時間が空いてしまい申し訳ない気持ちでいっぱいです。
私生活がちょっとわちゃわちゃしているのでかなり遅筆になってしまいますが、今後とも
『音が紡ぐもの』をよろしくお願いします。
まだ終わらんよ!!
好奇心は猫をも殺す。人の噂も七十五日。
古来より人は好奇心を持て余し、未だ飼いならすことができずに同じ過ちを繰り返し続けている。
こんな
つまり何が言いたいかというと。今後は動物園の動物たちにやさしい気持ちで接してやる必要がありそうなほど、その状態に酷似した環境に晒されているということだ。
針の
本当に、神サマとラットは安心して眠れると思うなよ。安眠妨害の念を小一時間ほど送り続けてやることを脳内会議によって満場一致で可決しておいたので、思わずほくそ笑んでしまう自分に何とも愚かで小さいことかと考えてしまったが、その考えを易々と無視する。
できればそんな考えは視界にも入れたくないので、俺の知ったことではないという事にしておく。
小さかろうが愚かであろうが、あの去り際を作っておいて帰れないなんて、恥ずかしすぎて爆散することもやむを得ぬ心情を持て余して仕方ないのだ。少しくらい八つ当たりをしても許されるはずだ。と自分に言い訳をしているのもなんとも恥ずかしいものがあるが、触れないでいただけると助かる。と言うか触れるな。
「だから話しかけてこようとするんじゃない、直江大和。」
「いや、さすがにこの状況で話しかけないのも酷かと思って……。」
先程からいつもの定位置……左隣の席でそわそわとしている直江に、我慢ができずに思わず話しかけてしまった。
余計な気遣いが更に恥ずかしさを加速させるからやめて欲しいのだが、気を使ってもらっている以上無下にはできない。などという殊勝な心がけなんかではなく、ただ単に鬱陶しかったので切って落としただけである。いや、恥ずかしいのは本音だが。
「いや、なんでもいいんだけど……。ここに置いてあるもの、ちゃんと管理したほうがいいんじゃないかと思ってね。」
その言葉とともに教室の左後ろを指す大和に釣られて、その場所を見る。
正直、自分でもどうしていいのか分からず、目を背けていた節がある。
そこにはラッピングされたプレゼントの山・山・山。もうそろそろ、人の体の高さほどにまで到達しそうな量のプレゼントの山があった。
朝校門をくぐる前から始まり、昇降口、廊下、教室で休み時間の度にいろんな人から頂いているものたちが溢れかえっている。持って帰れるか不安になるし、俺にどうしろと言うんだよ……。
「ここまで来ると羨ましくもおもえなくなるものなんだねぇ……。」
前の席の諸岡くんが振り返りながらそんな事を漏らす。呆れたような視線を向けないでくれ、俺にもどうしていいのか分んないんだから。
菓子類はまだいい。くれた人に許可を取って知人に配ることに了承を得ているから。しかしだ、生花とぬいぐるみなんかは置き場所や管理に困る。
そして、一番の問題は……。まぁ、もう気にしても仕方ないか。
というわけで、現在それなりの窮地を迎えているわけだ。
「というか、これからどうするの?」
「どうするったって、ここに居るしかないだろ。帰ってもしかたないし。」
「いや、帰るつもりなら家とかどうたのかなって。借りてたなら、返しちゃったんじゃないの?」
諸岡くんは人を気遣えるいいやつだ。あとで貰ったお菓子をあげよう。
「昨日は流石に無理だったからホテルに止まったけど、学校に来る前に連絡して契約しといた。」
「即日入居可のところがあったのか。良かったな。」
「いや、なかったけど。ゴリ押しで入った。」
「いやいや、そんな無茶なことよくやったな……。」
「払うもの払ってんだから、いいじゃん。」
「世間知らずなのか、大物なのか……。」
「大物の方だろうね……。」
ちなみに俺が希望したタイプの物件は学校から少し離れているが、特に問題のない範囲なので即決しておいた。というか、物件を使用するにあたっての書類とか諸々の数が思っていたよりも多くて辟易している。あとで不動産屋に足を運んで詳しい契約をするということだが、中々手のかかるものなんだな。今まではラットに一任していたのもあり、今度からもうすこし彼を労ってやってもいいかなと思った。
そろそろチャイムも鳴る。さぁ、授業受けるか……。
食事はエネルギー摂取に欠かせない行為である。というかこれを行わないと血液に直接ブチ込む以外やりようがほぼ無い。ということは当然、そういったことにこだわる人間がいるのはうなずける。しかしだ。全人類がそうでないという事は明白だろう。
当然、俺もそのうちの一人だという訳だ。
午前の授業が終わり、一息ついたところで話し始めたりすぐに弁当を食べ始めるものがいたりと様々だ。教室の中に食べ物の匂いが充満して、匂いだけでお腹が減りそうなほどだ。
そして、学校には学食というものがある。弁当を持ってきてないものや、弁当だけでは足りない腹ペコ男子学生のためにも門戸を開いている学生専用の食堂だ。券売機というもので食べたい内容の物の件を購入し、その件を提示することで奥の調理場にいるお姉様たちが食事を提供してくれるというものだ。券売機は日本に来てから初めて見たので、かなり驚いた記憶がある。
そしてその券売機と食堂のあるスペースに対して、申し訳程度の広さの購買というものがある。俺は入学して以来ここの購買で毎日ひとつコッペパンを購入しているのだが、ここでも視線が気になるような環境になってしまったわけだ。
気まずい……。
