もしもカービィがポケモン剣盾の世界に転移したとする   作:東雲るぅ

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2-4.バウタウン(後編)

 バウタウンは海沿いの港町だ。

 沿岸にただよう漁船。吹き付ける潮風。

 田舎のハロンタウンにいたユウリにとっては、新鮮な光景である。

 

 海岸に近づいたユウリは、シューズと靴下を脱いで、裸足で海の水に浸かる。

 一方、カービィはというと、勢いよくジャンプして、海に飛び込んだ。

 水につかった瞬間、どういう原理なのか、カービィの目元付近に青色のシュノーケルが現れ、勝手に装着されている。

 

 ユウリは、摩訶不思議に思った。

 

(ん? あれも何かのわざなのかな? あるいはとくせいだったり?)

 

 共にいればいるほど、カービィへの謎は増えていくばかりだ。

 もはや、魔法だとか超常現象だとか、理屈など忘れてそういうものだと納得したほうがいいのかもしれない。

 

 

 ★

 

 

「あの、突然でびっくりしています。まさかあのローズ委員長がわたしたちのこと知っているなんて」

「ああ、君のことはかねがね聞いています、ユウリ君。そして君のポケモンのこともね」

 

 場所は、バウタウンのシーフードレストラン。

 席に座るユウリ。その隣には海鮮料理の数々を美味しくほおばるカービィ。

 対面には、ローズ委員長。そして金髪のグラマラスな美女──秘書のオリーブが座っている。

 

 海沿いで一通り遊んだユウリたちは、ポケモンセンターに向かった。

 その道中で、ローズ委員長と秘書のオリーブに遭遇したのだ。

 そして彼らからの誘いで、このシーフードレストランで食事の席についた。

 

「あらためて挨拶をしましょう。私はローズ。ガラルポケモンリーグの委員長を務めている。もっとも普段はマクロコスモスの社長として日々に追われているがね」

 

 ローズは、コーヒーをすすりながら、続けた。

 

「今日こうやって、君たちの貴重な時間を頂いたのには、理由がある」

「はい」

「もちろん君が今、昨今で話題のジムチャレンジャーであるというのも理由のひとつです」

「話題……ですか」

 

 ユウリ自身、どこか漠然としている。

 つい最近まで、田舎でのんびりと過ごしていた。

 それがカービィと出会い、ジムチャレンジに参加し、

 

「君はあのチャンピオンダンデから直々に推薦を受けた。

 特に経歴もない、新人トレーナーをチャンピオンが推薦した。それだけで注目に値する。

 だが、君が所持している新種ポケモンのカービィが一番の要因だ」

 

 そう言って、ローズはちらりと、食事に夢中になっているカービィへ、視線を送る。

 

「先日、マグノリア博士と助手のソニア女史が発表した新種ポケモン、<まんまるピンクポケモン カービィ>。

 カービィは、取り込んだ物質に応じて、姿や性質を変化させるという。

 だが、私が最も注目したのは、カービィが無限に匹敵するエネルギーを、体内に宿しているということだ」

 

「無限……」

 

 それは、ユウリの知らない情報だった。

 

 そういえば、ポケモン研究所で、ソニアがそのようなことを呟いていた。

 マグノリア博士が執筆したとされるカービィについての論文は、学会に提出されているそうだが、いまだに一般公開されていない。

 ローズは、未公開の論文を閲覧し、そこからカービィの持つ『無限の力』の情報を得たのだろう。

 

「ユウリ君、君は『エネルギー枯渇問題』というものを知っているかい?」

「いえ……」

 

 なんだか、難しそうな話に突入してきた。

 ユウリは正直、ポケモンバトルとカレー以外あまり興味がない。多分、話についていけない。

 

「そうだね、君は子どもだし、難しい話だと思う。

 端的に言うならば、将来、ガラル地方で利用できるエネルギーはすべて枯渇する。

 そうなれば、ガラル地方で人とポケモンは生きることができなくなる。

 私はそれを、なんとか解決したいと考えている」

 

「それは、いつ頃なんですか?」

 

 ユウリが尋ねると、オリーブが代わりに答えた。

 

