キヴォトスイレブン!   作:眠り狐のK

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別作品に比べて地文は少なめ


第三話 帝国が来た!

 あれから一週間。

 

 アビドスサッカー部は来たる帝国戦に向けて特訓を重ねた。

 

 初心者組も最低限の動きはできるようになるくらいにはなった。

 一週間という短い期間で考えればこの成長は相当なものだろう。

 これで試合に向けた準備は整った。

 

「みんな、絶対に勝つよ!!」

「「おー!」」

 

 気合の入った声が響く。

 相手がどれだけの相手だとしても、勝つためにカナを含めたみんなが努力してきた。

 

 だからこそ、この試合は必ず勝つ。

 

 カナはそう意気込んでいた。

 

 不意にキキィィィッと車の止まる音が聞こえてきた。

 紅いカーペットが真っ直ぐに伸ばされ、その豪華な車からぞろぞろと人が降りてくる。

 先頭には特殊な見た目のゴーグルを目につけ、長い髪を後ろにまとめた少女、その後ろには少女と同じ制服を着た少女達が次々と通りてきた。

 彼女達こそ、噂の帝国学園である。

 

「貴方がキャプテンの小鳥遊ホシノだね、よろしく頼むよ」

「えっと、鬼道ユウナさん、だっけ? お手柔らかに頼むよ〜」

 

 ホシノに向けて握手をと手を向けるユウナにホシノは応え、その手を握る。

 

「お手柔らかに、か。その実力、しかと見させてもらうよ」

「うへ、買いかぶりすぎじゃない〜?」

「さぁ、それはやってみたらわかることだよ」

 

 ユウナはそう言ってその場を後にする。

 ゴーグル越しなのでその瞳は見えづらい。しかし、言葉の端々からその鋭さは垣間見えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一通りの挨拶を終え、試合の準備を整えていた。

 この時の準備というのは自分達で基本的に全て行う。

 体調の確認やユニフォームへの着替え等の個人の準備だけでなく、フォーメーションや作戦の立案まで。

 キヴォトスにおいてのサッカーでは監督は必ずしも必要ではない。

 

 その理由はやはり、キヴォトスという世界において生徒が大きな権力を持てるという部分にある。

 大きな権力と言ったら言葉通りに大きく聞こえるかもしれないが、もっと簡単に言えば、生徒であっても政治的な政策や活動を行うことができるし、店を経営することだってできるし、大人と相違ない程の技術力を手にすることだってできる。 

 つまりは、大人がやるようなこともキヴォトスの生徒ならやってしまえる。

 監督がやるようなことでも生徒だけでこなしてしまえるのだ。

 

 フォーメーションは順調に決まっていった。

 

 まずはキーパーにホシノ

 

 ディフェンスにはノノミ、アヤネ、オウカ、ウルカの4人

 

 ミッドフィルダーにはセリカ、カナ、エル、アイの4人

 

 フォワードにはシロコとイスズの2人

 

 4-4-2の守りを固めフォワード2人のツートップで攻めていく陣形となっている。

 正直なところ、初心者組についてはさほど能力差がないので元々ドリブルのスキルを磨いていたカナを除いた4人については自分の好きなようにさせている。

 その結果守りに重きを置いた陣形にはなってしまったが、失点の可能性を少しでも減らせると考えれば悪くはないだろう。

 

 そして、一通りの準備が終わり、とうとう試合開始のホイッスルが鳴る。

 

 キックオフはアビドスのボールから。

 シロコからイスズへとボールが渡り、相手ゴールまでその足を進めていく――が

 

「なんで……なんで誰も動いてないの!?」

 

 そこにあった光景はその場に棒立ちで一切動くことのない帝国学園だった。

 ボールを持ったイスズが横を通り過ぎるのにも何の反応も見せず、簡単にボールは通せてしまう。

 この光景にはアビドスの誰もが困惑を見せていた。

 

「く、舐めるな!!!」

 

 そのままゴール前まで簡単に到達したイスズは、そのまま勢いに乗せてシュートを撃つ。

 しかし、そのボールは相手キーパーによって軽々しく止められてしまった。

 

「……デスゾーン、開始」

 

 その掛け声と共にボールは相手ディフェンダーへ、とうとう帝国が動きを見せた。

 

「な、はやっ……!」

 

 唐突な動きの変化にアビドスもついていけず……いや、それを抜きにしても帝国の動きは圧倒的な速さを見せていた。

 慌てて止めにかかるも、その全てを華麗に躱されてしまう。

 

 ブロックしようとすれば軽々と避けられ、スライディングも通用しない。

 あっという間にアビドスのゴール前まで突破されてしまった。

 

「さぁ、その力を見せてみろ小鳥遊ホシノ!! 『デスゾーン』!!!」

 

 空中まで蹴り飛ばされたボールを中心に規則正しく回転する三人の選手、三人を点とし作り出される紫色の三角形、そして三人の息の合った蹴りがボールを押し出す。

 そこから放たれる強烈なシュートはホシノに動く余裕すらも与えずにゴールネットへと突き刺さった。

 

