三雲修は勇者でない   作:香川出身ボーダー隊員

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二話 If it is something you can see, then it too is one truth ①

「いただきまーす!!」

 

「「いただきます」」

 

神世紀7月某日。学校終わりの放課後、僕と柚木は芙蓉に誘われてうどん屋にいた。

 

「さあ食べてくれ三雲君、柚木君。今日は君たちの歓迎会だ、私が全部おごるからじゃんじゃん食べてくれ!」

 

「いや、申し訳ないし自分の分は自分で払うよ」

 

「あと、私はお前が言う『勇者部』とやらに入った記憶はないぞ」

 

和気藹藹(わきあいあい)、気にしなくていいんだ三雲君。こう見えて私はお金持ちだからね、三人分のうどん代を支払うなんて造作もないよ」

 

「おいこらスルーするな」

 

柚木の発言をものの見事にかわす芙蓉に向き合いながら僕たちはうどんを食べ始めた。そしてある程度食べ進めていた芙蓉から話を切り出された。

 

「さて、我が勇者部に入ったからにはまず前提となる話を伝えておきたい」

 

「何の話だ芙蓉?」

 

「……」

 

芙蓉の真剣めいた口調に、僕は食べる速度を落としながら聞く姿勢を取る。だが隣の柚木はというと、特に興味がなさそうに、うどんを一口ずつ大事に嚙みしめ続けている。

 

「今から遡ること三十数年前……その頃、まだ四国周辺の海を取り囲む壁は存在しなかった。人々は四国の外にある日本の国土全体、それどころか日本の外の『外国』と呼ばれる他の国々まで気軽に行き来していたんだ」

 

それは学校で何度も聞いてる内容だった。

 

「アメリカ、中国、ロシア、イギリス、インド…君たちも一度は聞いたことがあるだろ」

 

「まあそれくらいなら」

 

西暦時代には芙蓉が挙げた以外にもたくさんの国があり、四国はその国の中にある小さな地方だったと言われている。

 

「だけど、西暦2015年。『星屑』とか『バーテックス』と呼ばれる化け物が日本に襲来したという。四国には『神樹』という謎の樹木と『壁』が出現した。壁の内側に星屑は入って来られなかったけど、壁の外は壊滅的な被害を受けた。四国を除く日本全体が星屑によって滅んだし、日本の外…外国に至っては、状況がまったくわからなくなってしまった。バーテックス対策機関である『大赦』……当時は『大社』と呼ばれていたらしいけど、その大赦が表立って活動を始め、なんとか四国内の混乱を収めていった」

 

「……」

 

「西暦2015年に四国の壁が出来てから数年間……壁の外は壊滅的な被害を受けても、壁の内側は比較的平和な時期が続いた。もちろん、星屑襲来の際に四国の外から逃れてきた避難民がたくさんいて、その避難民をどう受け入れるかに関して、社会的なレベルで混乱があったことは確かだ。けれど、当時は四国外の物理的な大被害に比べれば枝葉末節だった。大きく状況が動いたのは西暦2018年だ」

 

「確か、壁の中にもバーテックスが侵入し四国を攻撃し始め、それらを撃退するために丸亀城を拠点として4人の勇者が立ち上がり戦った、だろ」

 

「その通りだ三雲君!ついでに付け加えるなら、その時戦った勇者の一人、『高嶋友奈』。私や柚木君の名前である『友奈』の嚆矢濫觴(こうしらんしょう)なった人物であるね」

 

芙蓉と柚木。二人の共通点として挙げられる『友奈』という名前。改めてではあるが、過去の偉人の名前をもらっている人物がこんな近くにいるとは本当に珍しいことだ。

 

「…美味いな」

 

まあそのうちの一人はうどんに舌鼓を打っていた。

 

「だが、勇者たちはバーテックスとの戦いの中で次々に命を落としていった。高嶋友奈も、二〇一九年に起こった、歴史上最後のバーテックス襲来の際に命を落としたという。生き残った勇者は、あの乃木若葉様だけだね。乃木様は今でもご健在で、ときどき公務で人々の前に姿を見せる」

