嬉しいです。
キャラクターが自然に動いてくれるのは、やはり原作が素晴らしいからでしょう。
まじこい、大好きです。
少し短いですが、どうぞ。
タイミングを逃すとずるずるといつまでも先送りになってしまう感覚は、一度体験したことのある人は易々と想像できるだろう。
ため息をつきたい気分の中、人が
大和はまだ、彼……諸田
自己紹介の時間も済み、前の学校からの知り合いや隣や前後など思い思いの人と話す周りに溶け込むように、大和は交友関係を広げる事に取り組んでいる。
先ほど諸田と入れ違いにこのクラスに入ってきた京と目があったが、視線だけで謝罪すると今優先すべき行動と思考を続けていた。
元々父親の教えもあり、対人技術や話術などでうまく立ち回る事を念頭に置く考えの大和は、諸田との友好的な関係を築きたいと思っていた。
なにせ世界が認めるアーティストだ。その言葉の力は絶大だ。
そういった方面に
話が
雰囲気、とでも言えばいいのだろうか。人を寄せ付けないオーラの様な物を感じていたのだ。いつもならそれなりの越え方というか、攻略法の様なものがなんとなく感覚的に感じられたのだが、それが無いのだ。それが大和を尻込みさせていた。
本来なら集中すべき交友関係の拡大という自分にとっては生活の基盤になるほど大切のことをしているのにも関わらず、思考から切り離せないでいた。
「どうしたもんか……。」
嘆いても仕方がないが、ファミリーとの問題だ。首を突っ込んでいる形にはなるが姉貴分との問題は、自分がこなせることなら解決したいと思う。
それが自分にしかできないことならと。
呟いた言葉は中空に靄のように消えていった。
◇◆◇◆◇
始めから交わることも混じることもない存在だろうと感じていたのに、やけに掻き乱す。
始めから思っていた。
気に入らない、と。
大和と違うクラスになっただけで、こんなにも景色が色褪せて見えるのかと京は自分でも驚く。
京自身が人付き合いを上手くするつもりがないのもあり、その見た目に釣られた男子生徒に何度か声をかけられたものの、尽く無視を決め込んだ。
クール系美少女の枠に入る彼女の冷たい視線を感じたのか、はたまた無視をし続けたのが項をそうしたのか、もう周りは私が作っている壁に気づいたみたいだ。鈍感な男がたまに引っかかるくらいか。
自由に話してもいい時間が与えられた
終業のチャイムがなると、一目散に大和のクラスへ向かう。足取りは軽い。自分の現金さに、呆れと流石だなという賞賛を送る。しかし好きなものは好きなのだ、仕方ない。そのために私は今を生き、綺麗になったのだ。命短し、恋せよ乙女を地で行く京には他のことなど全て
二つほど教室の前を通り過ぎ、大和のクラスに着いた。入る為にドアに手をかけると、力を込める前に自然とドアが開いた。瞬間、目の前に現れたのは先ほど入学式にて諸田と呼ばれたあの男だった。サングラスのせいで分かり辛いが確かに視線が合わさると、「悪いな」と言ってどこかへ歩いて行った。
短い間。ほんの一秒に満たないほどの時間、諸田の背中を見送る。正直なところ、いや当然と言うべきか京はあの男にかけらの興味も湧かないでいた、彼のことだけではないのだが。有名なアーティストだということは知っている。ファミリーの皆の中でも好きで聞いている人がいることも知っているがそれだけだ。京の中は大和のことで溢れている。自他ともに認めるそれに偽りはないし、他にあるといえばファミリーの事だ。それは淋しい事だという人もいるが、それで満たされているのだ。他の人がどうこう言おうが知ったことではない。
自分にはそれでいい。そう思っている。
一歩踏み出して教室の中を覗くと、肩を落として緊張疲れしたモロと交流しながら疲れたような大和と目があった。いやモロは見た目にそのまま気持ちが出るため置いておくとして、大和は傍目には余裕そうなのだ。が、長年の付き合いと女の勘により看破していた。そして、同時にその意味も。
視線だけで話が通じることに胸が熱くなるほど嬉しさがこみ上げてくるが、視線があった理由を理解すると一抹の寂しさを感じる。
そう、私が入ってきたから目が合ったのではない。彼を……諸田という男を目で追っていたから、京と目があったのだと。気にかけていることは分かっている。大和なら彼に対してアプローチをかけたい気持ちがあることは、何年も付き合いのある京たちにはわかる事だった。でも……
