キヴォトスイレブン!   作:眠り狐のK

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第七話 カタカタヘルメット団戦 後半

「うー、悔しい!!」

 

 セリカがそんなことを言いながらもハーフタイム。

 実際のところ、アビドス内ではトップクラスの攻撃力を持つシロコのシュートが通用しないのだからセリカのシュートが止められても仕方ないことではあるのだが、そこは追求しない。

 それよりも問題なのが、シロコのシュートもセリカのシュートも通用しないということは現状の手札で相手からゴールを奪えるものがないということだ。

 そこをなんとかしなくてはいけない。

 

「でも、やっぱりおかしい気がします⋯⋯」

「確かに、色々不自然なところがあるよねぇ〜」

 

 ホシノが感じていた違和感はアヤネも感じていたようだった。

 仮にも、ホシノは帝国のシュートを止められる実力があり、シロコはその帝国からゴールを奪える実力がある。

 そんな人物を相手に唯の不良がゴールを簡単に奪い、シュートを止めている。

 単純に考えて帝国以上のシュート力とキーパー力があるということになる。

 しかし、ドリブルやディフェンス能力は素人に毛が生えた程度のものだ。

 どんな練習をすればここまで極端なことになるのか。そもそも、仮にドリブルとディフェンスを捨ててシュート力とキーパー力に全てを注ぎ込んだとして、果たしてそんな簡単にあの帝国を超えるシュート力にキーパー力を手に入れられるだろうか?

 

「いや、難しいだろ。あいつら、トウカ以外はちょっと前まで素人だったんだぞ?」

「うん、厳しいと思う⋯⋯」

 

 それは、元々カタカタヘルメット団に所属していたアイとウルカだから言える話だった。

 これらの違和感はガタガタヘルメット団の5人から見ればより強い違和感として浮かび上がってくる。

 数ヶ月前まではほぼ全員が完全な素人だった人間がここまでの力を手に入れている。カタカタヘルメット団それぞれの性格から見ても何か裏がある可能性は高いだろう。

 だが今は試合中、その違和感をゆっくり調べてる余裕はない。

 この試合の中でこの謎を解き明かすか、正面から攻略するかのどちらかしかない。

 

「ねぇ、ウルカちゃん!」

「どうしたのエルちゃん?」

「シロコちゃんのシュートよりセリカちゃんのシュートのほうが効果あったよね! あっちもちょっと焦ってたし!」

「そうなの?」

 

 エルの言葉にウルカは考える。

 シロコのシュートよりもセリカのシュートの方が効果があった。

 エルはガタガタヘルメット団の中で格段に目がいい。ガタガタヘルメット団として活動していた頃、その目の良さに助けられたことも何度かある。そんな彼女が見たものなら信用できる。

 問題は、どうしてシロコのシュートよりもセリカのシュートの方が有効だったのか。

 ウルカの見た感じ、シロコの『ホワイトファング』とセリカの『ガンショット』、この2つを比べれば威力も速度もシロコの方が勝っているように見えた。

 あと違うところと言えば、シュートコースだ。

 シロコのボールは正面から突き破ろうとしているのに対し、セリカのボールはゴールの上側ギリギリを狙っていた。

 

(コース⋯⋯か)

 

 ホシノとアヤネの話していた違和感の中には『純粋なキック力が技術と明らかに離れている』というものがある。

 技術はサッカーを始めたばかりのウルカやエルと相違ないレベルなのに、ホシノの必殺技を破る程の攻撃力がある。

 これは先程も言った通りアイとウルカはより強い違和感として感じていた部分。

 恐らく、ここがあのゴールを突破するヒントになってくるだろう。

 これをキーパーとして当てはめるとするならば、シュートを止めるパワーは持っていても、シュートを止めるための技術はそこまででもないと考えられる。

 

「―――元々カタカタヘルメット団にいた皆さんから見たらどうですか?」

 

 ウルカが考えている間に、アヤネからそう投げかけられた。

 