「1000年後です」

「せ、せんねん、そんな先の話なら、今考えなくてもいいんじゃないですか?」

「いえ、ユウリ選手。ローズ社長は、遠い未来だからこそ危機感を抱いているのです」

 

 ローズが口を開いた。

 

「『1000年後なら、今は考えなくてもいい』と、今考える。

 そうして500年後になれば、未来で生きる誰かは『あと500年後なら、まだまだ大丈夫』と思うでしょう。

 そうして、未来の人々によって、問題解決はどんどん先延ばしにされるかもしれない」

 

 ローズは憂いを帯びた瞳をしていた。

 

「私はそれが恐ろしい。

 ガラルは永遠に安定して、発展しつづける。

 それが私の理想なのです。

 だから、このエネルギー枯渇問題は必ずクリアしなければならない。

 今すぐにでも、ガラルが滅びる可能性を潰しておきたい」

 

「それは……素晴らしい理念だと思いますよ……」

 

 ユウリは、鬼気迫る表情を浮かべるローズに、そう言うしかなかった。

 

 ユウリは、未来のことなんて一ミリを考えていない。

 カービィのこととか、カレーのことだったり、ポケモンバトルで頭が一杯なのだ。

 

「ああ、つい話が逸れてしまったね。

 話を戻しましょうか。

 現在、マクロコスモスでは、私主導で、このエネルギー枯渇問題を解決するためにある計画を進めている。

 ただ、その計画が100%成功するという保証はない。

 だから、予備プランとしてカービィの力を貸してほしい」

 

 ローズは、続けた。

 

「カービィは、無限の力を秘めた存在。その力を代用すれば、1000年後のエネルギー枯渇問題は解決されるでしょう」

「……具体的には、カービィに対してどういった風にしてほしいのですか?」

「そうだね、頭に構想はあるのだが、今は漠然としているんだ。だからどう話せばいいのやら……」

「うーん」

 

 つまり、カービィを用いた予備プランについては、まだ計画は練られていないということか。

 

「今日はあくまで、将来、君と君のカービィに協力してもらうかもしれないことを、伝えに来たんだ。

 最終的に、この予備プランも白紙になるかもしれない。

 だから君はこの件について、頭の片隅に留めておく程度で大丈夫です。

 君は今まで通り、ジムチャレンジを続けて、ガラルを活気づけてくれれば、それでよいのです」

 

 そうして、ローズ委員長との話は終わった。

 その後、ユウリたちは食事を終えて、シーフードレストランを出る。

 ローズとオリーブの二人と別れる直前、ローズがユウリへこう言った。

 

「……ただ、ユウリ君は、自覚した方がいいかもしれない。君自身が周囲にどんな影響を与えるのか」

「わたしはそんな大したもんじゃないです。カービィがすごく強くて、そんなカービィとたまたま仲良くなっただけなんです」

「それだよ。君が持つそのポケモンは、大いなる力を秘めた存在です。そしてそんな大いなる力を持つ存在を、君は手にしてしまっている」

 

 ローズは、諭すようにユウリへ言う。

 

「巨大な力には、それに匹敵する責任が付随する。

 君は、まだ子どもです。

 しかしカービィを所持している君は、その責任の一端をすでに受け負わざるを得ない。

 今はまだその時ではないのでしょう。

 しかしいずれ、君はその責任を自覚し、背負わなければならない日が来るはずだ」

 

 それからローズは「脅しつけるようなこと言ってしまってすみません。ジムチャレンジを応援しています」と最後に言い、オリーブを連れて、去っていった。

 

 2人と別れたあと、ポケモンセンターに向かう間、ユウリの頭の中で、ローズの言葉がずっと響いていた。

 

(……わたしには責任とか、よくわかんないや)

 

 ユウリは、すぐ隣を歩くカービィに視線を移す。

 いつものように、のほほんとした顔をしている。

 きっと頭の中は、お昼寝かゴハンのことでも考えているのだろう。

 

「カービィは、自分の持つ力に責任を感じたりするの?」

 