 

「乃木様、か…」

 

乃木若葉。芙蓉の金髪よりも少し輝きは控えめだけど綺麗な髪を後ろで束ね、自分の母よりも年上とは思えないほどの若い姿で、かつての戦いで負った怪我を隠すためかいつも白い手袋をつけている。芙蓉が言ってたように勇者としてバーテックスと戦い、その戦いで唯一生き残った人物であり、現大赦のトップである『上里ひなた』様とは勇者時代よりも前からの付き合いをもつ人物。テレビの向こう側や雑誌や新聞の写真でしか見たことがない、僕のような一般人では話す機会もないであろう雲の上の存在だ。

 

「……ところで柚木君。君、私の話を聞いてるのかい」

 

「いや、うどんが伸びるのがもったないから聞き流してた」

 

対牛弾琴(たいぎゅうだんぎん)だ…」

 

柚木のスルーっぷりに芙蓉は落胆して肩を落としてた。

 

「だって、お前がさっきから話してることなんてニュースや学校の教科書で聞いたり見たことのある内容だろ。ほら、うどんが伸びる前にさっさと食べろよ」

 

話をしていた僕や芙蓉と違い柚木のお椀にはもう、うどんのお出汁しかない状態だった。

 

「ま、まあ、確かにここまでは一般常識の範疇だ。私が問題視しているのは、西暦2019年以降……年号が『神世紀』と改められた後さ!これは私が運営するブログサイトだけど、見てくれ」

 

芙蓉はスクールバッグからタブレット端末を取り出し、あるウェブページを表示させた。

 

『勇者部電子基地──勇者と壁の真実を探求する部活動──』

 

そんなタイトルを掲げたブログだった。

 

画面を下にスクロールすると、

 

「大社の陰謀とは」

「バーテックスとアポロ計画の欺瞞」

「大和霊学における神樹の考察」

「魔女狩りと勇者と黙示録の予言」

 

といった記事タイトルが、ずらりと並んでいる。

 

「「……」」

 

柚木と顔を見合わせ、二人して無言になる。

学校で噂に聞く七不思議が可愛く思えるほど、どれもこれも胡散臭さが全力疾走していた。

 

芙蓉はその中の一つ。

『バーテックスの実在性に関する疑義』という記事を開き、タブレットをこちらへ差し出してくる。

 

「さあ、読んでみたまえ」

 

僕たちが記事を読み始めると、芙蓉は何事もなかったかのようにうどんを食べ始めた。

 

……正直に言うと、書かれている内容が内容なだけに、視線はタブレットよりも芙蓉の方へと逸れてしまう。

 

整った顔立ちに、無駄のない所作。

ただ食事をしているだけなのに、不思議と目を引く。思わず息を呑んでしまうほどだ。

 

――なのに。

 

「そこに書いてある通り、すべては大赦の陰謀詭計(いんぼうきけい)権謀術数(けんぼうじゅっすう)なんだ!」

 

芙蓉は目を輝かせ、勢いよく言い放った。

 

「私たちは騙されている! 民衆をコントロールするために真実は隠蔽され、社会的に洗脳されていると言えよう!」

 

……さっきまでの上品な食事風景はどこへ行ったのだろう。

 

知り合ってまだ数日だが、これまで芙蓉以外に部員がいなかった理由が、痛いほど理解できてしまう。

この思想さえなければ、もう少し人は集まってもおかしくないと思うんだけどな……。

 

改めてサイト内の記事に目を通し内容を要約すると、要するにこうだ。

 

――勇者も、バーテックスも、実在したとは言い切れない。

 

僕もネットで見かけたことがある。

いわゆる陰謀論、と呼ばれる類のものだった。

 

「いいかい? バーテックスが存在した時代から、たった三十年程度しか経っていない。それなのに、明確な物的証拠がほとんど残っていないんだ」

 

芙蓉は箸を止め、身振り手振りを交えて続ける。

 

「公的に確認できる写真や映像は一切ない。ウェブ上に稀にそれらしい写真が上がることはあるが、合成やCGの可能性が高い。勇者とバーテックスが戦っている決定的な映像も、一つも存在しない!」

