ありふれた異世界で転生特典【ボカロ曲】を使って楽しんでみる   作:夢のまた夢

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砂の大地

「なんだって?人になりたい?」

 

「───!」

アンカジ公国に滞在してはや三日。その間観光や料理などを楽しんだいたが、今日急にリオネが俺に人化したいと言ってきた。

 

「にしたってなんだって突然に……」

 

「──!──!」

 

「いちいち伝えるのがめんどくさい?金だけくれ?俺はお前の財布かなんかかよ」

 

「───!───!───!」

 

「そうは言ってもな……、確かにできなくもないが……。なあハギア、この能力って他人に譲渡したりできるのか?」

 

この能力をつくった本人に聞く。

 

(───え、あ、はい!譲渡は可能ですが……、私に許可をとって渡してくださいね?)

 

リオネに手を出してもらい、能力を譲渡する。何かを感じたのか、リオネは歓喜しているように見えた。

 

「いいか?ちゃんと話を聞けよ?今与えた能力は【転生林檎】だ。自分の思うままの姿になれる。多分だがお前の魔力を食う体質も自由に変化できる。念じれば変化できるはずだ。ただし、魔力を結構消費するから気をつけろ」

 

頷いたリオネは、少しの間動きを止めると、体に魔力がまとわりつき始めた。やがてその魔力は膨れ上がり、次第に収縮していく。

 

 

 

魔力が消え去った時、リオネがいた場所には見知らぬ銀髪の少女が立っていた。年はおよそ八歳程度だろうか。髪型はサイドテールになっており、顔つきは少し俺の母親に似ているように見える。

 

「もしやお前、……リオネか?」

 

少女は頷く。

 

しかし、まだ慣れていないのか、まだ話すことができないようだ。まだ【いーあるふぁんくらぶ】があるから思考を読み取ることができるが、そもそものコイツの目的は一人で商品を買うことである。最低でも話せるようにはしておきたいな。

 

「魔力の消費はどうだ?結構減ったか?」

 

頷くリオネ。立っているだけでもキツいのか、足がふらついている。とりあえず、ベッドに座らせた。

 

「とりあえず、その体に慣れるまではとりあえずアンカジに滞在するか。あと、これからは話せるようになるまでは外に出るなよ」

 

「──……」

 

渋々頷き、リオネはベッドの中へ潜っていった。人間になったら一度ベッドで寝てみたかったらしい。かわいい願望だな。

 

──────────

 

「いおり、ごはん、ちょうだい」

 

「はいはい。今すぐ用意するから少し待ってろよ」

 

リオネが人化してから一週間経過した。リオネはだいぶ覚えが良く、この短い時間で片言だが話せるようになり、他の魔物にも変身できるようにもなった。

 

「そろそろ、グリューエン火山に攻略しに行っていいかもな」

(ですね!)

 

「ごはん、はやく」

 

「わかったって」

 

【オブソミート】を使い、今回はLサイズのマルゲリータを三枚生み出す。

 

「ほらよ。いっぱい食え」

 

「いただきます」

 

テーブルに置いたらリオネを手を合わせ、みるみるうちにピザを平らげていく。一応量としては大人三人分なんだけどな……。

 

「ごちそうさま」

 

「リオネ」

 

「どうしたの?」

 

「明日にはこの町から出ていくから、行きたいところがあったら連れてってやるよ」

 

「いいの?やった」

 

その喜ぶ姿に、俺の心が癒される。この少女の中身があの食いしん坊のリオネと考えてしまうと、途端に気持ちが落下するのだが。あぁ、金が泡のように消えていく。

 

 

「でも、いい」

 

 

「……え?」

 

突然発した否定の言葉に少し反応が遅れる。

 

「わたし、イオリにニンゲンのすがたにしてもらった。だから、イオリといっしょに、いろんなところ、いってみたい。きょういちにちは、ここでイオリとやすみたい」

 

「……」

 

あれ、なんでだろ……目から塩水が……。

 

あんなに金遣いの荒く、俺のことを財布としてしか見ていない子が、こんな感謝の言葉を自発的に使ってくれると思うと、自然と目の下に跡がつくのは当然のことだった。

 