「あぁ、おかしいね。あたしらがカタカタヘルメット団にいた頃はあんなに強くなかった」

「⋯⋯あれから必死に特訓したとしても、ここまで極端にシュート力とキーパー力だけ強くなるのは流石に不自然かな⋯⋯」

「やっぱり、そう思いますよね⋯⋯」

「クソ、あいつら絶対卑怯な手使ってるだろ!」

「オウカさん、決めつけは⋯⋯そもそも大会の規定でその辺りはきっちりとしてるはずですし⋯⋯」

 

 この部分は皆が共通して理解している部分だ。

 たとえ予選だとしても、試合前の荷物検査はしっかりとされる。

 アビドスは当然受けているし、他の学校だって同じだ。

 だからこそ、ドーピングや試合を妨害するような道具、違法な改造が施された道具なんて使おうものなら、荷物検査できっちり引っかかる。

 試合でそのようなものが使われることはあり得ない、理解はしていてもオウカは納得できていなかった。

 それは、他の人間にも言えることだった。

 誰もが規定上あり得ない話だからと無理やり納得させているが、正攻法でやってきたにしては不自然な点は多くある。

 

「関係ねぇ、勝てば全部同じだ」

「ま、同感だね。ゆっくり調べる時間もないんだし」

「それについて⋯⋯コースを狙うのがいいと思う⋯⋯」

「そうですね、私もウルカさんと同じ意見です。シロコ先輩のシュートよりもセリカちゃんのシュートのほうが有効的に見えました」

「つまり単純な話、力で押さずに触れないシュートを打つのがいいってことですね」

 

 ナノハの言葉にアヤネは頷いた。

 

「でも、今の手札では確実と呼べる技がありません。シロコ先輩の『ホワイトファング』はパワーとスピードは充分にありますが繊細なコントロールまでは難しい、対してセリカちゃんの『ガンショット』は繊細なコントロールは出来ますがパワーもスピードもシロコ先輩に及びません。確実に点を取るなら上手く連携してコースを狙うか、シロコ先輩レベルのスピードをセリカちゃんレベルのコントロール力で撃ち込む必要があります」

「⋯⋯あたしにやらせてくれ」

 

 アヤネの言葉から少し間を置いてアイが手を挙げた。

 これはアイのわがままだった。

 この場で確実に点が取れるような必殺技を使えるわけではない。

 だが、これはアイにとっての因縁の戦いだ。

 かつてはカタカタヘルメット団として共に歩んだ仲間でありライバルだったガタガタヘルメット団。

 彼女達にとって、生きる為とはいえ平気で悪事にも手を出すカタカタヘルメット団にだけは負けたくない、彼女達の手で決着をつけたい相手なのだ。

 アヤネは判断を委ねるようにホシノを見る。

 

「ま、いいんじゃない? おじさんもアイちゃんの気持ちはわかるからねぇ〜」

「⋯⋯でもアイちゃん、必殺技⋯⋯」

「アイさん――」

 

 ウルカの言葉を遮るようにナノハが前に出た。そしてアイに耳打ちをする。

 ナノハの言葉を一通り聞いたアイは意思を固めたように強く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、後半開始のホイッスルが鳴り響いた。

 ボールはフォワードからトウカへ、そしてトウカからミッドフィルダー、ディフェンダーへと下がっていく。

 再びロングパスの構えだ。

 

「っ⋯⋯トウカさんを抑えてください!」

 

 アヤネの言葉にイスズとエルの2人がトウカのマークに入る。

 こうなればシュート力でゴリ押したロングパスであろうと他にパスを回さざるを得ない。

 相手の陣形はトウカを含めたフォワード5人の超攻撃型、前半の流れを見るに恐らくこのパスから一気にシュートまで持っていくのが基本戦術、つまりこの5人からトウカが外れればロングパスの行き先は残りの4人の誰かとなる。

 残り4人の攻撃力は未知数だが、優先的にトウカに回してたあたりトウカ以上のシュートが来ることはないと見ていいだろう。

 

「『すいせいシュート』!」

 

 そして、ディフェンダーからの超ロングシュートが放たれる。

 

「くっ!」

 

 少し遅れてパスコースにシロコが入り撃ち返す形でブロックを試みるが、そのパワーに弾き返されてしまう。

 シロコのブロックもありそのパワーは落ちたものの、結局アビドスのゴール前まで上がっていたフォワードまで届いてしまった。

 

