ありふれた異世界で転生特典【ボカロ曲】を使って楽しんでみる   作:夢のまた夢

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拝啓、偶然にも出会した君へ。

たまに思うことなのだが、周りが人外で囲まれていると、途端に自分が人間か不安になることがある。

 

ただ、他の人と変わったところは何もない。強いていうなら、いつの間にやら茶髪から変わっていたこの赤いワインレッドの髪と、初めて鏡を見たとき「うーわ」と思った水色の虹彩だけだ。

 

……ちょっと待て思った以上に見た目が厨二病してるぞ?

 

なんだ赤い髪の毛て。腕一本やすいものだ?普通に大怪我だよ強がるんじゃねぇ。

すげぇよ完全に中学生が考えたオリキャラって見た目してるわ。なんでこんな見た目になったんだろう。見当もつかないな。

 

「なあ、いつのまにか髪が赤色に染まってたんだけど、なんか心当たりないか?」

 

「さあ?魔物の血でも浴びすぎたんじゃないの?」

 

「?よくわからない」

 

「私にもわかりませんね。しかし、なってしまったからには仕方ないではないでしょうか?」

 

他の人(外)に聞いてもわからないらしく、特にこれといった支障もないので、しょうがないからこのまま生活を送ることとする。

 

「まあいいや。そんなことより、もうそろそろ着くぞ」

 

「にしても速いねー、このデンシャってやつ?私の旅にも欲しかったなぁ」

 

向かうところは湖畔の町、ウル。そこに、変わってしまった友達がいると信じて。

 

──────────

 

この町には大きい湖があり、そこから水を引いているため、ここらは農業が盛んである。それが理由で、王都から農業関係の天職を持っていると言われている神の使徒がこの地に足を運びに来ていると、この町に住む人が言っていた。

 

「十中八九、俺の知り合いが来ている……よなぁ。さすがに」

 

「そんなに会うの嫌なの?」

 

「まあアイツらの中だと、俺はここにはいないことになってるからな。あと別に嫌ってわけじゃない」

 

「ならどうしてイオリはためらっている?」

 

「んー、単純に気まずい。アレだ、仲良くないクラスメイトとショッピングモールでばったり会ったときくらい気まずい」

 

「……そっちの世界の例えだとわかんないかな」

 

「おなじく」

 

「私は少しだけわかりますよ?あまり会わない天使と転生の担当が被ると気分が下がりますからね」

 

なんかシェルネだけ納得の種類が違くない?そんでトータス組二人はイマイチ言っていることを理解できなかったようだ。しゃあない。

 

「ま、とりあえずここの飯屋によろう。ここには米があるらしいからな。自分で用意できるけど」

 

「「「はーい」」」

 

元気な返事で良いことで。

 

「南雲くん!どういうことか説明してください!」

 

 

 

 

 

「えっと……」「今のって……」「もしかしなくても」

 

「よりにもよって今かよ……」

 

まさかの愛子先生もいることが確定した。

 

──────────

 

「ど、どーもー……」

 

なんとなく挨拶してから入り、カランカランと扉の鈴が鳴るも、喧騒によってかき消される。騒いでいる、というよりかは説教しているのは愛子先生。

 

愛子先生は授業の時の声は小さかったが、今回の説教はその倍どころか、十倍でも足りないほどの声量で聞こえる。

 

あー、あの輪に入りたくねぇよー、だって絶対こっちにも矛先が向かうもん。本当にやめてほしい。しかも他の生徒もいるじゃん、嫌だよ他の生徒の前で怒られるの。気まずいもん。

 

生徒の数は……7人くらいか?お、しかも幸利いるじゃん!って、アレは……

 

「恵里!」

 

どこかのバーガー店のピエロみたいに、自然に体が動いてしまい、つい恵里のところに飛び込みに行ってしまった。

 

その場にいた人は目を目開き、理解しようとして全員一時停止する。さっきまで怒られていたハジメや叱っていた愛子先生でさえ固まっていた。けどそんなのはどうでもいい。今はただ恵里の生存に感謝するだけだ。

 