そして今日一日は、この町の飲食店の代わりに、【オブソミート】で用意した食べ物をリオネと一緒に食べることにした。

 

なお、こうなることを予想してリオネがこのような言葉を口にしたことを、神崎伊織が知るよしもなかった。

 

──────────

 

「……あつい」

 

「少しは我慢しろ。……とは言えねえか」

 

現在、俺らはグリューエン大砂漠にある、グリューエン火山の中にいる。天使によると、この中に神代魔法が眠っているとのことだ。

 

火山の中なこともあって、ものすごく暑い。いや、熱い。汗で服が着衣水泳の後のようになっている。気持ち悪っ。

 

これでも上着を脱ぎ、シャツ一枚になっている。しかし、これほどの暑さなら焼け石に水だ。

 

なによりまずいのが、暑さによって思考が鈍っていること。ここは大迷宮である。いつ死んでもおかしくない。そんな状況下では1秒の判断の遅れが命取りとなる。早急に手を打たなければと、リオネに一つの提案をする。

 

「リオネは暑さに耐性のある魔物に変身したらどうだ?」

 

「そのてがあったか」

 

そこらへんに生息している魔物を見つけ、変身する。今回はコウモリに変身したようだ。

 

『これですこしはマシ』

 

「俺も対策を取るとするか。【ももいろの鍵】」

 

手のひらから桃色の鍵が生み出され、自身の手の甲に挿入する。

 

【ももいろの鍵】。その能力は複数種類あり、使ったのは『封印』。自らに備わっている能力、または相手の能力を封じるという、決まれば圧倒的に有利になる能力である。封印したのは人間に備わっている体温調節機能。これにより、暑さ寒さを感じなくなる。よって、思考がだんだんクリアになってきた。

 

「よし、それじゃあ探索を続けよう」

 

『うん、わかった』

 

ちなみに、このあと突然ふらりと倒れ、人間の機能の神秘と水分補給の大切さを実感した。

 

──────────

 

この後も水分補給を繰り返し、何度か敵の対処をして、歩き続けることおよそ半日。ついに洞窟のような変わり映えのない景色から一転して広大な空間へと辿り着いた。とりあえず真ん中にある大きな浮島へと移動する。

 

「なが……かった……。途中脱水症状で5回くらい倒れた気がする……」

(8回ですね)

『はちかいたおれた』

「あれそうだっけ!?」

 

あまりにもぶっ倒れすぎて記憶が曖昧になってるなコレ。

 

(あなたが死んだら私も死ぬんですからね?もうちょっとお身体を大事にしてください)

『いのち、だいじに』

 

「……すんません」

 

まずいな、優しい言葉と目で物を言うジト目で心がいたたまれなくなってくる。だがそんなことは試練に関係なく、俺の視覚外の攻撃を感知し、リオネに防御の指示を出す。

 

「!リオネ、防御!」

『りょーかい』

 

指示を受けたリオネは人間体へと変身し、体の一部分をクリオネの姿に変え、俺を狙った熱線を受け止める。

 

「んぐっ!まほうじゃない……!?」

 

しかし、撃たれた熱線は、魔法ではなく、本物のマグマ。吸収できず、リオネの体を焼いていく。

 

「リオネ!大丈夫か!?」

 

「もん……だい、ない!!」

 

そう声高々に宣言すると、自らを肉体をマグマへと変化させる。その変化した体でマグマによる熱線を取り込み、自身の体の一部となった。

 

「ふう……。【てんせいりんご】がなかったら、あぶなかった」

 

「よかった、無事みたいだな」

 

安心したのも束の間、再度熱線が飛んでくる。それを【すろぉもぉしょん】で避ける。

 

「……さいしょからそれ、つかえばいいのに」

 

「すまん。リオネは食いしん坊だから魔力で腹を満たしてもらおうと……」

 

「……まりょく、そこまでおなかにたまらない」

 

「そうなのか……」

 

熱線をバンバン撃っているのは、マグマで造られた蛇だった。しかも大量の。

 

「とりあえず、一体倒すか。【隕石が落ちてきた】」

 

どこからともなく現れた隕石が、周りの蛇を巻き込みながら墜落した。使っておいてなんだけどなんでこの能力屋内で使えるの?