「何……あのシュート……」

「……すっっっごい!!!!」

 

 みんなが唖然としている中、たった一人、カナだけはその迫力あるシュートに目を輝かせていた。

 

「面白いやつがいるな」

「しかし鬼道さん、目的の小鳥遊ホシノですが、どうしてキーパーに? 事前の情報ではフォワードと聞いてましたが……」

「2年前の情報だ、ポジションが変わることもあるだろう。だが、それでいてあの程度の実力……本人の言う通り買いかぶりだったか?」

 

 そんな言葉が帝国から聞こえてきた。

 どうやら、帝国はホシノ目的でこの練習試合を引き受けたらしい。

 だが、ホシノの過去を知るものはほとんどいない。

 

 実際、アビドスは砂嵐の災害以降、サッカー部は大会に出るような余裕なんてものはなかった。

 当然、ホシノが入学した時も同様、そんな余裕はないはずだ。

 

 だが、その年の話、一人の少女がどこかの学園のサッカー部に助っ人に入り、その圧倒的な実力でチームを勝利に導いたなんて噂がある。

 恐らく、その噂の少女がホシノであると、帝国は考えているのだろう。

 だからこそ、その真偽を確かめるためにホシノのいるこのアビドスとの練習試合を引き受けたのだと予想できる。

 

 だが、たった一人の力でチームを勝ちに導くなんていうのは唯の噂でしかなかったのだろう。

 

「『サイクロン』!!」

「うわぁぁぁ!!!」

 

 振り上げられた足から発生する風により数人が大きく吹き飛ばされる。

 

「『キラースライド』!!!」

「きゃぁ!?」

 

 激しいスライディングにより一人の足が取られてしまう。

 

「『ジャッジスルー』!!」

「あぁぁぁ!!?」

 

 一人がボールごと大きく蹴り飛ばされ地面に転がる。

 

 

 ――そして

 

 

 

 

「『百裂ショット』!!」

 

 

 

 

 

 

「『ツインブースト』!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「『デスゾーン』!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 次々と強力なシュートが放たれゴールへと……キーパーであるホシノもなんとか止めようとするもその小さな身体ごとネットに突き刺さっていく。

 

 気がつけば得点は0-20、帝国の勝利は揺るがないほどの差が出来上がっていた。

 

「くっ……うっ……」

「ホシノ先輩、大丈夫!?」

「うへ、大丈夫大丈夫〜……」

 

 カナの言葉にホシノは力なく答える。

 既にアビドスの全員が満身創痍の状態と言ってもいい状態になっていた。

 対して帝国側は息一つ切らしていない。

 当に、帝国の圧勝が確定したと言える状況だった。

 

「とどめを刺してやれ」

 

 その一言と共に再び選手の三人が飛び上がる。

 デスゾーンの構えだ。

 

 誰もがそれを見ていることしか出来ない。

 ホシノは目を瞑る。 

 これでいいのだと。

 もう充分頑張ったのだと。

 これだけやって完敗すればサッカー部への未練もなくなる。

 多少残ったとしても、廃部が確定すればその覚悟が出来る。

 

「ごめん、ユメ先輩……サッカー部は守れなかったや…………でも、そのかわりアビドスだけは……」

 

 その言葉を紡いでる間にも襲いかかってくる強力なシュート、その勢いのあるシュートはホシノにその言葉を最後まで言わせることもなく突き刺さ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え……?」

 

 いつまで経っても衝撃の来ない様子にホシノはその目を開くと、その前には一人の少女の背中があった。

 この曇った世界の中でその長い白銀の髪は輝きを失うことはない。

 

「ぐっ…………ぁぅ……」

 

 たった一人、カナがその身を呈してゴールを守りきったのだ。

 

「こんなの………間違ってる……!」

 

 痛みに耐え、身体をふらつかせながらもカナは言葉を紡ぐ。

 

「サッカーは……楽しくて……みんなを一つにしてくれて……人の希望になれるスポーツなんだよ…………こんな痛めつけるようなやり方……サッカーが泣いてるよ!!」

 

 その言葉にホシノははっとさせられた。

 カナのその瞳には曇りなど一つもない、まだまだ諦めないと言わんばかりに強く輝いている。

 

(この瞳……似てる……。曇りなんて一切ない……純粋にサッカーを楽しんでいた……サッカーを愛してたユメ先輩に……)

 

 性格も、見た目も、全くと言っていいほどに似ていない。 

 でも、その瞳は、サッカーを楽しみ愛するその姿は自らの大好きな先輩と重なって見えた。

 

「そういうことは、強くなってから言う事だ!!! 『デスゾーン』!!」

 

 再び、闇を帯びた強力なシュートがカナに襲いかかる。

 当然、立っていることすらやっとのカナに止められるだけの力も、避けられる程の気力も残っていない。 

 そのまま勢いあるシュートはカナに向かって突き刺さ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ることはなかった。

 

 カナの前には、片手でがっちりとシュートを止めるホシノの姿があった。




この作品は割とノリと勢いで書いてるので変なところとかめためた要素とかぱろぱろしててもシラヌッて感じで書いてます。
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