「くらえ、『グロウショット』!!」

 

 そしてフォワードから黄色いオーラを纏ったシュートが放たれる。

 

「『ザ・ウォール』☆」

 

 間に入ったノノミの背後に砂を巻き上げるようにして大きな壁が出来上がり、シュートを防ぐ。

 それでも、トウカと同じように不自然な程にパワーのあるそのシュートは壁を砕いて突き進む。

 だが、壁により大きくパワーを落としたシュートはホシノががっしりとキャッチした。

 

「よ〜し、ここから反撃だよ〜!」

 

 ボールはホシノからウルカへ、そしてカナまで繋がる。

 

「『そよかぜステップ』!」

 

 カナからボールを奪おうと近づく2人のミッドフィルダーをカナはそよかぜステップで華麗に抜き去り、ボールはアイに渡る。

 

「⋯⋯いくよ」

 

 アイはナノハの言葉を思い返しながらゴールへと足を進めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

――必殺技なんて難しいこと考えなくて良いんです。相手からゴールを奪うために何が必要かだけを考えればいいんです――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それが、ナノハがアイに伝えた言葉だった。

 そうだ、必殺技なんてなくてもゴールさえ奪えれば同じだ。

 そして、ゴールを奪うために必要なものもわかっている。

 相手のキーパーは力はあっても技術はない。だからこそただ単純に、ある程度ギリギリのコースに、反応できないスピードのシュートを撃ち込む。ただそれだけでいい。

 そして、アイが持ってる武器は逃げ足――即ちスピードと言い換えてもいい。

 カタカタヘルメット団は目的の為であれば、平気で人を傷つけ、物を奪う。

 それが駄目なこととは言わない。

 不良は学籍を持たない関係上、生きるためにそういうことに手を出してしまうことも仕方ないことだとアイは考えている。

 実際、カタカタヘルメット団から抜け、ガタガタヘルメット団として活動を始めた時も同じように食料を奪ったり、金を拝借したことだってあった。

 そんな彼女達がどうしてカタカタヘルメット団から抜けたのか、その理由は一つ。

 

 

 

 

――カタカタヘルメット団が物を奪うことに慣れてしまったから

 

 

 

 

 正確に言えば、物を奪うという行為に対して、罪悪感というものを感じなくなったのだ。

 生きる為には、欲しいものを手に入れる為には、それも仕方ないと言い聞かせて実行に移すのは、アイ達ガタガタヘルメット団も歩んできた道だ。

 

 

 しかし、それが当たり前だと思ってはいけない。

 

 

 それが許されることだと思ってはいけない。

 

 

 その行為に抵抗を持たなくなってしまってはいけない。

 

 

 だからこそ、アイ達は罪悪感を忘れないようにした。

 出来るだけ、怪我をさせることは避けようと逃げる選択を取り続けた。

 それ故に手に入れた逃げ足。即ち速度。

 逃げ続けたことによって鍛えられたそのスピードこそがアイの最大の武器となるのだ。

 だからこそ、この現状で必要な要素は揃っている。

 難しいことは考えなくて良い。

 ただゴールの端を出来るだけ狙って、全力でそのスピードを乗せて――

 

 

 

 

「――撃つ!!!」

 

 

 

 

 アイの思い切り撃ったシュートは白いオーラを纏いながらどんどんと加速していく。

 

「っ、速!?」

 

 加速したボールは見事に相手キーパーに触れさせることなくゴールへと突き刺さった。

 

「おぉ、これぞアイちゃんの必殺技、『ソニックショット』だね!!」

「エルちゃんが名付けるんだ⋯⋯」

「えへへ、この前ウルカちゃんが名前つけてたの面白そうだったから!」

「エルちゃんアニメとか好きだもんね⋯⋯」

 

 追加点の笛が鳴り得点は2-2、同点へと持ち込んだ。

 ここから、実質的に次の点を取った方がこの試合を制すると言っても間違いではない。

 アビドスにはソニックショット、カタカタヘルメット団にはバーンフラワー、互いが互いのゴールを打ち破る手札を持っている。

 だが、変わらず力でゴリ押ししようとしているカタカタヘルメット団と、カタカタヘルメット団の戦い方を理解し、慣れ始めてきたアビドスで比べればどちらが優勢かなんて考えるまでもない。