 

一息つく間もなく、彼女は続けた。

 

「百歩譲って……いや、一億歩譲ってバーテックスが存在したとしてもだ。西暦二〇一九年を境に、やつらはぱったりと四国に現れなくなった。ならば、何らかの理由で死滅したと考えるのが、至極当然じゃないか?」

 

話の筋は通っている。

だが、それでも腑に落ちない部分が残る。

 

そう思っていると、今まで黙って聞いていた柚木が口を開いた。

 

「でもさ。大赦の発表だと、バーテックスや星屑が来なくなったのは、何か儀式みたいなことをやったからって話じゃなかったか?」

 

柚木の言葉に、芙蓉は首を横に振る。

 

矛盾撞着(むじゅんどうちゃく)だよ」

 

きっぱりと言い切る。

 

「その儀式について、具体的に何をしたのかは一切公表されていない。誰も詳細を知らないんだ。だいたい、本当に儀式で解決できるなら、最初からやるべきだったじゃないか」

 

感情が高ぶったのか、声が自然と大きくなる。

 

「それをしていれば、勇者たちの犠牲はもっと少なくて済んだ! 平和的に終わらせることだってできたかもしれないだろう!?」

 

「ちょ、ちょっと落ち着いてくれ芙蓉。周りの客の迷惑になってる」

 

僕がそう言うと、芙蓉ははっとしたように周囲を見回し、慌てて頭を下げた。

 

「す、すまない……」

 

そして気を静めるためか、止まっていた箸を再び動かし始める。

 

その様子を見届けてから、僕はもう一つ気になっていたことを口にした。

 

「芙蓉の言い分は分かった。でも……四国を囲っている『壁』についてはどう説明するんだ?」

 

芙蓉の箸が、ぴたりと止まる。

 

「西暦時代には存在しなかったものが、ある日突然現れた。あんな巨大なものが一日二日で出来るとは思えないし……神樹様以外に、誰がやったっていうんだ?」

 

「質問に質問で返すようで申し訳ないが三雲君。君は壁を見たことがあるかい?この前嶽山で見たような高い場所からじゃなく、直接そこへ行って見た事は?」

 

「えっ……。いや見れるわけないだろ。壁は基本的に陸地より離れたところにあって、近づくには船に乗って近づくか、今は通れない瀬戸大橋や大鳴門橋、来島海峡大橋まで行かないと見れるわけないだろ」

 

「その通りだけど…意外と君詳しいんだね。もしかして壁の近くまで行ったことがあるのかい!?」

 

芙蓉は目を輝かせて聞いてくる。

 

「そんな訳ないだろ。ただ父さんが橋の建築関係の仕事をしてるから、昔あそこの橋のメンテナンスに携わった人から聞いたことがあるってだけだよ。今はあの大橋3つは大赦関係以外は立ち入り禁止だし、中の情報も口外厳禁だからそれ以上のことは知らないよ」

 

「そうなんだね…やはり壁を超えるなら陸側から行くのが正解か?

 

「?何か言ったか芙蓉」

 

「いや、三雲君のおかげでいい情報が手に入ったよ」

 

そう言われて、なぜか背中に嫌な汗が滲む。

……今、言ってはいけないことを言ってしまった気がする。

 

「まあ確かに三雲の言い分も気になるけどな。バーテックスも勇者もいないものなんだって言うなら、あの壁は一体なんだって言うんだ?」

 

黙って聞いていた柚木が口を挟んだ。

すると、芙蓉はにやりと口角を上げる。

 

「ほう、柚木君も我々を真実から遠ざけている陰謀に興味を示したようだね」

 

うっとやぶ蛇をつついたことを後悔する表情を浮かべる柚木。

それと対照的に芙蓉は目をさらに輝かせて畳み掛けていく。

 

「無情迅速。興味が湧いたのなら今すぐ我が勇者部に入りたまえ!勇者部の目的は、四国を囲む壁を越え、その外へ出ることだ!壁の外へ出れば、世界の真実がすべて明らかになるだろう!さぁ今すぐ入部しよう柚木君!!」