 

何か変わったか周りを見回すと、壁に埋まっている岩石がオレンジ色に光っている。埋め込まれている岩石の数はおよそ100。光っているのは7。

 

先程の蛇を倒した後に光ったと仮定するとどうやら後、93体倒さなければいけないようだ。

 

「厄介だが……、出来ないこともないか。リオネ、俺を飛ばせ!」

 

「りよーかい」

 

リオネは怪鳥となり、俺の肩を鷲掴んで飛ぶ。一定の高度が保てたら、空間の中央へと移動してもらい、俺は策を実行する。

 

「はるか古来からのゲーム知識だ。炎属性には、水属性。【ワープアンドワープ】!」

 

自らの場所を中心とし、壁の端と端までの直径が同じサイズの円形のワープホールが展開される。その展開されたワープホールから出てきたものは、大量の海水だった。

 

 

マグマ蛇達の体に海水がぶつかり、音を立てながら蒸発していく。液状だったマグマ蛇の体が固められていき、やがて急激に気化した海水のせいで、水蒸気爆発が起こり、固まった蛇ごと消えていった。

 

「……ふう。もう魔力がすっからかんだわ」

 

「あんなたいりょうのみず、どこからよういした?」

 

「エリセンのところの海から繋げた」

 

爆発でさっきまで光っていた壁が崩れ落ちたが、いつの間にか道が開かれていたので、まあ良しとしよう。

 

──────────

 

先にあったのは、メルジーネのときにも見た魔法陣だった。中へ踏み込み、神代魔法を入手する。

 

「……空間魔法か。俺はあんまり使えないな」

 

やはり最初からチート能力を手に入れたら、魔法とか異世界とか全然テンション上がんねぇな。

 

「わたしも、じんだいまほう、にゅうしゅした」

 

「おう、良かったな」

 

そう言って頭を撫でる。リオネは嬉しそうに笑う。リオネの可愛い姿が見れたから別に気にしないでおこう。

 

魔法陣の光が収まると、壁の一部が開き、正面の壁から文字が輝きながら浮かび上がる。

 

〝人の未来が 自由な意思のもとにあらんことを 切に願う〟

           〝ナイズ・グリューエン〟

 

「……メルジーネと違ってシンプルだな」

 

「けど、いいことば」

 

「そうだな」

 

周りを見ても特に変化はない。きっとこの人は真面目なタイプだったんだろうな。もしかしたら結構な苦労人だったりして。

 

開いた壁に近づくと、キラリと何かが光る。中を覗くとペンダントが入っていた。攻略した証なのだろう。

 

「さ、攻略もできたことだし、さっさとここを出るとするか」

 

「うん、もうここにようはない」

 

その後、ショートカット用の道を見つけ、そこからグリューエン大火山を後にした二人であった。

 

──────────

 

「……ねぇイオリ。いまどこむかってるの?」

 

「ミュウのところだ」

 

「?どうやって?」

 

「ああ、【桃色の鍵】で」

 

俺はリオネに【桃色の鍵】のもうひとつの能力について説明する。

 

自身の求めている物が自分を中心とした円形の範囲に入ると、そこまでのだいたいの距離と方角が知れるというものだ。無くし物したときによくお世話になった。

 

俺は今進んでいる方角に指を差す。

 

「そして、こっちの方向にミュウがいるわけだ」

 

「なるほど。だからあるきでここまできたの」

 

「そういうことだ。車内じゃさすがに分かりづらいからな。もしかしたら子供ごと轢き殺してしまう可能性もある」

 

そうこう話していると複数の男の人影が現れた。その後ろには小さな子供達がたくさん並んでいた。確実にクロである。

 

「あぁ?こんなところに誰だぁ?しかもまだ若ぇじゃねぇか」

 

「……俺はただのしがない旅人だよ」

 

「旅人かぁ……、じゃあ口封じしなきゃなぁ!」

 

野蛮な犯罪者は腰の剣に手をかけ、俺へと向ける。切りかかる寸前で四次元ボックスから事前に作っておいた剣で受け止める。

 

「っ!……危ねぇな」

「!?テメェいつの間に剣を……」

 