 

「え?いお……り……おにい……ちゃんなの?」

 

「ああ、俺だ。アンタの兄である伊織だ」

 

「う……おにいちゃん………!」

 

胸の中で泣く恵里をそっと慰めるように、優しく頭を撫でた。

 

感動の再会。それは全くと言っていいほど関わりのない神殿騎士の人たちですら、その空間を汚さないよう静かに見守るほどに、周りは口を挟まずに素直に見守っていた。

 

──────────

 

「よ、最近どう?」

 

「……お前、今までどこ行ってた?というかなんだその髪色」

 

「抜かせ。白髪眼帯義手赤眼ハーレム野郎。属性盛りに盛りまくってんじゃねぇか」

 

「俺が愛してんのはユエだけだ。あの兎はなんかついてきた。つーかそれで言うならお前の方が人数多いだろうが」

 

「そもそもただの連れだよ。あとなにしれっとリオネ入れてんだ俺はロリコンじゃねぇ」

 

「なぁに人が説教している時に話してるんですか!しっかりと反省してください!!」

 

「「はぁーい」」

 

現在、感動の再会を果たし、ハジメと共に正座して先生の説教に混ざっていた。

 

「にしてもハジメに続いて伊織もハーレム形成とは、トータスの女性の倫理はどうなっているんだ?」

 

そうポロっと呟いた親友幸利の疑問に、自らの私見を述べる。

 

「まあそもそもが中世ヨーロッパレベルだ。重婚なんて当たり前なんだろ、貴族とか位が上がれば上がるほど、子孫を残そうとするものだからな」

 

「確か帝国の皇帝ガハルドってやつも側室とかいなかったか?」

 

「だからといって、二股はダメですよ南雲くん!それと神崎くんも!」

 

「いやいや違いますって先生。ハジメは完璧なるクロですけど、俺はただの連れであって、旅の仲間です」

 

「おいこらテメェ俺になすりつけんじゃねぇ」

 

「否定しないってことはそういうことだ」

 

「ククッ、お前らほんと面白いな」

 

その様子を見て、清水幸利は声を抑えながら可笑しく笑った。

今はこうやって軽い口喧嘩をしているが、実は二人とも楽しんでいたりする。久しぶりに友人に会ったのだ。つい憎まれ口を叩いてしまったが、お互いのことを、少なくとも悪くは思っていない。

 

ただ、あの頃を、この世界に来てしまう前の感覚が欲しかった。たったそれだけのことだ。

 

そう、永らく友達として過ごしてきたからわかる。

そんな二人をよく知る幸利は、(男のツンデレ同士のBLって、需要あるのかなぁ)と、自身の専門外のジャンルの癖について、この状況のことを変な視点で考えていた。

 

「あとそろそろ正座キツいんで立っていいですか?足が痺れてきた」

 

「奇遇だな。俺もだ」

 

強大な力を手に入れても、こういうちょっとした痛みは貫通されるの、控えめに言って技能とかの欠陥だと思う。

 

「しょうがないですね、二人とも反省してくださいね!それで神崎くん、今までどこに行ってたんですか!」

 

「いやぁ、なんか同じように転移したんですけど、何故か場所がみんなと違っていましてね。まさか海底遺跡に転移するとは」

 

「か、海底!?そんなところからどうやって……」

「……海底遺跡……だと……?」

「へぇ、そんなとこに転移されたのか。災難だったな」

 

思いのほか多種多様な驚き方をするなぁ。というか幸利に至っては驚いてすらいないのなんで?

 

「まあいろいろあったんですよ。おかげで良い出会いに恵まれましたしね」

 

そう言って彼女たちの方を見やる。そこにはハジメの仲間と、俺の仲間が楽しく談……笑……?

