キヴォトスイレブン!   作:眠り狐のK

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勢いだけで生きている


第一話 サッカーやろうよ!

「はっ……はっ……!」

 

 一人の少女が草原を駆ける。

 その足元にはサッカーボール。

 サッカーボールを蹴り、目の前に立てられた複数のコーンをくぐり抜けていく。

 動く度に揺れる短い白銀の髪、飛び散る汗が太陽の光を反射し白銀の髪を輝かせていた。

 その技量は初心者と呼ぶには精密であり、コーンを倒すどころか掠ることすらなく華麗にその全てを避けきって見せた。

 

「ふぅ……今日もいい感じかな」

「……い…………おーい!!!」

「ほぇ?」

 

 サッカーボールを持ち上げ、砂を払っていると少女を呼ぶ声が聞こえた。

 少女は声の方に目を向けると、太陽のように明るいオレンジ色の長髪を揺らしながら自らに向かって手を振る一人の少女がいた。

 オレンジ色の髪の少女は小走りで銀髪の少女の元まで向かう。

 

「もう、カナちゃん、また一人でドリブルの練習してたの?」

「そう言うならナノハが練習相手になってくれてもいいんだよ?」

「いじわる……私の身体がそこまでの運動出来るほど強くないこと知ってるくせに」

「あはは、ごめんって」

 

 銀髪の少女の名前は松風カナ、サッカーがすごーく大好きなごく普通の女の子だ。

 そしてオレンジ色の髪の少女は彩波ナノハ、そんなサッカー大好き少女の幼馴染だ。

 

「って、それより! 今日は初登校の日でしょ! 遅れちゃったらアビドスの生徒会長に怒られちゃうよ?」

「わかってるわかってる、ちゃんと覚えてるから……ってあれ!? もうこんな時間!?」

「だから言ったじゃん! 急ご!」

 

 二人は慌てながら出発の支度をしに戻った。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日からアビドスに通うことになった松風カナです! よろしくね!」

「あ、彩波ナノハです。よろしくおねがいします」

 

 二人の自己紹介に教室内に小さな拍手が響き渡る。なんとか無事に間に合ったようだ。

 アビドス高校は全校生徒が非常に少なく、50にも満たない。

 その原因はアビドス自体の環境が原因であり、砂漠地帯であるアビドスはほかの自治区に比べて生活が多少難易度の高い場所なのだ。

 そこへと襲いかかった砂嵐という災害、それにより家が壊されたり、そこまでいかなくとも生活が困難に陥り多くの人間がアビドスを去っていった。

 アビドス高校も一時期はほぼ廃校状態となっていたらしいが、そのときの生徒会の頑張りにより生徒の数も一桁まで減っていたのが二桁になるほどに復興が進んでいた。

 とはいえ、まだまだ廃校寸前な状況であることには変わらず、完全に復興させるまでは頑張らなくてはいけない。

 

 二人は家庭の事情でアビドスへと引っ越してくることとなった。

 正確には、ナノハの家の事情であり、ナノハの半保護者と化しているカナはついてきた感じとなる。

 元々ナノハは身体が弱く、サッカー等の運動は愚か外に出歩くことすら容易にできない程であった。

 しかし、幼い頃からの努力とカナというサポーター兼心の支えがあったからこそ、激しい運動はまだ難しくとも、普通の生活をする上では問題ないレベルにまで回復した。

 そんなことがあるので、カナとナノハの二人は血は繋がってないものの、姉妹のように仲が良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の放課後。

 

 二人は部活のリストを眺めていた。といっても、アビドスは元々生徒数が少ないのもあり部活動の種類は数えられる程にしかない。

 

「ナノハ、これ……!」

「あ、サッカー部……」

 

 しかし、その一覧の中に求めているものはあった。

 

「やったよナノハ!! サッカー部がある!!」

「良かったねカナちゃん」

 

 笑顔で飛び跳ねるカナ。

 人数の少ないアビドスでサッカー部がない可能性は充分にあった。それはカナも承知していたことだ。

 だからこそ、期待は半分、残りの半分は無かったら自分で立ち上げるのみ、という決意のようなもので心の中は埋められていた。

 だが、その心配も杞憂に終わったようだ。

 

「さっそくいこう!」

「うん、いこう」

 

 カナがナノハの手を取り教室を出ようとした、その時――

 

「サッカー部、やめておいたほうがいいよ」

 

 生徒の一人が、そんな事を言った。

 

「どうして?」

「確かにサッカー部はあるけど、存在してるだけ。人数も足りてないし、今ではサッカー部としての活動なんてほぼしてない。廃部になってないのが不思議なくらい。だから、入っても無駄無駄」

