もしもカービィがポケモン剣盾の世界に転移したとする   作:東雲るぅ

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剣盾をプレイしたの3年前なので内容をあんまり覚えていない。がんばって書きます。


1-2.ハロンタウン

 目が覚めたカービィは、そこがいつもの自分の家ではないことに気が付いた。

 部屋は、おしゃれなアンティークで彩られている。この内装のセンスは、食べ物と昼寝以外興味がないカービィには持ちえない。

 そしてカービィのすぐ横で、誰かが眠りについている。

 

「んんむぅ……」

 

 寝息を立てている、あどけない少女の顔。

 カービィは、眠っているユウリを起こさないように、ベッドから降りる。

 

 カービィは思考する。

 自分が降り立ったこの場所は、いったいどこだろう。

 どうやらここはポップスターではないようだ。

 この世界では、人間と、ポケモンと呼ばれる不思議な生き物が暮らしている。

 銀河を旅したことがあるカービィでも、こんな場所は知らない。

 

 ひょっとするとここは、どこか別次元の異世界なのかもしれない。

 カービィは似たような経験をしたことがある。

 

 少し前、カービィはプププランドで暮らすワドルディたちと共に、『新世界』と呼ばれる異世界に飛ばされたことがあった。

 その時も、ワドルディたちを救出しつつ、巨悪を倒し、異世界の冒険生活を謳歌していたのだ。

 その後、無事に『新世界』からプププランドに帰還できたことは、言うまでもない。

 

 これから自分はどう行動しようか、とカービィは計画を練る。

 やがて、あるひとつのプランを組み立てた。

 

 ……とりあえず、明日も美味しいゴハンをたくさん食べよう。

 

 カービィは悩みのないヤツである。

 雄大な正義の心を持っているわけでも、大きな葛藤に苛まれているわけでもない。

 ただ毎日、気持ちよく昼寝ができて、美味しいご飯を腹いっぱい食べられたら、それで十分なのである。

 とてもプランとは言えない、行き当たりばったりさだ。

 しかしカービィは能天気な性格なので、これ以上複雑なことは考えられなかった。

 

 

 ★

 

 

「おっす、おっすー。おぉ! ユウリ、ついに自分のポケモンを捕まえたのか?」

「うーん、捕まえた⋯⋯のかな?」

 

 あれから1週間がたった。

 この1週間で、ユウリはカービィの行動に慣れつつあった。

 毎回ごはんの時間になれば、手あたり次第ユウリ家の料理を食い尽くすのも、日の当たるウールー牧場でよくお昼寝しているのも、突然体を風船のようにふくらませて、ホバリングするのも。

 

 その日は、ユウリの自宅に、幼馴染であるホップが訪れた。

 ホップは、ここ1週間ほど旅行に出かけていて、つい先日ハロンタウンに戻ってきたのだ。だからカービィと対面するのはこれが初めてだ。

 

「へぇ、こいつ、色違いのプリンなのか……」

「違うよ、ホップ……」

「じゃあ、プリンの進化先のポケモンだったり?」

「それはプクリンだよ」

 

 それからユウリは、ホップにカービィと出会うまでのことを話した。

 するとホップは、興味津々にカービィに視線を送る。カービィは、こてん、と首をかしげながら、ホップを見つめる。

 

「よろしくな!」

「はーい!」

 

 カービィは元気に手を挙げて挨拶する。

 カービィはかなり温厚な性格だ。

 初対面であるユウリの自宅にホイホイと付いて行くし。警戒心がとにかく薄いのだ。

 悪い人に簡単に騙されてしまいそうで、ユウリは心配になる。

 

「ユウリのカービィは凄くいいポケモンだぞ。これで、ユウリも立派なポケモントレーナーだな!」

「ポケモントレーナーね……」

 

 ユウリは、イマイチ実感がわかない。

 カービィは、気まぐれにゴハンを食べて、お昼寝する。

 手持ちポケモンというよりは、野良ニャースのように我が家に住み着いているだけだ。

 

 ホップがはにかみながら話題を変えた。

 

「話が変わるけどさぁ、ユウリ、アニキがもうじき帰ってくるんだ。……あーあ、ジムチャレンジの推薦くれないかなぁ」

 