あぁ、やっぱり気に入らない。
私の女の部分が、男の彼に嫉妬しているのだ。
◇◆◇◆◇
指差し確認や、声を出しての確認というのは、自分の物事に対する理解度を上げるために有効な手段である。しかし感じたことのある人もいるだろうが、そういう場面を見られると
「右からよし、左からよぉし!! 前からは当然よぉぅし!! さっすがだな俺様、やっぱキマッてるぜぇ!」
なぜか一つの鏡を占領し、一度タンクトップになり櫛で髪型を整えていたガクトは周りに数名男子生徒が居るにも関わらず、あえて声だし確認をしていた。その
入学初日にトイレで一人声出し確認をし、なぜかタンクトップ一枚になるよう脱ぐとは、正気の沙汰ではない。彼はこれから「学校のトイレで一人、タンクトップになって髪を整えていた人」略して「タンクトップさん」になることを恐れないのかと、用をたしていた男子生徒
そんなことを思われているとは露も知らぬガクトは、自分の自慢のヘアスタイルが決まったことに満足したのか衣服を整えると、颯爽とトイレから出ていった。勘違いもここまで来ると褒めてやりたいものだ。
鼻歌を歌いそうなくらい軽い足取りでいるのには訳があった。訳というほど深いものではないが、単純に最初の自己紹介でバッチリとこの鍛え抜かれた肉体をアピールできたと考えていたからである。
180を超える長身に、誰もが羨む日本人離れした体格。スポーツを
しかもいい意味でアピール出来たと思っているのは本人ばかりで、周りの人間は初日から突っぱねるわけにもいかず何も言えないでいたが、ドン引きだった。
トイレから出たガクトは、前から勘違いした格好の男が歩いてきたなと思った。身長は自分よりは低いが、なかなかすらっと高く見える。しかし、いくらなんでも学校でサングラスをかけるのは痛々しい、と自分の行動を神速で棚に上げつつそう思った。
しかし、よく見れば見たことのある風貌だ。それもその筈。朝、登校する際にいざこざのあった相手、諸田であったからだ。
すれ違いざまにちょうど思い出したが、特に声をかける必要を感じなかったためにそのまま教室の方へと歩いて行った。
廊下から扉の開いていた大和とモロのクラスを覗くと、当然のように京が居座っていた。もはや、流石だなとしか言えないと思いながら自分のクラスまで歩くと、入学初日にも関わらず自分の席で筋トレに励む一子を見つけた。うちのファミリーはどこにいても変わらないな。途中キャップのいるはずのクラスに、朝同様いないのを確認したのも含めてそう思った。
「あ、ガクト!」
こちらに気づいた一子が声をかけてくる。当然のようにダンベルを持つ手は止めないが。
「初日から張り切ってるな、ワン子。」
「ふふん、当然よ! アタシはお姉さまみたいになるんだから!」
そう言いながら無い胸をはる一子に哀れみの視線を向けそうになるが、いくらなんでも他の女生徒が居る前でそんな事をするわけにはいかないという変な危機感を覚えた。
「しっかしよぉ、思ってた以上にこの学校広すぎだぜ。俺様ほどの頭脳をもってしても覚えるのには時間がかかりそうだぜ。」
「アタシと同じ程度の成績のくせして、よく言うわね! ガクトのくせに。」
「なんだワン公……。喧嘩売ってんのかぁ?」
「やってやろうじゃないのよ、勝負勝負!」
「……いや、お前ダンベル振りかぶるのは反則だろ! いくら俺様の肉体が鋼の様とは言え、それは死んじまうだろうが!! 分かった、謝ればいいんだろ!!」
まさしく犬のように、犬歯をむき出しにしながら唸ると手に持っていたダンベルを振りかぶった一子に静止の声をかける。とりあえず、今のは無かったことにしようと決めて早々に謝罪の言葉を投げる。
「分かればいいのよ!」
「俺様、これはさすがに理不尽だと思うぜ……。あぁ、軍師大和くらいの知力があればこんな奴にいい負けたりしないんだろうなぁ……。」
「あによ、やるっての?」
再び手に力が入ろうとしたところで、ガクトは口を
ガクトは先ほどすれ違った諸田の事を一子に話そうと思っていたが、そのことは綺麗に頭の中から消え去ってしまっていた。そもそも朝の騒動がなかったかのように二人の入学初日は過ぎていった。
ギリギリになってしまいました。
あと、ガクトとワン子登場するとコメディになるから不思議。