もしもカービィがポケモン剣盾の世界に転移したとする   作:東雲るぅ

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1か月休んでからゆっくり書くはずだったのに……気が付けば1話執筆していた。とりあえず投げていきます。不定期更新になります。


STAGE2「Journey of trials」
2-1.ターフタウン(前編)


「な、なんでこんなことになっているのかなぁ!?」

「ぷぅ?」

 

 あれから数日後、件のカービィの動画は人気に火が付き、さらに拡散している。

 元動画はついに30万いいねに達し、動画サイトで転載されたものも、100万回再生を超えてしまっている。

 なにより、ユウリの頭を悩ませたのは、このバズりに乗じインフルエンサーたちがこぞって、カービィのダンスを踊りだしていることだ。

 これらの動画も、またたくまに再生回数を稼ぎ、カービィダンスとカービィの存在は、急速に浸透していっている。

 

 しかもこのタイミングで、学会で、マグノリア博士と助手のソニアがある発表をおこなった。

 それこそ未知のポケモンである『まんまるピンクポケモン カービィ』の図鑑登録である。

 

 このニュースにより、カービィの存在はさらに大きな注目を集めた。

 しかもガラル地方だけではなく、他地方においても関心が注がれている。

 

 この状況の中、ユウリが注目されているのは当然のことだった。

 カービィは現在、世界でたった1匹しか観測されておらず、ユウリのみが所持している。

 ジムチャレンジはガラルにおいて最も大きなイベントのひとつ。

 そこにチャレンジャーとして参加する時点で一定数の知名度を得るだろう。

 だが今回の件により、爆発的な勢いで人々に認知されてしまったのだ。

 

『カービィを連れているこの子って、確か今年ジムチャレンジに参加するんだよね?』

 

『ハロンタウン出身って、ああ、チャンピオンダンデと同じ出身地なのか。そういえば弟も今年のやつに参加していたっけ?』

 

『他動画で確認したんだけど、カービィ強くね? 4匹相手に瞬殺って、多分ジムリーダーの本気の手持ちに匹敵するぞ、こいつ』

 

『そもそもユウリって子、あのチャンピオンから推薦されたんだから、さぞ実力のあるトレーナーなんでしょうね』

 

『今年のトリはユウリって子でしょ。大穴でダンデの弟と……次にジムリーダーネズの妹ちゃんかな』

 

 

「あわわわわ」

 

 ユウリは、パニック状態になった。

 自分がネットで注目の的になっている。

 名前も顔も知らない大勢の人が、自分のことについてつぶやき、あるいは議論している。

 

 ついこの前までのどかな牧場で昼寝したり、カレー作りを嗜んでいた。

 それが、なんだかよく分からないうちに、今年のジムチャレンジャーで最も注目度が高い選手となっているのだ。

 

 ユウリは別に、有名人になりたいとか、大物になりたいとか、そんな風に思ったことはない。

 承認欲求があるわけでもない。

 だから、現状では嬉しさなんてなく、困惑と焦りが募った。

 

 ポン、とスマホロトムの通知が鳴る。ホップからのメッセージだ。

 

『すっかり有名人だな! オレだってアニキとユウリより強くなって、もっと有名人になってやるぞ!』

 

 そんなことを言うくらいなら今の自分と代わってほしい。ユウリは心底そう思った。

 

 母からも、メッセージが来た。

 

『がんばりなさい。ユウリはユウリのペースでね』

 

 その言葉でユウリは落ち着きを取り戻すことができた。

 

 

 ★

 

 

 それから、ユウリは3ばんどうろを進んだ。

 道中、視線が合った何人かのトレーナーとポケモンバトルをおこなった。

 もちろん、彼らとのバトルではカービィ以外の手持ちを戦わせた。けいけんちを稼ぐためである。

 その甲斐あってか、ユウリの手持ちのうち2匹が進化した。

 ココガラがアオガラスに、ヒバニーがラビフットに。

 カービィに頼らずとも、ユウリはもうすでに一端のポケモントレーナーであった。

 

 

 ★

 

 