 そう、ユウリは問いかけると、カービィは「ぷい?」と首をかしげる。

 何を言っているのか、ちんぷんかんぷん。そんな様子だ。

 

 その態度に対して、ユウリは呆れたようで、どこか安堵したかのような息をつく。

 

(まぁ当の本人がこんな感じだし、その時が来れば、考えればいいのかもね)

 

 ユウリはしゃがみこんで、カービィの頭を撫でる。

「うわぁい」とくすぐったそうにするカービィを見て、ユウリは目を細めた。

 

 

 ★

 

 

「わにゃわにゃ、わにゃわにゃ」

 

「はーい、ちょっと待ってね! 今ビーフシチューができたからね!」

 

「わにゃ!!」

 

 ブラッシータウンにある、ポケモン研究所。

 その所内で、ソニアがバタバタしている。

 その周囲を丸っこいやつらが動き回っている。

 

 彼らは、ソニアが拾ったワドルディたちだ。

 計10体のワドルディたちは、それぞれが別のことをしている。

 ホウキを手にして熱心に掃除をしている者。研究所内の本棚の整理に励んでいる者。

 ソニアのワンパチと走り回っている者や、コック帽を被りソニアの料理を手伝っている者。

 あるいは廊下で寝そべってグータラしている者など、十人十色である。

 

「はい! できました。 さあ! みんな椅子に座って!」

「わにゃっ」

 

 エプロン姿のソニアが、テーブルにシチューが入った鍋を置く。

 それにつられて、ワドルディたちはテーブルにぞろぞろと集まってくる。

 用意された10席の椅子に座ったワドルディたち。

 

 最後に着席したソニアは、手を合わせる。

 ワドルディたちも、それにならって手をあわせた。

 

「いただきます」

「わにゃわにゃわにゃ!」

 

 これが、ここ最近のポケモン研究所の光景である。

 

 ワイルドエリアでワドルディたちを拾ったソニアは、彼らを連れて、ブラッシータウンの研究所に戻った。

 それからマグノリア博士とともに、ワドルディを調べて、データを集め、学会に発表するための準備を整えているのだ。

 

 今日は、マグノリア博士は不在である。

 マグノリアは、ワドルディの研究データとそれに関する論文の原稿を携え、シュートシティに向かったのだ。

 つまるところ、本日ソニアはお留守番なのである。

 

 ワドルディたちと共に昼食のシチューを口に運びながら、ソニアは、リモコンをさわり、テレビの電源をつける。

 適当にチャンネルを変えていると、ふいに目に留まる。

 

 それは、テレビ中継だ。

 現在、バウタウンでおこなわれているジムチャレンジがうつされている。

 広大なバトルスタジアムを、上空から映している映像だ。

 次にカメラが切り替わり、スタジアムの中央が映された。

 

 中心のバトルコートには、ふたりのトレーナーがいる。

 かたや、褐色肌のスレンダーな女性。

 もう片方は、特徴的な緑のベレー帽を被った少女と、プリンのようなピンクボールのポケモン。

 

「ユウリとカービィじゃん。もう2バッジ目まで来ているんだ。はや……」

 

 ジムリーダーの水タイプ使いのルリナ。そして、ユウリと相棒のカービィだ。

 どうやら、試合がちょうど開始するところだったらしい。

 ソニアは、食い入るようにテレビに見入っていく。

 

 カービィについては未だに謎が多い。

 ソニアは曲がりなりにもポケモン博士の卵だ。カービィの考察を深める絶好のチャンスを逃すわけにはいかない。

 

「わにゃわにゃっ」

 

 ワドルディたち全員が食事の手を止めて、テレビのスクリーンに視線を送っている。

「わにゃわにゃ」と何か話し合っていたり、「わにゃっ!」と手を振ってカービィに声援を送っている者がいる。

 

(やっぱり……ワドルディたちはカービィのことを知っているみたいね)

 

 ワイルドエリアの時もそうだったが、カービィとワドルディはお互いに面識があるらしい。

 ただ、それはポケモン同士の共生関係というよりは、人間同士の友人関係に近い。

 

(カービィと同じように、結局、この子たちのこともよくわからないままなのよね)

