キヴォトスイレブン!   作:眠り狐のK

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前回の帝国学園で察した人もいると思いますがこの作品、イナイレに出てくる学校もいくつか出てきたりします。


第二話 部員集め

「ホシノ先輩、ほんとによかったんですか?」

「カルナちゃんの目、本気だったからね。多分あの子、あの条件飲まないと生徒会長の権限使ってまで廃部にしようとしてただろうし、元から受けるしかないんだよ〜」

「そんな……」

 

 ホシノとアヤネはカナを見ながらそんな事を話していた。

 現在はカナの簡単なテストをしている。

 入部を認めたとはいえ、その人物がどれだけ能力があるかは見ておかなくてはいけない。

 あれだけ強気に勝負を受けていた彼女だったが、サッカーについては初心者と言っていた。

 よくそれであれだけ強気にいけたものだ。

 

 だが、テストの結果はまずまず。

 シュートにドリブルにブロックにキーパー、一通りの能力は見たがどれも初心者にしてはできるという感じだった。

 特にドリブルのスキルに関しては実は経験者でしたと言われても納得できるくらいには出来ていた。

 

 実際のところ、サッカーが好きでドリブルの練習が日課になってはいるものの、他の人とサッカーをしたことがないという正真正銘の初心者なのだが、そのドリブルの練習と基礎知識だけでも勉強してたのは無駄ではなかったということだろう。

 

「でも、人数についてはどうするつもりなのですか? カナちゃんを入れても6人、あと5人は集めてこないといけませんよ?」

 

 それが一番の問題であった。

 人数不足、その解決が一番難しい。

 廃部になるにしてもならないにしても、ここだけは解決しておきたい。

 帝国学園は、実質的に約30年の間無敗を貫いている。

 それだけの実力を持つ相手に勝つのは相当難しい。

 そんな相手に負けるならまだしも、人数不足で不戦敗になりましたなんてことになれば何を言われるかわからない。

 だが、アビドス高校全体の生徒数が少ない中で部員を集めるというのは非常に困難である。

 

 アビドスの生徒は大体二つに分かれる。

 先程の生徒会長と同じようにアビドス復興に向けて考えたり働いたりする人間と、自由に部活を作って娯楽の少ないアビドスで青春を謳歌する人間。

 そのどちらからかサッカー好き部員になってくれる人を確保しなくてはいけない。

 

 少なくとも前者はほぼ不可能と言っていい。

 アビドス復興も当然大事なことだ。

 サッカー部を含め後者側の人間もアビドス復興に向けた活動も並行して行ってる部活もあるが、それを含めてもまだ人員不足に悩まされている。

 そんなところから勧誘したとしても生徒会長が許さないだろう。

 

 となれば、あとは後者側の人間から勧誘するしかない。

 だが、後者側の人間も同様に自分のやりたいことをやっている人物達だ。

 その目線の先にあるものをサッカーに向けるのは容易ではないだろう。

 

「あ、あの……」

 

 ここでナノハが手を挙げた。

 ナノハは体質上運動ができないので、マネージャーとしてサッカー部のサポートに入っている。

 そんなナノハからの意見に二人は耳を傾けた。

 

「アビドス自治区って、不良さんとかたくさんいるんですよね? それなら、サッカー好きな人とか……生活に困ってる人とか勧誘してみるのって駄目なのですか?」

 

 ふむ、とホシノは顎に手を置いて考える。

 

 ナノハの提案も全然ありなのだ。

 寧ろ、それが一番いい手とも言える。

 不良というのはキヴォトスにおいてそのほとんどが学籍を持たない。

 事情があって学校を中退したり、そもそも学校に通えないような子も存在する。

 

 キヴォトスにおいて学籍を持たないというのは大きい。

 学籍を持っていることによる多くの恩恵を受けられなくなってしまうからだ。

 

 その中で特に大きいのが支援金と身分の証明だろう。

 学籍があれば、基本的にそれだけでその自治区から生活に必要な資金は支給される。

 アビドスは災害や人口の減少によってその辺りが機能しなくなっている稀な例ではあるが、基本的にはそれでキヴォトスの生徒の衣食住が保証される。

 

 そして身分の証明。

 学籍というのはキヴォトスにおいてそれ自体がその人物のあらゆる身分証明書として利用ができるものだ。

 その学校に所属しているというだけでバイトなんかも受け入れられやすくなったり、各学校の様々なイベントにも参加しやすくなったりとそれは学生としての身分以上の力を持っている。

 

 これは、学校に通っているというだけで一人でも充分生きていけるほどの大きな恩恵がある反面、学校に通えなかったり、中退・退学してしまった場合にその全ての恩恵がなくなってしまうという大きなデメリットがあるのだ。

 つまり、その枠組みにいる不良集団の大半は今を生きるのにも相当な苦難を強いられ、働き口を探すことすら難しい状況に置かれていることがほとんどである。

 

 そして、ナノハの案はそんな不良集団から必要な人材をアビドスに引き抜こうというものなのだ。

 

 不良集団は不良と言うだけあって性格面に問題がある人物も多いが、中には学校に溶け込めなかったりだとか、そういう理由で不良へと堕ちてしまった人間も存在する。

 そういう相手であればこの交渉は通じるだろう。

 

