キヴォトスイレブン!   作:眠り狐のK

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風邪で寝てました


第四話 目覚めしアビドスサッカー部

「な……!?」

 

 その場の全員が、その状況に驚愕の表情を浮かべていた。

 それも当然だろう。

 帝国の強力なシュートをホシノは必殺技を使うわけでもなく、片手で止めてみせたのだ。

 

「ホシノ先輩……?」

「ありがとね、カナちゃん。お陰で目が覚めたよ。私はやっぱりこのサッカー部も守りたい、だから……勝つよ」

 

 この練習試合が決まってから初めて見せるホシノの真剣な瞳、それにアビドスメンバーは応える。

 

「ん、わかった」

「やーっとなんにも気にせずやれるのね。やられっぱなしっていうのもやっぱり腹立つわよね!!」

「あはは……でも、それでこそホシノ先輩かもしれません」

 

 何を悩んでいたのだろうとホシノは心の中で思っていた。 

 

 こうして付いてきてくれる可愛い後輩がいて、一緒に戦ってくれるサッカー好きの仲間がいて、純粋にサッカーを楽しみ、この場所を求めてくれる人がいる。

 

 ユメ先輩がここを大切にしていたから……サッカー部を守る理由はいつしかそれだけじゃなくなっていた。

 

 確かに、サッカー部としての活動はほとんど出来てなかったかもしれない。

 それでも、それはアビドス復興に向けた活動だったり、人数不足で試合が出来なかったり、そういう理由で大きく動けなかっただけだ。

 そんな中でも時間が空けばみんなで練習したり、お話したりするくらいにはみんなサッカーが好きなのだ。

 そこにカナというサッカー好きの後輩が増え、ガタガタヘルメット団のみんなも最初は人数埋めで入ったとはいえ、この一週間の練習には真剣に取り組んでいたし、何より楽しそうだった。

 

 もうここはホシノだけの居場所ではないのだ。

 サッカー部全員の居場所、それを守る為にこの試合は必ず勝つ。

 

「いくよ〜!」

 

 ホシノは空高くにボールを蹴り上げる。

 蹴り上げられたボールは放物線を描きながらセンターラインにまで落ちていく。

 そして、そのボールを受け取ったのはセリカだ。

 

「今までやられた分、きっちり返させて貰うから!!」

「くっ、させるか!!」

「遅いわよ!! 『ダッシュアクセル』!」

「なっ!?」

 

 今の怒りに震えるセリカを止められる人物はそうそういない。それが例えあの帝国学園であったとしても。

 セリカの特訓とバイトで培われたその体幹から繰り出される突進力は、それを防ごうとする相手を大きく吹き飛ばす。

 それでいて尚、その突進力は衰えることを知らない。

 

「シロコ先輩!!」

「任せて」

 

 セリカから出されるパスをシロコはその首に巻いたマフラーをたなびかせながら華麗にトラップする。

 

「いくよ」

「こい!!」

 

 相手キーパーには既に先ほどまでの余裕の表情はなくなっていた。

 どれだけやられても立ち上がってくるカナ、デスゾーンを片手で止めてみせたホシノ、鍛えられた帝国学園のそのディフェンスをものともしない突破力を見せたセリカ。

 これだけのものを見せられて誰が油断なんて出来るものだろうか。

 

 

 

 だが、その程度で白狼を止めることなんてできない。

 

 

 

 シロコは首に巻いたマフラーに手をかけながら前に大きくボールを蹴り上げる。

 そしてシロコは駆け出す。

 その速度は容易に蹴り上げたボールへと追いつく、そしてその勢いのまま――

 

 

 

「『ホワイトファング』」

 

 

 

 ――蹴る。

 

 

 

「くっ……ぉぉぉおお!!」

 

 白狼の牙となり、その首を噛みちぎらんとする勢いのボールを相手キーパーはがっしりと掴もうとする。

 

 だが、シロコの牙を止めるには足りなかった。

 勢いよく放たれた白狼の牙は相手キーパーごとゴールへと突き刺さり、ここで初めて、アビドスの得点を示すホイッスルが鳴り響く。

 