 ユウリは、カービィのことを知る必要があると思った。主にバトル方面についてだ。

 カービィはコミュニケーションを取れるし、簡単な単語なら発することができる。

 だからユウリはいくつか質問を投げて、答えてもらった。

 

「カービィはどれくらいの能力を使えるの? 大体の数を教えて」

「ごじゅう!」

「50くらいね……ありがとう」

「ぽよ」

 

「もしカービィがその……以前のように炎の力を得た状態だと考えてみて」

「うい」

「その状態の時、水の攻撃や岩の攻撃をくらったとする。その場合は、普通の攻撃より2倍くらいのダメージを感じる?」

「むー、ぽよ」

「つまりそれは肯定って捉えていい?」

「ぽよ!」

「じゃあ逆に草の攻撃や、炎の攻撃は、半分くらいのダメージを感じる?」

「はぁい」

「なるほど、それは正解ってことだね」

「うい!」

 

 このようなやりとりをし、ユウリはカービィから情報を引き出した。

 まずカービィの能力は、口に取り込んだものに応じて、能力を得るというもの。その数はおおよそ50。

 次に、カービィは変化した姿によって、タイプが変動する。ファイアならば、ほのおタイプに。ウォーターならば、みずタイプに。

 これはダンデ戦でユウリが立てた仮説通りであった。

 今後のポケモンバトルの際は、カービィの変化した姿がどのタイプなのかきっちり把握し、それらを考慮した作戦を組み立てていく必要があるだろう。

 そしてカービィが召喚した謎の飛行物体。

 あれはワープスターといい、カービィの意思によっていつでも呼び出せるのだ。

<そらをとぶ>のように移動にも使えるし、バトル中にワープスターに乗ることで空中戦も可能なのだ。

 

 新人トレーナーのユウリでも、その能力の異質さを実感できる。

 

 ポケモンとはそれぞれ固有のタイプが定まっている。そして使用するわざは4つ以上覚えることはできない。

 ところが、カービィは獲得した能力ごとにタイプが変動し、それに応じて複数の違うわざを使いこなす。

 タイプ相性とはポケモンバトルにおいて、絶対の法則だ。すべてのタイプを使いこなすということは、すべてのポケモンの弱点を突けるのと同義。

 そして50以上の能力を持つのならば、それに準じて膨大なわざを使えると考えられる。

 

(こんなの……普通じゃないよ)

 

 仮にその異能がなくとも、通常ステータスは並のポケモンを凌駕している。

 ワープスターによる高度な空中戦闘と、身体能力を活かした地上での近接戦闘を両立させている。

 ユウリは、カービィという存在に対して、あらためて戦慄したのであった。

 

(たぶんだけど……カービィだけでジムチャレンジは突破できちゃいそう……)

 

 ……といった具合に、あくまで今回ユウリが質問したのは、ポケモンバトルに必要な情報のみに限る。

「どこから来たのか?」「他に仲間は?」

 そう聞けば、どう答えればいいのか分からないような表情をするからだ。

 

 それにユウリにとって、カービィが何者かなんてどうだってよかった。

 自分を信頼してくれた、相棒。ただそれだけで十分なのだ。

 

「いっぱい教えてくれてありがとうね! 今日のお昼は大盛キムチカレーだからね!」

「はぁい!」

 

 それに、毎度美味しそうに手作りカレーを食べてくれる。

 ユウリにとって、これがたまらなく嬉しいのだ。

 

 

 ★

 

 

 3ばんどうろを突破したユウリたちは、ガラル鉱山の中を進んだ。

 ガラル鉱山は、エンジンシティとターフタウンをつなぐ位置にある、鉱山である。

 ここではねがいぼしが採掘されており、いたるところにねがいぼしが地面に埋まっている。これにより内部が明るく照らされており、安心して鉱山内を歩くことができるのだ。

 

「あなた、たしかユウリ……という名前でしたっけ。たしかチャンピオンに推薦された、希少なポケモンの使い手……」

 

 鉱山の出口付近にたどりついたユウリたちの前に、ひとりの少年が現れる。

 

「君はだれ?」

「ぽよ」

「ふん、僕はビート。委員長に直々に推薦されたジムチャレンジャーです」

「そうなんだ、おたがい頑張ろうね」

 