 ウキウキと体を揺らしているホップに対して、ユウリは目を伏せた。

 ジムチャレンジ。その単語が、ユウリの胸の中に落ちていく。

 そんなユウリを、カービィは目をぱちぱちさせながら、見つめていた。

 

 

 ★

 

 

「久しぶりです。ダンデさん」

 

 数日後、ユウリは、ホップの自宅に向かう。

 ホップの家にあるバトルコートに、ホップと、隣にホップにどこか面影が似た男がいた。

 様々な企業のロゴが刻まれたマントをたなびかせた、青髪の青年。彼こそがホップの兄──チャンピオンダンデである。

 

「懐かしいな、ユウリ。ずいぶん、大きくなったな」

「はい、もう何年も直接会っていませんでしたから」

「ところで、つかぬことを聞くが、君の足元にいるポケモンは、君のパートナーなのかな?」

 

 ダンデの視線の先には、ユウリが連れてきたカービィがいた。

 

「この子は、カービィっていいます。あ! けど、本人がそう名乗っているだけで、種族名はわからないです」

「……すまない。見たこともないポケモンだったから、つい気になってしまったんだ」

「ダンデさんは、カービィのことを知らないのですか?」

「ああ、俺はポケモン博士までとは言わないが、そこらの一般人よりポケモンには詳しい。しかしそんな俺でも皆目見当がつかん」

 

 ふたりの会話を聞いていたホップは、声を上げた。

 

「アニキも知らねえって、ひょっとしてカービィって相当レアなポケモンなのか!?」

「わからん、ただソニアか、マグノリア博士なら、カービィのことを分かるかもしれん」

 

 ダンデが腕を組んで、つづけた。

 

「なにより、気になるのは……」

 

 ダンデの目つきが、推し量るように鋭くなる。

 

「ぽよ?」

「そのポケモンは、俺のリザードンより強い」

「ダンデさんの、リザードンより……?」

 

 ユウリは信じられない、と思った。

 常勝無敗チャンピンダンデの、相棒であり、究極の切り札。リザードン。

 ダンデのリザードンは、ガラル地方において、ポケモン勝負における強さの象徴なのだ。

 そのリザードンより、すぐそばにいる、このまん丸ピンクの方が強い?

 

 ホップも、ダンデの言葉が信じられないようで、目を見開いていた。

 

「冗談じゃないさ。これまで色んなポケモンと出会い、闘ってきた。だから、一目でわかったよ」

 

 ユウリとホップは騒然としている一方、当の本人であるカービィは、相変わらずぽよぽよしている。

 

「まぁ、彼はポケモンバトルにあまり興味がなさそうだ。……さて、カービィのことは置いておいて、ユウリ、ホップ。俺が今日ここに来たのは、君たちにプレゼントを渡すためだ」

 

 その後、ユウリは、ダンデからプレゼントを受け取った。

 プレゼントとは、三匹のポケモンである。

 サルノリ、ヒバニー、メッソン。

 この三匹の中から、一匹を選ばなければならないらしい。

 

 モンスターボールから飛び出た三匹を前に、ユウリは、迷う。

 だが、すぐに迷いは消えた。

 

「ヒバヒバ」

「ぽよ!」

 

 三匹のうち一匹の、ヒバニーが、カービィに興味を持ったのか近づいた。

 ヒバニーが嬉しそうに、カービィの周りを飛び回る。どうやらヒバニーはカービィと仲良くしたいらしい。

 カービィも「ぽよぽよ」とニコニコしている。

 

「決めた。ダンデさん、この子をください」

 

 ユウリは、ヒバニーを選んだ。

 仲良くしているカービィとヒバニーを見て、微笑ましくなったからだろうか。

 その後、ホップがサルノリを選び、ダンデがメッソンを引き取った。

 

 

 ★

 

 

 ヒバニーを受け取ったユウリは、自宅に戻り、自分の荷物をリュックに詰めて、ジムチャレンジに向けて準備を整えていた。

 カービィはというと、ユウリの母が作った特製カレーラーメンに目を輝かせて、かぶりついている。

 

 そこへ、息をきらしたホップが玄関口から現れた。

 

「た、たいへんだ、ユウリ! オレのウールーがまどろみの森の方へ行っちゃったんだ!」

 