「すごい……あれが先輩達の実力……」

 

 カナはその迫力に目を輝かせていた。

 帝国学園も凄かったが、アビドスのサッカー部も負けず劣らずの力を持っている。

 それを見せつけられ、心を躍らせていた。

 これならきっと巻き返せる、そう思った刹那――

 

「棄権だ」

「え?」

「目的は達成した、僕達は帰らせてもらうよ」

「待て!! 逃げるのか!?」

「そう思ってくれても構わないよ。……カナって言ったかな。FA杯においでよ、そこを勝ち抜けば今度は本気で相手をしてあげる」

 

 そうして鬼道を含め帝国学園はピッチを後にした。

 

「FA杯……」

 

 聞いたことのない大会だ。

 でも、そこに参加すれば本気の帝国学園と戦える。

 

「絶対、強くなるから! 待っててね!!」

 

 カナは帝国学園と熱い試合が出来るようにこれからも努力することを誓い、去っていく帝国学園を見送りながらそう呼びかけた。

 

 

 

 


 

「鬼道さん、よかったんですか? アビドスに勝ちを譲って」

 

 帰りの車の中、帝国学園のメンバーの一人である眼帯をつけた少女――佐久間が鬼道に話しかける。

 佐久間の言葉に鬼道は小さく微笑みながら答える。

 

「構わないよ。予想以上の収穫があったからね」

 

 帝国学園の本来の目的は小鳥遊ホシノ。

 ホシノはアビドスに入学してからサッカー部ではあるものの、一度たりともアビドスサッカー部として試合に出たことはない。

 それは、そもそも砂嵐の影響もありアビドスは廃校寸前にまで追い詰められていた。そこから長い時の間その復興に力を入れており、そんな中で大会に出るような余裕も人材もなかった。

 

 ただ、そんな中でホシノが唯一大会に出た場面があった。

 

 とある高校の助っ人として出場したこと、そして、その圧倒的な実力でチームを勝利に導いた幻のストライカー……別名『暁のホルス』、それが小鳥遊ホシノ。

 そんな幻のストライカーの実力を見るためにアビドスの練習試合を引き受けた。

 

 結果、目的のホシノはフォワードではなくキーパーという予想外のポジションにはいたが、それでもその噂に違えぬ実力を持っていた。

 

 いや、噂が本当なのであれば、幻のストライカーであり、キーパーとしても一流、寧ろもっと評価を上げるべきとも言えるだろう。

 

 そして、収穫はホシノだけではない。

 

 脅威的な突破力を見せたセリカ、鋭いシュートで帝国から1点を奪い取ったシロコ、そしてそんなアビドスサッカー部を立ち上がらせたカナ。

 

「待っててね……か」

 

 最後にかけられた言葉。

 あれだけボロボロにされた相手だというのに、そんな言葉をかけてくるとは。

 

「あれが、アビドスのサッカー部……」

 

 だからこそ、鬼道は心を躍らせているのかもしれない。

 成長し、強くなった彼女達と全力で戦いたいと思ったのかもしれない。

 

「だが、FA杯で戦う時はきっと、更に強くなって向かってくるだろう。僕達も、今よりレベルアップする必要がある」

 

 鬼道の言葉にこくりと、その場の全員が頷いた。

 

「取り敢えずは理事に結果の報告をしないとね」

 

 

 

 

 

 

 


 

「取り敢えずはおめでとう、と言っておきましょうか」

「結果は散々でしたけどね……」

 

 カルナの言葉にアヤネは苦笑いしながら呟く。

 それも同然、結果は相手の棄権による勝利ではあるが、実際のところは1-20での大敗。あのままやっても巻き返すのは難しかっただろう。

 最初から本気で戦っていれば結果はわからなかったが。

 