 

 ワドルディも、カービィと同じように、未発見のポケモンだ。

 ただ現在10匹確認されている点で、1個体だけのカービィとは違う。

 

(もしかしたら、ガラルのどこかでもワドルディたちが出没しているのかもね)

 

 突然、新種のポケモンが各地に出没しだすという事例は稀にあるという。ワドルディもそのパターンに当てはまるのだろうか。

 

(おっと、考えに耽っていたら、もう試合が始まっちゃった)

 

 試合の映像が流れる。

 

 まずユウリが、カービィをバトルコートに立たせた。

 そしてルリナは、先鋒のトサキントを繰り出す。

 

(今回、ユウリはどんな感じで攻略するのだろう?)

 

 ソニアは、ユウリのヤロー戦攻略を、ネットで流れた映像で見たことがある。

 その時は、どうぐをカービィに飲ませて、こおりタイプに変身させて、相手を瞬殺した。

 

 同じ手法を使うなら、今回は────

 

 ソニアの予想通り、ユウリが『道具を飲み込んで』と指示を下す。

 そして、カービィは手に持った『かみなりのいし』をのみこんで、コート外へ吐き捨てた。

 カービィの姿が、変わる。

 頭にほとばしる冠を被った姿。スパークカービィだ。

 

(終わったわね)

 

 ソニアは、この後の試合展開を容易く予想できた。これからカービィが、すべてをなぎ倒す。

 

 まず、ルリナのトサキントは<こうそくいどう>で自分のすばやさを上げる。

 それからカービィに接近し<つのでつく>を仕掛ける。

 だが、その攻撃はカービィの前にまったく意味をなさない。

 

 ばちっ、とカービィの体から緑の電気が走る。

 そして、カービィを覆うように円形状に電気が放たれた。

<スパークアタック>だ。

 

『っ、トサキント、後退して!』

 

 そんなルリナの指示もむなしく、トサキントはそのままカービィに突っ込み、電気に巻き込まれ、戦闘不能になった。

 

 トサキントを戻したルリナは、次にサシカマスを繰り出す。

 するとユウリは、奇妙な指示を出した。

 

『カービィ、動き回って』

 

 ユウリの命令通り、カービィは周囲をくるくる回ったりしている。

 対戦相手のルリナも、スタジアムの観客も、ユウリの謎の指示に困惑しているようだ。

 煽りというわけではなさそうだ。では、なぜあんな無意味で隙だらけなことをしているのか。

 

(いったいなんであんなことを……あ!)

 

 かつてはジムチャレンジャーであり、現在は研究者をしているソニアだからこそ、誰よりもいち早く気が付いた。

 

 カービィの周囲に、ばちばち、と電気が帯び始めている。

 おそらくあれこそが、今のカービィの特性なのだろう。

 動けば動くほど、カービィは電気を帯電し、エネルギーをチャージできるのだ。

 

 ルリナはようやくそれに気がついたのか、焦ったように声を出す。

 だが、その時にはもう手遅れだった。

 

『サシカマス、みずのはどうで妨害して!』

『カービィ、スパークアロー』

 

 無慈悲に下された、ユウリの命令。

 カービィの手から、電気の矢が放たれる。

 スパークアローは、緑の軌跡を描きながら、サシカマスを打ち抜いた。

 サシカマスは戦闘不能になった。

 

 こうして、ユウリはわずか数分で、ルリナの手持ちを二匹撃破した。

 とうとう、ルリナの手持ちは最後の一匹になってしまった。

 

『最後の一匹じゃないの。隠し玉の一匹よ! いきなさい! ガジリガメ!!』

 

 ルリナは、ガジリガメを繰り出した。

 そしてルリナは、ガジリガメを再度モンスターボールに戻す。

 肥大化し、赤く発光するモンスターボール。それを天高く投げる。

 

 ボールから、キョダイマックスしたガジリガメが現れた。

 

『ururururuuu!!!』

 

 咆哮が、スタジアム内にとどろいている。

 相対しているカービィは平然としていて、ユウリも冷静にガジリガメを観察しているようだった。

 