 サッカー部は部員が増え、不良は資金面はともかく、衣食住のうちの住と身分証明書は手に入り、アビドスとしては純粋に人手不足の中に新しい人材が入る。

 まさにWin-Winな関係と言えるだろう。

 

 そんな簡単に入学できるのか問題については、そもそもアビドス自体校則があってないようなものなので、アビドスの復興に有益なものだと判断されれば犯罪でない限り大体まかり通るので問題ない。

 

 あとは条件に合う人材を見つけるだけだ。

 幸い、アビドスは人口が減ったこともあり廃墟と化した家も多く、それだけに不良も住み着きやすいので候補を探すのにさほど苦労はないだろう。

 

 善は急げということで、カナのテストが一通り終わると早速人材探しに動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、集まったのがこの人達ってわけ?」

「だねぇ」

 

 アビドスサッカー部の前には5人のヘルメットを被った生徒がいた。

 

 彼女達の名前はそれぞれ足守アイ、火野イスズ、風見ウルカ、小林エル、山無オウカというらしい。

 通称『ガタガタヘルメット団』、とある不良グループに元々入っていたが、そのグループの在り方についていけずに離れた人間で構成されたグループだ。

 つまりははぐれものの中のはぐれものというわけだ。

 

 その中で唯一他4人と違うヘルメットを被り後ろに下げたオレンジ色の髪を目立たせている足守アイ、彼女が一応はガタガタヘルメット団のリーダー的存在らしい。

 そして唯一この5人の中でサッカーの経験があるのも彼女だった。

 

「で、話は本当なんでしょうね?」

 

 アイがサッカー部に語りかける。

 話というのは当然、サッカー部への入部の件だ。その代わりとしてアビドスへの入学が認められて身分の証明と住む場所を提供する。

 

 前者についてはサッカー部に入る為に前提として必要なことではあるが、学生としての身分を持たない彼女達からすればそれでもありがたいことだろう。

 

 後者についても住む場所はとはいったが、アビドスの制服は支給されるし、食事に関してもアビドス自体が廃校寸前の関係上でアビドス全体で稼いでやりくりしないといけないというだけで唯の不良グループだった頃に比べれば圧倒的にマシだろう。

 

 特に彼女達ははぐれもの中のはぐれものという立ち位置である為に不良グループの中でも特に生活面が厳しい状態にある。

 そんな彼女達にとってこの条件は破格だろう。

 アビドスの復興とサッカー部に協力するだけで衣食住に身分証までついてくるのだから。

 

「さて、あとは特訓だね〜」

 

 人数は揃った。

 あとは帝国戦に向けて当日まで特訓を重ねていくことだ。

 特に、このサッカー部には初心者が5人もいる。

 帝国という強敵を相手に戦うのであれば最低限の動きはできるようにしておかなくてはいけない。

 

(……ホシノ先輩、迷ってる)

 

 だが、そんな中でホシノに迷いが生じていることをシロコは直感していた。

 直感だけではない。

 実際、生徒会長が本気でサッカー部を廃部にしようとしていたのにも関わらず、部長であるホシノはいつもの雰囲気を崩していない。

 

 そう、いつものだらけモードのままなのだ。

 長い間ホシノを見て過ごしていたシロコだからこそ気づいていた。

 いつものホシノであれば、見た目は普段と変わらないように見えてもその瞳を見れば真剣に考えていることはわかる。

 

 だが、今回はそれがない。

 それが意味することはつまり、『この試合は別に負けてしまってもいい』とすら思い始めているということだ。

 

 ホシノがサッカーのことが好きであることに間違いはない。

 そこは、このサッカー部を元副生徒会長のコネを使ってまで守っていたところからも疑いようはない。

 

 だが、それにも限界を感じていてもおかしくない状態ではある。

 サッカー部があるのは、その部長であるホシノがサッカー部を廃部にしたくないという我儘から残されてるだけで、既に人数不足もありサッカー部としての活動はほとんどしていなかった。

 つまり、今のサッカー部は名前と部員だけが存在する謎のグループへと成り下がった状態とも言えるのだ。

 そんな中でホシノは迷っているのだ。

 名前だけのグループをこのまま残し続けるか、廃部にさせてアビドス復興に専念するか。

 サッカーとアビドスの両方を取るか、サッカーを捨ててアビドスを取るか、この二つの天秤が揺れ動いている。

 

(どちらにせよ、私はホシノ先輩の判断に従う)

 

 シロコはそう心の中で呟いた。

 恐らく、シロコ以上にホシノと共にいるノノミや同じサッカー部として過ごしてきたセリカやアヤネも遠からずその様子には気づくかもしれない。

 もしかしたら、既に気づいている可能性もある。

 だが、気づいていたとしても、ホシノがそれを選ぶのであれば誰も止めることはしないだろう。

 

 ガタガタヘルメット団の5人がアビドスに入学したことでアビドス復興に向けた活動自体は行うことができた。

 練習試合で戦える最低限の土台も作り上げた。

 あとは、今の力で精一杯悔いのない戦いをする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それが、サッカー部としての最後の活動になるのかもしれない。




あれ、熱血サッカー作品のはずなのに暗いぞ?
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