 ホップの話を聞くと、ホップのウールーが町の柵を壊して、まどろみの森に入っていったらしい。

 どうしてウールーがそんなことをしたのかといえば。

<ドリのみ>という、ホウエン地方のみに自生する、とんでもなく苦い木の実をあやまって食べてしまったからだ。

 ウールーは、<ドリのみ>の苦さに暴れ狂い、その勢いのまま、柵をぶち壊し、森の方へ消えていったのだ。

 

 すぐさまユウリとホップは、ユウリ宅を出て、まどろみの森に足を踏み入れた。

 もちろん、ふたりの後をトテトテとカービィもついていく。

 

「ウールー! おーい、ウールー! オレの声が聞こえているなら、答えてくれ!」

 

 濃い霧に包まれた、薄暗い森の中。

 ホップは大声をあげて、相棒であるウールーの捜索をしている。

 ユウリも、周囲の草むらに目をこらし、ウールーの姿がないか探す。

 そんなふたりの数歩うしろには、周囲をキョロキョロしながら歩くカービィ。

 

「ぽよ!」

 

 カービィは突然、立ち止まった。

 

「カービィ! わたしたちから離れないで。カービィまで迷子になったら、大変だから」

「うい……」

 

 ユウリがたしなめれば、カービィは、しゅん、と落ち込んだ様子を見せる。

 その態度に、ユウリは罪悪感を覚えた。

 

「ごめんね、カービィ、きつく言い過ぎちゃった。どうしたの?」

「ぽよ!」

 

 カービィは、短いまん丸な手で、ユウリ達とは全然違う方角を指す。

 それから、トテトテとカービィは木々に囲まれた草むらの中を小走りした。

 

「ちょっと待って! カービィ!」

「ユウリ、カービィが何か見つけたんじゃないのか?」

 

 カービィの後を追って、ユウリとホップは草むらを移動する。

 その道中、草むらから野生のポケモンが飛び出してきた。

 ホシガリス、ココガラ……どうにかこれらポケモンたちとのバトルを回避していく。

 そして、ユウリたちはカービィの後を追うにつれ、さらに森の深い部分へ進んでいく。

 

 森の奥地は、さらに鬱蒼としていて、夜のように暗かった。

 それにゴーストポケモンが現れそうな、どこか不気味な雰囲気が漂っている。

 ユウリは、怖くなって引き返したくなった。

 カービィは、やがて立ち止まった。

 どうしてカービィは突然走り出したのだろう。そしてここで走るのを辞めたのだろうか。

 その疑問は、ユウリとホップが追い付いたところで判明する。

 

「メェ~」

 

「あっ、ウールー!」

 

 そこに、ホップのウールーがいた。

 ホップは、ウールーの元へ駆け寄り、抱きしめた。

 その光景を目にして、ユウリはホッと息をつく。そしてカービィに対して、感謝の念があふれた。

 

「……いきなり走り出して、びっくりしたけど、ウールーの姿を見かけて、ここまで来たんだね」

 

 そういったユウリは、カービィの頭をなでようとしたところで、手を止める。

 

 カービィは、じっと見つめていた。

 視線の先は、森のさらに奥。木々の影に覆われた暗闇だ。

 そこには何があるというというのか。

 その時だった。和やかな空気を打ち破るように、辺りに霧が立ち込める。

 霧はどんどん濃くなっていき、ユウリの視界をふさいだ。

 ユウリは唐突な濃霧の襲来に、混乱しそうになる。

 

「ユウリ、大丈夫か?」

「うん!」

「カービィも一緒にいるか? ユウリ?」

「いるよ」

 

 ホップの呼びかける声と、すぐ近くにいるカービィのおぼろげな姿で、心が落ち着く。

 

「ウルォード!!」

 

 ユウリの正面の方向から、遠吠えが聞こえた。

 霧が少しだけ晴れて、視界が明瞭になる。ユウリの開けた視界の先に、何かがたたずんでいた。

 

「……あ」

 

 そこには一匹のポケモンがいる。

 痛ましい古傷がびっしりついた、シアン色の体毛の、巨大なオオカミのような姿。

 カービィがここに来たのは、ウールーの存在に気が付いたわけではない。

 目の前にいるこの存在を感知して、ここまで移動したのだろう。

 

――つわものポケモン、ザシアン。

 

 『れきせんのゆうしゃ』と呼ばれるそのフォルムは、『くちたけん』も持っていない、かりそめの剣王の姿。

 

ザシアンの瞳は、静かにカービィを射抜いていた。

 

 

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