「それにしても、FA杯、ねぇ……今年から再開する噂は耳にしてたけど……」

「およ、知ってるの?」

「フットボールアビドス杯、通称『FA杯』。アビドス地区の数ある学校の中での一番を競う大会です。確か、砂嵐の影響でずっと中止にされていたらしいですね。確か、復活まではまだまだ先の予定だったはずですが……ま、復興に大変な学校全体への勇気づけってことで早めに復活させた……というところでしょうか」

 

 ホシノはカルナの言葉に頷く。そして、補足するように話す。

 

「砂嵐で大変なことになる前は結構人気だったみたいだよ〜?」

 

 アビドスは元々砂漠地帯であるためにその規模が大きくとも娯楽となるようなものや観光地等も多くない。

 そんな中、ボールと人さえいれば出来るサッカーは貴重な娯楽と言える。

 更には、こんな砂漠地帯で生きてる人間ばかりなのでサッカーという競技においては強者が出やすいというのもある。

 アビドスの環境とサッカーは何かと相性はよかったのだ。

 

「それにしても、よく知ってるねぇ〜」

「生徒会長として、アビドスの歴史にもある程度は触れてないといけませんからね」

「さっすがカルナちゃん」

 

 うんうんと頷きながら生徒会長を任せてよかったとホシノはいつもの雰囲気でカルナを見る。カルナはそんなホシノの視線を感じたのか睨むようにホシノを一瞬見てはこほん、と切り替えるように咳払いをする。

 

「話は戻しますが、確かに棄権とはいえあの帝国学園に勝ったのでサッカー部の存続を認めます。で・す・が! 今まで何の活動すらせずに残してきた分、これからの活動で返して貰わなくてはいけません。今までの分も、サッカー部の維持費はタダではないのですから」

「……確か、FA杯は公式にサッカー協会によって行われる大会だった筈です。そこでいい成績を納めれば賞金も当然出る筈……つまり……」

 

 アヤネの言葉にカルナはこくりと頷く。

 

「話が早くて助かります、アヤネさん。そう、次に貴方達にはFA杯への出場、そして優勝を狙ってもらいます」

「なるほど……つまりそこで優勝すれば今まで活動できなかった分をチャラにしてくれるってことだね」

 

 カルナは再び頷きながらシロコの言葉に続けるように話す。

 

「その代わり、くだらない成績で終わるのであれば今度こそ廃部にします」

「帝国に勝てば存続していいんじゃないの?」

「それは今回の件に関してです! 今後も不利益しか出さないのであれば、正式に審議した上で改めて考え直さなければいけませんから」

 

 サッカー部存続にもお金はかかる。

 これから本格的に活動を行っていくのであれば尚更多くの費用がいるだろう。

 その費用というのは、当然アビドスの貴重な資金から支払われる。

 費用がそこまで多くは必要ない娯楽であればともかく、サッカーのように多くの人数でやるようなもので、大会にも出るような部活であればそれだけ費用も大きくなってくる。それ即ち、その分だけアビドスの復興が遅れていくということにも繋がってくる。

 つまり、多くの費用が必要な部活はそれに見合った活動はしなければならないのだ。

 

「でも、私達のやることは変わらないよね」

「カナちゃん?」

「サッカーをやるなら色んな人と戦いたい、色んな人と戦うなら大会に出る、どうせ大会に出るなら優勝したい。……最初からやることは変わらない、そこに目的が一つ増えるだけ」

「……そうね、どうせ大会に出るなら優勝しなきゃ!」

「はい、そうですね☆」

 

 カナの言葉にセリカとノノミが賛同する。

 言葉に出さずとも、サッカー部全員が同じ気持ちであるようだった。

 

「んじゃ、次の目的はFA杯優勝、張り切っていくよ〜」

「「「おー!!!!」」」

 

 部室にサッカー部全員の一つになった声が響いた。




この世界はイナイレの学校やキャラも出てきますが、世界観はブルアカであるので、原作とはかなりキャラは変わってきます。
つまり、イナイレベースのキャラは基本的に苗字は原作通りですが、性別は女の子でヘイローを持ってたり、性格も原作と違うところが出てきたりする訳です。
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