子と仲良くなれればそれでいいのだから。

 そう思いつつうさぎを見下ろせば巫山戯てケラケラ笑い始めた。

 

『下剤入りのジュースでも飲んどくか!? そうすりゃ簡単に脱落できる! 注目も減るだろうぜ!』

 

 私に毒物は効かない。というか、そもそも飲食できない。彼と仲良くなるという目的が達成出来なくなるから脱落するつもりもない。

 だから答えはノーだ。

 そんなこと誰よりもわかっているだろうに、いちいち騒ぎ続けるうさぎがうるさい。黙らせる意味でかなり強めに抱きしめた。

 

『んぎゃー!! おま、中身が出る! 中身でちまう!!』

 

 黙れ、という意思を込めてもう一度強く抱きしめればようやくうさぎは黙った。代わりに、口から真っ赤な血を吐き出しながら。

 同時に私の身体にも痛みが走って、私の手の甲に生暖かいであろう、うさぎの血が垂れた。……ちょっと力加減を間違えた。

 

「……おい、そのぬいぐるみ大丈夫か? なんか赤いの出てるけどよ」

「大丈夫。そういう仕組みなの」

「そ、そうか。……まあお近づきの印だ、飲みなよ」

「いらない。あなた、新人潰しのトンパでしょ?」

 

 言った瞬間に、僅かにトンパが驚いたのがわかった。

 けれどすぐににこやかな笑みに戻る。

 

「はは、なんのことだか。ま、ここに置いとくからよ、よければ飲んでくれ」

 

 愛想笑いを浮かべながらトンパは去っていった。

 揺らいでいるオーラから彼が内心で悪態を吐いているだろうことがわかる。そのことに一抹の満足感を覚えた。

 

『ぺっ、おいおい、一回死んじまったじゃねーか。お前さんの馬鹿力はオレ様でもキツいんだよ』

「……いいじゃない。頑丈なんだから」

『おい、こっち見ろよ。ぜってぇ力加減ミスっただけだろ。お前さんと違って、オレ様は痛いの嫌だし嬉しくねーんだよ』

 

 ぶつぶつと文句を言い始めたうさぎを無視する。別に私だって痛いのが好きな訳じゃない。ただちょっと生きてるって実感するだけだ。

 視線を逸らした先で、新しい受験生たちが地下道に入ってくるのが見えた。

 ツンツン頭の少年。スーツを着た男性。金髪の少年だった。彼らと離れた少し先には銀髪の少年もいた。思わず微笑みが溢れる。

 

「もう一局打つ時間はなさそう」

『そうなのか? ようやく、このクソ暇な時間が終わるんなら万々歳だな』

 

 ぐでんと脱力したしたぬいぐるみを抱いて待つこと少し。ハンター試験の一次試験が開始されるのは、もう間も無くだ。

 

 





あらすじが意味不明なのに、ここまでお読みいただきありがとうございます。
本文中で出来るだけわかりやすく伝えられるように頑張りますので、よろしくお願いします。
>あらすじがわかりづらすぎたのでシンプルに添削しました。

5話分は完成しているので、直近の2、3日に分けて順次投下していきます。


前書き削除しました。
>4話目の最後尾に移動
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