「気にしてる場合か?【スパークガールシンドローム】!」

 

俺の持つ剣が帯電し、剣を通して男を感電させ、黒焦げにする。

 

「ぐぉっ……アアァァァ……!」

 

簡単に一人死んだことで俺を舐めてた他の犯罪者達が遅い警戒をし、リーダー格であろう男が号令をかける。

 

「おまえら!剣を構え───」

 

「うるせぇ」

 

だが、全て言い切る前にさっさと近づき喉元を掻っ切る。その容赦の無さに、犯罪者どもは思考が止まる。捕まっていた子供ですら、本当に味方なのかと疑い、恐怖で怯えている。

 

「……イオリ、さすがにさいごまでしゃべらせてもよかった」

 

「指揮系統から潰していくのは多対一では定石だろ?さてさて残りはー、1、2、3、4───5人か。……いけるな。【ジカンノエンブレム】」

 

 

 

 

「───っえ?」

 

次の瞬間一人を除き、全ての悪党の首が吹き飛ぶ。唯一生き残った者も手首が切り落とされ、アキレス腱も切られていた。

 

「よし、一通り片付いたな。んで、お前の与する組織の名前を言え」

 

出会ってまだ5分も経たずに全滅した仲間をみて、恐怖で慄き、声すら出ない状況だったが、仲間と同じようになりたくない一心で無理矢理声にする。

 

「ふ……ふり…い…と……ほ……ほ…おく」

 

「フリートホーク?で合ってるのか?」

 

顔の穴という穴からいろんなものが出てきて顔面土砂崩れ状態になりながらも男はコクリと頷く。

 

「情報提供ありがとう。それじゃあ地獄へ落ちて死んでくれ」

 

「な……なん───

 

惨めで、哀れで、儚くて、可哀想だなと思いながらも、しっかりと息の根を止める。

 

「……イオリ、あきらかにやりすぎ。こどもたち、おびえてる」

 

リオネが指差した方向には、一塊となって震える子供達がいた。その周りの死体と生首を見て、どれだけ自らが犯した失態を理解する。

 

「……ヤベェ普通に忘れてた」

 

その後、自分が殺した奴らと違って、子供達を助けにきたことをわかってもらうのに悪党を殺すより時間がかかった。

 

──────────

 

「ミュウ!!」

 

他の子達をアンカジの保安署に預けた後、ミュウをエリセンにいるレミアにお届けしようとエリセンの町に戻った途端、正面からレミアさんが走ってきた。それに呼応するようにミュウもまた走る。そして母親に抱きついた。

 

「ママー!」

 

涙を流しながら抱きつくミュウ。それを慰めるように宥めるレミア。そんなレミアの目にも涙が溜まっていた。

 

その光景を見て、微笑ましく思いながらも、親との関係がギクシャクしていることもあってか、ほんの少しだけ妬みの感情を抱いてしまった。

 

やがて泣き止むと、二人して俺に感謝の言葉を述べた。……まだトラウマがあるのかミュウはレミアの後ろに隠れたが。

 

「改めてうちの娘を助けてくださって、ありがとうございました」

 

「どういたしまして。ですが私は、自分のしたいことをしたまでですよ」

 

嘘偽りない気持ちをレミアに伝えると、彼女は少し考え込み、口を開く。

 

「お礼と言ってはなんですが、今晩うちに泊まられてはいかがですか?」

 

「いえ、私は大丈夫です。近くの宿にでも泊まりますので」

 

「こちらがしたいのです。どうかお願いします」

 

そう言って頭を下げるレミア。どうしようか考えあぐねていると、リオネが口を出す。

 

「おれい、きもちとして、うけとるべき」

 

「?そちらのお子さんは?」

 

「ああ……、なんと説明すればいいか……。とりあえず連れの子です」

 

少しの沈黙。気まずい空気があたりに蔓延る。

 

「……あんまり深く触れないほうがいいですね。ともかく、今日はうちで泊まってください」

 

「わ、わかりました。ではお言葉に甘えて、今日はレミアさんの家で泊まるとします。明日の朝には出ますので」

 

「はい!」

 

ちなみに、レミアさんの料理に胃袋を鷲掴みされたことで結局三日程追加で滞在した。

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