 

「おいなんかあそこギスってんだけど?なんで?」

 

なんかウサ耳少女がミレディに煽られて手が出そうになってる。まだ行動に移さなかったのはハジメの友達の連れだからだろうか。その隣のユエも軽くピキってるように見えるし。

 

「さあ?まあ人には相性とかあるもんだし、ほっときゃ仲良くなんだろ」

 

「お前はほんと放任主義だなぁ」

 

「それと海底遺跡の話、あとで聞かせてもらうからな」

 

「まあ別にいいけど。……薄々そっちも気づいているようだし」

 

「ああ。ここじゃあしにくい話だからな」

 

「また、また話を聞いていない……」

 

「まあまあ、先生。そんな悲しまないでくださいよ。そもそもアイツらの空間では俺らは空気なんですから。【鎮生】使いましょうか?」

 

「……よろしくお願いします」

 

そんな自由奔放な二人の影に隠れて、幸利は愛子先生のメンタルケアに努めていた。いつもごめんな幸利。

 

そんなカオスな空間の中、ドンッと、後ろからテーブルを叩く音が聞こえる。後ろを見るとなんか仰々しい鎧を纏った騎士が立っていた。

 

「おい、愛子が話しているのだぞ!真面目に話を聞け!」

 

おお、急にどした?かまってちゃん?

 

冗談は置いといて。高圧的な態度に関しては鼻につくが、言っていることは正しいので、俺は素直に従おうとする。

 

だがハジメは違った。

 

「一応食事中だぞ?行儀良くしろよ」

 

「なっ、貴様ぁ……!」

 

い、言ったあぁぁぁぁ!!!

 

流れるような論点ずらし!そこに痺れもしないし憧れもしないが、あれだけ平和主義者だったハジメが和を乱すような発言をしたことに対して成長したなと少し感動している!!

 

だがそれはそれとして。

 

「ハジメ、これに関しては普通にこの騎士さんが正論だから素直に聞こうな」

 

「……チッ。わかったよ」

 

よし、これで解決!

 

だと良かったのだが。

 

「ふん、こんな奴が行儀を語るだと?その言葉、そっくりそのまま返してやる。薄汚い獣風情を人間と同じテーブルに着かせるなど、お前の方が礼儀がなってないな。奴隷の主人として、せめてその醜い耳を切り落としたらどうだ?そしたら少しは人間らしくなるだろう」

 

あまりにも傲慢な物言いに、愛子先生が注意しようとするが、それより先にとユエの殺気にあてられたことによって、神殿騎士が反応した。

 

「なんだその眼は?無礼だぞ!神の使徒でもないのに神殿騎士に逆らうのか!」

 

ユエに侮蔑した眼で見られたことに対して、憤る騎士だったが、そんな彼に対するユエの返答はその怒りを倍にする言葉だった。

 

「……小さい男」

 

「……異教徒め。そこの獣風情と一緒に地獄へ送ってやる」

 

どうやらユエの嘲笑を含めた発言に、ついに神殿騎士はキレたようだ。音もなく腰に据えている剣を手に取る。

 

その刹那、発砲音と共に現れたのは暴言を口にした神殿騎士の片腕だった。

 

その痛みからか、騎士は発狂する。

たった一発の弾で彼の肩の部分だけがごっそりと消し飛ばされるその威力に、クラスメイトたちはおろか、撃った本人であるハジメさえも(・・・・・・)僅かに目を見開いていた。

 

「へぇ、思っていた以上に、貫通力が高いんだな。ハジメが撃った弾って非致死性のゴム弾だろ?」

 

「……ああ、いつもはここまでの威力はないはずなんだがな。故障か、もしくはユエを守ろうとしたからか」

 

「……今のお前昔じゃ考えられないくらいに惚気るな。ま、とりあえず俺はアレの治療をしてくる」

 

そうハジメに告げると、俺は騎士の傷に手を翳す。

 

まあタダで治す気はない。あの発言に関しては俺も頭にきていた。さらにその倍の苦痛を味あわせてやるよ。

 

「痛いですけど、じっとしててくださいね。【アヴァターラ】」

 

赤黒い魔力が彼の失くした腕の部分を包む。

 

「ぐぁ、が、がぁあああ!」

 