 

 そんな生徒から言われた言葉は衝撃の内容だった。

 サッカー部がサッカー部として機能していない。

 そもそもサッカー部が存在していること自体が奇跡的と言える場所だ、可能性の一つとしては考えられた。

 だが、想像することと実際にその事実を突き付けられるのではやはり違う。

 

「でも、きっとなんとかなるはず。いや、私がなんとかする!」

「あ、まってカナちゃん!」

 

 それでもサッカー好きの少女は諦めなかった。

 カナはそのまま教室を飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが、アビドスのサッカー部……」

 

 そこにあったのはアビドスサッカー部の部室。

 だが、かなりボロボロだ。

 サッカー部として機能していなかったという話もあるし、砂嵐の影響もあってそこから建て直したりする余裕もなかったのだろうか。

 

「すいませーん」

 

 カナは部室の扉を開け、中にはいる。

 そこには5人の生徒がいた。

 一人は気持ちよさそうに眠っており、一人はなにか書類のような物を読んでいて、残りは雑談をしていた。

 とてもサッカー部という雰囲気ではなかった。

 

「ねぇ、ねぇホシノ先輩、お客さん来てるって、起きてよ!」

「うへ……あぁ、いらっしゃ〜い。サッカー部になんの用かな〜?」

 

 黒髪のツインテールに猫耳の少女に起こされた長い桃髪の少女は眠そうに目を擦りながらカナ達の方を向いた。

 

「あ、えっと、サッカー部に入りたいんですけど!!」

「うぇ、うちに? そっか……そっかぁ〜……うん、歓迎するよ〜」

「えぇ!? ホシノ先輩、入部認めちゃうんですか!?」

 

 あっさりと入部を認めた桃髪の少女――ホシノの言葉に眼鏡をかけた少女が驚きの表情を浮かべていた。

 それは、入部のテストも何もなしに認められたことからなのか、それとも別の理由があるのか。

 

「どうしたの〜アヤネちゃん? 何か不都合でもあったり〜?」

「い、いえ……ですがサッカー部の退去指示も出てますし……」

「それはさせないって言ってるでしょ〜?」

「その話、いつまで通ると思ってるのかしら?」

「貴方は……?」

 

 唐突にカナとナノハの後ろから声が聞こえ振り向くと、そこには紅い瞳に長い黒髪は後ろに一つに束ねられた姿の少女が立っていた。

 

「砂橋カルナさん……アビドスの現生徒会長です」

 

 サッカー部の部員の一人、ノノミがナノハの疑問に答えた。

 カルナはカナとナノハの間を抜け、ホシノの前に立つ。

 

「小鳥遊ホシノ、元副生徒会長だからと思って貴方の我儘にも目を瞑っていましたが、いい加減ここを残すのは無駄だと分かっているでしょう? アビドスの為、こんなところ捨てて生徒会に戻ってきてください」

「おじさんは生徒会なんて柄じゃないよぉ〜。昔は仕方な〜くやってたけど、今はカルナちゃんがいるんだし、こっちはこっちでアビドス復興のためにやることはやってるんだからさ〜? それに、何と言われようともサッカー部は廃部にさせないよ?」

 

 一瞬、二人の間で火花が散った気がした。

 

「そうだよ! 廃部になんてさせない!」

 

 そこにカナが詰め寄る。

 

「貴方は……確か転校生の松風カナさん、でしたね。ここにいるということは、サッカー部入部ということですか。やめておいたほうがいいですよ、ここは名前だけ無駄に残している部活、サッカーなんてやってませんから」

「ここまでしてサッカー部を残そうとしてるのはサッカーが好きだからじゃないの? サッカーはみんなに希望を与える……みんなが一つになれるスポーツなんだよ! だから、サッカーは必要なんだ!」

「……いいでしょう。元々そのつもりで来たわけですし、貴方達に条件を出しましょう。貴方達サッカー部との練習試合を予定しています。相手は『帝国学園』、これに勝てればサッカー部の存続を認めましょう。しかし負ければ……」

「廃部ってことね……いいよ、受けて立つ!」

「カナさん!?」

 

 アヤネが驚きの表情を浮かべながらホシノに目を寄せる。

 それに対しホシノは問題ないと言うかのようにこくりと頷いた。

 

「では、試合は一週間後です。ご武運を」

 

 そう言ってカルナはサッカー部を後にした。

 カナはアビドスサッカー部に向き直り強気の目で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあみんな、サッカーやろうよ!」

 

 




英雄たちのヴィクトリーロード、楽しいです。

円堂守世代が一番好きなんですけど、みんなはどうですか?
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