『喰らわせてやりなさい、ガジリガメ、ダイロック!!』

 

 ガジリガメが繰り出したのは、岩タイプのダイマックス技だ。

 スタジアムに現れた、巨大な大岩。それがカービィめがけて落下する。

 

 ユウリは、焦ることなく指示する。

 

『カービィ、走って移動して』

 

 カービィは指示通り、走る。落下してくる大岩の範囲外へ逃れようとしているのだろう。

 

 ソニアは意外に思った。

 ヤロー戦のように、ワープスターで飛行すれば、より安全にダイロックを回避できるだろう。

 なぜわざわざ、ダッシュで回避しようとするのか。

 

 だが、ソニアは気が付く。

 このダッシュは、ダイロックを回避するためのものではない。

 

 カービィの今の特性はなんだ?

 そう、動けば動くほど、電気エネルギーをチャージできる。

 走るということは、よく動く。

 なら、さっきより素早くチャージできるはずだ。

 

 ガジリガメの放ったダイロックが、あとわずかでカービィに直撃する。

 その時、ぱちぱち、と疾走するカービィの周囲に、電気エネルギーが急速に集まる。

 それが、カービィを包み込むほど膨大な電気の塊となった。

 

『カービィ、限界までチャージできたね。<プラズマはどうほう>』

 

 カービィは、フルチャージした電気エネルギーを放出する。

 質量をともなった電気の塊は、落下してくるダイロックを粉砕し、そのままダイマックスしたガジリガメを貫いた。

 

『ギュギギ』

 

 ガジリガメは戦闘不能となり、元のサイズに戻って倒れた。

 

『……いくらなんでも強すぎない?』

 

 ガジリガメをボールに戻しながら、ルリナがぼそっと呟いていた。

 

(これはもはや『対戦』と呼べるのかしら……?)

 

 ソニアは、この時ばかりはルリナを不憫に思った。

 

 その後、ジムリーダーを突破した証として、ユウリはルリナからジムバッジを贈呈された。

 そしてカービィはというと、毎回恒例の勝利のダンスを披露し、観客席を大いに沸かせたのであった。

 

 ソニアは、リモコンに触れて、チャンネルを切り替える。

 それから、ソニアはため息をついた。

 

「あいわらず、化け物みたいな強さね……」

 

 それが、あのダンデ戦の試合から、ソニアがカービィに抱いていた印象だ。

 その印象は、むしろ、より強固になっていく。

 

(ジムリーダーが何らかの対策を……なんて無理な話ね。そもそもスペックからして違う)

 

 カービィのノーマル状態でも、身体的な能力は、ダンデのリザードンをやや上回る。

 ジムリーダーが使用するポケモンは、ジムチャレンジ用に用意されたポケモンであり、彼らが本来使用するポケモンより、弱い。

 そんなポケモン程度では、カービィの攻撃に耐えられないし、決定打となるダメージも与えられないのだ。

 

(それに、カービィの特性……。アレが一番異常だわ)

 

 カービィの特性。吸い込んだものに応じて、フォルムチェンジする。

 それに伴い、タイプや使用する技が変化するのだ。

 他のポケモンにはない、異質な能力だ。

 そしてそれは、従来のポケモンバトルの常識を覆す。

 

 ──ポケモンバトルにおいて、タイプ相性は勝負を左右する。

 

 この言葉を、幼少期のソニアは、トレーナーズスクールで腐るほど聞いてきた。

 

 ポケモンは固有のタイプを持つ。

 それぞれタイプのわざがあり、ポケモンはたった4つしかわざを覚えられない。

 

 相手のタイプ相性。

 お互いの持つわざのタイプ相性。

 目まぐるしい試合の中、それらを読み合い、駆け引きをおこなう。

 それこそが、ポケモンバトルの神髄だ。

 

 だが、こんなポケモンが現れた。

 桁違いのスペック。

 そして数えきれないほどの形態を持ち、その姿に応じたタイプと膨大な数のわざをもつ。条件付きではあるが、自分の形態を自由に変化させることができる。

 

 ソニアは思った。

 このポケモンは、誰にも止められない。

 

 

 

 

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