彼はさらに悲痛な叫びを上げた。その姿はハジメでさえバツを悪くするレベル。そして、彼は気を失った。

当然である。【アヴァターラ】は傷を完治させる代わりに、現在感じている痛みを倍にするのと、過去に行った悪行によってその痛みを受ける時間を伸ばすというデメリットがあるのだ。腕を失っただけで発狂してた奴が、この痛みを耐えれるはずがないのである。

 

ハハッ、ざまぁ。

 

やがて彼の腕は完治された。その後は他の騎士の方々に連れられ、泊まる予定だった宿の部屋で安静にしている。

 

騎士のみなさんが戻ったあと、ハジメは淡々とこの場にいる全員に告げた。

 

「俺は、あんたらに興味はない。関わりたいとも、わかってほしいとも思わない。心底どうでもいい。俺は元々仕事でここにきたんだ。終われば旅に出る。別にあんたらがどこで何しようが勝手だ。ただし、俺の邪魔する奴は殺す」

 

あまりに不遜で自分勝手な態度。過去のハジメからは想像できない姿に、俺は口元を押さえて笑った。

 

「これは、アイツから聞くのが楽しみだな」

 

──────────

 

ハジメがシアを慰めたあと、俺はハジメに呼ばれ、泊まる宿の部屋に集まっていた。

 

「さて、まずは何から聞こうか」

 

「お互い積もる話もあるだろうしな。ところで一つ先に聞いていいか?」

 

「?長くなる話じゃなければ」

 

「お前だろ?弾丸の威力を上げたのは」

 

「………………よくわかったな」

 

別にバレないとは思ってなかったが、まさかものの数十分でバレるとは思ってもいなかった。とはいっても威力を上げたのではなく、傷を広げたので、厳密にはハズレだ。

 

【ドーナツホール】。

相手に当たった箇所に大きい穴を開ける、銃撃との組み合わせでは類を見ない強さのボカロ能力だ。たとえどんなに銃撃そのもののダメージが低くても、当たってさえしまえば致命傷になりかねないという点で考えると、かなり殺意の高い能力だ。

 

「皆があの騎士に注目する中、お前だけは優雅にカフェラテなんて飲んでたからな。普通は腕が吹き飛んだら何かしら反応はするだろ。というかどうやってあのカフェラテ用意した?あそこのメニューにカフェラテなんてなかっただろ」

 

「あー、生み出した」

 

「生み出した!?」

 

言い方が悪かったか?でも事実だしなぁ。

 

「……一旦そこは置いておこう。それで、あんたは知ってんだろ?」

 

「神代魔法、エヒト神、大迷宮etc……のことであっているなら」

 

それを聞いたハジメは、いつもより真剣な顔をして、俺に問いかけた。

 

「……お前、どうやって迷宮を攻略した?」

 

「ん?どうやって……って何がだ?」

 

「もしお前が普通と同じように転移されてきたなら、あいつらクラスメイトとさして変わらない実力だ。そんな程度ならあの大迷宮を攻略なんて不可能だ」

 

「そういうハジメだってそうだろ?途中でホルアドによって香織から聞いたぜ?そんな《無能》でさえ大迷宮を攻略しているなら俺でも可能性くらいはあると思うが」

 

「ああ、愛子先生には言わなかったんだが、魔物の肉を食ってな。ちなみに猛毒。たまたま神水を持っていたからよかったものの、あんな思いは二度とごめんだな」

 

どうやらハジメは思っていた以上に大変な思いをしていたようだ。にしてもよく魔物の肉食おうと思ったな。普通だったらその発想に至らないだろ。おっそろしいな、限界間近の人間ってヤツは。何をしでかすかわかったもんじゃない。

 

「で、お前がそんなに強い理由はなんだ?もし俺と同じ理由で強くなったならなんでお前の髪と眼は俺と同じじゃない?あの毒をどうやって治した?」

 

嘘偽りなく言え、と鋭いハジメの眼がそう訴えている。俺なら別に誤魔化すことはできるが、俺は友達に嘘をつきたくなかった。

 

「お前は、俺が転生者だった……と言えば、納得できるか?」

 

そして今日初めて、俺は地球のクラスメイトに、俺の最大の秘密を告げた。

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