 そして、ナノハが一つの作戦をアビドスへと提案し、アビドスはそれを了承する。

 その作戦とは、トウカをマークせずに攻めの体勢に入ることだ。

 現状同点であり、次の点がこの試合の勝敗を分ける大きな点となることは互いに理解しているはずのことだ。

 カタカタヘルメット団はここで確実にこちらより先に点を取ろうと攻撃に移ってくることは容易に考えられる。

 であれば、こちらが同じことを考えたとしても何らおかしくはない。

 実際、この状況で点を取る手札があるのであれば、いち早く点を取りに行くというのは大抵の人は考えつく結論だろう。

 本来であれば、攻めの姿勢を見せながらもトウカへのマークは外すべきではない。

 理由は当然、トウカにボールが渡ってしまえばそのままゴールを破られる可能性が高くなってしまうからだ。

 だからこそ、敗因に繫がる要素は極力避けるのが普通だろう。

 だが、敢えてそれをしない。

 一見すればこれは失点のリスクを増やす愚行のようにも見えるが、この利点は、この状況が一番相手の行動を読みやすいという点にある。

 相手の持つ手札で確実に点を取れる人物がトウカであり、そのトウカがマークされていないのだ。

 つまり、この状況が出来上がれば――

 

「『すいせいシュート』!!」

 

 確実にトウカへとパスを繋いでくる。

 

「『ザ・ウォール』!」

 

 そこを、ノノミの『ザ・ウォール』で止める。

 必殺技を駆使したロングパス、不自然な力から放たれるパス、シロコは力押しされてしまっていたが、冷静に見れば攻略は難しくない。

 強力なロングパスだが、距離が離れれば離れるほどその威力は弱くなる、それに変わりはない。

 少なくとも、相手のフォワードまで届く頃には問題なく取れるレベルまでにその威力は落ちている。そうでなければ、カタカタヘルメット団の技術レベルであのロングパスを取ることなんて出来ないはず。

 それならば、ロングパスがパスの相手に届く直前に奪えばいい。

 そして、ボールはアイへと渡る。

 

「お前にだけは、負けてたまるかぁぁぁ!!!!」

 

 トウカから勢いよく向けられたスライディングをアイはボールと共に跳んで避ける。

 

「っ⋯⋯!!」

「あんたは昔から変わらないね。フィジカルはあたしより強いのに、真っ直ぐすぎる。それに、あたしだってあんたには負けられない!」

 

 トウカを抜き去ったアイはそのままゴールへと近づいていき再び構える。

 

「これで終わり! 『ソニックショット』!!」

 

 そのまま勢いよく足を振り抜き、放たれたボールは一直線にゴールの端目掛けて飛んでいく。

 

 

 

 

――しかし、そのボールはゴールポストへと当たり弾かれてしまう。

 

 

 

 

 

「くっ⋯⋯そ!!!」

 

 試合の決着を決め得る最大の攻撃、それはゴールのギリギリを狙いすぎたのか失敗に終わってしまった。

 いや、まだ終わっていない。

 

「⋯⋯っ、とった!!」

 

 弾かれたボールを取ったのはエルだった。

 

「⋯⋯エル!!」

「ガタガタヘルメット団はみんなでひとつ!! アイちゃんが失敗したときは私達でカバーする!! イスズちゃん!!」

 

 ボールを取ったエルは流れるようにイスズにパスを繋ぐ。

 

「いっけぇぇぇぇ!!!」

 

 そのままイスズから放たれたシュートはゴールの左側へ。

 相手のキーパーはアイのシュートを止めようとした結果ゴール右側で体勢を崩している。

 そんな状態で反対側へと撃たれたシュートを止められる筈もなく、イスズのシュートはそのままゴールネットを揺らす。

 その瞬間、試合終了の笛が鳴り響く。

 

 

 

 アビドスとカタカタヘルメット団の戦いは3対2で幕を閉じた。




この作品は楽しんで書くことをメインに内容より投稿頻度を強くしていきたい方針で作っているので、できればあまり間は開けたくないですね
もっと頑張っていきたいです
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