 

「断る」

 

そう言って柚木は箸を置き、席を立った。

 

「あぁ、待ってくれ柚木君!?」

 

芙蓉は急いでうどんを食べようとするが間に合わず自分の分の料金を払い柚木は出ていってしまった。

 

 

 

 

 

「機会逸失…。もう少しで柚木君を誘えたのに……」

 

(いやあの感じは絶対誘っても乗ってくれないぞ……)

 

いつまでもうどん屋にいても仕方がないので、僕と芙蓉は場所を変え、有明浜に来ていた。

二人で砂浜に並んで座り、海を眺めていると、勧誘失敗から立ち直った芙蓉が話しかけてくる。

 

「まあいい、まだ機会はいくらでもある。いざとなったら()()を使って来てもらえればいい…。ふっふっふ……」

 

「まだ勧誘する気なんだな…」

 

「当たり前だよ!柚木君はきっと私たちと同じ思想を持つ同士だ。必ず私たちの元に来るさ」

 

さて、と芙蓉は話を切り替える。

 

「三雲君、君は今海の向こう側に見える壁が見えるかい?」

 

「まあ、見えるけど」

 

「あれは私たちにとっての不倶戴天の敵だ。だが私たちは壁について何も分からない。敵と戦うならまず相手を知るべきだ」

 

「不倶戴天の敵って……。まあ戦う相手を知ることは大切なんだろうけど、何をする気だ芙蓉?」

 

そう尋ねると、芙蓉は行き良いよく立ち上がり両手を大きく広げ笑いながらこっち見た。

 

「決まっている!壁に直接近づいてその全貌を明かすのさ!!」

 

「なっ……!?本気で言っているのか芙蓉!?」

 

「一念発起!当たり前さ、だから私は君たちのような人を探していたのだからね」

 

芙蓉のその赤い瞳には嘘などないと信じてしまうほど輝いている。

 

「今週の土曜日と日曜日にあの3つの大橋に行く。私たちで壁を越え、大赦が隠している真実を解き明かそうじゃないか」

 

そう言って、僕に向かって手を差し伸べる芙蓉。

だけど僕は彼女の手を取らなかった。

 

「いや、行くわけないだろ!?うどん屋にいた時から思ってたけどそんな危ない真似させないぞ!」

 

「えぇっ!?」

 

反対の言葉が帰ってくるとは思わなかったのか、驚いた表情が飛び出した。

 

「ま、待て三雲君!なぜ君が反対するんだ!?ホワイ!!?」

 

「あの時ちゃんと言えなかったから今言うけど、僕は壁に関する真実なんて興味はない。僕が勇者部に加入したのは芙蓉が危なっかしくて見てられないから入ったんだ」

 

「そ、そんなぁ……」

 

項垂れながらどんよりとした顔をする芙蓉。

まさかここまで来て唯一の仲間が裏切るとは思ってもいなかったのだろう。

 

「な、ならばこれならどうだ!?」

 

そう言って芙蓉は財布を取り出し千円札を3枚ほど取り出す。

 

「……これは?」

 

「これは前金だよ。もし今度の調査に力を貸してくれるなら、これに加えてこの金額の2倍いや3倍のお金を渡そう。これでどうかな?」

 

「いや、お金を渡されてもやらないぞ」

 

「では4倍なら…!?」

 

「いや、金額の問題じゃないからな…。というか親から貰ったお小遣いをそんな風に使うのはやめた方がいいぞ」

 

「ああ、そこは大丈夫だ。これは私が稼いだお金だからね。そういえば話してなかったけど、こう見えて私は子役タレントとして活動していた過去があってね。言っただろ、こう見えてお金持ちだって」

 

僕自身テレビを見る習慣がないから知らなかったけど、芙蓉にそんな過去があったとは…。

だが、お金をもらって危険なことをするほど、僕に覚悟も責任もない。

 

「…そうか、そうだよね。こんなこと言っても仕方ないよね……」

 

すると今度は目尻に涙を浮かべ始めた。

 

「…君の言う通りだ。橋に近づいてそれを越えようなど、この四国を守ってくれる神樹様に対して申し訳がないよ」

 