「なんだお前、パン一つか?」
「なんか悪いか?」
「なんだよお前―。ピリピリしてんなー。」
振り返れば武神がいる。なんて冗談めかしてみるが、ジト目で見てくる川神百代に遭遇した。
なぜか両隣に女子生徒を侍らせて。
「お前こそ何してんだ。」
「食堂に来ているんだ。食事に決まってるだろ。」
「いや、そうじゃなくてだな……。」
わからないといった顔で俺を眺めるんじゃない。一緒にいるなら理解できるのだが、文字通り
「まぁいい。なにか用か?」
余計なことを考えるとハゲると言うからな。その心配はないと思うが、気をつけるに越したことはない。
「用がないと話しかけてはいけないか? 私はもう知人だと思っていたが。」
「いや、悪くはない。が、パン一つでは問題か?」
「いや、問題じゃないけど足りるのか? 一応健全な男子学生だろう?」
「健全かどうかで聞かれると返答に困るが、足りはする。」
そんなことよりも、この会話をしている間中、百代の両サイドにいる女子学生が怪訝な顔でいるのがどうしても気になる。学園の人気者との時間を取るなってか? 馬に蹴られる前に退散するか。
「じゃ、俺は教室戻るわ。じゃーな。」
「一緒に食べないのか?」
「はぁ?」
「なんでそんな邪険にするんだよ!! いーじゃないかー! 一緒に食べようじゃないか!」
この女はどうも俺をいじって楽しんでいるとしか思えない。周りからの負のオーラが凄すぎるから早くどこかに行きたいんだよ。そんな俺を無視するかのように腕を掴み学食の中を我が物顔で歩く武神サマに、面倒なことに巻き込まれたという顔を隠せないまま歩いて行くのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
壮絶な別れ際を演じ、コントでも見ないような残念な幕引きを目の前で見さられて以来、私はどうにもこの諸田という男が気になって仕方がない。他の連中や、弓子なんかにもこの事は話していない。言ったら絶対にからかわれる。私はからかうのは好きだが、されるのは気に食わないタイプなんだ! まぁ、それはいい。言っていないのだから、そんな可能性は皆無なのだ。皆無なのだから! 大事なことだから二回言ってみた。何となくしっくりくるからクセになりそうだな。いや、いい。話を戻そう。
何が言いたいかというと、この諸田という男。私が知っている限り、このコッペパンしか食べているのを見たことがない。大和たちに聞いたところ、やはりコッペパンを食べているところしか見ていないと言う。人の好みにケチを付けるわけではないが、一週間以上昼食をコッペパンのみって男子学生として大丈夫かと思う。確かに金のない一般的な男子学生や、アルバイトをしながら通っている手持ちの少ない奴なら頷ける話だ。しかし、こいつは世界で一番稼いでいる10代と言われている超売れっ子ミュージシャンなのだからそんなはずはない。と思う。ならば何故コッペパンなのか。クロワッサンではだめなのか? むしろ学食まで来ているのだから、定食でもなんでもいいんじゃないのか?
「なぁ川神百代。」
「なんだ諸田。名前呼びで構わんぞ!」
考えている間に本人から話しかけられたのだが、なぜか不機嫌そうだ。美少女たる私と一緒にいるのの何が不満なんだろうか?
「この状況はなんだ。」
まぁ、もう慣れたが。再三無視するのな。一回くらいボコっても……いや止めておこう。流石にまだ世界中の人間を相手する気にはなれない。
「何って、食事をしているだけだが?」
「そのテンションでいれるお前が意味分かんねぇよ。女子同士でアーンしている姿を見せられてどんなリアクションしろってんだ。」
おかしなことを言う奴だな。
「羨ましそうな顔したらどうだ?」
「
「ファックってなんだファックって!!」
コイツ弄るの中々楽しいな。今度からしばらく楽しませてもらおう。あんまりやると何となく雰囲気で読んできそうだからほどほどにしなければ。
「で、実際の要件は何なんだよ。そろそろ話してもいいだろ。」
「だーかーらー、用なんてないって。飯を一緒に食べるの誘うのに用がないとダメなのか?」
「昨日の今日で呼び出されれば、お前の性格だと弄りに来てるのかと思ってな。」
「そ、そんなわけないじゃないか!」
感よすぎだろ。疑わし気な目で見ているのを盛大に無視して、目の前の食事に手を伸ばす。
そこで気づいた。
これ、食べるかな……。
目の前にあるのはカレーだ。日本人、ひいては男子に多大な人気を寄せられているカレーがある。野生の動物に餌付けする気分だが、やってみたい……。
いくつものスパイスが織り成す刺激的な香りの中に、飴色にまで火を通した玉ねぎと酸味を含んだりんごから来る甘い匂い。ふっくらと炊き上げられた芸術といっていいくらいの白いご飯の上にトロっとした黄金色のルーがまとわりついている。自分で食リポみたいに観察していたら、更に美味しそうに見えてきた。
このカレーを前にして食いつかない男子がいるか、いや、いない!
「ほら、お前にもくれてやろう。あーん。」
スプーンの中で小さなカレー一食を作る感じですくい取り、諸田の前に出してやる。
食いつくか? 食いつくのか?
気分は完全に餌付けの気持ちだったのだが、ふと諸田の顔を見ると見たことのないくらい真っ青になっていた。一体どうしたんだ?
「お、おい。大丈夫か……?」
「悪い……。」
そう言って席を立った諸田は戻ってこなかった。
二、三口かじっただけのパンが机に置いたままだった
ありがとうございます。