 ユウリがそう声をかければ、ビートは鼻で笑った。

 

「はっ、頑張る? くだらない。あなたと僕は同列じゃない。

 僕は委員長に推薦された人間だ。

 いいかい? リーグ委員長はチャンピオンより偉い。すなわち、これは僕がもっとも偉く、チャンピオンの座にふさわしいということだ」

 

 ユウリは、眉を下げた。

 

「うーん、それは君の感想じゃないかな?」

「いいでしょう。特別に、無知なあなたに教えてあげましょう。僕の強さをね……」

「……カービィ、さっさと倒しちゃおっか」

「ぷい」

 

 ユウリと、ビートの視線がぶつかりあう。

 ポケモンバトルの合図だ。ビートは、どこかユウリを蔑むような目をして、モンスターボールを取り出した。

 

「知らしめてやりなさい、ユニラン」

「カービィ、お願い」

 

 ビートが繰り出したのは、ユニランだ。

 相対するのは、カービィである。

 

 まず、先手を打ったのは、ユニランだ。

 

「<サイケこうせん>です!」

 

 ユニランの中心に、光が集まり、それが波状に広がってカービィに襲いかかる。

 

「カービィ、しゃがんで」

「ぷい」

 

 次の瞬間、カービィの体がまるで押しつぶされたように、ぺしゃんこになった。

 カービィは柔軟な体をしている。まるでペラペラの紙のように体を縮こませられるのだ。

 これによりサイケこうせんは、カービィの真上をすり抜けていった。

 

 ビートは、虚を突かれて、声をだす。

 

「なっ、まるでメタモンのような軟体な体ですね! ならば、次は地面に向けてうち放つだけです」

「悪いけど、こっちが攻撃する番だよ。カービィ! 接近して、吸い込み!」

 

 ユニランがもう一度、サイケこうせんを放とうとする。

 だが、それよりも早くカービィが肉薄し、口を開けて、ユニランをほおばった。

 

「ユニラン、そいつの体内から急いで脱出しなさい!」

「カービィ、壁に向かってはきだす」

「ぷいっ」

 

 ぺっ、とカービィは口からユニランを吐き出した。

 吐き出されたユニランは、ものすごい速度で壁に激突し、めりこみ、動かなくなった。

 ユニランは戦闘不能となった。

 

「バカな! ぼくのユニランが一撃で!! それもあんなふざけた攻撃で! くそっ!!」

 

 ビートは、眉間にしわを寄せながら、次のポケモンを繰り出そうとしている。

 

「カービィ……今回は能力を使わないでね。能力なしでもどれだけ戦えるのか確かめたいから」

「うい」

 

 それから、カービィは圧倒的な速度とパワーで、ビートの手持ちポケモンを蹂躙した。

 2匹目のミブリムは、スライディングで蹴とばして、戦闘不能に追いやった。

 3匹目のゴチムは、地中に埋まった鉱石を吸い込み、弾丸のように打ち当てて、撃破した。

 

「な、な、な……」

 

 ビートは、唖然としていた。

 このビートという少年は、プライドが高く、他のジムチャレンジャーを見下すような言動を取っていた。

 そんな彼だからこそ、この惨状を受け入れられないのだろう。

 自分の手持ち3匹が、なすすべもなく秒殺されてしまった。ユウリとの隔絶した実力差を、見せつけられてしまった。

 

 彼のプライドが木っ端みじんに砕け散る音が、聞こえた。

 ビートは、視線をゆらゆらと揺らし、現実を受け入れられていないようだった。

 

「そんなことが……あってたまるのか。そうだ、ぼくは、ぼくはチャンピオンにならないと……委員長に認められないと……」

 

 ビートは、トボトボとユウリたちに背を向けて去っていく。

 ユウリは、申し訳なさそうにつぶやいた。

 

「なんだか……すごく悪いことをしちゃったような気がする」

「ぽよ」

「あはは、とりあえずお昼作ろっか」

「はーい!」

「今日はカレーラーメンとカレーうどん、どっちがいい?」

「かれーらーめん!!」

「うんうん、じゃあそっちにするね」

 

 

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