弱々しい声で自分がやろうとしたことの恐ろしさに気づいたような雰囲気だ。

 

「……さっきまでの忘れてくれ三雲君。あんのことを言われても困るよね……っ」

 

そう言って背を向け、芙蓉は走り出した。

僕はそれを、ただ見送るしかなかった。

 

……と思ったのも束の間、しばらく走った芙蓉が戻ってくる。

 

「……いや、ここは追いかけて『僕が悪かったよ芙蓉!君を泣かすつもりはなかったんだ。僕はまだ君と一緒にいたい、だから僕を許してくれないか!!』って言うところだろ」

 

ジト目で睨みながら言われ、思わずため息が出る。

 

「子役やってたなんて話をした直後に、あそこまで正反対のこと言われたら信じられないだろ……」

 

「うぅ……」

 

「それに、あの泣く演技をした時の芙蓉の目は、うどん屋で僕に色々聞かせてくれた時よりも、目が本気じゃなかった」

 

「三雲君……」

 

うどん屋での芙蓉の雰囲気はまさしく鬼気迫るものだった。だけどさっきまでの言葉にはそのような意志を感じられなかった。

芙蓉との付き合いは短いが、彼女の壁に対する執念とよべるそれはとても強いものだというのだけは知っている。

だからこそあれが嘘だということだけは分かった。

 

「暗中模索。どうすれば三雲君を調査へ連れていくことができるだろう……」

 

唸り声を上げながらその場で考え出す芙蓉。

…僕は別に芙蓉のことは嫌いじゃない。ただどうしてもルールを破って行動を起こそうとするのが嫌なだけだ。

だから僕も考える、僕と芙蓉のなかでの妥協点を探すために。

 

「…じゃあこういうのはどうだ芙蓉」

 

頭を回転させ自分なりの妥協点を芙蓉に提示する。

 

「見に行くのは壁への侵入口じゃなくて、大橋の観察っていうのはどうだ?」

 

「大橋の観察…。だがそれだと確実に壁を超えるための情報たりえないだろ?」

 

「そんなことはないと思う。もし芙蓉の言うように壁の外に世界があるって言うなら、あの大橋のどこかに壁の外へ行く道がまだ残ってるとは思わないか?」

 

その昔、四国を守っていた勇者様たちも一度、壁の外へ出たことがあるらしい。

どうやってかはわからないが、仮に四国の外へ出ようものなら、船だと壁に阻まれて通ることはできない。西暦時代にあった『飛行機』や『空港』なるものがあるのなら空からでも行けるだろうがそんなものは今はなく、壁を飛び越えたなど机上の空論以下の考えだ。

だからもし、壁の外へ出ようとするなら、壁事態に人が通れるほどの抜け穴があると考えるのが自然だ。

 

「……確かにその可能性も否定はできないな」

 

「僕たちはあくまで橋の観察をするだけだ。その過程で、たまたま道を見つけたなら、それは芙蓉にとっても悪くない話だろ?」

 

これが僕が譲歩できる最大限。これ以上のことをして万が一、いや億が一にでも大赦に目をつけられるようなことにはしたくない。

そんなことになれば芙蓉自身の行動にも制限がかかるし、それで彼女との関係が切れるのだけは避けたい。

 

「…わかった、ならその考えで行こう。それなら君は付いて来てくれるかい?」

 

「ああ、僕が提案した案だ。それで僕が行かないっていうのは不義理になるだろ」

 

それもそうだね、と言いながら彼女は真面目な顔をしてこちらを向きながら手を差し出す。

 

「改めてだけどよろしくそして勇者部へようこそ三雲君!」

 

その時の彼女の笑顔はとても綺麗で少しだけ見惚れそうになるものだった。

 

「ああ、こちらこそよろしく芙蓉!」

 

そう言って僕は彼女の手つかんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、このまま大赦の陰謀を知れば三雲君もこちら側に染まるだろう!!」

 

「いや僕はあくまでストッパーみたいなものだからそっち側へは行かないからな……」

 

「なんでさ!?」

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